「龍司 K1を目指した男」
製作:2007年
▼千葉真一の『けんか空手極真拳』三部作や『少林寺拳法』を例に出すまでも無く、日本には格闘伝記モノという作品がいくつか存在していました。ただし李小龍(ブルース・リー)の伝記映画のように多くの本数が作られた訳ではなく、量自体は微々たるものでしかありません。
本作はそんな格闘伝記モノの現代版といえる作品で、士道館の空手家である村上竜司を扱った物語です。しかし、私のような実際の格闘技の世界に疎い者にとって、村上がいかなる人物なのかは全く解らない…という訳で、その辺も含めてどのような作品か期待していました。
■時は70年代。岡崎礼(彼が村上竜司役)は札付きの不良だったが、刑事のジョニー大倉(!?)に諭されて空手道に開眼する。しかし何を始めればいいか解らないので、とりあえず当時人気沸騰だった『空手バカ一代』を全巻購入(笑)して自己流の修練に励む岡崎。だが、無軌道な暴力の果てに再びジョニーの世話になり、彼の口添えでようやく普通の空手道場に入門するのだった。
その後、高校を卒業した岡崎は友人に誘われて東京に行くが、今度はそこでヤクザ絡みのトラブルに首を突っ込んで大怪我を負ってしまう。「このままじゃワイはあかん!」と思った彼は、東京に出て本格的に空手に打ち込もうと意気込む。友人の梅宮哲と共に、上京を反対する父の与えた試練を突破した彼は、遂に念願の東京上陸を果たして士道館に入門を果たす。
だが、そこで待っていたのは更なる修行の日々、恩人・真樹日佐夫(演じるは小沢仁志だが真樹本人は別人役で出演)との邂逅、そしてライバルとの対決や運命の出会いの数々であった…。
▲と、要約すると何だか面白そうですが、実際の本作は非常に味気無い出来になっていました。その作風は『けんか空手極真拳』のように荒唐無な物ではなく、ナレーションや当時の映像を挟むドキュメント風の構成で描いています。が、この演出が作品の欠点を浮き彫りにしているのです。
というのも、本作は70年代を舞台にした物語が描かれていきますが、予算が無くて当時のセットを再現できなかったのか、その背景には普通に渋谷の109や超高層ビルが出てくるのです。この時点でリアルな描写やドキュメンタリータッチの作風は説得力を欠き、全く意味を成していません。それどころか、かえってショボさだけが際立つ結果を招いてしまっています。
格闘アクションについてもその辺の帳尻が合っておらず、空手家の伝記というだけあって格闘シーンこそ大量にあるものの、盛り上がらないBGMと効果音のせいで迫力は皆無(役者さんたちの技量に問題はないようですが…)。それでいて本作で1番の問題点は、宿敵との再戦や重要な戦いの数々が伝記として演じられず、当時の映像を流して誤魔化してしまっている点にあります。
これはこれで興味深い気もしますが、個人的には岡崎らの演じるファイトを期待していたので、単なる手抜き演出にしか見えませんでした。しかもラスト近くで当時の映像ばかりを使って締めに入っていたので、より手抜きっぽさが強調されてしまい、先述した物語面でのショボさとの相乗効果で作品にトドメを刺しています。撮り様によっては現代の『けんか空手極真拳』になったかもしれないのに、この出来では…。
ちなみにタイトルの「K1」とは総合格闘技のアレではなく、「キングワン」と読むのが正しいそうです。
製作:2007年
▼千葉真一の『けんか空手極真拳』三部作や『少林寺拳法』を例に出すまでも無く、日本には格闘伝記モノという作品がいくつか存在していました。ただし李小龍(ブルース・リー)の伝記映画のように多くの本数が作られた訳ではなく、量自体は微々たるものでしかありません。
本作はそんな格闘伝記モノの現代版といえる作品で、士道館の空手家である村上竜司を扱った物語です。しかし、私のような実際の格闘技の世界に疎い者にとって、村上がいかなる人物なのかは全く解らない…という訳で、その辺も含めてどのような作品か期待していました。
■時は70年代。岡崎礼(彼が村上竜司役)は札付きの不良だったが、刑事のジョニー大倉(!?)に諭されて空手道に開眼する。しかし何を始めればいいか解らないので、とりあえず当時人気沸騰だった『空手バカ一代』を全巻購入(笑)して自己流の修練に励む岡崎。だが、無軌道な暴力の果てに再びジョニーの世話になり、彼の口添えでようやく普通の空手道場に入門するのだった。
その後、高校を卒業した岡崎は友人に誘われて東京に行くが、今度はそこでヤクザ絡みのトラブルに首を突っ込んで大怪我を負ってしまう。「このままじゃワイはあかん!」と思った彼は、東京に出て本格的に空手に打ち込もうと意気込む。友人の梅宮哲と共に、上京を反対する父の与えた試練を突破した彼は、遂に念願の東京上陸を果たして士道館に入門を果たす。
だが、そこで待っていたのは更なる修行の日々、恩人・真樹日佐夫(演じるは小沢仁志だが真樹本人は別人役で出演)との邂逅、そしてライバルとの対決や運命の出会いの数々であった…。
▲と、要約すると何だか面白そうですが、実際の本作は非常に味気無い出来になっていました。その作風は『けんか空手極真拳』のように荒唐無な物ではなく、ナレーションや当時の映像を挟むドキュメント風の構成で描いています。が、この演出が作品の欠点を浮き彫りにしているのです。
というのも、本作は70年代を舞台にした物語が描かれていきますが、予算が無くて当時のセットを再現できなかったのか、その背景には普通に渋谷の109や超高層ビルが出てくるのです。この時点でリアルな描写やドキュメンタリータッチの作風は説得力を欠き、全く意味を成していません。それどころか、かえってショボさだけが際立つ結果を招いてしまっています。
格闘アクションについてもその辺の帳尻が合っておらず、空手家の伝記というだけあって格闘シーンこそ大量にあるものの、盛り上がらないBGMと効果音のせいで迫力は皆無(役者さんたちの技量に問題はないようですが…)。それでいて本作で1番の問題点は、宿敵との再戦や重要な戦いの数々が伝記として演じられず、当時の映像を流して誤魔化してしまっている点にあります。
これはこれで興味深い気もしますが、個人的には岡崎らの演じるファイトを期待していたので、単なる手抜き演出にしか見えませんでした。しかもラスト近くで当時の映像ばかりを使って締めに入っていたので、より手抜きっぽさが強調されてしまい、先述した物語面でのショボさとの相乗効果で作品にトドメを刺しています。撮り様によっては現代の『けんか空手極真拳』になったかもしれないのに、この出来では…。
ちなみにタイトルの「K1」とは総合格闘技のアレではなく、「キングワン」と読むのが正しいそうです。