「刑事物語」
製作:1982年
▼日本における格闘アクションといえば、数多くの代表格が存在します。ソニー千葉の空手映画、『ビーバップハイスクール』を筆頭とした不良アクション、武術を真正面から描いた西冬彦作品などなど…。
どれもケレン味あふれる作品ばかりですが、本作はそうした派手さ・華やかさとは無縁でありながら、これらのメジャータイトルと肩を並べるまでに至った異色のアクション映画です。
まず主演が武田鉄矢で、中国拳法を駆使する刑事役という点。これだけでも異色に思えますが、本作はそこに悲劇的なヒロインの物語やトルコ嬢の悲哀など、様々な要素を大量に盛り込んでいます。
しかし本作はこうした要素のメガ盛りを破綻させることなく、最後まで簡潔に描き切っているのです。アクションスターではない俳優による格闘映画は数あれど、ここまでストーリー・アクションともに抜かり無し!という作品はそうそうありません。
■福岡県警の刑事だった武田は、静岡県の沼津署に転属となる。直前のトルコ風呂摘発で知り合った聾唖の美女・有賀久代を連れた彼は、そこでトルコ嬢の連続殺人事件の捜査に加わる事となった。
なかなか有力な情報が得られない中、銀行襲撃事件で人質となった女性から事件絡みの証言が得られ、昔馴染みの元侠客・花沢徳衛から重要なタレコミが飛び込んできた。
曰く、この事件はヤクザと無関係な組織による仕業で、女たちをシャブ漬けにして売春させている連中の存在が浮上する。しかし有賀との気持ちがすれ違い始めていた武田は、トルコ風呂のガサ入れで必要以上に暴れてしまう。
その結果、偶発的とはいえ死人が出てしまい、警察はマスメディアから非難を浴びることに…。ところが何者かに武田が襲撃された事で、有賀が組織に狙われている事が判明する。
武田は敵の尻尾を掴むべく、仲間の刑事とともに彼女の周囲を張り込む。やがて組織の正体が白美社というクリーニング店だと判明し、2人は誘拐された有賀を追って敵陣に乗り込んだ!
▲最初の方で結論を書いてしまいましたが、本作は心に沁みるストーリーを構築し、なおかつ鮮烈なアクション描写に目を見張る快作に仕上がっていました。
まず始めは邦画らしい落ち着いた雰囲気で始まり、昭和の香りを感じさせる情景に心地良さを感じつつも、私は「これって本当に格闘映画?」と不安に思い始めてしまいました(苦笑
しかし銀行襲撃犯を撃退する衝撃的なシーン(相手に的を与えて逆に行動を制限させるという策に仰天!)から雰囲気が一変し、武田と有賀の関係からも目が離せなくなっていきます。
その後も何度となく武田の激しいアクションが繰り広げられ、二段構えのサプライズ(予告編がネタバレ気味なので注意)と切ない結末、余韻を後押しする吉田拓郎の主題歌にはとても感動しました。
重要な伏線や小道具の出し方も実に自然で、刑事アクションにありがちな“陥れられて孤軍奮闘”や、“上層部や官僚に対する批判”といった展開に舵を切らず、作品の身の丈にあったストーリーづくりに徹している点も好印象です。
組織はどうやって有賀と接点を持ったのか、田中邦衛に関する描写がやや物足りない等の不満点もありますが、全体的には上々の出来。ただ、言うなれば本作は武田鉄矢の俺様映画じみた面があり、このへんは好みが分かれるところと思われます。
さてアクション描写についてですが、武田の動作はさすがに本職のアクションスターには敵わないものの、撮影に際して蟷螂拳の修行をしたという彼の動きは力強く、叩き込まれる打撃は真に迫るものがありました(武術指導は松田隆智!)。
先述したVS襲撃犯の他にも、トルコ風呂での大乱闘では李小龍チックな緩急を付けながらザコを一蹴! ラストバトルはボルテージが最高潮に達し、鉄パイプの掴み合いで膠着→足で踏んづけて落とすという対処法など、実戦的なテクニックが随所で炸裂します。
そして語り草となっているハンガーヌンチャクもインパクト抜群で、流れるようにハンガーを操る武田の勇姿は日本のアクション映画史に残る名シーンと言えるでしょう。
そんなわけで、2ヶ月ほど続いた「メジャー大作を振り返る」もこれにて終了。やはりメジャーな作品には名声に見合っただけの特色や長所が存在し、名作と呼ばれるだけのクオリティがある事を再認識させられました。
当ブログは今後もマイナー指向で作品紹介をしていくつもりですが、時にはメジャーだからといって敬遠することなく、様々な作品に出会いたいと改めて思った次第です。それでは、今回はこの辺で………。(特集、終わり)
製作:1982年
▼日本における格闘アクションといえば、数多くの代表格が存在します。ソニー千葉の空手映画、『ビーバップハイスクール』を筆頭とした不良アクション、武術を真正面から描いた西冬彦作品などなど…。
どれもケレン味あふれる作品ばかりですが、本作はそうした派手さ・華やかさとは無縁でありながら、これらのメジャータイトルと肩を並べるまでに至った異色のアクション映画です。
まず主演が武田鉄矢で、中国拳法を駆使する刑事役という点。これだけでも異色に思えますが、本作はそこに悲劇的なヒロインの物語やトルコ嬢の悲哀など、様々な要素を大量に盛り込んでいます。
しかし本作はこうした要素のメガ盛りを破綻させることなく、最後まで簡潔に描き切っているのです。アクションスターではない俳優による格闘映画は数あれど、ここまでストーリー・アクションともに抜かり無し!という作品はそうそうありません。
■福岡県警の刑事だった武田は、静岡県の沼津署に転属となる。直前のトルコ風呂摘発で知り合った聾唖の美女・有賀久代を連れた彼は、そこでトルコ嬢の連続殺人事件の捜査に加わる事となった。
なかなか有力な情報が得られない中、銀行襲撃事件で人質となった女性から事件絡みの証言が得られ、昔馴染みの元侠客・花沢徳衛から重要なタレコミが飛び込んできた。
曰く、この事件はヤクザと無関係な組織による仕業で、女たちをシャブ漬けにして売春させている連中の存在が浮上する。しかし有賀との気持ちがすれ違い始めていた武田は、トルコ風呂のガサ入れで必要以上に暴れてしまう。
その結果、偶発的とはいえ死人が出てしまい、警察はマスメディアから非難を浴びることに…。ところが何者かに武田が襲撃された事で、有賀が組織に狙われている事が判明する。
武田は敵の尻尾を掴むべく、仲間の刑事とともに彼女の周囲を張り込む。やがて組織の正体が白美社というクリーニング店だと判明し、2人は誘拐された有賀を追って敵陣に乗り込んだ!
▲最初の方で結論を書いてしまいましたが、本作は心に沁みるストーリーを構築し、なおかつ鮮烈なアクション描写に目を見張る快作に仕上がっていました。
まず始めは邦画らしい落ち着いた雰囲気で始まり、昭和の香りを感じさせる情景に心地良さを感じつつも、私は「これって本当に格闘映画?」と不安に思い始めてしまいました(苦笑
しかし銀行襲撃犯を撃退する衝撃的なシーン(相手に的を与えて逆に行動を制限させるという策に仰天!)から雰囲気が一変し、武田と有賀の関係からも目が離せなくなっていきます。
その後も何度となく武田の激しいアクションが繰り広げられ、二段構えのサプライズ(予告編がネタバレ気味なので注意)と切ない結末、余韻を後押しする吉田拓郎の主題歌にはとても感動しました。
重要な伏線や小道具の出し方も実に自然で、刑事アクションにありがちな“陥れられて孤軍奮闘”や、“上層部や官僚に対する批判”といった展開に舵を切らず、作品の身の丈にあったストーリーづくりに徹している点も好印象です。
組織はどうやって有賀と接点を持ったのか、田中邦衛に関する描写がやや物足りない等の不満点もありますが、全体的には上々の出来。ただ、言うなれば本作は武田鉄矢の俺様映画じみた面があり、このへんは好みが分かれるところと思われます。
さてアクション描写についてですが、武田の動作はさすがに本職のアクションスターには敵わないものの、撮影に際して蟷螂拳の修行をしたという彼の動きは力強く、叩き込まれる打撃は真に迫るものがありました(武術指導は松田隆智!)。
先述したVS襲撃犯の他にも、トルコ風呂での大乱闘では李小龍チックな緩急を付けながらザコを一蹴! ラストバトルはボルテージが最高潮に達し、鉄パイプの掴み合いで膠着→足で踏んづけて落とすという対処法など、実戦的なテクニックが随所で炸裂します。
そして語り草となっているハンガーヌンチャクもインパクト抜群で、流れるようにハンガーを操る武田の勇姿は日本のアクション映画史に残る名シーンと言えるでしょう。
そんなわけで、2ヶ月ほど続いた「メジャー大作を振り返る」もこれにて終了。やはりメジャーな作品には名声に見合っただけの特色や長所が存在し、名作と呼ばれるだけのクオリティがある事を再認識させられました。
当ブログは今後もマイナー指向で作品紹介をしていくつもりですが、時にはメジャーだからといって敬遠することなく、様々な作品に出会いたいと改めて思った次第です。それでは、今回はこの辺で………。(特集、終わり)