「魔界転生」
英題:Samurai Resurrection
製作:1981年
▼日本における格闘アクション映画の第一人者にして、今もなお精力的な活動を続ける千葉真一。そんな彼が設立したJAC(ジャパン・アクション・クラブ)にとって、80年代は全盛期といえる時代でした。
『戦国自衛隊』でスタント表現を極めていた千葉とJACは、新進気鋭のニューフェイス・真田広之の主演作を連発。その路線は『里見八犬伝』で最高潮を迎え、TVでは特撮ヒーローや『影の軍団』シリーズが人気を博します。
多くのスターを擁した彼らは、やがてJACアクションの集大成となる『将軍家光の乱心 激突』を手掛けますが、本作はアクション推しの作品とは一線を画す内容に仕上がっているのです。
■島原の乱で大勢のキリシタンとともに処刑された天草四郎時貞(沢田研二)が蘇った。彼は神を見限り、魔界の力を借り受けることで秘術・魔界転生を会得。この世に未練を残して死んだ者たちを復活させ、徳川幕府への復讐を目論んだ。
手始めに彼は、細川ガラシャ(佳那優子)を徳川家綱の元に送り込み、彼を骨抜きにして政権を揺るがせる。さらに作物に呪いをかけて民衆を惑わし、幕府に反旗を翻すよう仕向けていった。
一方、沢田ら魔界衆の動きを察知した千葉であったが、父・柳生但馬守(若山富三郎)までもが敵に回ってしまう。千葉は刀鍛冶の丹波哲郎に依頼し、化物退治の妖刀を製造。彼や魔界に魅入られた真田の死を乗り越え、遂に全面対決の時を迎える。
剣豪・宮本武蔵(緒方拳)を下した千葉は、燃え盛る江戸城で最後の決戦を挑んだ。果たして勝敗の行方は、そして沢田との決着は…!?
▲長編小説の映画化だけあって、本作はキャラクターを切り詰めてストーリーの再構成を敢行。そのせいか冷静に見てみると、真田が活躍するパートは本筋から浮いているし、ラストも投げっぱなしなオチとなっていました。
とはいえ、深作欣二監督による演出は一切の妥協がなく、山田風太郎の世界観を圧倒的な暴力と迫力で表現しています。特筆すべきは出演者たちの見せる存在感で、誰も彼もが独特の妖気を漂わせているのです。
妖艶さすら感じさせる沢田、野性味あふれる千葉、淫靡さと狂気を兼ね備えた佳那、もはや怪物としか言えない緒方などなど…。中でも柳生但馬守を熱演した若山富三郎は、影の主人公と呼んでも差し支えありません。
物語前半で転生した彼は、これを境に人間らしい仕草をしなくなり、化け物じみた挙動で千葉に迫ります。その立ち振る舞い、アクションでの動作などは完全に人間のそれではなく、本当に魔界転生したんじゃないかと思うほどのものでした(爆
クライマックスの江戸城決戦では、『子連れ狼』でも見せた抜群の運動神経を生かし、年老いた外見からは想像もつかないほど軽快な殺陣を披露。最後のVS千葉では、2人のやり取りや劇的な決着など、インパクト抜群の名勝負となっています。
この他、方々で見せる真田の華麗な立ち回りや、緊張感に富んだ千葉VS緒方など、アクションの見せ場も少なくない本作。しかし役者たちによる“存在感の激突”が凄まじく、邦画史に残るアクション大作であることは明々白々と言えるでしょう。
さて、二か月に渡ってお送りした「メジャー大作を振り返る」も次回でいよいよ最終回。最後はド派手な作品で――と思いましたが、ここは敢えて蟷螂拳を駆使する刑事アクションをレビューしてみる予定です!
英題:Samurai Resurrection
製作:1981年
▼日本における格闘アクション映画の第一人者にして、今もなお精力的な活動を続ける千葉真一。そんな彼が設立したJAC(ジャパン・アクション・クラブ)にとって、80年代は全盛期といえる時代でした。
『戦国自衛隊』でスタント表現を極めていた千葉とJACは、新進気鋭のニューフェイス・真田広之の主演作を連発。その路線は『里見八犬伝』で最高潮を迎え、TVでは特撮ヒーローや『影の軍団』シリーズが人気を博します。
多くのスターを擁した彼らは、やがてJACアクションの集大成となる『将軍家光の乱心 激突』を手掛けますが、本作はアクション推しの作品とは一線を画す内容に仕上がっているのです。
■島原の乱で大勢のキリシタンとともに処刑された天草四郎時貞(沢田研二)が蘇った。彼は神を見限り、魔界の力を借り受けることで秘術・魔界転生を会得。この世に未練を残して死んだ者たちを復活させ、徳川幕府への復讐を目論んだ。
手始めに彼は、細川ガラシャ(佳那優子)を徳川家綱の元に送り込み、彼を骨抜きにして政権を揺るがせる。さらに作物に呪いをかけて民衆を惑わし、幕府に反旗を翻すよう仕向けていった。
一方、沢田ら魔界衆の動きを察知した千葉であったが、父・柳生但馬守(若山富三郎)までもが敵に回ってしまう。千葉は刀鍛冶の丹波哲郎に依頼し、化物退治の妖刀を製造。彼や魔界に魅入られた真田の死を乗り越え、遂に全面対決の時を迎える。
剣豪・宮本武蔵(緒方拳)を下した千葉は、燃え盛る江戸城で最後の決戦を挑んだ。果たして勝敗の行方は、そして沢田との決着は…!?
▲長編小説の映画化だけあって、本作はキャラクターを切り詰めてストーリーの再構成を敢行。そのせいか冷静に見てみると、真田が活躍するパートは本筋から浮いているし、ラストも投げっぱなしなオチとなっていました。
とはいえ、深作欣二監督による演出は一切の妥協がなく、山田風太郎の世界観を圧倒的な暴力と迫力で表現しています。特筆すべきは出演者たちの見せる存在感で、誰も彼もが独特の妖気を漂わせているのです。
妖艶さすら感じさせる沢田、野性味あふれる千葉、淫靡さと狂気を兼ね備えた佳那、もはや怪物としか言えない緒方などなど…。中でも柳生但馬守を熱演した若山富三郎は、影の主人公と呼んでも差し支えありません。
物語前半で転生した彼は、これを境に人間らしい仕草をしなくなり、化け物じみた挙動で千葉に迫ります。その立ち振る舞い、アクションでの動作などは完全に人間のそれではなく、本当に魔界転生したんじゃないかと思うほどのものでした(爆
クライマックスの江戸城決戦では、『子連れ狼』でも見せた抜群の運動神経を生かし、年老いた外見からは想像もつかないほど軽快な殺陣を披露。最後のVS千葉では、2人のやり取りや劇的な決着など、インパクト抜群の名勝負となっています。
この他、方々で見せる真田の華麗な立ち回りや、緊張感に富んだ千葉VS緒方など、アクションの見せ場も少なくない本作。しかし役者たちによる“存在感の激突”が凄まじく、邦画史に残るアクション大作であることは明々白々と言えるでしょう。
さて、二か月に渡ってお送りした「メジャー大作を振り返る」も次回でいよいよ最終回。最後はド派手な作品で――と思いましたが、ここは敢えて蟷螂拳を駆使する刑事アクションをレビューしてみる予定です!