功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

『金城武の死角都市・香港』

2013-06-12 23:42:30 | 洪金寶(サモ・ハン・キンポー)
「金城武の死角都市・香港」
「死角都市・香港」
原題:無面俾/摩登笑探
英題:Don't Give a Damn/Burger Cop
製作:1995年

▼90年代初頭に撮影された『痩虎肥龍』で、洪金寶(サモ・ハン・キンポー)は昔ながらのコミカルなスタイルを貫き通し、ユニークな作品を作り上げました。本作はそれから5年後に製作されたものですが、さすがにここまで来ると80年代スタイルも通用しません。
そこで洪金寶は80年代的な演出を極力控え、ニューフェイスの金城武を準主役にすることで作品の近代化を講じたのです。それに加えて、元彪(ユン・ピョウ)を始めとした昔馴染みの俳優たちも結集している…んですが、残念ながらこれらの目論見は頓挫してしまいます。

■洪金寶は刑事課に所属するドジな刑事。今日も密輸局の捜査官・元彪と捜査でかち合ったりしていたが、そんな彼の部署に2人の新顔が赴任してきた。1人はエリート刑事の金城、もう1人は新人の周海媚(キャシー・チャウ)だ。
スカした感じの金城は、さっそく刑事課の面々を率いて麻薬の取引現場を急襲。日本人の組織が売りさばこうとしていた大量の麻薬を押収する。一方、洪金寶は元彪と親睦を深めたり、周海媚と良い仲になったりするのだが、水面下で組織による麻薬奪還計画が進行していた。
 組織は配下の外人グループを使い、警察署を爆破して(!)麻薬を奪い去った。ところが、その過程で外人グループのリーダーの弟が拘束され、さらには組織が彼らを切り捨てようとしたため、両者の関係は決裂してしまう。
外人グループは周海媚を誘拐して弟の引渡しを迫った。洪金寶・元彪・金城は彼女を助けるために敵陣へ向かい、組織も外人グループが持つ麻薬を狙って動き出していく。果たして、この三つ巴の戦いを制するのは誰なのか…!?

▲本作で監督を務めた洪金寶は、コメディの代わりに恋愛描写を濃くし、安易にギャグに頼らない姿勢を打ち出しました。しかし、年を食った洪金寶と周海媚のラブストーリーは不自然極まりなく、元彪の恋愛模様も中途半端な形で終わっています。
登場人物も個性に乏しく、洪金寶・元彪・金城のトリオが全員揃うシーンも数えるほどしかありません。ではアクションの方はどうなのかというと、こちらも中途半端。作品に合わせて派手な演出を避けたつもりでしょうが、完全に裏目に出ていました。
 特に致命的なのがラストバトルで、立地条件(暗い倉庫の中)が災いしてアクションが見辛くなっています。Vシネマではよくある事ですが、まさか洪金寶作品でこんなミスに巡りあうとは…。
また、元彪が雑魚っぽい外人に苦戦したり、金城が役立たずだったりと、キャストの扱いの悪さ目立っていました。洪金寶は倪星(コリン・チョウ)やロバート・サミュエルズと戦いますが、両者とも洪金寶に直接倒されないため、こちらも中途半端な印象を残しています。
 時代に合わせようと無理をして、映画そのものが微妙な出来になってしまった失敗作の典型。90年代における洪金寶は低迷期の只中にあり、本作の次に撮った『ワンチャイ/天地風雲』が(監督作の中では)最後のヒット作となりました。
現在の彼は役者として、或いは武術指導者として活躍していますが、監督としては2009年の『響箭』(何故か異様に情報が少ない謎の作品)を最後にメガホンを置いています。個人的には、また昔のようにコミカルな作品を監督して欲しいと思っているのですが…う~ん。