功夫電影専科

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『ドニー・イェン 邪神拳』

2010-05-10 23:25:26 | 甄子丹(ドニー・イェン)
「ドニー・イェン 邪神拳」
原題:魔唇劫
英題:THE HOLY VIRGIN VS EVIL DEAD
製作:1991年

●本作は甄子丹(ドニー・イェン)によるオカルト功夫片であり、同時期の『ドラゴン・バーニング/怒火威龍』と一緒に撮影されていたと思しき作品です。監督は問題作『群狼大戦』の王振仰(トミー・ウォン)で、彼らしくエロとエグさが同居する世界が構築されています。

 大学教授の甄子丹は、あるとき異形の怪物・慮恵光(ロー・ワイコン)に襲われ、教え子たちを皆殺しにされてしまう。殺人犯として逮捕された甄子丹は無罪を主張するが、刑事の林國斌(ベン・ラム)は非現実的な証言に耳を貸そうとしなかった。とりあえず保釈金を支払い、仮釈放された甄子丹は弟・麥羅と共に事件の調査に乗り出した。
調べを進めていくうちに、カンボジアで祭られるヒゲの女神と大富豪が関連していることを突き止めるも、協力してくれた司書が惨殺されてしまった。甄子丹は、林國斌・麥羅・元カノの徐希文と共にカンボジアに乗り込み、そこで慮恵光を倒そうとしている部族の娘・楊寶玲(ポーリン・ヤン)と遭遇。くだんの大富豪は、徐希文を生贄にして慮恵光の魔力を得ようと画策していた。
誘拐された徐希文を助けようと、甄子丹たちは敵の屋敷に乗り込むのだが、慮恵光の妨害によって一時退散。負傷した林國斌が離脱し、一行は楊寶玲の部族を目指すものの、既に大富豪が魔力を手にするための儀式を始めようとしていた…。

 色んな意味でムチャクチャな作品なんですが、全盛期の甄子丹による功夫アクションは実に迫力満点!当時はまだワイヤーに頼り切る前だったこともあって、地に足を付けたバトルが十分に堪能できます(この翌年、彼は『天地大乱』『ドラゴン・イン』などのワイヤー古装片に出演し、ワイヤー多用の殺陣に傾倒してしまいます)。
本作で一番の収穫だったのは、これまで共演の機会が多かったのに対決まで至らなかった甄子丹VS慮恵光の一戦が実現している事です。それに加えて、準主役的なポジションながら「甄子丹に負けてたまるか!」と言わんばかりの活躍を見せた成家班出身俳優・林國斌の存在も見逃せません。多少グロい演出こそあるものの、全体的に功夫アクションは上出来だったと言えるのではないでしょうか。

 また、今回の甄子丹はお馴染みの問題児キャラではなく、落ち着いたインテリの教授という役柄を好演しているので、いつものようなフラストレーションは感じられませんでした。しかし、甄子丹に代わって胡慧中(シベール・フー)が同様のキャラクター像を引き継いでしまっています。
本作における胡慧中は高飛車な刑事として描かれ、事あるごとに甄子丹や部下たちをバカにしてばかり。遂には上司にまで暴言を吐き、「警察辞めて女優になるわ」とバッジを捨てて退場してしまいます。おまけに彼女は本筋に絡まないし、アクションすら見せないのです。恐らく胡慧中は製作時期の近い『怒火威龍』に集中していたために、仕方なく途中退場してしまったのだと思われますが……仮にそうだとしても、このキャラ設定はヒドすぎです。
ところで、ラストはよく解らないオチ(バッドエンド?)で締めくくられるんですが、なぜか誰も死んでしまった麥羅のことに触れようとしていません。前回の『ブレイザウェイ』では主人公の上司がフェードアウトしていましたが、本作の麥羅は明らかに死んでいます。せめて「彼は気の毒だった」とか言っても良かったんじゃないかと思うんですが、皆さんは忘れ去られる方と無視される方ではどっちが辛いと思いますか?(爆

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