功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

更新履歴(2014年/12月)

2014-12-31 23:37:52 | Weblog
 …さて、この記事をもちまして年内の更新は終了いたします。今年はいくつか特集を組むことができましたが、そのうち2つが日本産の作品で占められていたり、直前になって視聴が出来なかったりと粗も目立ちました。
来年の抱負については「功夫動作片番付」に書いた通りで、前から敬遠していたニコイチ映画特集の始動も視野に入れています(爆)。ちなみに先月言及した東京遠征ですが、こちらは2泊3日の予定(観光より買い物が主)を順当に消化し、十二分に楽しむことができました。収穫もそこそこあったので、いずれこちらも紹介したいですね。
なお、ブログの更新再開は1月の中旬を予定しており、その間のコメントやメールの返信は随時行いたいと思います。そんなわけで皆さん、良いお年を!


12/03 『愛しのOYAJI 激突編』
12/11 『ファイヤー・ドラゴン/火雲伝奇』
12/15 『アクシデンタル・スパイ』
12/22 『一山五虎』
12/28 『ドラゴン武芸帳』
12/31 【功夫電影専科:功夫動作片番付!(2014年度)】
     更新履歴(2014年/12月)

【功夫電影専科:功夫動作片番付!(2014年度)】

2014-12-31 22:53:48 | Weblog
 長いようで短かった気がする2014年も、いよいよ終了間近です。人によって様々な1年を過ごされたかと思いますが、当方はプライベートでとても大きな動きがあり、忘れられない年になりました。
一方、ブログの更新については相変わらずのマイペースで、紹介したタイトルの総数は計53本となっています。全体的にTVドラマや特撮作品の記事が多く、こうしたジャンルにも注目すべき作品があると改めて認識しました。
そこで今回は、1年間に紹介した作品からベスト10&ワースト10を決めるという身勝手な年末恒例企画、「功夫動作片番付」で1年を締めくくりたいと思います!


 【功夫動作片番付(ワースト10)】
第10位『レジェンド・オブ・トレジャー 大武当 失われた七つの秘宝』
第9位『愛しのOYAJI 激突編』
第8位『リーサル・パンサー2』
第7位『デビルズ・ストーム』
第6位『リーサル・パンサー』
第5位『ディレイルド 暴走超特急』
第4位『太極陰陽拳』
第3位『三十七計/擒龍三十七計』
第2位『アラジンと魔神のランプ』
第1位『女カンフー 魔柳拳』
 今年は致命的な駄作をあまり紹介しなかったので、ワースト部門には珍作カテゴリからもランクインしています。今回のランキングでは全体的にリスペクトが足りず、ベテラン俳優や技量の高い役者を蔑ろにする作品が多く見受けられました。
3人の功夫スターを揃えたのにツボをことごとく外した『レジェンド・オブ・トレジャー』、格闘スターを陳腐な世界観に縛り付けた『アラジンと魔神のランプ』『デビルズ・ストーム』も大概ですが、1位の『女カンフー 魔柳拳』は別格の存在といえるでしょう。
 なにしろ出演者はやたらと豪華なのに、野暮ったい演出によって個々の持ち味を消され、ストーリーもアクションもグダグダの極みとなっているのです。質の酷さでいえば『アラジンと魔神のランプ』も負けていませんが、『酔拳』ブームに乗っかろうとした安易な姿勢なども加味し、この順位となりました。
ちなみに当企画が始まって以来、香港映画がワースト1位になるのはこれが初だったりします(爆


 【功夫動作片番付(ベスト10)】
第10位『仮面ライダー×仮面ライダー フォーゼ&オーズ MOVIE大戦MEGA MAX』
第9位『レディ・スクワッド 淑女は拳銃がお好き』
第8位『十八羅漢拳』
第7位『ドラゴン武芸帳』
第6位『キル・オール!! 殺し屋頂上決戦』
第5位『大教頭與騷娘子』
第4位『暗黒街/若き英雄伝説』
第3位『酔馬拳・クレージーホース』
第2位『洪家拳対詠春拳』
第1位『帝戦 BAD BLOOD』
 一方で今年は良作に触れる機会が多かったため、ベスト部門は賑やかなラインナップとなりました。クラシカルな作品が大半を占める中、邦画からは見事な肉弾戦を見せた『MOVIE大戦MEGA MAX』と、過激なマーシャルアーツが炸裂する『キル・オール!!』が名を連ねています。
そして栄えある1位は『洪家拳対詠春拳』と『帝戦 BAD BLOOD』のどちらにするか迷いましたが、ここはラストの衝撃度から『帝戦』に決定!劇中で繰り広げられるアクションも素晴らしく、とりわけ蒋[王路]霞(ジャン・ルーシャー)の活躍には目覚ましいものがありました。
 ただ、トップこそ取り損ねましたが『洪家拳対詠春拳』もなかなかの秀作であり、『帝戦』さえ無ければ余裕で1位だったかもしれません。他にもランク外ですが『闇を照らす者』のスタントアクション、『若い貴族たち 13階段のマキ』の破天荒なストーリー&立ち回りも印象的でした。
香港、台湾、韓国、アメリカ、タイ、そして日本…。まだまだ世界中には私の知らない、見たことのない功夫片&格闘映画がたくさん眠っています。来たる2015年は、より幅広いジャンルから分け隔てなく作品をピックアップし、充実したブログ運営を心掛けたいですね。

『ドラゴン武芸帳』

2014-12-28 22:24:51 | 王羽(ジミー・ウォング)
「ドラゴン武芸帳」
「ドラゴン武芸帖」
原題:白道/黒白道
英題:The Brave and the Evil
製作:1971年

▼今年も残すところあとわずか…というわけで2014年最後の作品紹介となる今回は、年末恒例の王羽(ジミー・ウォング)作品でいってみましょう。
本作はジミー先生が古巣のショウ・ブラザーズから離脱し、ゴールデン・ハーベストや独立プロで活躍し始めた頃に撮られたもので、当時の年間興行収入7位(資料によっては8位)にランクインしています。
肝心の内容は驚くほどシンプルですが、巨大な城砦や大勢のエキストラを動員してスケール感を演出。アクションシーンも見応えがあり、ヒットしたのも頷ける出来となっていました。

■九華山に本拠をかまえる張沖(ポール・チャン)盗賊団は、悪の限りを尽くしていた。盗賊団には大勢の兵隊に加え、手強い3人の幹部(薛漢・曾江・萬重山)が控えており、張沖自身も恐るべき剣技の使い手である。
この日も連中は[金票]局(用心棒を兼ねた運送業者)を襲撃し、リーダーの馬驥を始めとした運送人全員を殺害。まんまと宝物を強奪するが、馬驥の娘である上官靈鳳(シャンカン・リンホー)が仇討ちに来ることを予期しつつあった…。
 一方、諸国を行脚していた剣客のジミー先生は、たまたま立ち寄った茶屋で彼女の噂を耳にした。彼は1人で仇討ちに向かう上官靈鳳の身を案じ、密かにバックアップしようと思い立つ。
盗賊団の息がかかった旅館で合流した2人は、反発しつつも敵の連絡係だった苗天を討ち取り、曾江と萬重山も連続で撃破する。しかし上官靈鳳が1人で先走り、敵陣に突入して捕えられてしまう。
ジミー先生は対盗賊団用の秘密兵器を開発すると、盗賊団の志願者に化けてアジトに潜入した。四方八方敵だらけという状況の中、上官靈鳳を助け出したジミー先生は最後の戦いに臨む!

▲この作品を語るうえで無視できないのが、有名なジミー先生と上官靈鳳の大ゲンカ事件です。2人はこのトラブルが原因で二度と共演しなくなったそうで、その影響は本編中にも波及しています(中盤で明らかに上官靈鳳が代役を使っているシーンがある)。
しかし本作はこうしたゴタゴタがあったにもかかわらず、なかなかの力作に仕上がっていました。先述したスケール感もさることながら、ストーリーもテンポ良く進むので非常に見やすく、主役2人のキャラクターもそれなりに立っています。
 アクションも激しさに富み、大人数を相手にしたバトルが画面狭しと展開! 圧巻はラストの剣戟戦で、長時間にわたって延々とつばぜり合いが繰り広げられ、泥臭くも生々しい迫力に満ちていました。
ちなみにこの当時、まだジミー先生は色物路線に染まりきっておらず(『片腕ドラゴン』を撮ったのが本作と同じ年)、今回は奇抜なギミック描写が控えめとなっています。
 唯一の例外は張沖が使用する武器で、こちらは『片腕必殺剣』に登場した変形剣を参考にしているものの、ラストにジミー先生らしいアレンジがされていました(笑
最後までトラブルに振り回されつつも、自分らしさを貫き通したジミー先生の意地が垣間見える作品。当ブログでは今後もこうした傑作から珍作、果ては駄作まで紹介していくつもりなので、また来年もよろしくお願いします!

『一山五虎』

2014-12-22 22:43:28 | カンフー映画:佳作
一山五虎
英題:Bravest Fist
製作:1974年

●囚人の染野行雄は、手錠で繋がれた仲間と共謀して脱獄を決行するも、意見の相違から対立。殴り合いの末に相手を殺害し、何処ともなく行方をくらました…。
それから数年後、こちらは船着場の労働者である陳惠敏(チャーリー・チャン)。正義感と腕っぷしの強い彼は、今日も難癖をつけてきた悪党どもを蹴散らしていたが、妹から「母の体調が思わしくない」と知らされる。
 さっそく実家に帰ることになった陳惠敏は、途中で悪党どもの賭場で袋叩きにされていた石天(ディーン・セキ)と出会い、これを助けた。悪党のボスに収まっていた染野は、悪質な手段で報復を開始していく。
まず最初に船着場の監督を従わせようと拷問にかけ、彼が死亡すると船着場の買収に乗り出した。それを知った陳惠敏は「証拠はないが絶対お前らの仕業だろ!」と殴り込み、タイマン勝負を挑んだ染野はボロ負けしてしまう。
 そこで彼は功夫の達人コンビを雇うが、今度は妻が手下の陳耀林と不倫していることが判明。激怒した染野は陳耀林を撲殺し、まったく本筋と関係のない戦いを制した(苦笑
そのころ、襲撃を受けた陳惠敏は監督の娘とその彼氏(曾江)を連れ、実家に身を寄せていた。つかの間の平和を噛みしめる一行だが、陳惠敏が石天に呼び出されている間に敵が侵入し、彼の妹と監督の娘を誘拐されてしまった。
 陳惠敏の母も重傷を負い、怒りを爆発させた陳惠敏は敵のアジトに突撃! 染野たちを追って別荘に向かうが、そこには何故か石天の姿が…?
「あんたのせいで俺の妹たちが!」と詰め寄る陳惠敏だが、敵に見つかったため一緒に戦うこととなる。果たして彼らは悪を倒し、正義を示すことが出来るのだろうか?

 『怒れ!タイガー/必殺空手拳』『空手ヘラクレス』の陳惠敏が、コメディ俳優の石天と共演した作品です。石天といえば『酔拳』『蛇拳』などで観客を大いに笑わせた名優であり、後年は映画プロデューサーとしても腕をふるいました。
そんな彼が陳惠敏とどう絡むのか気になるところですが、残念ながら思ったほどはっちゃけた活躍は見せてくれません(ギャグも一切なし)。当時はシリアス系の功夫片が主流だったので、こればかりは仕方ないと思うしかないでしょう。
とはいえ、本作の石天は弱々しい賭場の客と思わせて…という比較的重要な役で、ラストバトルでは大立ち回りを披露。最後にはちょっとしたサプライズもあり、当時としては扱いが大きかったと言えます。

 しかし個人的には、染野さん扮する不運すぎるボスが印象に残りました。まずオープニングでバトルを繰り広げるも、内容的にはゲスト出演と思しき方野VS江島が充実しており、インパクトで食われてしまいます。
その後も通りすがりの陳惠敏に賭場を潰されるわ、普通なら勝って一泡吹かせそうなタイマンバトルで惨敗するわ、戦力強化を図った矢先に妻の不倫が発覚するわ、突然現れた妻の兄に苦戦するわと受難が続くのです。
 彼の不幸はこれだけで終わらず、ラストバトルで陳惠敏にリベンジできるかと思いきや、なんの遺恨や因縁もない石天の相手をするはめに。それでもなんとか相手を倒そうとするも、警官隊に踏み込まれてあっさりと逮捕されていました。
功夫片のボスなら、普通は主人公にトドメを刺されるのが当たり前なのに、それさえもお預けにされるなんて…。最後に連行される染野さんの姿に、どことなく哀愁めいたものを感じたのは自分だけではないと思います(涙

 ちなみにアクションは陳惠敏と張午郎(ジョン・チャン)が指導しており、先述のオープニング戦と最終決戦では小手先の技術などにこだわらない、勢い重視のファイトが堪能できます。
また、典型的ながら李小龍作品の物真似をしないストーリーや、主人公サイドの犠牲が最小限で済んでいる(=作品が陰惨になりすぎていない)ことも見逃せません。取るに足らない作品ではありますが、私はけっこう好きですね。

『アクシデンタル・スパイ』

2014-12-15 23:34:14 | 成龍(ジャッキー・チェン)
「アクシデンタル・スパイ」
原題:特務迷城
英題:The Accidental Spy
製作:2001年

成龍(ジャッキー・チェン)はスポーツ用品店のしがない販売員。取り柄といえば、孤児院にいたころに習ったカンフーの腕前と、予知能力めいた力くらいしかなかった。
あるとき、強盗を撃退したことで英雄視されるようになった彼の前に、三流探偵の曾志偉(エリック・ツァン) が現れる。曾志偉は人探しの手伝いをしており、依頼人(末期ガンで余命僅か)が息子を探していると聞かされた。
 自分の父親かもしれない人物に会うため、ジャッキーは韓国のソウルへ。そこで記者を名乗る金[王攵](キム・ミン)と出会い、依頼人が世界的なスパイだったと知らされる。
謎の組織が暗躍する中、彼は死に際の依頼人から「私とゲームをしないか?」と持ちかけられた。そして僅かなキーワードを手掛かりに、トルコのイスタンブールへと飛んだ。
謎多き美女・徐若[王宣](ビビアン・スー)の秘密、CIAと消えた細菌兵器の行方、背後でうごめく裏社会の大物――。次から次へと示される謎の果てに、彼は意外なゲームの“答え”を知るのだが…。

 90年代末にハリウッドへの本格進出を果たし、名実ともに世界的なスターとなったジャッキー。しかしアメリカでの活動は制約が多く、従来のような映画作りは困難でした。
本作はそんな彼が香港に里帰りし、ハリウッドで実現できなかった“やりたかったストーリー”と“やりたかったアクション”をブチ込んだ作品なのです。
 しかし香港でヒットこそしましたが、作品自体は芳しい出来ではありません。予知能力の設定はいつの間にか忘れ去られるし、最後になぜ徐若[王宣]がああしたのかも不明瞭。他にも細かいところで「?」と思うシーンがあります。
私としては利用された挙句に見捨てられ、それでもスパイになるという最後のオチが納得できませんでした。あそこは曾志偉を一発ぶん殴っても良かったんじゃあ…。

 とはいえ、この物語からはジャッキーの“やりたかったストーリー”を窺い知ることが出来ます。本作の粗筋は非常にシリアスで、笑いの要素はごく一部とアクションパートに限られています。
当時のジャッキーは従来のコメディ路線から脱却し、それ以外の分野に挑戦しようとしていました。その第一歩が『ゴージャス』だったわけですが、周囲はあくまでコメディアンのジャッキーを求めたのです。
 ハリウッドに行ってもその傾向は変わらず、むしろ役柄が固定化されていく一方…。そこで彼は一計を案じ、本作でシリアスな作風に踏み切ったのだと思われます。
が、さすがにいきなり『新ポリス・ストーリー』のようなド直球で攻めるわけにもいきません。そこで今回はミステリー風味の味付けをし、舞台となる国々を異国情緒たっぷりに描写。その結果として、本作のような形に仕上がったのでしょう。

 一方の“やりたかったアクション”ですが、こちらは最初から最後までアクセル全開!ハリウッドで演じることのできない過激なスタントに、これでもかとチャレンジしていました。
まず初っ端にクレーンで高層ビルに突っ込んだかと思うと、電気ショック攻撃や金隠しバトルで笑いを取り、港をウインチでひっくり返すというムチャまでやらかします(笑
 その後もセスナをバイクで止め、タンクローリーと一緒に高架橋からダイブするなど、命がけのアクションをこなしていくジャッキー。しかしその有り余る熱意は、“やりたかったストーリー”と微妙なズレを引き起こしてしまうのです。
確かに本作のアクションは高度ですが、作品の持つシリアスな雰囲気にそぐわないものが多く、そのズレは終盤で臨界点に到達。ラスボスは適当に処理され、本筋から完全に脱線した救出劇が繰り広げられていました。

 “やりたかったこと”の不一致…本作が違和感のある作品になってしまったのは、これが最大の原因ではないでしょうか。もしかするとこのミスは、ジャッキーがハリウッドを意識しすぎた結果の産物なのかもしれません。
ちなみに彼は本作の3年後、『香港国際警察/NEW POLICE STORY』を足掛かりにシリアス線を開拓。ハリウッドでは相変わらずコメディ作品への出演が続くものの、李連杰(ジェット・リー)を始めとした大物俳優との共演を果たしていますが、こちらについてはまた別の機会にて……。

『ファイヤー・ドラゴン/火雲伝奇』

2014-12-11 22:50:13 | 女ドラゴン映画
「ファイヤー・ドラゴン/火雲伝奇」
「ファイヤー・ドラゴン」
原題:火雲傳奇
英題:Fire Dragon/The Fiery Dragon Kid
製作:1994年

▼かの『スウォーズマン/女神伝説の章』で、性を超越した唯我独尊なキャラクター・東方不敗を演じた林青霞(ブリジット・リン)。そのインパクトは非常に強く、多くのプロダクションから似たような役柄のオファーが相次ぎました。
本作もそうした作品の1つであり、古装片ブームに大きく貢献した名武術指導家・袁和平(ユアン・ウーピン)が監督を務めています。しかし便乗作は便乗作…先に言ってしまいますが、本作もそれほど凄い作品ではありません(苦笑

■さすらいの剣士・莫少聰(マックス・モク)は、暴君である單立文の謀反を知った兄から密書を託され、刺客の林青霞と死闘を展開していた。その際に彼は芸人一座に命を救われるが、肝心の密書を座長の呉君如(サンドラ・ン)にくすねられてしまう。
呉君如は莫少聰に一目惚れしており、仕方なく彼は一座に住み込んで機会を待つことに…。そんな中、林青霞が祝宴の席で名君を暗殺せんと動き出すも、すんでのところで莫少聰と呉君如の兄・巫剛に阻止された。
 そこで彼女は町娘になりすまし、一座に潜入して密書を奪おうと企んだ。莫少聰はこれを怪しむが、人々との交流によって林青霞は感情を取り戻していく。しかし、彼女の妹にして單立文の刺客・葉全真が襲撃に現れ、一座の中に犠牲者が出てしまった。
やがて2人の刺客は対立しはじめ、巫剛は好いていた林青霞の正体を知る事となる。果たして剣士たちの運命は? そして戦いの行方は…?

▲本作はストーリーの大半を大味なラブコメが占めており、『スウォーズマン』を期待して見た人は必ずやズッコケるであろう内容となっています(爆
このラブコメを許容できるか否かが本作を楽しむ判断基準となるわけですが、林青霞は善悪の間で揺れる刺客を見事に演じ切っているし、作品の質に関しても問題は無かったといえるでしょう。
 一方、アクションシーンは当時の古装片にありがちな、クルクル回ってキンキン斬りあうだけのパターンで構築されています(立ち回りの大半も役者自身ではなくスタントマンが担当)。
しかし特殊効果や武器を工夫することでマンネリ化を回避していて、ラストバトルでは可燃性の油がある場所(製油所?)でダイナマイトが飛び交い、大爆発が巻き起こるコマンド映画のような光景が繰り広げられていました(笑
 ただ、1つだけ気になるのが主人公を演じた莫少聰の扱われ方です。当初は主人公らしく活躍していた莫少聰ですが、ストーリーが進むにつれて林青霞と巫剛の恋愛がメインとなり、出番が激減していきます。
これだけなら「いつもの香港映画らしい無軌道な展開」で片付けられますが、最終決戦では林青霞らと一緒に参加しているはずなのに、彼自身が画面に一切映らなくなるという異常事態へと発展するのです。
 不可解な出来事はこのあとも続き、ラストシーンでは誰も林青霞を気にする素振りを見せず(一部始終を見ていたはずの巫剛もノーリアクション)、再び莫少聰が主人公らしく格好をつけたところで終幕となります。
役者のスケジュール調整が上手くいかなかったのか、それとも撮影途中にトラブルが起きたのか…。いきなり巫剛が林青霞の正体を察する強引な展開もふくめて、非常に気になるところです。

『愛しのOYAJI 激突編』

2014-12-03 22:33:57 | 日本映画とVシネマ
「愛しのOYAJI 激突編」
製作:2008年

●京都府警の元警察官である小沢仁志は、ストリップ小屋の照明係をしながら浅草の平和を守っていた。彼は今日もイケメン歌手の恋人を狙った毒殺未遂、運送業者を隠れ蓑にした武器密輸など、様々な難事件を解決していく。
だが一連の事件には、かつて初代会長を小沢の友人である元侠客・真樹日佐夫に斬られ、煮え湯を飲まされた関東同憂会が関与していた。連中は傘下の暴力団・台東組を立ち上げ、前作で壊滅した雷組の跡地に事務所を設立する。
 関東同憂会の二代目会長は、先代の頃から仕えていた若頭・永倉大輔に真樹への復讐を指示。一方で裏カジノの支配人を脅迫し、彼の娘に肉体関係を迫ったりと無法の限りを尽くしていたが、会長には別の思惑があった。
そのころ台東組の嫌がらせに耐えかねた真樹は、組の傘下施設に襲撃を繰り返していた。これに小沢も加勢するが、今度は真樹の妻がバイクにはねられて負傷してしまう。
 この一件は台東組の仕業と思われたが、よくよく考えれば真樹の怒りを買うだけの無駄な行為でしかなく、台東組に利益はない。一方の永倉は「私は知らない」と主張し、組に殴りこんだ真樹はこれを信じて引き下がった。
上からの命令と真樹への思いに板挟みとなった永倉は、苦悩の末に自害する道を選んだ。果たしてひき逃げ未遂と事件の真相は?そして真樹の運命は…?

 本作は真樹センセイ&影丸穣也コンビによる漫画作品の実写版で、柔道使いのオヤジが戦う人情アクションの第2弾です。前作はそれなりに格闘シーンがあり、ユーモアのある描写がいい味を出していました。
今回も作風はそのままですが、小沢のアニキが長髪にジャケットを羽織ったワイルドな風貌にチェンジ。これがまた格好良く、楽しそうにボケをかます姿はなかなか笑わせてくれます。
 しかし本作は個々の描写が足りず、全体的にイビツさを感じる出来となっているのです。毒殺未遂事件が発生した経緯をセリフだけで処理、踊り子の1人が武器密輸に関わった顛末が明かされないなど、釈然としない箇所が随所に存在します。
裏カジノのエピソードにいたっては小沢がまったく絡まないため、完全に余分なパートと化していました。苦みを残す結末や永倉のキャラクターは悪くないし、原作を見ていれば納得できる展開なのかもしれませんが…。
 アクションも激減していて、前作には存在していたタイマン勝負とラストバトルが消滅。集団戦はいくつかありますが、前作からのボリュームダウンは否めません(エンドクレジットには技斗やアクション指導などの表記はなし)。
ちなみに本作は真樹センセイの出番が増え、実質的なもう1人の主役となっていました。立ち回りも何度か披露しており、晩年のゲスト出演としては登場頻度が高かったといえます。極端に酷くはないものの、痛快さでは前作に劣っている本作。格闘シーン目当てなら他のマキ印作品を見た方がいいかもしれませんね。