功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

更新履歴(2013年/5月)

2013-05-31 23:50:22 | Weblog
 さて、今月で当ブログは6周年を迎えましたが、これといって大きな企画や特集をしないまま普通に過ごしてしまいました(苦笑)。とりあえず再来月あたりには、何かしらのアクションを起こしたいと考えています。
特集の候補としては、「ジャッキー映画のフォロワー作品集」「特撮番組と格闘アクション」「ゲイリー・ダニエルズの主演作」、そして以前から温めっぱなしの「真樹日佐夫原作の映像化作品」などを検討中です(前回の特集が香港映画系だったので、次回は邦画系で行くかも?)。
これから季節はジメジメとした梅雨に突入しますが、それに負けないような熱い作品を紹介していきたいと思います! …なんだか毎年同じこと言ってるなぁ、自分(爆



05/03 『マスター・オブ・リアル・カンフー/大地無限』
05/07 『沈黙の標的』
05/12 『ロミオ・マスト・ダイ』
05/16 『ブラック・ダイヤモンド』
05/21 『痩せ虎とデブゴン(痩虎肥龍)』
05/27 『上海13』
05/31 更新履歴(2013年/5月)

『上海13』

2013-05-27 22:37:35 | 王羽(ジミー・ウォング)
「上海13」
「必殺・ザ・ドラゴン」
原題:上海灘十三太保
英題:Shanghai 13/All the Professionals
製作:1984年

●いやぁ…これは久々に凄いものを見たなぁ…(汗)。本作は香港映画界を代表する大導演・張徹(チャン・ツェー)が監督したオールスター活劇で、TVドラマとして作られたものを再編集した作品です。
日本では長いこと国内版ビデオが入手困難となっていましたが、近年になって国内版DVDが発売されたため、現在は容易に視聴できるようになりました(かくいう私も国内版DVDでようやっと視聴した次第です)。
 出演者は特別出演のジミー先生(出番少ない)を筆頭に、狄龍(ティ・ロン)、陳觀泰(チェン・カンタイ)、戚冠軍(チー・クワンチュン)、鹿峰(ルー・フェン)などの張徹作品スターがズラリ!劉華(アンディ・ラウ)や尤少嵐(ソニー・ユー)といった外部の俳優も顔を見せています。
ストーリーは南京政府の機密文書を巡る争奪戦で、政府の刺客とそれに反抗しようとする人々との死闘が展開されます。しかしそういった時代背景を気にする必要はありません。何故なら本作は、最初から最後まで男たちの死闘”だけ”を描いているからです!(笑

 とにかくストーリーは二の次三の次!物語は「功夫スターたちが戦って死ぬ→場所を移動する→功夫スターたちが戦って死ぬ→場所を移動する…」という流れを延々と繰り返しながら進んでいきます。
ここに張徹が得意とする裏切りと確執のサスペンス、刺客集団・上海13のメンバー(誰が敵で味方か解らない)などが絡むため、アクションの濃さは並大抵の功夫映画をはるかに凌駕していました。
 その反面、張徹の監督作にしてはストーリー面が弱く、過去の傑作と比べると不発気味です。本作はこの点を膨大な量のアクションシーンで補っており、一流の功夫スターたちによるガチンコ対決をこれでもかと堪能できます。
力強い拳さばきを見せる狄龍、身軽さを存分に発揮する程天賜、武器戦闘ならお任せの鹿峰、強力無双の陳星(チン・セイ)などなど…。『少林寺列伝』ほどではありませんが、出演者たちが披露するアクションは素晴らしいものばかりでした。

 …しかし、満貫全席を一気に食べようとすれば腹を壊してしまうもの。功夫片を見慣れているはずの私も、本作を視聴した後は物凄い疲労感に襲われてしまいました(苦笑
決して功夫映画ファン以外には薦められないものの、アクションの濃度だけは多の追随を許さない作品。もし本作を視聴する場合は、適度な休憩を挿みながら見ないと冗談抜きで疲れるので御注意下さい。

『痩せ虎とデブゴン(痩虎肥龍)』

2013-05-21 21:37:03 | 洪金寶(サモ・ハン・キンポー)
「痩せ虎とデブゴン」
原題:痩虎肥龍
英題:Skinny Tiger and Fatty Dragon
製作:1990年

●本日紹介するのは、デブゴンの名を冠した(現時点で)最後の作品です。主演は洪金寶(サモ・ハン・キンポー)と麥嘉(カール・マッカ)、監督はラスボスも兼ねている劉家榮(ラウ・カーウィン)で、奇しくもデブゴン映画の初期を支えた3人が再結集しています。
しかし彼らを取り巻く状況は、『豚だカップル拳』を撮った70年代末期から大きく変化していました。サモハンは古巣のゴールデンハーベストを抜け、麥嘉が設立に関わった新藝城企業有限公司(シネマシティ)も90年代を境にペースダウン。それぞれが苦闘の時代を送っていたのです。

 そんな彼らが集まり、かつて自分たちが得意としたジャンルの再演に臨んだのが、この『痩せ虎とデブゴン』です。
サモハンは『燃えよデブゴン』の時と同じ李小龍マニアを、麥嘉は『悪漢探偵』を思わせるお調子者の女好きをそれぞれ好演。そのため90年代の作品とは思えないほど古臭い印象を受けますが、時流に関係のなくなった今だからこそ楽しめる作品と言えるでしょう。
 ストーリーはいちいち細かく書くほどではありません(笑)。おバカな刑事コンビのサモハン&麥嘉が、シンガポール観光や呉家麗(ン・ガーライ)のおっぱいを楽しみつつ、劉家榮率いる麻薬密売組織と戦う様子を描いています。
全体的にかなりゆる~い感じの作品で、呉家麗の扱いなどに疑問を感じるものの、アクションは思ったより激しいものを見せていました。サモハンの李小龍チックな動きは相変わらず完成度が高く、終盤のVSマーク・ホートンでは『ドラゴンへの道』のラストバトルをちょこっと再現しており、こちらも必見です。

 ただ、サモハンの李小龍っぷりは『燃えよデブゴン』より低めで、常に李小龍を意識していた第1作とは趣を異にしています。その代わりオーソドックスな肉弾戦が増えており、最後のVS劉家榮では集団戦・ナイフ2刀流・李小龍が混ぜこぜとなった闇鍋バトルが展開されていました。
たとえ時を経て、自分たちのスタイルが時代遅れになろうとも、己を貫き通した3人の男たち。映画としてはまずまずの出来ですが、本作にはサモハンたちの揺ぎない信念が込められていた…というのは少し考えすぎでしょうか(苦笑

『ブラック・ダイヤモンド』

2013-05-16 23:22:44 | 李連杰(ジェット・リー)
「ブラック・ダイヤモンド」
原題:Cradle 2 The Grave
中文題:同盜一撃
製作:2003年

●宝石強盗グループを率いるDMXは、金庫破りの最中に謎の男・李連杰(ジェット・リー)から、「ブラック・ダイヤモンドに手を出すな」と忠告を受ける。だが彼はそれを無視し、奇妙な黒いダイヤの粒を盗み出した。
実はこの黒いダイヤ、マフィアのマーク・ダカスコスが武器商人に売り込もうとしていた大変な代物だった。彼はDMXの娘を人質にして返還を迫るが、当のダイヤは裏社会の大物であるシャイ・マクブライドに横取りされてしまう。DMXは李連杰と協力し、それぞれの方法でダイヤの行方を追った。
しかし彼らの苦労も虚しく、先回りしたマークによってシャイとその部下は皆殺しにされ、ダイヤは奪われてしまう。絶望的な状況の中、娘からの連絡によって敵の居場所が発覚。DMXと李連杰は仲間たちと共に、凶悪なマークの一団に立ち向かっていく…。

 前回が『ロミオ・マスト・ダイ』だったので、今回もアンジェイ・バートコウィアクの監督作をひとつ。本作は『ロミオ~』『DENGEKI 電撃』に次ぐ、DMX3部作の最後を飾る1本です。
主演のDMXは前々作で脇役、前作で主人公のライバルを演じており、とうとう本作で主演の座を射止めたことになります。しかし、彼が主役になってもアンジェイ監督の作風は変わらず、今回も軽いストーリーや代わり映えのしないアクションで構成されていました(DMXの「娘を愛する父親」という役柄だけは前2作より評価できるのですが)。
一方、動作設計は『ロミオ~』に続いて元奎(ユン・ケイ)が勤め、不評だったCGやワイヤーワークを撤廃。よりアクション色を強めていますが…アンジェイ監督の悪い癖である「肝心なところが徹底されていない演出」により、またも問題が生じていました。

 まず中盤で李連杰が賭け試合に挑む場面があり、ここで後に『エクスペンダブルズ』で仲間になるランディ・クートゥア(!)と対峙します。実に興味深いカードですが、このとき李連杰は戦いに乗り気ではなく、何度か手合わせをしただけですぐに戦いが終わってしまうのです。
また、終盤では李連杰VSマークという夢の対決が実現するものの、DMXらの戦いがチャカチャカと挿まれるせいで勝負に集中する事ができません。尺自体も短く、せめて『ロミオ~』のVS王盛(ラッセル・ウォン)戦くらいバチバチやりあって欲しかったですね。
 結果的にDMX3部作はヒットを記録しますが、どれも典型的なB級アクション映画でしかなく、過度な期待をしていると必ずや肩透かしを食らうことになります。
とりあえずアクションなら『ロミオ~』、顔合わせを楽しむなら本作、セガールを堪能したいなら『電撃』がお薦め。休日の昼下がりに、頭をカラッポにして見るには最適の作品群といえるでしょう(というかそれ以外の何物でもありません・苦笑)。

『ロミオ・マスト・ダイ』

2013-05-12 23:56:04 | 李連杰(ジェット・リー)
「ロミオ・マスト・ダイ」
原題:Romeo Must Die
製作:2000年

●物語はNYで中国系マフィアのボスの息子、ジョン・キット・リーが殺されたことから始まる。この犯人不明の一件が発端となり、対立する中国系マフィアと黒人ギャングは一触即発の状況に陥っていた。
一方、ジョンの兄弟で元警官の李連杰(ジェット・リー)は、報告を聞いて香港の刑務所を脱獄。密かに単独で真相解明に乗り出した。調査の過程で、彼は黒人ギャングのボスの娘・アリーヤと接触する。彼女は気さくな李連杰に惹かれていくが、2つの勢力は日に日に緊張を増すばかりだ。
そんな中、李連杰はジョンの遺した謎の住所録を見つけ、抗争事件の裏側に隠された巨大な陰謀の存在に気付いていく。果たして、引き裂かれた2人の男女の運命は?そして見えざる敵との戦いの行方は…!?

 本作はアンジェイ・バートコウィアク監督によるDMX3部作の第1弾、そして李連杰がハリウッドで主演した初の映画です。DMX3部作といっても、本作におけるDMXは単なる脇役でしかなく(しかも死ぬ)、実質的に李連杰の1人舞台となっています。
物語はロミオとジュリエット的な悲恋を主軸にしていますが、組織と恋の板ばさみになって苦悩するシーンなどは殆ど無く、せっかくの恋愛要素を生かし切れていません。同じDMX3部作の『DENGEKI 電撃』ほど露骨ではないですが、誰が裏切り者なのかもバレバレだったりします(笑
 ただ今回はアクション演出が(アンジェイ監督にしては)普通であり、全編に渡って力強い功夫ファイトが展開されていました。少しワイヤーやCGで飾りすぎな気もしますが、個人的には許容範囲内。王盛(ラッセル・ウォン)、葉芳華(フランソワーズ・イップ)らとの対決も一件の価値ありと言えます。
全体の感想としては、ストーリーもアクションも新鮮味が無く、ラブストーリーも中途半端。良くも悪くも平均的なアクション映画の域から脱していない凡作と言えるでしょう。ラストバトルは『電撃』『ブラック・ダイヤモンド』よりスッキリしていますが、こちらも飛び抜けて良い出来では無かったですね。

『沈黙の標的』

2013-05-07 22:39:01 | マーシャルアーツ映画:下
「沈黙の標的」
原題:Out for a Kill
製作:2003年

●数年前、私はyoutubeでスティーブン・セガールの動画を見たのですが、その中で少林僧?や猿拳使いが登場するカットがあり、ずっと何の作品なのか気になっていました。しばらくして件の映像が本作のものと分かり、さっそく視聴してみました…が、これは……。
物語は、麻薬密売を企むチャイニーズマフィアの陰謀に考古学者(元怪盗)のセガールが巻き込まれ、殺された助手と妻の敵を討つために戦うというもの。とてつもなくシンプルなプロットですが、何故か本作は全編に渡ってテンションが異様に低く、1つとして盛り上がるシーンが存在しません。
これは『ICHIGEKI 一撃』のように意図的に抑えた作風にしたのではなく、明らかに演出の不備によるものです。ストーリー展開は飛び飛び、映像はスタイリッシュを気取ろうとして大失敗、そして全体的に画面が暗いというオマケ付き。これらの欠点が災いし、単純なはずの話が更に分かりづらくなっていました。

 一方、ファイト・コレオグラファーを香港の武師である劉志豪(かの『ワイルド・ブリット』『ツイ・ハーク THE マジック・クレーン』の武術指導を務めた実力派)が担当しているので、劇中の格闘アクションはそこそこ見栄えがあります。
本作で最大の…というか数少ない見せ場は、先述のセガールVS少林僧、そしてVS猿拳使いの2つです。特にユニークなのがVS猿拳使いで、敵がワイヤーワークを駆使して香港映画チックに飛び回り、いつもより若干動けているセガールと戦いを繰り広げていました。
劉志豪はよく程小東(チン・シウトン)と組んで仕事をしており、この一戦は恐ろしくチープですが程小東の影響を感じさせるものになっています。しかし、それ以外の格闘シーンはまったくもって盛り上がらず、妻を殺した仇敵との決着も驚くほどアッサリしています(ラスボスの最期にいたってはギャグと紙一重)。

 セガールVSチャイニーズマフィア…味付け次第で化ける可能性はあったのに、このような結果で終わったのは残念至極。この時期のセガールは香港を意識した作品をいくつか撮っていますが、本作はその中でワーストの出来と言えるかもしれません。
ちなみに本作の監督であるマイケル・オブロウィッツは、香港系スタッフ抜きで作った『撃鉄 GEKITZ ワルシャワの標的』を手掛けていますが…こっちもかなり駄目そうだなぁ(汗

『マスター・オブ・リアル・カンフー/大地無限』

2013-05-03 22:32:33 | 李連杰(ジェット・リー)
「マスター・オブ・リアル・カンフー/大地無限」
原題:太極張三豐
英題:The Tai-Chi Master/Twin Warriors/Tai-Chi
製作:1994年

▼私が功夫映画に目覚めたのは、李連杰(ジェット・リー)の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』系列を見たことがきっかけでした。
しかし当時の私は、李連杰よりも『ワンチャイ』というブランドに執着しており、彼が主演した他の古装片をスルーしていました。そこで最近は未見の李連杰作品をチェックしているのですが、この映画は視聴後に「なぜ当時見ようとしなかったんだ!」と悔やんでしまった1本です(苦笑
本作は『ワンチャイ』と同じく少林英雄を扱った映画で、太極拳の創始者といわれる張三豐に李連杰が扮しています。監督は袁家班の袁和平(ユエン・ウーピン)で、共演には一流の功夫職人たちが勢揃い。アクションのひとつひとつに拘った、実に袁和平らしい作品に仕上がっています。

■舞台は明朝時代の中国。少林寺の修行僧であった李連杰と錢小豪(チン・シウホウ)は、腕前を競いながら鍛錬に励んでいた。しかし、寺の競技大会で反則技を使った兄弟子に対し、錢小豪が必要以上に攻め立てたことでトラブルが起こってしまう。
2人は少林寺を出ることになるが、街では朝廷の人間が傍若無人に振舞っており、市井の人々を苦しめていた。ひょんなことから袁潔瑩(フェニー・ユン)と出会い、楊紫瓊(ミシェール・ヨー)を助けた2人は、役人に追われて反政府派のアジトへと逃げ込んだ。
 その後、功名心の強い錢小豪は役人になる道を選び、李連杰は袁潔瑩たちのもとに残留。やがて朝廷の追求が反政府派に及び、アジトが襲撃を受けてしまった。李連杰たちは雪辱を晴らすべく、宦官・孫建魁を討とうとするのだが、これは出世欲に支配された錢小豪の罠であった。
思わぬ反撃によって反政府派は大打撃を受け、この一件で武勲を立てた錢小豪は将軍へと出世する。そして忠誠心を示すために袁潔瑩を殺害し、捕まった楊紫瓊を救いに来た李連杰を徹底的に痛めつけた。その姿に、かつて少林寺で修行していた頃の面影は無かった…。
どうにか楊紫瓊を助け出した李連杰は、精神的なショックにより心神喪失状態となるが、仲間たちの献身的な介護により復活。少林寺から去る際に受け取った巻物をもとに、相手の力を利用する太極拳の極意に目覚めていく。柔の拳を操る李連杰と、剛の拳を振るう錢小豪…勝つのはどっちだ!?

▲袁和平が監督した太極拳映画といえば『ドラゴン酔太極拳』ですが、本作はそれに負けない完成度を誇っています。まず見事なのがワイヤーワークを交えたアクションの数々です。少林寺での乱戦から始まって、客棧での戦いや孫建魁との決着に至るまで、高度な技の応酬を見ることができます。
李連杰が繰り出す太極拳も非常に美しく、敵の攻撃を流れるような動作で受け流す様は、『ワンチャイ』系列とはまた違った魅力に満ちています。ただ、ラストバトルが李連杰のワンサイド・ゲームと化しており、錢小豪が一方的にボコられるだけだったのは惜しいと思いました。
ストーリーもオーソドックスすぎて意外性に欠けますが、それ以外は概ねクオリティの高い逸品。もし『ワンチャイ』系列で李連杰に興味を持った方は、本作からの視聴をお薦めしたいですね。ちなみに続編の『太極神拳』あまり面白くありません(爆