功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

更新履歴(2012年/4月)

2012-04-30 23:38:29 | Weblog
 今月は当初の予定通り、なんとか香港映画(未公開作中心)が多めの更新内容になりました。4月はどうにもプライベートでの忙しさが増してきたため、更新頻度が落ちないか心配でしたが、なんとか完走することができました。
この調子で、しばらく放置していた過去記事の修正作業もやっていきたいと思っていますが…こっちはこっちで量が多いので何処から手を付けていいのやら…(汗



04/03 『ラヴァーズ&ドラゴン』
04/08 『サバイバル自衛隊 SO SOLDIER』
04/14 『舞拳』
04/20 『火鳳凰』
04/25 『被迫/精武指』
04/30 更新履歴(2012年/4月)

『被迫/精武指』

2012-04-25 22:17:36 | バッタもん李小龍
被迫/精武指
英題:Last Strike/Soul Brothers of Kung Fu
製作:1977年

▼香港や台湾には李小龍(ブルース・リー)のバッタもん俳優が数多く存在しますが、彼らはバッタもんに徹し続けたわけではありません。巨龍(ドラゴン・リー)は90年代からヤクザ映画へ出演するようになり、悪名高い石天龍(ドラゴン・セキ)も現在はノーマルな俳優に転向したと聞きます。
一部を除けば、この手の俳優は全員が偽物としての人生に終止符を打っています。バッタもんはブームが過ぎれば消えゆくだけの、脆くて儚い存在です。全てが過ぎ去っても生き残れるのは、呂小龍(ブルース・リ)みたいなバイタリティを持った者か、新たな道を切り開いた李修賢(ダニー・リー)のような者しかいないのです。
 ところが、偽物として活動中だった最中に脱却を試みた男がいます。何宗道(ホー・チョンドー)は李小龍のバッタもんであることを良しとせず、様々な作品に出演しました。ですが、彼はバッタもん俳優から完全には足を洗えず、功夫スターにもなりきれないまま映画界を去ってしまいます。
しかし彼の孤独な奮闘は、結果的に隠れた秀作を生み出すに至りました。本作で何宗道は莊泉利(ビリー・チョン)の主演作を始め、数々の傑作を作り出した恒生電影有限公司とタッグを結成。バッタもんとしてではなく、あくまで功夫スターとしての力量をアピールしたのです。

■何宗道・歐陽佩珊羅莽(ロー・マン)の3人は大陸から来た密入国者。成功を夢見て香港に渡り、3人そろって貧しくも楽しい共同生活を送り始めた。ある日、何宗道たちは職場で苛められていたカール・スコットを助けたが、苛めた連中の仲間である谷峰(クー・フェン)との間に遺恨が生まれてしまう。
この遺恨、その後も運悪く悪化の一途を辿っていくこととなる。羅奔が悶着を起こした賭場が谷峰の経営する店だったり、何宗道が出場した格闘大会で倒した相手が谷峰の愛弟子だったり…。これに激怒した谷峰は、自陣のアレクサンダー・李海生(リー・ハイサン)・陳龍の3人を差し向けた。
敵の報復によって歐陽佩珊は殺害され、何宗道も手傷を負った。彼は復讐を決意して修行を開始するが、羅奔が谷峰の仕掛けた罠に引っかかり、2人の友情に亀裂が生じていく。戦いは激化し、何宗道が李海生ら3人を撃破するも、リベンジとばかりに谷峰一味が彼の自宅を襲撃。幾多の死闘を経て、対に何宗道VS谷峰の直接対決が始まる!

▲ストーリーは陰惨ですが、何宗道の持ち味である伸びやかな動きが生かされている作品です。本作では徐蝦と袁祥仁が武術指導を担当し、絡み役には袁信義・袁日初・元奎・徐忠信なども参加。何宗道のアクションは武術指導によって出来が左右されやすいのですが、本作では流れるような激しいファイトを演じています。
また、作中ではところどころに李小龍的な要素を含んでいるものの、それらは物語やアクションのアクセント程度に抑えられています(李小龍っぽい戦いもVS陳龍だけ)。あくまで本作は何宗道自身のポテンシャルを重視しており、ラストの何宗道VS谷峰もなかなかの激闘に仕上がっていました。
 ただ、復讐だらけの陰惨なストーリーだけはどうにかしてほしかったと思います。何宗道の本気・豪華共演陣・充実した武術指導スタッフなどのお膳立てが揃っているのに、復讐されたら復讐しかえすだけの粗末な物語では、盛り上がるものも盛り上がれません(涙
ここは同じ恒生電影の何宗道主演作である『打出頭』と『不擇手段』に期待…かな?

『火鳳凰』

2012-04-20 22:24:26 | カンフー映画:佳作
火鳳凰
英題:The Red Phoenix
製作:1978年

●ここは密かに反政府活動を行っている功夫道場。盟主の王侠以下、姜大衛(デビッド・チャン)龍世家(ジャック・ロン)が在籍している。姜大衛の幼馴染である上官靈鳳(ポリー・シャンカン)、功夫の腕はからっきしな李道洪も彼らの仲間だ。しかしこの李道洪、どうも弱いフリをしているだけらしいのだが…。
ある日、奇怪な赤い仮面の怪人によって、反政府グループのメンバーを狙った連続殺人事件が発生する。姜大衛は李道洪が犯人ではないかと疑うが、彼の身内である上官靈鳳はこれを否定。しかし仮面怪人の凶行はなおも続き、とうとう王侠までもが犠牲になった。
 上官靈鳳は火鳳凰という秘密兵器(鳥の形をしたヘンテコ武器)を持ち出すが、仮面怪人には歯が立たない。そしてついに仮面怪人は姜大衛に襲いかかるが、そこに容疑者と思われた李道洪が救援に現れた。彼はこういう事態が発生した時のために、わざと実力を隠していたのである。
こうして李道洪の容疑は晴れたが、新たな事実が発覚する。実は王侠は死んでおらずで、しかもその正体はなんと日本人!仮面怪人こそ王侠の化けた姿であり、使用人になって潜んでいた楊烈と共に反政府グループ壊滅を目論んでいたのだ。姜大衛と上官靈鳳は決戦に向けて特訓を行い、見事に王侠を倒した。ところが……。

 香港最大の映画プロダクションとして名を馳せたショウ・ブラザーズ。本作は、そのショウブラで花形スターとして活躍していた姜大衛が、台湾に出向いて出演した作品です。内容は謎解き要素を含んだサスペンスタッチの活劇で、仮面怪人の正体が重要なポイントとなっています。
あまりスケールの大きい作品ではありませんが、テンポのいいストーリーと巧みなアクション描写のおかげで、なかなかの力作に仕上がっていました。仮面怪人に殺される犠牲者には岳華や羅烈(ロー・リェ)などが扮しており、戦闘時のシチュエーションも工夫に富んでいます(個人的には仮面怪人VS壁虎功で闘う黄國柱の一戦がオススメ)。
ただ、主役のわりに姜大衛と上官靈鳳が目立っておらず、特に上官靈鳳は終盤までアクションをほとんど見せません。後にも先にも2人の共演が実現したのは本作だけなので、主役まわりの演出にも注力して欲しかったのですが…う~ん。

『舞拳』

2012-04-14 23:36:28 | 女ドラゴン映画
舞拳
英題:Dance of Death/Eternal Conflict
製作:1976年

▼ここ最近、私の中で女ドラゴン映画がちょっとしたマイブームとなっていまして、国内外を問わず様々なレディースアクションをチェックしています。本作は随分と前にDVDを入手していた1本なのですが、久々に見直してみたらとても面白かったので、本日の紹介に至ったわけです(爆
既に方々で語られていますが、本作は『女活殺拳』の茅瑛(アンジェラ・マオ)が主演したコメディ功夫片であり、かの成龍(ジャッキー・チェン)が武術指導を担当したことでも知られる作品です。監督は台湾時代のジャッキー作品を手掛けてきた陳誌華なので、作品のテイストも『○○拳』シリーズそのまんまとなっています。

許不了と王太郎は、身なりこそ汚いが功夫の達人。互いに自分の拳法が優れていると主張し、古寺で腕前を競っていたが、そこに茅瑛が現れる。彼女は言葉巧みに2人の元へ弟子入りし、彼らから特訓を受けることになった。
茅瑛がこのような行動を取るのには重大な理由があった。彼女は余松照が経営する道場の生徒だったが、あるとき邪悪な拳法一派・百鳥門に襲われていた泰沛を助けた。百鳥門は余松照の道場に押し入るや、泰沛や余松照を始めとした道場関係者を全員殺害。辛うじて茅瑛だけが脱出し、仲間たちの復讐を誓ったのである。
 師匠コンビの特訓によって強くなった茅瑛は、百鳥門の石天(ディーン・セキ)や葛炮を次々と撃破。遂にはボスの嘉凱を引きずり出すまでに至ったが、この男だけは別格だった。嘉凱が繰り出す馬拳は恐ろしく強力で、茅瑛と師匠コンビが束になっても敵わない。結局、3人は一時撤退を余儀なくされてしまう。
その夜、師匠コンビは客棧で踊り子が酔っ払いをいなしていた様子を元に、女性的な動きを模した「舞拳」を考案。この期に及んでも競い合いながら技を開発する師匠コンビであったが(笑)、嘉凱も孫榮志に馬拳を伝授し、最後の闘いに備えていた。舞拳と馬拳…最後に勝つのはどちらなのか!?

▲ストーリーは典型的な仇討ちものであり、これといって特徴的なポイントは見当たらないのですが、それだけに安定した面白さを維持している作品です。前述したように作風は『笑拳』や『天中拳』に近く、人死にが多いもののコメディとしては充分成立しています。
注目のジャッキー指導によるアクションも質が高く、複雑な殺陣がたくさん登場します。本作のように固有の拳法が登場する功夫片では、武術指導の出来不出来によって拳法の特色が解りづらくなる場合があります。しかし、本作の舞拳は特徴的で解りやすい動作が多く、見ていて素直に楽しむことができました。
一部のシーンでは複雑すぎる殺陣のせいでスピード感が削がれたり、コメディ演出がくどすぎて冗長さを感じる事もありますが、全体的には二重丸の出来。個人的には、もうちょっと茅瑛に女性らしい可愛げのある格好になって欲しかったのですね(これはゴールデンハーベスト時代の作品にも言えるのですが…)。

『サバイバル自衛隊 SO SOLDIER』

2012-04-08 23:13:55 | 日本映画とVシネマ
「サバイバル自衛隊 SO SOLDIER」
製作:2005年

●各国で対テロ対策の一環として特殊部隊の養成が進む中、日本でもレンジャー部隊による訓練が富士山麓で行われようとしていた。
この訓練は数人のチームで争うバトルロイヤル形式を採用しており、武器使用および一般人との接触は厳禁とされている。水木英昭率いる落ちこぼれチームは、舩木壱輝(『拳 FIST』では主演)ら最強チームの後を尾行し、戦いを極力避けるというケチな作戦で難を凌いでいた(笑
 ところが、彼らは道中で道に迷っていた磯部嘉則ら一般人ファミリーと遭遇してしまう。本来ならこれでアウトになるはずだったが、水木は敗北判定が自己申告制なのを逆手に取り、家族を同行させることで失格を回避。かくして、奇妙な顔ぶれによる行軍が始まるのだった。
だが、しばらくして謎の襲撃者によって参加チームが次々と殺害される怪事件が勃発。疑心暗鬼に陥った各チームは訓練を通り越した殺し合いを続け、次々と数を減らしていく。はたして謎の襲撃者の正体とは?そして水木たちの運命は…?

 今回はちょっと変わった作品の紹介です。本作は特殊部隊を取り扱った作品なんですが、先述したルールのせいで銃器を扱うシーンが存在せず、延々と格闘戦が続きます。出演者も馴染みのない方ばかりで不安でしたが、このアクションシーンがやたらと迫力満点だったので驚きました。
どうやらスタント系の人員が多数起用されているようで、主要人物から脇役に至るまでバリバリ動きまくっています。派手な蹴りや関節技、更にはカポエラや香港風のワイヤーワークまで導入され、Vシネとしては破格の立ち回りを見せているのです(中でも『男組』の川本淳市が舩木チームを襲うときの暴れっぷりは必見!)。
 …と、このように格闘描写は大盤振る舞いな本作ですが、物語のほうは非常に雑でした。中盤の延々と続く行方不明者捜索シーン、終盤で判明する襲撃者と水木の唐突な因縁などはその極み。素晴らしかった格闘シーンも、次第に襲撃者が水木の仲間を殺しまくる一方的な展開になり、面白みがどんどん削がれていきます。
このあとに待ち構える結末と、特典映像として収録されている別エンディングも色んな意味で衝撃的。格闘アクションの質が場違いなほど凄かっただけに、このような結果になったのは本当に悔やまれます。

『ラヴァーズ&ドラゴン』

2012-04-03 20:03:55 | 女ドラゴン映画
「ラヴァーズ&ドラゴン」
原題:小白龍情海翻波/飛侠小白龍
英題:THE WHITE DRAGON
製作:2004年

●女学生の張柏芝(セシリア・チャン)は、ちょっぴりワガママな普通の女の子。そんな彼女の夢は、第二皇子・安志杰(アンディ・オン)と結婚して玉の輿になることだった。巧みな楽器の腕前を披露し、愛しの皇子様と急接近していく張柏芝……ところが、順風満帆と思われた恋愛ライフに転機が訪れようとしていた。
盲目で悪人退治を専門とする刺客・呉鎮宇(フランシス・ン)は、年老いた女義賊・雪[女尼]を激闘の末に倒した。自らの限界を感じた雪[女尼]は、偶然近くにいた張柏芝へ自分のパワーを強引に伝授(というかインストール)する。こうして超人的な能力を得た彼女は、望んでもないのに義賊になってしまうのだった。
 そんな中、安志杰の元に呉鎮宇からの殺害予告が送られてきた。張柏芝は愛する人を守るために剣を取るが、相手はとても強い。戦闘中にアクシデントで足を骨折した彼女は、図らずも呉鎮宇の世話になり、不本意ながら共同生活を送ることになった。
当初は反発していた張柏芝だが、次第に2人は打ち解けていく。しかし、呉鎮宇は彼女が安志杰に恋焦がれていることを知ってしまう。密かに好意を寄せていた呉鎮宇は嘆き、2人は衝突して喧嘩別れとなった。その後、張柏芝は安志杰から求愛を受け、呉鎮宇は刺客業から足を洗おうと決意する。
だが、暗殺を依頼した第一皇子・劉磊はそれを許さず、彼を処刑しようと企んだ。果たして、彼女たちの運命は…?

 近年、甄子丹の主演作を連発している葉偉信(ウィルソン・イップ)監督が、『SPL/狼よ静かに死ね』の前年に撮った武侠片です。日本版の予告編では武侠アクションが重視されていますが、実際は相反する立場の男女によるラブストーリーがメイン。作風も明るく、明朝時代が舞台なのに現代的なギャグが飛び出しまくります(笑
しかし、ギャグが中心で進むのは中盤まで。張柏芝が呉鎮宇のところへ居候してからは、ラブ度がグッと増します。2人が接近していく様子、それぞれの心の動きなどが丁寧に描写されていて、ラストも良い感じにまとまっていました。ですが、前半のギャグ演出のせいで作品の一貫性が欠けており、中途半端な印象を残しているのも事実です。
 アクションは日本版予告編で言われているほど多くなく、大半が替え身のスタントマンによるアクションショー状態となっています。アクションの動作自体は悪くないのですが、俳優たちによる肉弾バトルを期待していると肩透かしを食らうかもしれません(ちなみに安志杰は今回アクション無しです)。
多少の不満点はありますが、葉偉信の軽快な演出で一気に見られる隠れた良作…といったところでしょうか。ちなみに本作で先代の義賊・大白龍に扮した雪[女尼]ですが、実は彼女は60年代に活躍した往年の大女優。武侠片にも多く主演しているので、それが縁で本作の出演に繋がったのではないかと考えられます。