功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

『龍司 K1を目指した男』

2009-02-27 23:16:07 | 日本映画とVシネマ
「龍司 K1を目指した男」
製作:2007年

▼千葉真一の『けんか空手極真拳』三部作や『少林寺拳法』を例に出すまでも無く、日本には格闘伝記モノという作品がいくつか存在していました。ただし李小龍(ブルース・リー)の伝記映画のように多くの本数が作られた訳ではなく、量自体は微々たるものでしかありません。
本作はそんな格闘伝記モノの現代版といえる作品で、士道館の空手家である村上竜司を扱った物語です。しかし、私のような実際の格闘技の世界に疎い者にとって、村上がいかなる人物なのかは全く解らない…という訳で、その辺も含めてどのような作品か期待していました。

■時は70年代。岡崎礼(彼が村上竜司役)は札付きの不良だったが、刑事のジョニー大倉(!?)に諭されて空手道に開眼する。しかし何を始めればいいか解らないので、とりあえず当時人気沸騰だった『空手バカ一代』を全巻購入(笑)して自己流の修練に励む岡崎。だが、無軌道な暴力の果てに再びジョニーの世話になり、彼の口添えでようやく普通の空手道場に入門するのだった。
その後、高校を卒業した岡崎は友人に誘われて東京に行くが、今度はそこでヤクザ絡みのトラブルに首を突っ込んで大怪我を負ってしまう。「このままじゃワイはあかん!」と思った彼は、東京に出て本格的に空手に打ち込もうと意気込む。友人の梅宮哲と共に、上京を反対する父の与えた試練を突破した彼は、遂に念願の東京上陸を果たして士道館に入門を果たす。
だが、そこで待っていたのは更なる修行の日々、恩人・真樹日佐夫(演じるは小沢仁志だが真樹本人は別人役で出演)との邂逅、そしてライバルとの対決や運命の出会いの数々であった…。

▲と、要約すると何だか面白そうですが、実際の本作は非常に味気無い出来になっていました。その作風は『けんか空手極真拳』のように荒唐無な物ではなく、ナレーションや当時の映像を挟むドキュメント風の構成で描いています。が、この演出が作品の欠点を浮き彫りにしているのです。
というのも、本作は70年代を舞台にした物語が描かれていきますが、予算が無くて当時のセットを再現できなかったのか、その背景には普通に渋谷の109や超高層ビルが出てくるのです。この時点でリアルな描写やドキュメンタリータッチの作風は説得力を欠き、全く意味を成していません。それどころか、かえってショボさだけが際立つ結果を招いてしまっています。
 格闘アクションについてもその辺の帳尻が合っておらず、空手家の伝記というだけあって格闘シーンこそ大量にあるものの、盛り上がらないBGMと効果音のせいで迫力は皆無(役者さんたちの技量に問題はないようですが…)。それでいて本作で1番の問題点は、宿敵との再戦や重要な戦いの数々が伝記として演じられず、当時の映像を流して誤魔化してしまっている点にあります。
これはこれで興味深い気もしますが、個人的には岡崎らの演じるファイトを期待していたので、単なる手抜き演出にしか見えませんでした。しかもラスト近くで当時の映像ばかりを使って締めに入っていたので、より手抜きっぽさが強調されてしまい、先述した物語面でのショボさとの相乗効果で作品にトドメを刺しています。撮り様によっては現代の『けんか空手極真拳』になったかもしれないのに、この出来では…。
ちなみにタイトルの「K1」とは総合格闘技のアレではなく、「キングワン」と読むのが正しいそうです。

『大殘拳』

2009-02-25 22:13:33 | カンフー映画:珍作
大殘拳
英題:Crippled Kung Fu Boxer/Ninja Supremo
製作:1981年

●悪党の蔡弘と馬金谷に岳華(ンゴ・ワー)が追われている。彼を助けようと古錚が助太刀に現れたが、勝負は双方とも手傷を負って痛み分けに終わった。それから時は流れて18年後…ここに金持ちの御曹司で放蕩息子の金童(クリフ・ロク)という青年がいた。
彼は功夫修行が大好きで、強い達人が現れるたびに次から次へ師を乗り換えていたが、当然そんな調子ではトラブルを起こすことも日常茶飯事。遊郭で揉め事を起こした連中と争いになって逃げ出した金童は、逃亡先で古錚とその孫娘に出会った。古錚が達人である事を知った金童は弟子入りを志願するのだが、彼は「功夫なぞ身に付けてもろくな事にはならん」と言う。そこに金童の父の友人だった岳華が現れて古錚を説得し、なんとか金童は弟子入りを許されるのだった。
初めて1人の師匠にマンツーマンで教わる事になった金童、素質もあったおかげで順調に腕を上げていくのだが、揉めた連中と闘った際に馬金谷(冒頭の一戦でせむしになっている)と遭遇する。金童に接近した馬金谷は古錚がいることを知り、古錚も金童の話を聞いて馬金谷が、そして蔡弘が復讐せんと迫っている事を確信する。
一方、遊郭で揉めた連中は馬金谷を仲間に引き入れると、金童の父母を人質に襲いかかって来た。この馬金谷がまた手強く、加えて敵の人海戦術で金童は逃げ出すしかなかった。それまで最後の奥義を伝授する事を渋っていた古錚は、懇願する金童の訴えに折れて障害者の動きを模した"大殘拳"を授ける決意を固める。だが、今度は馬金谷が逆にこちらへ襲撃を仕掛けてきた。鉄のように堅いコブに金童たちは翻弄されるが、苦戦の末にどうにか倒す事に成功する。
しかし息つく間も無く登場したのは、18年前の戦いで重度の身障者となった蔡弘だった。不規則な動きでまったく先の読めない攻撃を見せる蔡弘に、習いたての拳法で立ち向かう金童だが…?

ジャッキーになりきれなかった男・金童の主演作だが、なんとも奇っ怪な作品だ。
その内容は扱っている拳法からして不謹慎そのものであり、病弱な古錚・せむしの馬金谷・身障者の蔡弘と、一目見たら忘れられないような強烈なキャラクターが印象的である。しかし、それとは対照的に"大殘拳"なる拳法はとても中途半端な出来で、単に動きづらそうな姿勢で闘っているだけにしか見えない。最終決戦では功夫映画によくある「自分が修行したシチュエーションでの闘い」にもつれ込むのだが、逆に金童が劣勢に立たされてしまっているなど、実におかしな状況にに陥っている。
物語は蔡弘を倒したところで終わっているが、よく考えてみると揉め事を起こした連中は健在だし、父母や仲間もまだ敵に捕まったまま。古錚の遺恨は精算できたけど、金童の件については何ら解決に至ってはいないのもどうかと思う。岳華が途中で消えてしまった事も含めて、ここらへんはちゃんと結末を描いて欲しかったところなのだが…。
ちなみに、本作の古錚は『復讐!少林蝴蝶拳』の時と同様に、厳しくも温かみを感じさせる師匠を好演している。功夫映画には古今東西様々な師匠が存在するが、袁小田(ユエン・シャオティエン)を別格とするなら、私としては龍世家(ジャック・ロン)師匠が優しそうで一番好みだったりします。逆に一番ダメな師匠は…やっぱり『少林寺厨房長』のMr.ドメスティック師匠・王龍(マイク・ウォン)でしょうか(苦笑

『スー・チーin ミスター・パーフェクト』

2009-02-23 23:25:48 | カンフー映画:佳作
「スー・チーin ミスター・パーフェクト」
原題:奇逢敵手
英題:Looking for Mr. Perfect/Finding Mr. Perfect
製作:2003年

●本作は舒淇(スー・チー)の日本に上陸した主演作のひとつで、監督に林嶺東(リンゴ・ラム)が当たり、製作側には社[王其]峰(ジョニー・トー)が控えている。それでいて上記のパッケージを見たら、誰がどう見たってハードなアクション物しか予想できないところだが、これでコメディアクションなのだから恐れ入る(笑)。しかもこれがかなりユルい作品で、敢えて言うなら簡素な『七福星』といったところだろうか。
舒淇は強気な性格の婦人警官。舒淇は舒淇なので勿論モテモテなのだが、夢の中に出てくるある男性が気になるご様子。そんなある日、舒淇は仕事で異国へ向かう友人のモデル・陳逸寧(イザベラ・チャン)とくっついてマレーシアの地へと渡った。スポンサーであるエロオヤジの林雪(ラム・シュー)がかなり鬱陶しいが(笑)その一方で秘密諜報員の安志杰(アンディ・オン)がミサイル制御装置を巡って任達華(サイモン・ヤム)らと対立してた。
実はこの安志杰こそ舒淇が夢の中で見たあの男性だったのだが、コソドロカップルが横槍を出してきた事で状況は更に混乱してしまう事になってしまい…。

とまぁ、話に関してはありきたりな部分が多い。コメディアクションということで随所にギャグが挟まれているが、80年代の香港映画にあったようなエネルギッシュな笑いは減退している。
もしこの作品が80年代に作られていたら、さしずめ舒淇は惠英紅で安志杰はユンピョウあたりが演じていたに違いない(林雪は樓南光か?)。80年代…といえば、本作には台湾映画などに出演していた呉大維(デビッド・ウー)が久しぶりに顔を見せている。呉大維は陳逸寧が惚れる撮影スタッフを演じているのだが、残念な事に現在の彼は少し太り気味。顔の幅も大きくなっていて、かつての甘いマスクが見る影もなくなっているのはちょっと幻滅だ(オチも含めて)。
全体的に見ても平坦な作品である事は否めないが、その中で1人孤軍奮闘しているのはやはりこの男…安志杰だ。前半では任達華と黄卓玲を相手取って功夫アクションを見せ、クライマックスではド派手なバイクチェイスに挑戦し(この時点で主役だった舒淇は負傷退場しており、完全に安志杰の一人舞台・笑)、最後は安志杰VS任達華&黄卓玲という対決にもつれ込む。
ここのファイトシーンはおちゃらけたBGMとコメディ描写のせいで軽く見えがちで、任達華も『タイガー刑事』同様に替身を使いまくってはいるものの、内容に関しては意外に凄い事をやっている。武術指導は以前レビューした『忍者』も手がけた李忠志(ニッキー・リー)。彼は現在、呉京(ウー・ジン)の初監督作である『狼牙』で呉京のバックアップを勤めた他、『インビジブル・ターゲット』や『奪師』などで絶賛活躍中だが、注目すべきは彼がジャッキー系の武師であるという点だ。
袁和平(ユエン・ウーピン)に見初められて『ブラック・マスク2』で初主演を飾った安志杰だが、作品自体は珍妙な怪作として終わった。続いて本作に出演した後に『スター・ランナー』で評価を得たが、案外とジャッキーは李忠志から安志杰の話を聞き、『香港国際警察/New Police Story』への出演を打診したのではないだろうか(あくまで想像ですが)?取るに足らない作品ではあるが、もしかしたら本作は安志杰にとってターニングポイントとなる作品だったのかもしれない…。

なお、本作が女ドラゴン映画ではなく普通の功夫片にカテゴリしているのは、舒淇がアクション的な見せ場が1つも無かったから。それに加えて、吹替え版の舒淇の声がヒドかったのも女ドラゴン映画から外した一因であります(爆

『スーパーファイト』

2009-02-20 22:30:28 | マーシャルアーツ映画:上
「スーパーファイト」
「激突!格闘技選手権 スーパーファイト」
原題:SUPERFIGHTS
製作:1995年

▼本作は呉思遠(ン・シーエン)製作の白人マーシャルアーツ映画の1本で、かつて日本においてもテレビ放映されたことのある作品だ。監督は数々の動作片を手がけた梁小熊(トニー・リャン)が登板しており、個人的には本作の予告編を見て魅了されて幾歳月…こうして実際に視聴する事が叶って本当に嬉しい限りだったりします(涙)。
これで残すシーゾナルのマーシャルアーツ映画はあと『ブラッド・ブラザーズ』と『BloodMoon』を残すのみ。ここまで来れば絶対に全てを制覇したいところであります(まぁその前に『キング・オブ・キックボクサー』系列とかアイザック・フロレンティーン作品とか、制覇しなければならないタイトルがいくつもあるのですが・苦笑)。

■スーパーファイト…それは多種多様な格闘家たちが雌雄を決する、総合格闘技の祭典である(今で言うK1みたいなもの)。ブランドン・ゲインズはそんなスーパーファイトの大ファンで、時間があれば自主トレに打ち込んでいるという、相当の物好きだ(余談だが、このとき背景に思遠影業のマーシャルアーツ映画のポスターがしこたま貼ってあるのが確認できる)。
そんなある日、強盗に襲われていた兪飛鴻(フェイ・ユー)を助けた事で、一躍ゲインズは街のヒーローとなった。その様子をテレビで見て興味を惹かれた男がいた。スーパーファイトの興行主であるキース・ヴィダリが、ゲインズをスーパーファイトのリングへと誘ったのだ。憧れのスーパーファイトに出られるとあって、ゲインズはヴィダリの申し出に二つ返事でOKサインを出し、まずは現役の選手であるケリー・ギャラントから指導を受ける事になった。
厳しいトレーニングを経て腕を磨いたゲインズは、とうとう念願のスーパーファイトへ出場を果たし、怒涛の快進撃を続けていった。街のヒーローからスーパーファイトのヒーローへと成長したゲインズ。しかし兪飛鴻とは疎遠になってしまい、自らの戦い方にも行き詰ってしまう。そんな彼に兪飛鴻の祖父であるパトリック・ロンは太極拳や気功を教え、同時に戦いの極意も伝授していく。こうして心身ともに新たなる段階に達したゲインズだったが、スーパーファイトの出場選手たちが不穏な動きをしているのに気付いてしまう。
実はスーパーファイトを指揮するヴィダリは悪事(具体的に何をやっているのかはいまいち不明)を働いており、選手たちを使って邪魔者を次々と抹殺していたのだ。しかも選手たちに支給されていた栄養剤には興奮剤が仕込まれており、徐々にスーパーファイトそのものが血生臭い見世物へと変貌していく。遂にはヴィダリから八百長試合を強要され、邪魔者を潰す手助けを命じられた事で、ゲインズのスーパーファイトに対する不信感は決定的なものとなった。
一方、ヴィダリはより強い刺激を求めてスーパーファイトを更に凄惨なものに仕立て上げていき、その中でゲインズの理解者であったクリフ・レンダーマンが重傷を負ってしまう…もはやそこに、エンターティメントだったかつてのイベントの面影は無かった。
自らのイベントをゲインズの横槍でご破算にされたヴィダリは、ゲインズの母親と兪飛鴻を人質に彼をおびき出して抹殺しようと企んだ。待ち受けるはヴィダリと選手のブライアン・ルッチ&チャック・ジェフェリーズの強敵3人…果たしてゲインズは正義を取り戻せるのか!?

▲過度な期待は禁物と思っていましたが、これは久々に大当たり!『シンデレラ・ボーイ』『レイジング・サンダー』等の傑作と比較しても負けない、まさしくマーシャルアーツ映画の快作でした!
なにしろ、主役のゲインズが最初からある程度強い事もあって、本作は全編に渡って格闘アクションまみれ。本質的にこの作品は香港映画だが、譚道良(ドリアン・タン)みたいな蹴りを見せるゲインズを筆頭にみんな生き生きとした動きを見せている。更に出演者全員が腕利きのファイター揃いという事もあってか、高度な格闘シーンが次々に繰り広げられる様はまさに圧巻の一言に尽きるだろう。『キング・オブ・キックボクサー/ファイナル』のようにもたつく間も無く、改めて梁小熊による武術指導の腕前には感嘆せざるを得ない。
特に凄かったのがラスボスに扮したキース・ヴィダリだ。香港映画では『スパルタンX』でベニー・ユキーデに美味しいところを全部持っていかれた屈辱を味わっているが、本作ではその鬱憤を晴らすかのごとく、凄まじいキッキングファイトでゲインズを追い込んでいる。
『酔拳2』における慮恵光(ロー・ワイコン)のアクションを披露した時はちょっと失笑してしまったが(爆)、『スパルタンX』でもここまでいい動きは見せていなかった。まだ『ブラッド・ブラザーズ』と『アメリカン・キックボクサー』を見てないので断言は出来ないが、ヴィダリの戦歴の中でも1・2を争うベストワークだったことだけは確かである。
変に暗くなることも無く、ただひたむきに強くなることだけを求め、巨悪を蹴っ飛ばすこの爽快さ!マーシャルアーツ映画ファンのみならず、是非とも功夫映画ファンにも見てもらいたい傑作。必見です。

『トゥー・アサシン 美しき暗殺者』

2009-02-18 21:24:01 | マーシャルアーツ映画:下
「トゥー・アサシン 美しき暗殺者」
原題:TWO TIGERS
製作:2007年

●『ソードキング』に引き続き、またも「やられた!」と思った作品だ。『ソードキング』は曲りなりにもアクションが含まれていたからまだ見られたが、この作品は本当に酷い!本作のパッケージはスタイリッシュなアクション物を予感させるデザインで、私は裏面に記載された蹴りを放っているフォトと、舞台が上海であるという点に惹かれて手に取ったのだが…詳しくは後述にて。
アンドレア・オズヴァートは凄腕のスナイパー。今日も首尾良く任務をこなした彼女は、新たに上海での仕事を依頼された。ターゲットは上海マフィアのボスで、アンドレアは身分を偽装して台湾入りを果たす。仮の住まいとなったマンションの一室で暗殺の準備を始めるアンドレアだが、隣室の娼婦・セレナ・コーと知り合った。彼女はある会社社長の浮気相手であり、近々その社長と共に暮らす予定だという。事故で知り合った中国人の男とも親密になっていく中、見事にアンドレアはターゲットを始末。続いて新たな依頼を受け取るのだが、そのターゲットとはセレナと会社社長だった…。
主人公がスナイパーで舞台が上海、訳ありの女と命令に背く主人公…ここまでお膳立てが揃っているというのに、あろうことか本作はアンドレアとセレナの色恋沙汰に物語の大半を裂いている。しかも、アクションをやってくれるのなら色恋沙汰も許容できるが、どんなB級映画でも必ずあるはずの銃撃戦やカースタントさえも本作は皆無(!)という有様だ(期待していた格闘シーンは、中盤で功夫道場にアンドレアとセレナが訪れた時と、クライマックスでセレナがアンドレアを助けるシーンでちょろっと披露される程度でした)。
ストーリーもこれまた酷く、とにかく演出がタルくてタルくて仕方が無い。のっぺりした物語は眠気を誘うが、それでも「アクション映画だから」とほのかな期待を抱いた視聴者(というか自分)は眠い目を擦る。繰り広げられるのは安いベッドシーンや町中を歩いたりするなど、おおよそアクション映画とは思えないような場面の数々。主人公が反目してセレナが社長を殺すところでやっと話が動いたかと思いきや、最後に待ち受けていたのは超が付くほどの脱力系エンド…ここまでくると、もはや「金返せ!」と言う気力さえも無くなってしまいました(萎
ちなみにセレナ・コーという人を調べてみたところ、いくつか香港映画にも出演している模様。邱秋月という名前らしく、本作では恐らくルーシー・リューみたいなアジアンビューティーとして起用されたものと思われる。だがセレナは正直言って美人とは言い難いルックスの上、ベッドシーン等で見せるスタイルもかなり微妙。これならフィルマーク作品に出てくる無名のパツキンねーちゃんとかの方がよっぽどマシなので、本作を見ようと思う人はフィルマーク作品を見た方が20倍ぐらい楽しめるかと思います。

『潮州怒漢』

2009-02-16 22:52:38 | カンフー映画:佳作
潮州怒漢
英題:The Hero of Chiu Chow/Hero of the waterfront
製作:1973年

▼李作楠監督作、アイザック・フロレンティーン監督作、鮑學禮監督作、松田優主演の格闘映画と、今月は大作や傑作を中心にレビュー構成を組んでいるが、今回はスーパーキッカー譚道良(タン・タオリャン)初主演作の登場である。その類稀なる足技で名高い譚道良は、本作に出演後は李小龍の後釜を求めていたゴールデンハーベストで数本の作品に主演。その後は李作楠など名匠の元で活躍を続けていった。
彼自身はご存知の通りプライベートでの素行の悪さが有名だが、技量に関しては文句無し(ただし足技限定で・笑)のお方である。そんな彼が最初で最後の劉家良(ラウ・カーリョン)とコラボを果たしたのが本作で、劇中の功夫アクションはすこぶる良質だ。李小龍と張徹作品に譚道良の足技を加えたそのスタイルは、後年の足技を格好良く見せようとしすぎる譚道良スタイルとは一線を画しており、今見ると中々新鮮でもある。

■物語はタイトルそのまんまに、港の労働者と悪らつな雇い主との攻防を描いた物語である。大勢の労働者たちに対し、雇い主側が給料の支払いに応じなかったことが原因で、港町は一触即発の状態となっていた。この騒動に功夫の達人である譚道良が乗り出し、問題の解決に奔走していく事になる…のだが、雇い主側は断固として支払うことを拒否し続け、遂には目障りな譚道良を潰してしまおうと強硬手段に乗り出した。
これにより身内が殺された譚道良は雇い主である苗天に反旗を翻し、本拠地である製鉄所に押し入って苗天を倒す(この場面、もしかして『酔拳2』の元ネタか?)のだが、真の敵は苗天を裏で操っていた知事・孟昭勲だった。孟昭勲は先手を打って譚道良の母や妻子を誘拐し、殴りこみに現れた譚道良を卑怯な手段で戦闘不能にしてしまう。妻子や母と共に監禁された譚道良は怪我を押して脱出を図るが、途中で母が死んで脱出が発覚してしまう。
四方八方敵だらけという不利な状況の中、譚道良は孟昭勲とその一味を相手取って最後の死闘を繰り広げるが…。

▲労働者と雇い主との対立…これと同様の図式は『空手ヘラクレス』でも展開されていたが、本作に動員されるエキストラや功夫アクションのクオリティは、『空手ヘラクレス』とは比較にならないほど大きい。
劉家良の参加も含め、いかに譚道良を売り出そうとプッシュしていたかが窺い知れるが、一方でストーリーはやたらめったら暗いのだ。オチは『レディ・ハード/香港大捜査線』の逆パターンだし、悲劇の連続だけで押し切る物語はジャッキーの『ファイティングモンキー昇龍拳』を髣髴とさせるほど。どうしてこんなにネガティブな内容になってしまったのだろうか?
当時のヒット作である李小龍の『危機一発』『怒りの鉄拳』や張徹の諸作品は、全て悲劇とその反動で爆発させる功夫アクションが必須だった。本作もそれにあやかって悲劇に走ったようだが、李小龍や張徹は悲劇であっても中身は面白かったのに対し、本作では単に悲劇"だけ"で終わっているのだ。
悲劇という引き金は容易に引けるが、傑作となるには的を射抜かなくてはならない。本作は残念ながらその的を外してしまった…ということなのだろう。ところで本作の根本となる雇い主と労働者たちの骨肉の争いだが、どことなく近年の派遣切り騒動を彷彿とさせる気がするのは気のせいだろうか…(爆

『くどき屋ジョー』

2009-02-14 21:10:05 | 日本映画とVシネマ
「くどき屋ジョー」
制作:1994年

▼本作は『極道ステーキ』シリーズを見ていた際、予告で目にした時から随分と気になっていた作品でした。一番惹かれたのは監督・高瀬将嗣&主演・清水宏次朗という『極道ステーキ』と同じコンビによる作品だった事で、ビデオに収録されている予告編でも激しいバトルが繰り広げられていたため、より一層興味を引かれる要因となりました。
先の『極道ステーキ』はユーモアな描写もあったが、基本的にはヤクザ同士の血で血を洗う抗争を描いた物語です。私としてはこの監督と主演のコンビで、もっと肩のこらないコメディタッチの作品を見てみたかったのですが、さて本作はというと…?

■主人公の清水はホームレスとして暮らしているが、その正体はどんな女性も必ずオトす"くどき屋"(要するに女性のハートを射止めるゴルゴ13のような仕事)だった。今宵も仲介人のあき竹城から依頼を受け、社長令嬢やトップアイドルを口説いていく清水。そんな彼の行く先々でちょっかいを出してくるのが、女の事ばかり考えているマフィアのドン・伊集院光だった。
事あるごとに清水と女性を巡って争いを展開するが、実は清水を敵視している人間はもう1人存在した。占い師の中村由真は、かつて別のくどき屋によって恋人を死に追いやられた過去を持ち、くどき屋に並々ならぬ恨みを抱いていたのだ。
それでも順調に仕事をこなしていく清水だが、謎の美女のハートを射止める依頼を受けた事から、思いもよらぬ騒動に巻き込まれていくことになってしまい…。

▲本作はジョージ秋山のマンガが原作となっていて、明るいタッチのアクションコメディに仕上がっています。そのノリは、どちらかというと『コータローまかりとおる!』や『伊賀のカバ丸』のような、JAC作品の縮小コピーといった感じです。また、今の目で見ると清水の口説き方がギャグと紙一重なのですが、当時はこれで女性はイチコロだったんでしょうか?(爆
キャラクター的には伊集院光の存在が文字通り光っていて、作中で最も強烈な印象を残しています。どん底から這い上がって今の地位を手に入れた伊集院は、どうにか女性を手に入れようと悪戦苦闘を続けていきますが、その気合はいつも空回り。終盤で伊集院は謎の美女に向かって自身の思いをぶちまけますが、これがまたモテない男の何ともいえない悲哀を感じさせ、彼が単なるピエロ役ではない事を現していました。
 ところでアクションの方ですが、量自体は思っていたより多くはありません。しかし個々のファイトシーンはどれも質が高く、コメディであろうと決して手を抜かない高瀬監督の意地を感じさせます(武術指導は高瀬道場アクションクルー)。特に中盤における清水VS伊集院の一戦が本作1番の見どころと言えます。
誰しも「伊集院の格闘アクションなんて大丈夫か?」と思ってしまうところですが、そこは『極道ステーキ』系列で間寛平やフっくんを起用した経験を持つ高瀬監督。マーシャルアーツ映画だったら見るも無残な結果になりそうなところを、十分見応えのある格闘戦として演出させています。
たまの息抜きでダラっと見るには最適な作品で、ストーリーに関しては良くも悪くも軽い出来。清水宏次朗の格闘Vシネの中でも貴重なコメディ作品なので、そちらに興味のある方は要チェック…かも?

『カンフーエンペラー』

2009-02-12 23:43:18 | カンフー映画:佳作
「カンフーエンペラー」
原題:功夫皇帝
英題:The Kung Fu Emperor/Emperor of Kung Fu
製作:1981年

▼雍正帝といえば功夫映画では定番の悪役としてお馴染みの存在。『血滴子』『少林皇帝拳』『神鳳苗翠花』などに登場し、日本のファンには郭南宏(ジョセフ・クオ)作品における『少林寺への道2』や『少林寺炎上』などでの姿が、最もよく知られている事だろう。本作はその雍正帝が主演の上に善役を勤める作品である。
雍正帝が善役という時点で?と思ってしまうが、名匠・張徹(チャン・ツェー)の弟子である鮑學禮が監督しただけあって、出来に関してはショウブラ作品に近いものがある。出演は狄龍(ティ・ロン)を筆頭に陳星(チン・セイ)・王清(ワン・チン)・蔡弘とショウブラ系のスターが勢揃い。加えて張一道や譚道良(ドリアン・タン)といった面子がプラスアルファされ、そこに師匠譲りの鮑學禮的な演出が加味されることで、単に豪勢な顔を揃えただけではない作品に仕上がっている。

■時は清朝、宮廷内では次期皇帝の座を巡る熾烈な争いが起きつつあった。皇帝候補の1人である狄龍はその争いに興味は無く、俗世の中で施思や譚道良らと親睦を深めていく。だが、すべてを掌握せんとする陳星と王清の策謀に巻き込まれ、否応なしに闘争の渦中へと叩き落とされる事となってしまう。度重なる襲撃に遭遇していく内に、狄龍は立派な皇帝になるべく立ち上がることを決意する。
宮廷に戻った狄龍は皇帝が死去するに至って、いよいよ譚道良たちを引きいて行動を開始する。『少林寺への道2』でも黄家達(カーター・ワン)の雍正帝が行った"遺書の書き換え"を敢行する狄龍。余談だが、この場面で狄龍たちは遺書が封印された宮殿へ正面切って襲撃しているのだが…こんなに堂々と攻撃したら絶対に不正がバレると思うけど、コレって大丈夫なんだろうか(笑
そんなこんなで遂に狄龍は雍正帝としての地位を得るも、逆上した陳星は大勢の兵をけしかけて他の皇子ともども狄龍を亡き者にしようと目論む。「暗躍していた陳星も陳星だけど、不正を働いた狄龍も同罪なのでは?」という疑問はさておき(爆)、宮殿を舞台に狄龍と協力者たちVS陳星と共謀者たちの死闘が繰り広げられる!

▲…というわけで『少林寺への道2』と同様に雍正帝の成り上がりサクセスストーリーを描いた本作だが、役者のボリュームやスケール感はどちらかというと本作の方が絢爛豪華。功夫アクションに関しても同様で、狄龍の力強い手技や譚道良のテコンドーキックが乱れ飛ぶアクションシーンの数々は、見事の一言に尽きる(武術指導は陳木川)。特に主演の狄龍は功夫シーンのみならず、演技面でもショウブラ全盛時代を髣髴とさせるような精鋭さを発揮しており、皇帝としての決意を語る場面はとても格好良い。
だが本作は、狄龍の演技が見事であればあるほど引っ掛かるものを感じてしまうようになっている。何故なら狄龍の役柄は曲がりなりにも雍正帝…のちに臣下を粛清したりする暴君と化す事を考えると、なんだか複雑な気分になってしまうのだ(将来的に『刺馬』みたいな状況になって、譚道良と闘ったりするんだろうなぁ…)。そう考えると『少林寺への道2』の強引なラストも、のちに暴君になる事を考えると非常に自然な展開だったのかもしれない。
結論としては雍正帝に善役を宛がうと不自然に見えてしまうという結果を残したが、作品自体は非常に良く出来ているので、功夫映画ファンは是非とも必見の作品といえるだろう。

『ファイアーイーグル』

2009-02-10 22:43:49 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「ファイアーイーグル」
原題:OPEN FIRE
制作:1994年

▼『アンダーカバー』『アンダーカバー/炎の復讐』『マーシャルコップ』『バウンティ・ハンター/死の報酬』と、傑作マーシャルアーツ映画をいくつも排出してきたカート・アンダーソン監督。そんな彼が、お馴染み主演のジェフ・ウィンコット&スタント指導ジェフ・プルートと共に製作したものの、これまで特に取り上げられる機会の少なかった作品が本作だ。
それというのも、本作のジャケがとてもマーシャルアーツ映画に見えない(どちらかというと戦争アクション風のパッケージ)事が少なからず影響しているものと思われる。しかし『ストリート・クライム』や『ファイヤー・パワー』みたいな前例もあるし、ジェフ・プルートが関わっているのならあまり心配する事もないと思いレンタルしてみたのだが…?

■作品自体はよくある『ダイ・ハード』タイプの作品である。
先走った行動の末に相棒を死なせた過去を持つ元FBI捜査官のジェフは、今は薬品工場のおっさんの元で静かに働いていた。ところが武装したテロリストグループが工場を乗っ取り、テログループのリーダーを釈放せよと要求を突きつけてきたのだ。事件当時バーにいたジェフは、役立たずのFBI連中を尻目に1人で工場に潜入。内部では工員やおっさんらを人質に取ったテログループが、神経ガスを精製したり爆弾を仕掛けていたりするのを目の当たりにする。
難を逃れていたヒロインと合流したジェフだが、一方で要求を呑んだ警察によってリーダーのパトリック・キルパトリックが釈放され、新たにダイヤの原石を持ってくるよう要求を受けていた。二重三重に計略を重ねていたテログループは、ヒロインとおっさんを人質にヘリでの国外逃亡を目論む。連中はまんまと警察の目から逃れるが、そうはジェフが許さない。荒野に佇む廃墟を舞台に、ジェフとパトリックたちテログループとの最後の死闘が始まる!

▲『ダイ・ハード』同様に限定されたシチュエーションを舞台にした本作は、テログループが工場から脱出するまでは中々面白い。物語の展開はありきたりなのだが、所々にユーモアを含んだ演出を取っており、それなりには楽しめるのだ。ただし工場から出た途端にペースがガックリと落ち込んでしまい、その後の展開も尻すぼみになってしまったのは残念だ。
ただし、格闘アクションについてはジェフ・プルートが関わっているだけあってか、意外と激しいバトルが多い。本作で敵となるテログループは10人ほどいるのだが、そのうち7人ぐらいは素手での勝負に持ち込まれている。敵の中には意外と鋭い蹴りを放つ奴もいたりして、ここらへんの攻防戦は面白いのだ(ちなみにテログループのメンバーにはスタントマンのレオ・リーもいるのだが、彼が活躍する格闘アクションはあまり無いです)。
最後はもちろんジェフVSパトリックの対決で、こちらも格闘アクションの出来はすこぶる良い。特にジェフがパトリックを殴った際のアクションがまんま『ポリスストーリー』(馮克安にジャッキーが殴られてガラスにぶち当たる例のアレ)だったのには思わずニヤリ。本作に坂本浩一は加わってはいないはずなのだが、このラストバトルには『皇家戦士』っぽいカットもあったりしたので、もしかするとジェフ・プルートの趣味だったりして…(笑
総評すると冒頭に挙げた4つの作品よりクオリティが落ちるため、特に無理して見るほどの作品では無い。やはり取り上げられない作品にはそれ相応の理由があった…という事でしょうか。

『ファイナルファイター』

2009-02-07 21:03:57 | 日本映画とVシネマ
「ファイナルファイター」
制作:1994年

●「裏社会の闘技場」というものは、マーシャルアーツ映画というジャンルでは比較的ポピュラーな題材でした。この事は以前も触れた通りですが、勿論日本にもそういった作品はいくつか存在します。代表的なところではケイン・コスギの『マッスルヒート』があり、本作もその系統に属する格闘映画です(Vシネだけど)。

 主人公の松田優はヤクザの用心棒。喧嘩なら誰にも負けない実力者だが、あるとき裏ファイトの話を持ちかけられた。喧嘩が大好きな彼はこれを快諾するが、謎の女・西尾悦子に「己の腕に過信するな」と忠告を受けた。彼女の言葉は現実のものとなり、松田は対戦相手の王者・須藤正裕に大敗を喫してしまう。初めて敗北を味わった彼は再び西尾と出会い、塩谷庄吾から須藤によって彼女の兄が再起不能にされた事を聞かされた。
かくして、紆余曲折の末に奮起した松田は、喧嘩道場と呼ばれる施設で骨法のトレーニングを開始。途中で塩谷が須藤に敗れるという一幕を挟み、西尾との仲も親密になってるようななってないような展開を辿りつつも、最終的に松田は須藤との最終対決に挑戦する!

 粗筋を見ても解るように、本作は和製『キックボクサー』を目指した作品となっています。言うなれば須藤はトン・ポーの役どころに相当し、トン・ポーと同様にヒロインを襲うシーンもあります(ビートきよしは李家鼎?)。このほかに松田が開脚しながら修業する場面などを見ても、本作が『キックボクサー』を非常に意識している様子が見て取れます。
ちなみに『キックボクサー』でヴァンダム1人が担当していた復讐の目的が、本作では松田(宿敵へのリベンジ)と西尾(兄の仇討ち)にそれぞれ振り当てられています。そのため、松田が再び立ち上がって闘志を取り戻すまで、随分と時間を要することになってしまうんですが、これはちょっと惜しい気がしました。
 なお、本作はあの『拳鬼』を製作した監督・廣西眞人とアクション指導・阿部光男の手による作品でもあり、格闘シーンや物語の出来は『拳鬼』よりパワーアップしています。特に骨法を用いた格闘アクションは見栄えがあり、松田VS安岡力也という新旧筋肉スター同士のバトルなんかも見ることができます(それにしても暑苦しい顔合わせだ・笑)。
そしてラストの松田VS須藤ですが、どちらかというと須藤はトン・ポーというより李元覇(コナン・リー)に近い顔立ちであるため、鬼気迫るインパクトは感じられません。しかし、互いに魂をぶつけ合うようなバトルが異様な生々しさを生んでおり、老齢の石橋雅史を起用して中途半端になってしまった『拳鬼』よりも、正直言ってこちらの方が迫力のあるバトルになっていました。
それにしても、映画の最後にキスシーンで終幕するパターンはよく見るけど、「キスするか?」って事前に聞くキスシーンなんて初めて見たなぁ(爆