「八神康子/ザ・香港エクスタシー」
原題:獻身/献身
英題:Killing in the Nude
製作:1985年
▼さて今月は、お子様厳禁!女人禁制?なアダルト作品の中から、いまだDVD化もされていない未踏の功夫片たち(+α)をピックアップしていきましょう。
香港映画でアダルトというと、誰しも90年代に一大ブームを巻き起こした三級片を想像すると思います。しかし、ポルノや成人映画は古くから盛んに作られていて、かのショウ・ブラザーズでも『愛奴』『女集中營』などが製作されていました。
本作は香港でレーティングが導入される数年前、台湾の映画監督である李作楠(リー・ツォーナン)がメガホンを取った作品です。李作楠といえば功夫片の傑作を連発し、他にもニンジャやキョンシーなど様々なタイプの作品を手掛けてきました。
そんな彼がどうしてポルノ映画を撮ることになったのかは不明ですが、キャストには同年に監督した『摩登女性』の主演女優である金姫美、『野豹』で初主演を飾ることになる常山、『南北腿王』の彭剛など、李作楠に縁のある面々が揃っています。
さらに日本では86年に劇場公開(!)を果たしたそうですが、いくら古装片(時代劇)でもポルノはポルノ。アクションシーンの有る無しも含め、その内容が気になる所ですが…。
■名家の娘である金姫美は、恋人の徐玉模とひそかに密会していた。だが家の者たちに見つかり、妹である八神康子のすすめで駆け落ちを決意する。ところが徐玉模の正体は詐欺師であり、何も知らない金姫美は娼館に売り飛ばされてしまう。
娼館で生きていくしかなくなった金姫美は、女の技や舞踊などを仕込まれていくが、そこに憎き徐玉模が現れた。彼は売り飛ばした女のことなどすっかり忘れ、将軍の彭剛に取り入ろうと躍起になっているようだ。
しかも徐玉模は将軍の第三夫人・艾蒂の間男となっているらしく、これに激怒した金姫美は復讐を誓った。まず彼女は娼館の上客でもあった彭剛に近付き、料理人として将軍府に着任。徐玉模の企みは彭剛も察知しており、2人の小悪党は処断される事となる。
その後、将軍の第四夫人に納まった金姫美であったが、今度は若将軍の常山が彼女を狙い始めた。直情的な彼は強引なアプローチで迫り、ついには誘拐を計画。こちらは未遂で終わるものの、今度は金姫美の寝室へと押し入ってきた。
これに気付いた彭剛は剣を振るうが、若さとパワーで勝る常山に斬殺され、金姫美も舌を噛み切って夫の後を追った。残されたのは忠臣の荊國忠と、金姫美が産んだ将軍の遺児だけ…それを見た八神は、静かに復讐の炎を燃やしていく。
さらに悲劇は続き、八神と交際していた家庭教師・張佩華が、常山の手下に捕えられてしまう。すぐに処刑の日取りが決まり、牢屋に忍び込んだ八神は「今生の名残に…」と最後の一夜を過ごした。
かくして姉と恋人を失った八神は、娼館の女主人から“男の弱点となる秘孔”(←下ネタにあらず)を教わり、たった1人で仇討ちに乗り出した。彼女は妖艶な姿で常山を誘い、忍ばせていた鍼を構えるのだが…!?
▲80年代の李作楠は功夫片から脱却し、先述したように多彩なジャンルに挑戦し続けました。しかし、物語の妙とアクションのアンサンブルで傑作を生み出していた時期に比べると、後年の監督作はいささか精彩に欠けていた感があります。
本作も、どん底を味わった女のリベンジが主軸になるかと思いきや、前半で復讐はあっさり達成。主人公が途中で死亡し、ポッと出のカップルがメインになるという迷走っぷりを見せていました。
演出もかなり雑で、いきなり数ヶ月ほど経過して子供が生まれていたりと、唐突な展開が頻出します。ただし、これは日本公開版が一部のシーンをカットしているため(海外のデータベースや動画サイトによると日本版は10分ほど短い)なので、全長版を見れば印象が変わるかもしれません。
また、一方で李作楠らしい…とは言い切れないものの、ユニークな描写がいくつか見られます。例えば、功夫片では憎まれ役として描かれることが多い娼館の女主人というキャラクターが、本作では面倒見のいい女将さんとして設定されているのです。
復讐に燃える八神の身を案じたり、必殺の秘孔を伝授したりと、本作の女主人は好意的な存在として描かれています(このキャラ付けはちょっと面白い)。さらに台湾デブゴン・荊國忠が忠臣役を好演しており、脇役ながらも最後まで美味しい活躍を見せていました。
しかし私としては功夫アクションの方が気掛かりで、オープニングには武術指導のクレジットが見当たりません。「ひょっとしてアクションの無い作品なんじゃ…」と思っていましたが、中盤の常山VS荊國忠で杞憂だったことが発覚します。
そして、このキャストなら絶対あると思っていた彭剛VS常山もなかなかの接戦で、剣術もこなせる常山の技量に目を引かれました。ラストでは再び常山VS荊國忠が始まり、フンドシ一丁で蹴りを放つ常山の姿は女性ファンなら必見!かもしれませんね(苦笑
李作楠作品の醍醐味は感じられないものの、ポルノとしてはきちんと成立している佳作。まだまだサプライズに満ちた作品はありますが、次回はさらなるビッグネームが参加したオカルト古装片を紹介いたします!
原題:獻身/献身
英題:Killing in the Nude
製作:1985年
▼さて今月は、お子様厳禁!女人禁制?なアダルト作品の中から、いまだDVD化もされていない未踏の功夫片たち(+α)をピックアップしていきましょう。
香港映画でアダルトというと、誰しも90年代に一大ブームを巻き起こした三級片を想像すると思います。しかし、ポルノや成人映画は古くから盛んに作られていて、かのショウ・ブラザーズでも『愛奴』『女集中營』などが製作されていました。
本作は香港でレーティングが導入される数年前、台湾の映画監督である李作楠(リー・ツォーナン)がメガホンを取った作品です。李作楠といえば功夫片の傑作を連発し、他にもニンジャやキョンシーなど様々なタイプの作品を手掛けてきました。
そんな彼がどうしてポルノ映画を撮ることになったのかは不明ですが、キャストには同年に監督した『摩登女性』の主演女優である金姫美、『野豹』で初主演を飾ることになる常山、『南北腿王』の彭剛など、李作楠に縁のある面々が揃っています。
さらに日本では86年に劇場公開(!)を果たしたそうですが、いくら古装片(時代劇)でもポルノはポルノ。アクションシーンの有る無しも含め、その内容が気になる所ですが…。
■名家の娘である金姫美は、恋人の徐玉模とひそかに密会していた。だが家の者たちに見つかり、妹である八神康子のすすめで駆け落ちを決意する。ところが徐玉模の正体は詐欺師であり、何も知らない金姫美は娼館に売り飛ばされてしまう。
娼館で生きていくしかなくなった金姫美は、女の技や舞踊などを仕込まれていくが、そこに憎き徐玉模が現れた。彼は売り飛ばした女のことなどすっかり忘れ、将軍の彭剛に取り入ろうと躍起になっているようだ。
しかも徐玉模は将軍の第三夫人・艾蒂の間男となっているらしく、これに激怒した金姫美は復讐を誓った。まず彼女は娼館の上客でもあった彭剛に近付き、料理人として将軍府に着任。徐玉模の企みは彭剛も察知しており、2人の小悪党は処断される事となる。
その後、将軍の第四夫人に納まった金姫美であったが、今度は若将軍の常山が彼女を狙い始めた。直情的な彼は強引なアプローチで迫り、ついには誘拐を計画。こちらは未遂で終わるものの、今度は金姫美の寝室へと押し入ってきた。
これに気付いた彭剛は剣を振るうが、若さとパワーで勝る常山に斬殺され、金姫美も舌を噛み切って夫の後を追った。残されたのは忠臣の荊國忠と、金姫美が産んだ将軍の遺児だけ…それを見た八神は、静かに復讐の炎を燃やしていく。
さらに悲劇は続き、八神と交際していた家庭教師・張佩華が、常山の手下に捕えられてしまう。すぐに処刑の日取りが決まり、牢屋に忍び込んだ八神は「今生の名残に…」と最後の一夜を過ごした。
かくして姉と恋人を失った八神は、娼館の女主人から“男の弱点となる秘孔”(←下ネタにあらず)を教わり、たった1人で仇討ちに乗り出した。彼女は妖艶な姿で常山を誘い、忍ばせていた鍼を構えるのだが…!?
▲80年代の李作楠は功夫片から脱却し、先述したように多彩なジャンルに挑戦し続けました。しかし、物語の妙とアクションのアンサンブルで傑作を生み出していた時期に比べると、後年の監督作はいささか精彩に欠けていた感があります。
本作も、どん底を味わった女のリベンジが主軸になるかと思いきや、前半で復讐はあっさり達成。主人公が途中で死亡し、ポッと出のカップルがメインになるという迷走っぷりを見せていました。
演出もかなり雑で、いきなり数ヶ月ほど経過して子供が生まれていたりと、唐突な展開が頻出します。ただし、これは日本公開版が一部のシーンをカットしているため(海外のデータベースや動画サイトによると日本版は10分ほど短い)なので、全長版を見れば印象が変わるかもしれません。
また、一方で李作楠らしい…とは言い切れないものの、ユニークな描写がいくつか見られます。例えば、功夫片では憎まれ役として描かれることが多い娼館の女主人というキャラクターが、本作では面倒見のいい女将さんとして設定されているのです。
復讐に燃える八神の身を案じたり、必殺の秘孔を伝授したりと、本作の女主人は好意的な存在として描かれています(このキャラ付けはちょっと面白い)。さらに台湾デブゴン・荊國忠が忠臣役を好演しており、脇役ながらも最後まで美味しい活躍を見せていました。
しかし私としては功夫アクションの方が気掛かりで、オープニングには武術指導のクレジットが見当たりません。「ひょっとしてアクションの無い作品なんじゃ…」と思っていましたが、中盤の常山VS荊國忠で杞憂だったことが発覚します。
そして、このキャストなら絶対あると思っていた彭剛VS常山もなかなかの接戦で、剣術もこなせる常山の技量に目を引かれました。ラストでは再び常山VS荊國忠が始まり、フンドシ一丁で蹴りを放つ常山の姿は女性ファンなら必見!かもしれませんね(苦笑
李作楠作品の醍醐味は感じられないものの、ポルノとしてはきちんと成立している佳作。まだまだサプライズに満ちた作品はありますが、次回はさらなるビッグネームが参加したオカルト古装片を紹介いたします!
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