功夫電影専科

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功夫電影秘宝館(2)『チャイニーズ・ゴースト・ウエディング/霊幻花嫁』

2018-03-15 23:51:42 | 女ドラゴン映画
「チャイニーズ・ゴースト・ウエディング/霊幻花嫁」
「チャイニーズ・ゴースト・ウェディング/霊幻花嫁」
原題:倩女雲雨情/霊幻新娘
英題:Ghostly Love/Virgin
製作:1989年

▼今月はムフフでアダルティーなアクション三級片を追っていますが、本日は紹介の前にアクション監督である谷垣健治氏の著書「アクション映画バカ一代」に目を通してみましょう。
この本は、谷垣導演が香港映画界に飛び込んだ経緯や、『殺破狼』『新宿事件』『カムイ外伝』などの撮影エピソードが綴られた興味深い書籍で、その中に三級片に関する豆知識が書かれています。
 それによると、香港で作られるポルノ映画にアクションシーンがあるのは、審査基準の厳しい国で性的なシーンをカットされた際、アクション映画としても売れるようにするための工夫なのだそうです。
まぁ、さすがに前回の『ザ・香港エクスタシー』でこの手法は無理っぽいですが(笑)、今回紹介するのはそんな谷垣導演の証言を裏付ける作品なのです。キャストやスタッフも驚くほど豪華で、こちらは話を追いながら触れていきたいと思います。

■叔父に会うため旅をしていた惠天賜(オースティン・ワイ)は、一夜を明かすために立ち寄った古寺で壊れた骨壺を見付けた。彼はそれを綺麗に直して立ち去り、骨壺の主である女幽霊・朱寶意(エミリー・チュウ)は恩返しをしようと決意する。
そして宿屋に泊った惠天賜のもとに現れた彼女は、フェロモン全開の女主人(笑)に言い寄られている彼を助け、そのまま男女の仲となった。翌朝、いつの間にか消えていた朱寶意と街中で再会した惠天賜は、声をかけるが拒絶されてしまう。
 実は彼女は惠天賜の叔父の娘(朱寶意の二役)で、女幽霊の朱寶意はその姉だったのである。意中の男性と駆け落ちした姉の朱寶意は、見知らぬ地で病に倒れ、非業の死を遂げた末にあの古寺へ安置されていたのだ。
その夜、姉の朱寶意は自分が幽霊だと惠天賜に知られてしまうが、それでも彼は「君を愛している」と告げた。だが、魔王の龍天翔が彼女を虎視眈々と狙っており、逃れるには儀式で生き返るしかないという。
そこで惠天賜は、以前知り合った俗っぽい道士・龍冠武(マーク・ロン)や、事情を知った妹の朱寶意に協力を仰いだ。しかし、儀式の最中に乱入してきた龍天翔によって姉の朱寶意は誘拐され、惠天賜と龍冠武は奪回作戦に挑むのだが…!?

▲ストーリーや邦題を見れば一目瞭然ですが、本作は『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』の便乗作であり、特殊効果や演出も影響されまくっています(もちろん道士の龍冠武も踊りながら歌のようなものを唄います・爆)。
ただし配役についてはとても豪華で、王祖賢(ジョイ・ウォン)に当たる役を朱寶意が演じていますが、美しさという点では本家に負けていません。上記のほかに、冒頭で戦う剣士に林威(デビッド・ラム)、霊幻道士役に胖三(パン・サン)が扮しています。
 さらに驚いたことに、プロデュースを金長[木梁]との共同で郭南宏(ジョセフ・クォ)が受け持っており、製作には金長權とともに『幽幻道士』を手掛けた王知政の名まで確認できました。武術指導も程天賜だし、フォロワー三級片にしては凄まじい顔触れです。
不思議なのは、データベースサイトの香港影庫(HKMDB)に存在する本作のページに、郭南宏と王知政の表記がない点です。香港影庫では監督が呉國仁となっていますが、こちらは日本版ビデオで張傑(張人傑?)とされており、情報の食い違いが気になります。
とはいえ、劇中では飛んだり跳ねたりのアクションシーンが多く、光学合成や特殊効果もショボいなりに頑張っている様子が窺えました。残念ながら結末は尻切れトンボですが、アクション的には十分満足できる内容だったと言えます。

 一方、劇中では何度となくベッドシーンが挿入され、三級片としての機能は充分果たしています。日本からは伊藤さやか・岸本優美の両名が参戦しており、そちらの主役は彼女たちだったと言えるでしょう。
しかし、よくよく見ると一連のセクシー描写は作品の本筋に関わっておらず、飛ばして見てもストーリーに支障はありません。ヒロインである朱寶意についても、惠天賜とのラブシーンこそあるものの、抱き合うだけというソフトな描写に止まっています。
 これは谷垣導演が仰ったように、他国に売り込んだ際、検閲でカットされても問題がないようにしたものと思われます。ひょっとしたら、この世界のどこかに本作のエロ無しバージョンが存在する…のかもしれませんね。
アクションにエロス、そしてサプライズに満ちた意外な拾い物。それにしても、三級片にはやたらと日本人女優が起用されているイメージがあります。次回はそのへんの事情に触れつつ、またもや登場する意外な人物にも迫ってみたいと思います。

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