功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

『シルバーホーク』

2017-04-22 12:19:42 | 女ドラゴン映画
「シルバーホーク」
原題:飛鷹
英題:Silver Hawk
製作:2004年

●表向きは美しきセレブ、裏では悪と戦うシルバーホークとして活躍していた楊紫瓊(ミシェール・ヨー)は、あるとき昔馴染みの刑事・任賢齊(リッチー・レン)と再会する。
2人は共に武術学校で修行した間柄だが、どうやら任賢齊はこちらのことを覚えていない様子。とりあえず楊紫瓊は彼に盗聴器を仕掛け、警察の動向を伺いながら悪党退治に勤しんでいった。
 だが、一方でルーク・ゴス率いる悪の組織が世界征服を目論み、密かに動き出そうとしていた。連中は人工知能を開発した科学者・陳大明を誘拐。本拠地のあるゼンダシティ(日本)に飛び、任賢齊もこれを追った。
続いて、組織は楊紫瓊の叔父であり大手企業の社長・岩城滉一の娘を連れ去り、とある携帯端末の開発を強要する。彼らは人工知能プログラムを応用した洗脳装置を作り、携帯端末を介して人類の支配を目論んでいたのだ。
 これに立ち向かう楊紫瓊であったが、敵はなかなか手強く返り討ちに。その過程で任賢齊に正体がばれてしまい、一時は険悪な関係となってしまう。
だが、陳大明のメッセージを受け取った助手・張卓楠の努力が実り、シルバーホークと警官隊は敵の本拠地に突入する。果たして、再び手を組んだ楊紫瓊と任賢齊は、巨悪を倒すことが出来るのだろうか!?

 本作は楊紫瓊が『007 トゥモロー・ネバー・ダイ』で世界進出し、ハリウッドへの上陸が目前に迫っていた頃に撮られた作品です。彼女は製作総指揮も兼任しており、『レジェンド/三蔵法師の秘宝』に次ぐ第2弾として製作されました。
『レジェンド』は楊紫瓊が宝探しを繰り広げる『トゥームレイダー』チックな映画でしたが、本作ではアメコミヒーローのムーブメントに便乗。映像派の馬楚成(ジングル・マ)を監督に迎え、スタイリッシュな画作りを追求しています。
 しかし、実際の内容は90年代の作品かと思ってしまうほど古臭く、ありきたりな設定と既視感あふれるストーリーには何の新鮮味もありません。楊紫瓊もかなりの無茶をしており、任賢齊の妹分という役柄は流石に無理がありすぎます(苦笑
一応、馬楚成による白を基調とした画作りはなかなか良い感じで、近未来的な雰囲気を出すことに成功してはいます。ただ、岩城と誘拐事件の結末が描かれなかったりと、そこかしこでストーリーの粗が目に付きました。

 アクションについては、『東京攻略』の薛春[火韋](アイレン・シット)が武術指導を担当し、一定の水準を保っています。が、スタイリッシュな立ち回りに固執した結果、荒々しさや生の迫力が消失。おかげで何とも味気ない物になっているのです。
出演者は全員それなりに動けるし、楊紫瓊がマイケル・ジェイ・ホワイトらと絡むファイトはそこそこ面白いんですが、殺陣がベターというか特徴が無いというか…。個人的には、やたらと凝ったカメラワークにも鬱陶しさを感じてしまいました。
結果として、アメコミヒーローというより日本の特撮番組に近い作りとなり、そのセンスの古さも相まって珍品と化した本作。不思議なのは、どうして楊紫瓊は本作のようなコテコテのB級作品に入れ込んでいたのか?という点です。

 これは完全な想像なのですが、ひょっとしたら楊紫瓊はハリウッド進出前に、“これからやれなくなる事”にチャレンジしたかったのではないでしょうか。確かにハリウッドへ行くのは役者にとって栄誉な事だし、成功すれば更なる高みを目指せます。
その反面、今までのような映画作りは不可能となり、ハリウッドという巨大なシステムに順応する必要がありました。成功したら自分好みの作品が作れるかもしれませんが、少なくとも香港にいた頃と同じことは出来なくなるはずです。
 そこで楊紫瓊は、ハリウッドに本格参戦する前に“これからやれなくなる事”に挑んだのでしょう。おちゃらけた映画の製作総指揮も、ド派手なスーツに身を包んで舞うのも、話題作に便乗するのも、大女優となった今ではやれない事ばかりです。
本作を「楊紫瓊が好き放題やった俺様映画」と評するのは簡単ですし、実際にその通りだと思います。ただ、もしかするとその背景には、未来と過去に揺れる彼女の思いが込められていた…のかもしれませんね。

『ビリー'S GUN & FIGHT!』

2017-04-11 21:10:15 | マーシャルアーツ映画:中(2)
「ビリー'S GUN & FIGHT!」
原題:TOUGH AND DEADLY
製作:1995年

●『エクスペンダブルズ』の登場によって、古き良き時代のアクションスターを再評価する機運が高まり、多くの格闘俳優たちが再起を果たしました。ドルフ・ラングレンやゲイリー・ダニエルズは、その恩恵を受けた代表例と言えるでしょう。
90年代に活躍したブラックドラゴンたちもその例に漏れず、最新作の『The Recall』が公開間近となったウェズリー・スナイプス、スコット・アドキンスとの共演作に期待が高まるマイケル・ジェイ・ホワイトなどは、今も元気に活躍しています。
 しかし、彼らと同世代のブラックドラゴンだったビリー・ブランクスは、その潮流に思いっきり乗り遅れてしまいました。エクササイズで一世を風靡し、日本のバラエティ番組に出演したのも遠い昔…ブームが去った今では誰も覚えていません。
今でも母国で俳優活動は続けていますが、最近の出演作はドラマやホラーが中心となっており、アクション映画への出演は実質ゼロ。インストラクターの仕事が忙しいのでしょうが、かつての勇姿を知る身としては一抹の寂しさを感じてしまいます。

 さて本作は、まだビリーの人気が日本でギリギリ保たれていた頃、『ビリー'S KARATE MAN』と共にリリースされた作品です。格闘押しだった『KARATE MAN』に対し、こちらはサスペンス仕立てのアクション映画となっていました。
物語は今回もB級感丸出しで、記憶喪失となった謎の男(ビリー)がロディ・パイパーを巻き込み、ギャングと組んだCIAの裏切り者と戦う!というもの。敵の1人にはリチャード・ノートンが扮しており、なかなか豪華な顔ぶれが揃っています。
しかしストーリーはゴチャゴチャしていて散漫だし、軍の武器庫の警備が手薄すぎたりとツッコミどころが満載。小杉十郎太氏のムチャクチャな日本語吹替えも、今となっては別の意味で笑えました(爆
 一方、アクションはそれなりに勢いがあり、主演のビリーとロディは方々で立ち回りを見せています。注目はやはりビリーVSロディ、そしてVSノートンといったマッチメイクですが、こちらはあまり納得のいく内容ではありません。
VSロディでは演出がコミカル寄りで、対決というよりもドタバタ感が強めでした。VSノートンでは激しい殴り合いが繰り広げられるものの、肝心のノートンはクライマックス前に退場してしまいます。
おかげでラストバトルは強敵不在のまま進行し、どうにも締まりの悪い印象を残してました。ここは中盤で消化してしまったジェームズ・リューか、ノートンを温存してラスボスにして欲しかったなぁ…。
そんなわけで格闘アクションを沢山見たいなら『KARATE MAN』、ビリーと格闘俳優たちとの絡みを楽しむなら本作がオススメ。ただし、2本一緒に見るとどっちがどっちだか解らなくなるので、一気見は禁物です(笑

『破門組』

2017-04-06 18:38:23 | 日本映画とVシネマ
「破門組」
「破門組 仁義なき戦争」
製作:2015年

●横浜で市原会を率いていた堀田真三は、敵対する山王会系田所組の組長を討つべく、組古参の幹部を差し向けた。だが、銃弾は居合わせた山王会の直参組織・藤堂組の組長に命中し、襲撃は失敗に終わってしまう。
古参幹部は自分の命でケジメを付け、組頭である原田龍二も組を守るために責任を取って、自ら破門される道を選んだ。その際、部下の川本淳市・松田優・木村圭作・宮本大誠が彼に付き従い、ここに“破門組”が結成される事となる。
 しかし藤堂組は一連の事態を利用し、堀田から横浜のシマをすべて奪い取った。九州の侠客・仁支川峰子からのタレコミで真相を知った堀田は、原田に事態の収拾を命じる。かくして、破門組による一大復讐劇が幕を開けるのだった。
田所組組長を拷問して真相を聞き出し、藤堂組の野望を見抜いた原田たちは、藤堂組若頭・大沢樹生と接触する。彼は今回の一件とは無関係だったが、筋の通らない話に思う所があったらしく、それとなく藤堂組組長の予定を流してくれた。
そんな中、原田は古参幹部の娘・中丸シオンと再会するが、彼女は父親の仇が彼であると思い込んでいた。腹部を刺され、それでも一切弁解せずに去っていく原田。そして遂に藤堂組との決戦が始まるも、そこに大沢が立ちはだかる…!

 なんとも魅力的なキャストに惹かれて視聴してみましたが、これがまた痛快な任侠アクションに仕上がっていました。内容は少数精鋭が仇敵を討つというもので、何となく『極道おとこ塾』(そういえばこっちにも松田が出演!)を思い出させます。
ただしルーチンワークの域を出ていなかった『おとこ塾』に対し、本作は敵の思惑やヒロインとの確執を交えることでドラマ面を補強。個性的なキャストを揃え、それなりに趣向を凝らしている点が伺えました。
 その一方で、原田と4人の仲間たちの関係があまり描写されておらず、「破門されてまで一蓮托生するほどの仲なのだろうか?」と思わざるを得ません。
側近だった川本、ひと悶着あった松田はまだ解るものの、木村と宮本については初登場が破門組の結成時なので、どういうった背景があるのか全く掴めないのです。最後まで組に殉じる大沢など、他のキャストの描写については良い感じなんですが…。

 そんなわけでストーリー展開にちょっとした難のある本作ですが、アクションは『武勇伝』『クローズZERO』の辻井啓司が指導しているため、ラストバトルは迫力のファイトが拝めます。
特に松田のタイマン勝負、原田VS大沢のナイフ合戦は最大の見どころで、どちらも軽快かつ伸びやかな立ち回りを披露。残念ながら格闘戦はラストだけで、川本の殺陣が一切無いという問題を抱えていますが、この2大バトルはなかなか見応えがありました。
なお、続編には『バトルロード2』の三元雅芸(!)も出ているらしく、破門組がどのような激闘を繰り広げるのか非常に気になります。こちらについては近い内に視聴できそうなので、いずれ紹介してみたいですね。

更新履歴(2017年/3月)

2017-04-04 21:55:10 | Weblog
 3月はKSSの映画やVシネマを追って来ましたが、思ったよりもアバンギャルドな作品が多く、その内容には面喰ってしまいました(苦笑)。とはいえ、混沌とした内容や手作り感あふれるアクションからは、どこか怪しげな魅力のような物を感じます。
私としては、今後もこうした作品と出会っていきたいと思っていますが、残念ながら今月は小休止。月ごとの特集はいったんお休みして、久々にテーマ無しのフリーなレビューをお送りする予定です。
しかし小休止といっても、今年は10の特集をお送りする予定なので、こうした期間が設けられるのは1年を通してたった2ヶ月だけ。最近見た注目作などの紹介は、この間にどうにか済ませたいと考えています(汗
もちろん、来月以降も新たな特集を組んでいきますので、それまでどうかお待ち下さい!


03/02 更新履歴(2017年/2月)
03/05 KSS発・格闘セレクション(1)『Bird's Eye バーズ・アイ』
03/12 KSS発・格闘セレクション(2)『闇の天使 DREAM ANGEL』
03/15 KSS発・格闘セレクション(3)『疾風 Basement Fight』
03/20 KSS発・格闘セレクション(4)『無人島物語 BRQ』
03/31 KSS発・格闘セレクション(終)『男たちの遊戯』