「シルバーホーク」
原題:飛鷹
英題:Silver Hawk
製作:2004年
●表向きは美しきセレブ、裏では悪と戦うシルバーホークとして活躍していた楊紫瓊(ミシェール・ヨー)は、あるとき昔馴染みの刑事・任賢齊(リッチー・レン)と再会する。
2人は共に武術学校で修行した間柄だが、どうやら任賢齊はこちらのことを覚えていない様子。とりあえず楊紫瓊は彼に盗聴器を仕掛け、警察の動向を伺いながら悪党退治に勤しんでいった。
だが、一方でルーク・ゴス率いる悪の組織が世界征服を目論み、密かに動き出そうとしていた。連中は人工知能を開発した科学者・陳大明を誘拐。本拠地のあるゼンダシティ(日本)に飛び、任賢齊もこれを追った。
続いて、組織は楊紫瓊の叔父であり大手企業の社長・岩城滉一の娘を連れ去り、とある携帯端末の開発を強要する。彼らは人工知能プログラムを応用した洗脳装置を作り、携帯端末を介して人類の支配を目論んでいたのだ。
これに立ち向かう楊紫瓊であったが、敵はなかなか手強く返り討ちに。その過程で任賢齊に正体がばれてしまい、一時は険悪な関係となってしまう。
だが、陳大明のメッセージを受け取った助手・張卓楠の努力が実り、シルバーホークと警官隊は敵の本拠地に突入する。果たして、再び手を組んだ楊紫瓊と任賢齊は、巨悪を倒すことが出来るのだろうか!?
本作は楊紫瓊が『007 トゥモロー・ネバー・ダイ』で世界進出し、ハリウッドへの上陸が目前に迫っていた頃に撮られた作品です。彼女は製作総指揮も兼任しており、『レジェンド/三蔵法師の秘宝』に次ぐ第2弾として製作されました。
『レジェンド』は楊紫瓊が宝探しを繰り広げる『トゥームレイダー』チックな映画でしたが、本作ではアメコミヒーローのムーブメントに便乗。映像派の馬楚成(ジングル・マ)を監督に迎え、スタイリッシュな画作りを追求しています。
しかし、実際の内容は90年代の作品かと思ってしまうほど古臭く、ありきたりな設定と既視感あふれるストーリーには何の新鮮味もありません。楊紫瓊もかなりの無茶をしており、任賢齊の妹分という役柄は流石に無理がありすぎます(苦笑
一応、馬楚成による白を基調とした画作りはなかなか良い感じで、近未来的な雰囲気を出すことに成功してはいます。ただ、岩城と誘拐事件の結末が描かれなかったりと、そこかしこでストーリーの粗が目に付きました。
アクションについては、『東京攻略』の薛春[火韋](アイレン・シット)が武術指導を担当し、一定の水準を保っています。が、スタイリッシュな立ち回りに固執した結果、荒々しさや生の迫力が消失。おかげで何とも味気ない物になっているのです。
出演者は全員それなりに動けるし、楊紫瓊がマイケル・ジェイ・ホワイトらと絡むファイトはそこそこ面白いんですが、殺陣がベターというか特徴が無いというか…。個人的には、やたらと凝ったカメラワークにも鬱陶しさを感じてしまいました。
結果として、アメコミヒーローというより日本の特撮番組に近い作りとなり、そのセンスの古さも相まって珍品と化した本作。不思議なのは、どうして楊紫瓊は本作のようなコテコテのB級作品に入れ込んでいたのか?という点です。
これは完全な想像なのですが、ひょっとしたら楊紫瓊はハリウッド進出前に、“これからやれなくなる事”にチャレンジしたかったのではないでしょうか。確かにハリウッドへ行くのは役者にとって栄誉な事だし、成功すれば更なる高みを目指せます。
その反面、今までのような映画作りは不可能となり、ハリウッドという巨大なシステムに順応する必要がありました。成功したら自分好みの作品が作れるかもしれませんが、少なくとも香港にいた頃と同じことは出来なくなるはずです。
そこで楊紫瓊は、ハリウッドに本格参戦する前に“これからやれなくなる事”に挑んだのでしょう。おちゃらけた映画の製作総指揮も、ド派手なスーツに身を包んで舞うのも、話題作に便乗するのも、大女優となった今ではやれない事ばかりです。
本作を「楊紫瓊が好き放題やった俺様映画」と評するのは簡単ですし、実際にその通りだと思います。ただ、もしかするとその背景には、未来と過去に揺れる彼女の思いが込められていた…のかもしれませんね。
原題:飛鷹
英題:Silver Hawk
製作:2004年
●表向きは美しきセレブ、裏では悪と戦うシルバーホークとして活躍していた楊紫瓊(ミシェール・ヨー)は、あるとき昔馴染みの刑事・任賢齊(リッチー・レン)と再会する。
2人は共に武術学校で修行した間柄だが、どうやら任賢齊はこちらのことを覚えていない様子。とりあえず楊紫瓊は彼に盗聴器を仕掛け、警察の動向を伺いながら悪党退治に勤しんでいった。
だが、一方でルーク・ゴス率いる悪の組織が世界征服を目論み、密かに動き出そうとしていた。連中は人工知能を開発した科学者・陳大明を誘拐。本拠地のあるゼンダシティ(日本)に飛び、任賢齊もこれを追った。
続いて、組織は楊紫瓊の叔父であり大手企業の社長・岩城滉一の娘を連れ去り、とある携帯端末の開発を強要する。彼らは人工知能プログラムを応用した洗脳装置を作り、携帯端末を介して人類の支配を目論んでいたのだ。
これに立ち向かう楊紫瓊であったが、敵はなかなか手強く返り討ちに。その過程で任賢齊に正体がばれてしまい、一時は険悪な関係となってしまう。
だが、陳大明のメッセージを受け取った助手・張卓楠の努力が実り、シルバーホークと警官隊は敵の本拠地に突入する。果たして、再び手を組んだ楊紫瓊と任賢齊は、巨悪を倒すことが出来るのだろうか!?
本作は楊紫瓊が『007 トゥモロー・ネバー・ダイ』で世界進出し、ハリウッドへの上陸が目前に迫っていた頃に撮られた作品です。彼女は製作総指揮も兼任しており、『レジェンド/三蔵法師の秘宝』に次ぐ第2弾として製作されました。
『レジェンド』は楊紫瓊が宝探しを繰り広げる『トゥームレイダー』チックな映画でしたが、本作ではアメコミヒーローのムーブメントに便乗。映像派の馬楚成(ジングル・マ)を監督に迎え、スタイリッシュな画作りを追求しています。
しかし、実際の内容は90年代の作品かと思ってしまうほど古臭く、ありきたりな設定と既視感あふれるストーリーには何の新鮮味もありません。楊紫瓊もかなりの無茶をしており、任賢齊の妹分という役柄は流石に無理がありすぎます(苦笑
一応、馬楚成による白を基調とした画作りはなかなか良い感じで、近未来的な雰囲気を出すことに成功してはいます。ただ、岩城と誘拐事件の結末が描かれなかったりと、そこかしこでストーリーの粗が目に付きました。
アクションについては、『東京攻略』の薛春[火韋](アイレン・シット)が武術指導を担当し、一定の水準を保っています。が、スタイリッシュな立ち回りに固執した結果、荒々しさや生の迫力が消失。おかげで何とも味気ない物になっているのです。
出演者は全員それなりに動けるし、楊紫瓊がマイケル・ジェイ・ホワイトらと絡むファイトはそこそこ面白いんですが、殺陣がベターというか特徴が無いというか…。個人的には、やたらと凝ったカメラワークにも鬱陶しさを感じてしまいました。
結果として、アメコミヒーローというより日本の特撮番組に近い作りとなり、そのセンスの古さも相まって珍品と化した本作。不思議なのは、どうして楊紫瓊は本作のようなコテコテのB級作品に入れ込んでいたのか?という点です。
これは完全な想像なのですが、ひょっとしたら楊紫瓊はハリウッド進出前に、“これからやれなくなる事”にチャレンジしたかったのではないでしょうか。確かにハリウッドへ行くのは役者にとって栄誉な事だし、成功すれば更なる高みを目指せます。
その反面、今までのような映画作りは不可能となり、ハリウッドという巨大なシステムに順応する必要がありました。成功したら自分好みの作品が作れるかもしれませんが、少なくとも香港にいた頃と同じことは出来なくなるはずです。
そこで楊紫瓊は、ハリウッドに本格参戦する前に“これからやれなくなる事”に挑んだのでしょう。おちゃらけた映画の製作総指揮も、ド派手なスーツに身を包んで舞うのも、話題作に便乗するのも、大女優となった今ではやれない事ばかりです。
本作を「楊紫瓊が好き放題やった俺様映画」と評するのは簡単ですし、実際にその通りだと思います。ただ、もしかするとその背景には、未来と過去に揺れる彼女の思いが込められていた…のかもしれませんね。