功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

※重要なお知らせ※

2011-03-19 23:03:57 | Weblog
 去る3月11日、東北と関東地方を中心に大規模な地震が発生し、各地で甚大な被害を及ぼしています。私は最初の第一報を勤務中にラジオで知ったのですが、次々と報じられる被害状況に愕然としました。被害は東北から都心部にまで及び、今も余震や二次災害が続いています。
そんな中で突然のお知らせですが、気持ちの整理を付けるため暫くブログを「休止」したいと思います。功夫電影専科は4月中旬を目処に再起動させたいと考えておりますので、どうかご理解の程を宜しくお願い致します(なお、コメントやメールは通常通り返信していきます)。
そして最後になりましたが、一日も早い被災地の復興と皆様のご無事を、心より願っております。


管理人:龍争こ門

『ブルージーン・コップ』

2011-03-10 23:56:50 | マーシャルアーツ映画:下
「ブルージーン・コップ」
原題:Death Warrant
製作:1990年

●前回までは香港映画の監獄映画を見てきましたが(といっても実質2本だけですが・爆)、今回からはマーシャルアーツ映画における監獄アクションに迫ります。そもそも監獄アクションというのはハリウッドスターの必須科目みたいなもので、大概のB級アクションスターはみんな檻の中で戦っています。このジャン=クロード・ヴァン・ダムも何度かムショ暮らしをした経験があり(もちろん映画の中で)、今回はその中から全盛期の彼が活躍する本作をピックアップしてみました。
ところで、監獄アクション系の格闘映画というのは大抵似たような要素が絡んできます。主人公は無実の罪か潜入捜査でムショに来た人物で、悪役として立ちはだかるのは悪徳署長と卑劣な牢名主。拷問でボコボコにされたり相部屋の仲間が死ぬなどして、最後は囚人が暴動を起こして悪党は倒れる…というのがよくある流れです。香港映画では一筋縄ではいかない場合もありますが、格闘映画だと大方こんな感じで進みます。もちろん本作も例外ではなく、この王道パターンを辿っていました。

 刑務所で起きる不可解な囚人の死を解明すべく、ロス市警のヴァンダム刑事は獄中への潜入捜査を任されることとなった。仲間のシンシア・ギブと連絡を取りつつ、孤独な情報収集に励んでいくヴァンダム。最終的に模範囚であるロバート・ギラウムらの協力によって、この刑務所で囚人の臓器が売買されていることを突き止めた。
だが、ヴァンダムのいる刑務所へパトリック・キルパトリックが収監されたことにより事態は急転する。かつてパトリックはヴァンダムに倒された過去を持ち、並々ならぬ恨みを抱いていたのだ。ヴァンダムの正体をバラし、囚人たちに彼を襲わせようとするパトリックに対し、ヴァンダム怒りの回し蹴りが火を吹いた!
 …という話なんですが、ご覧の通り先述のストーリーラインを忠実に添っています。あとは刑務所内での苦闘とアクションの派手さが作品の価値を決めるのですが、本作は特別スゴいような作品にはなっていませんでした。
本作における囚人たちの描写はかなりラフで、ギターを持ってる奴や個室で自由気ままに暮らしている奴がいたりと、刑務所特有の殺伐さは息を潜めています。看守による横暴もあまり描かれておらず、悪役に関しても非常に中途半端。このへんは徹底した描写にしてもらいたかったです。

 そして格闘アクションについてですが、こちらはヴァンダムの繰り出す蹴り技が華麗なだけで、見どころとなりうるバトルは前半のVSアル・レオン戦のみ。ラスボスとして闘うパトリックはあまり動ける人ではないようで、凶器を持ち出したりとこれも中途半端な出来となっていました。このラストバトルは流れが非常に悪く、時には期せずして失笑してしまうような場面も見受けられます。
例えば、ヴァンダムがパトリックを探して「俺はここだー!」とポージングしている所へ不意打ちを喰らったり、ヴァンダムの蹴りを受けたパトリックが自分で開けた溶鉱炉の中に落ちたり、復活したパトリックがたった一発のキックで撃沈したり…。特に溶鉱炉へ蹴り落とされるシーンは、ご丁寧にパトリックが落ちやすい位置で堂々とスタンバイしているのが見どころです(笑
刑務所生活におけるフラストレーションと、それが爆発するクライマックスのカタルシス。監獄アクションはこれが必要不可欠なのですが、本作に関しては不発だったように感じました。ちなみにヴァンダムはもうひとつ『HELL ヘル』という監獄ものに主演していますが、こちらはハードなアクション映画だそうです。当方は今のところ未見ですが、ヴァンダムの新境地ともいえるシリアス演技が見られるようなので、いずれは視聴したいと思っています。

『炎の大捜査線2』

2011-03-06 23:06:25 | カンフー映画:珍作
「炎の大捜査線2」
原題:火燒島之横行覇道
英題:The Jail in Burning Island/The Jailbreakers
製作:1997年

▼大スターを集めて作られた『炎の大捜査線』ですが、その背後には複雑な事情が渦巻いていました。ジャッキーも劉華も大変な目に遭ったとのことですが、それについては監督した朱延平(チュー・イェンピン)も同様の状況だったと思われます。そんな朱延平が7年の歳月を経て製作した続編が本作で、色々と周囲が騒がしかった前作とは違って今回は彼の思いがダイレクトに炸裂した1本となっています。
ただし続編と言ってもストーリーに繋がりは無く、共通点は舞台が同じ刑務所・火燒島であるということだけ。前作ではジャッキーなどの大物俳優が鳴り物入りで起用されていましたが、本作では朱延平作品の役者のみでキャストが固まっています。また、前作では火燒島の不正を暴くことが主人公の目的となっていた一方で、本作は特に目的らしい目的が無いまま話が進んでいきます。これではちょっと歯ごたえが無いように思えるかもしれませんが、各キャラクターのエピソードはより刺激の強いものに変わっていました。

■物語は大勢の囚人たちが火燒島に収容されてくる所から始まる。賭けボクサーだった呉奇隆(ニッキー・ウー)は家族に恵まれていたが、八百長試合を持ち掛けてきたマフィアと銃撃戦を繰り広げたために獄中へ。正義感の強い刑事である金城武は、麻薬組織との抗争で潜入捜査中の同僚を殺してしまい、更にチンピラを殺めてしまい火燒島へ。趙自強はアル中のどうしようもない男で、世間に居場所が無いため塀の向こうと中を行ったり来たりしている。呉孟達はシャバで待っている妻のために一日も早い出所を願っているのだが…。
本作はこれら主要人物に加え、刑務所にいながら外の麻薬市場を牛耳る大物・樓學賢(ジャクソン・ルー)、彼の市場を奪おうと企む悪徳署長・黄秋生(アンソニー・ウォン)らを主軸にストーリーが展開します。当初、呉奇隆・金城・趙自強の3人は反目したりするものの、樓學賢の暗殺未遂事件で彼を救ったことにより、互いに信頼しあう関係を築き上げていきます。本作は中盤まではシリアスな雰囲気の中でもホッとするような場面が見られますが、後半からは一転してダークな展開が襲い掛かります。
 出所が目前に迫った趙自強は「外には何も無い、ここにいた方がよっぽど楽しい!」と訴えるも、生き別れていた妹と再会したことで人並みの生活に思いを馳せます。しかし妹の家族からは疎んじられ、結局は世間に居場所が無いと悟った彼は酒場で殺人を犯し、ピストルの銃口を自分へと向け…。また、呉孟達も妻が弁護士と駆け落ちしたことにより自暴自棄となり、呉奇隆と共に脱獄しようとして蜂の巣にされてしまいます。
そして金城は黄秋生から「俺に従って樓學賢のシマを奪わなければ刑期を伸ばすぞ」と脅迫され、知的障害者になったフリをして事態を切り抜けます(このシーンはファンには衝撃的かも)。樓學賢もまた黄秋生から狙われ、レクリエーションの格闘戦で全ての決着をつけようと申し出るのですが…?

▲この後、ラストはとんでもなく強引な展開を見せるのですが、さすがに『炎の大捜査線』ほどのインパクトはありません。むしろ突然すぎて「えっ!?」と思ってしまうような流れになり、今まで積み重ねてきたストーリーを吹き飛ばすようなラストには呆気に取られてしまいました(苦笑
とはいえ、趙自強と呉孟達が担当する悲惨なエピソードは沈痛な印象を残しますし、これまで情けない役回りが多かった樓學賢が演じる渋いキャラクターも本作に深みを与えています。ですが、金城が知的障害者を演じるシークエンスはいささか唐突すぎますし、呉奇隆ともども主人公でありながらパッとしないまま終わるのは非常に勿体ないと思いました(黄秋生が単なる悪徳署長でしかないのも×)。
 また、キャストの規模に合わせてアクション面も控えめで、本作における主なアクションシーンは呉奇隆が見せるファイトとラストバトルのみ。見せ場が集中しているおかげで功夫アクションの質は良く、呉奇隆が放つ回し蹴りはとても豪快に見えました。でも、ジャッキーアクションから夢の対決から銃撃戦まであった前作と比べると、さすがにレベルの低下は否めません。
そんなわけで全体的にスケールダウン著しい本作ですが、最後の最後で朱延平が『炎の大捜査線』で本当に望んでいたものが何だったのか解った気がしました。全てが決着し、囚人の黄一飛(ウォン・ヤッフェイ)が語り終えたところでカメラが向きを変えるのですが、ココでこれまでの陰鬱な物語を払拭するオチが待ち構えています。主要キャストのほとんどが死亡し、重苦しい雰囲気のまま終幕していた前作とまったく違う結末ですが、本来は朱延平もジャッキーたちの笑顔で映画を締めくくりたかったのではないでしょうか……って、さすがにそれは深読みしすぎかな?

『炎の大捜査線』

2011-03-03 23:41:00 | 成龍(ジャッキー・チェン)
「炎の大捜査線」
原題:火燒島
英題:Island of Fire
製作:1990年

▼今月は監獄アクション系の作品尽くしでお送りしますが、そのトップバッターを飾るのは香港の著名人たちが結集して作られた本作です。実を言いますと、この『炎の大捜査線』は今回取り上げる作品の中でも問題作中の問題作でして…というか、本作の存在が一番突出していると言うべきでしょうか(汗
ご存知の方も多いと思いますが、本作は『ドラゴン特攻隊』と同じ経緯で作られた作品で、香港と台湾映画界の暗部を象徴するかのようなブラックすぎる代物です(製作背景については割愛)。ただ、ストーリー展開は『ドラゴン特攻隊』と通じる部分があるものの、出演者たちの熱演によって随分と救われている感があります。あまりに暗いストーリーのため、ジャッキーのファンからは厳しい評価を受けていますが、役者たちの気合の入った演技はとても見応えがありました。

■警察官の梁家輝(レオン・カーフェイ)は、警察長官暗殺事件の犯人が死亡した死刑囚だと知り、死刑囚が収監されていた刑務所・火燒島への潜入捜査を試みる事となった。火燒島にはシャバにいる息子へ会おうと脱獄に励むサモハンなど、多種多様な受刑者たちがいる。梁家輝は懲罰房から出てきたジミー先生に目を付けられるが、看守の嫌がらせを庇ったことで2人の間に信頼関係が生まれることとなる。
次にムショ入りしてきたのは、恋人の手術費用を得ようとして人を殺してしまったジャッキーだった。彼が殺した男は黒社会の大物・劉華(アンディ・ラウ)の弟で、劉華の派閥に属していた囚人(筋肉質の男はショウブラ作品にも出演していた楊雄、帽子の男は『ボディガード牙/修羅の黙示録』に出演していた高捷)がジャッキーの命を狙った。この争乱はジミー先生の取り成しで収まったが、サモハンを利用した看守長によってジミー先生は殺されてしまう。
その後、3度目の脱獄に失敗したサモハンは死刑、弟の仇を討つために来た劉華とジャッキーは看守長への暴行により懲罰房送り、梁家輝も相部屋の友人を殺した看守長を殺害した罪で死刑となった…はずだった。だが彼らは生きていた。刑務所署長の柯俊雄(オー・ジョンホン)は、死刑囚をヒットマンとして裏で密かに利用していたのである。彼の命令で梁家輝・ジャッキー・劉華・サモハンの4人は、シンガポールの麻薬王を暗殺する任務に就くのだが…。

▲全体的にちぐはぐなトーンで作られた作品ですが、本作は『ドラゴン特攻隊』にあった荒唐無稽さが排除されていて、個々のエピソードも実に洗練された内容となっています。父親としての悲哀を感じさせるサモハン、恋人を傷つけられ絶望のどん底に沈んでいくジャッキー、弟の仇を土壇場で助けに行ってしまう劉華…ちょっと梁家輝の存在感が薄い気がしますが、それぞれが抱える思いや苦悩など、演技面で見入ってしまう描写が多かった気がします(ジミー先生には別の意味で見入ってしまいました・爆)。
アクションシーンにおける見せ場もきちんと作られていて、なにげにジャッキーVS劉華というドリームマッチが初めて実現したのが本作だったりします。クライマックスはシンガポールでの銃撃戦となりますが、ここでもそれぞれの役割に応じたアクションシーンと演技が振り分けられていました。ところでこの銃撃戦、活躍しているのはジャッキーとサモハンと劉華ばかりで、梁家輝はほとんど出てきません。もしかしてこのシーン、梁家輝の撮影スケジュールが調整できなかったのかな?
全体の感想としては、香港を代表するスターたちの卓越した演技力が見られる反面、『ドラゴン特攻隊』のような笑って許せる面白さが減ったため、見る人を選ぶ作品といった風体の本作。のちに一部のスタッフが本作の流れを引き継いで続編を発表しますが、それについては次回の更新にて!