功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

更新履歴(2011年/6月)

2011-06-30 20:34:31 | Weblog
 6月は梅雨入りと猛暑できりきりまいでしたが、夏はこれからが本番。今よりもっと暑くなるのかと思うと、なんだか気の遠くなる思いがしてきます(苦笑)。さて来月の予定ですが、夏の暑さには更に上をいく暑苦しさで対抗するしかない!…ということで、台湾を代表する功夫映画スターの黄家達(カーター・ウォン)特集で行きたいと思います。
黄家達といえば台湾功夫片のイメージが強いですが、来月はその黄家達の経歴を辿りながら様々な作品を取り上げていく予定です。あの傑作や珍品も出てくるかもしれないので、どうぞご期待ください!


06/04 『サイバー・コマンドー』
06/08 『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ外伝/アイアン・モンキーグレート』
06/11 『戰龍/搏撃英雄』
06/15 『飛天拳』
06/19 『ファイヤーズ・ピーク』
06/23 『南北腿王/魔鬼教頭巧鳳凰』
06/27 『六本木ソルジャー』

『六本木ソルジャー』

2011-06-27 22:37:07 | 日本映画とVシネマ
「六本木ソルジャー」
「六本木ソルジャー 喪服の探偵」
製作:1995年

●今回は今度こそ久々かもしれない真樹日佐夫プロデュースのVシネマをご紹介します。本作は初代タイガーマスクである佐山聡の主演作で、いつも裏社会や格闘技をメインに扱ってきたマキ作品にしては珍しく、ハードボイルドな探偵モノとして作られています。
 六本木で探偵業を営む元キックボクサーの佐山は、さる汚職事件で逮捕された会社社長の妻・大沢逸美から、「夫が隠していた極秘書類が盗まれたので助けて欲しい」との依頼を受けた。まず佐山は社長の第一秘書にコンタクトを取ろうとしたが、既に秘書は何者かに殺されていた。
いったい誰が彼を殺したのか?死んだ秘書の妻、社長の愛人、そして依頼人の大沢…調査を続けていく中で、捜査線上に次々と疑わしき人物が浮上していく。その後、佐山をたびたび襲撃した連中の黒幕が社長の愛人だと判明するも、秘書の妻が第2の犠牲者となってしまう。
このことで獄中の社長から捜査の打ち切りを告げられるが、佐山は捜査続行を決意。事情通の藤原喜明、情報屋のジェフ・ニコルズらの協力を得て、社長の愛人をマークし始めた。次第に明らかとなっていく意外な事実…果たして、連続殺人犯の正体とは!?

 オープニングが女装した男のSMショーという壮絶な幕開けでしたが(苦笑)、物語はあまり奇抜ではないオーソドックスな探偵モノでした。登場人物が少ないので犯人はすぐ解りますが、様々な性的嗜好を交えることで変化を持たせています。また、作品のタッチは『刑事コロンボ』っぽい雰囲気で、殺人シーンには『サイコ』の影響が感じられました。
佐山の演技に関しては本人も認めている通りですが、格闘アクションについては素晴らしいものを見せています。氏はかなり太めの体形ではあるものの、いざ戦闘となると異様なまでに俊敏な動きを発揮!蹴りやパンチの速さがザコと段違いで、宙返りまでこなす様は和製サモハンと言っても良いほどです(依頼人の美貌に見とれてしまう場面など、アクション以外でもサモハンを彷彿とさせるカットもありました・笑)。
惜しむらくは、佐山のアクションが実質2箇所しか無いということです。探偵モノというジャンルの都合上、ラストをタイマン勝負で終わらせる訳にはいきませんが、個人的にはもっと彼のアクションが見たかったなぁ…。なお、今回はマキ作品には欠かせない濡れ場が少なく、真樹センセイの出番も意外と少なめでした。

『南北腿王/魔鬼教頭巧鳳凰』

2011-06-23 22:44:26 | 女ドラゴン映画
南北腿王/魔鬼教頭巧鳳凰
英題:The Invincible Kung Fu Legs/The Leg Fighters
製作:1980年(1983年説あり)

●稀代の足技使いであった譚道良(レオン・タン)は、残忍な拳法家・彭剛を接戦の末に葬り去った。しかし、彭剛の兄である大悪党・彭剛(一人二役)は敵討ちを誓い、虎視眈々とリベンジの機会を窺っていた…。
一方、こちらは名家として世間に名高い王侠家。ご令嬢の夏光莉は、召使いの金龍と共に功夫教師の孫榮志からキツい修行を受けていた。毎日がスパルタ特訓の連続だったが、孫榮志が一身上の都合で実家に帰るため、代わりに別の教師が赴任してくる事となった。厄介な師がいなくなり、浮かれた夏光莉らは乱暴なチンピラを必要以上に叩きのめすが、そこに先程の譚道良が現れる。
 夏光莉も決して弱くなかったが、実力的には相手の方が一枚も二枚も上手。軽くあしらわれて帰宅した彼女を待っていたのは、噂の新任教師・譚道良であった。夏光莉たちは何とか出し抜こうとするが、譚道良は強すぎて全然敵わない。一時は険悪な関係になりかけたが、鈴の音コンビ(王耀と呂雲保)との闘いで劣勢のところを助けられた事で、夏光莉は譚道良を師匠として認めるのだった。
同じ頃、譚道良を探して各地を暴れまっていた彭剛は、帰郷していた孫榮志とその妻を殺害。遂には王侠家へ果たし状を送りつけ、譚道良を抹殺しようと動き出した。譚道良はこの挑戦を受けて立つが、足技に加えて鷹爪拳まで身に付けていた彭剛はなかなか手強い。そこに修行を受けて強くなった夏光莉&金龍が加勢し、最後の対決が始まる!

 本作は台湾製のコメディ功夫片ですが、このころ量産されていたジャッキー映画もどきとは一線を画し、オリジナリティの強い作品となっています。監督は譚道良の主演作を何本か手掛けてきた李作楠(リー・ツォー・ナン)で、今回は基本設定にだけ趣向を凝らし、ストーリーはシンプルにまとめた解りやすい作品に仕上がっていました。
コメディ部分が少々パンチ不足で、後半になっていきなり血の出る描写が出てくるなど、細かな不満はあります。とはいえ、作品そのものの出来はとてもしっかりしていて、なおかつ作中の功夫アクションはどれも高度。物語が進むごとにアクションは激しさを増していき、ラストバトルの夏光莉&譚道良VS彭剛における目まぐるしい足技合戦、最後の主役2人によるキックラッシュも迫力満点です。作品の質は安定し、功夫アクションにおいては傑作と呼べる逸品と言えます。
個人的には、相変わらず表情変化が少ない譚道良を見て、もっと彼の砕けた演技を見てみたいと思ってしまいました(本作では譚道良自身が笑いを取るような場面は殆どありません)。そういえばこの人が思いっきり爆笑している姿を見たことが無いなぁ……?

『ファイヤーズ・ピーク』

2011-06-19 22:28:07 | マーシャルアーツ映画:下
「ファイヤーズ・ピーク」
原題:FIRE/NATURE UNLEASHED: FIRE
製作:2004年

▼格闘スターのブライアン・ジェネスが、『ファイアーボール 火の玉超特急』に続いてNUイメージで撮った災害パニック映画です。先の『火の玉超特急』はパニック映画に見せかけた列車アクションでしたが、本作は山火事をモチーフにした純粋なパニック映画でして、今のところ日本に上陸したブライアン最後の出演作でもあります。
ところで、どちらのブライアン主演作もタイトルが炎繋がりなのは何故?(笑

■自然公園の警備員だったブライアンは、閉鎖された坑道で金を採掘しようとしていた強欲男を助けようとするが、落盤に巻き込まれて男は奈落の底へ落ちてしまう。
それから6ヵ月後、同公園でバイクレースをしていた若者グループが事故を起こし、ブライアンが救助に向かう事となった。若者グループは意地悪なヤンキー、金髪と黒髪のWヒロイン、怪我をした青年の計4人。彼らを連れてブライアンは公園の出口に向かおうとするが、突如として大規模な山火事が発生した。
まるで行く手を阻むかのように炎は燃え広がり、真赤な地獄が彼らを飲み込もうと襲い掛かるが、実はこの火災は謎の放火魔によって引き起こされた物だった。果たして放火魔の目的は?そして炎に包まれたブライアンたちの運命は?犠牲者を出しながらも難を逃れた一行を待ち受けていたのは、放火魔の意外な(というより予想通りな)正体だった…。

▲本作は元々TVムービーとして作られた作品ですが、燃える炎や深い穴などはCGで処理され、カットによって映像の明るさが違っていたりと、随所でアラが目立ちます。ロケ地も同じような所ばかりですし、かなりの低予算で作られたものと考えられます。
また、ストーリーは主人公たちがひたすら災害から逃げている(むしろ翻弄されている)だけなので、特に際立った部分はありませんでした。後半からはガスが充満して爆発しそうな坑道での脱出劇となりますが、やっている事は前半の山火事シークエンスとほぼ一緒。一粒で二度美味しい構成を狙ったようですが、せめてもう少しドラマに味付けして欲しかったかなぁ…(爆
 しかし、低予算でも頑張ってる箇所がいくつかあるため、本作を全否定する訳にはいきません。本物の炎を使って撮影したシーンは臨場感があったし、中盤における走行中のバイクが運転手もろとも爆発するスタントは、本作の見どころの1つと言えます。そしてブライアンの格闘シーン&スタントもきっちり用意され、何度か立ち回りを見せていました。ちなみに彼は後半で足を負傷しますが、最終決戦で思いっきり蹴りをかまし、誰もが「あんた怪我してたじゃん!」とツッコミせざるを得なくなります(苦笑
トータルとしては『火の玉超特急』とほぼ同レベルの出来で、完成度はあまり高くない本作。しかし、低予算でも見せ場を作ろうと努力していた点では、本作が勝っていたと思います。

『飛天拳』

2011-06-15 22:47:42 | カンフー映画:珍作
飛天拳
英題:Eagle vs. Silver Fox
製作:1980年

▼今回は久々…というわけではないですが、韓国産功夫片の紹介です。本作は『酔拳』の悪役でお馴染みの黄正利(ウォン・チェン・リー)が、そのキャリアの中で最も忙しかったと思われる1980年に出演したものです。データサイトのHKMDBによると、この年の黄正利は計8本もの映画に出演しており、レベルが高い作品ばかりが連続していました(『龍形摩橋』『雙辣』『巡捕房』などなど)。
そんな多忙で仕方がない黄正利と闘うのは、身軽な運動神経が武器である韓国のユンピョウこと郭武星(別名:郭武松)。なかなかハンサムな方ですが、これまで韓国で黄正利を迎え撃ってきた巨龍(ドラゴン・リー)、林子虎(ジャック・ラム)等と比べると、いささか役不足な感が否めません。そんな訳で不安な気持ちのまま視聴に至ったのですが……。

■舞台は少林寺が出てくるので、たぶん清朝時代(?)の中国。刺客である黄正利たちは、抵抗勢力が輸送する機密文書を奪おうと暗躍し、配達人を通り魔のごとく襲っていた。郭武星とその父親の一団も襲撃を受けて全滅するが、文書は河に突き落とされてた郭武星が所持していたため、黄正利の手に渡る事はなかった。
一方、瀕死の郭武星は世捨て人の僧侶・南忠一に救われ、しばらくして見違えるほど強くなって市井へと現れていた。茶屋でチンピラを蹴散らした郭武星は、女スリの薛芝蓮&こじきの老師と遭遇。この老師が南忠一の友人だったため、郭武星は南忠一に救われてからの空白期間をゆっくりと語り始めた。
 父を殺され、仇討ちを誓った郭武星は南忠一から特訓を受けていた。しかし南忠一は病に身体を蝕まれており、その命も残り少ない。そこで彼は黄正利攻略の鍵を郭武星に与えるために、自らの命を犠牲にして郭武星の技を受け、そして死んでいったのだという…。
その後、茶屋でトラブった連中と再び闘ったりしながらも、いよいよ最後の対決が始まろうとしていた。薛芝蓮は郭武星の身を案じるが、父と仲間たちの命を奪った黄正利を許してはおけない!彼は幹部のハゲコンビ(うち1人が『蛇鶴八拳』の冒頭でジャッキーに倒されたハゲ男・趙春)を倒し、敵の本拠地(『借刀殺人』で高雄の根城だった所)へと向かうが…?

▲本作はよくある典型的な仇討ちモノで、コメディ作品が主流だった当時としては珍しくシリアスな内容になっています。しかし途中で時系列を前後させた演出が紛らわしく、初見の人はちょっと混乱してしまうかもしれません。話の方はとにかく仇討ち一辺倒で、箸休めになるようなサブエピソードは無し。肝心の黄正利も中盤で出番が激減するし、全体的に窮屈な印象を感じてしまいました。
一方で功夫アクションは、珍しく黄正利が武術指導を担当しているせいか、足技ばかりに固執しないオールラウンドな殺陣に仕上がっています。すれ違いざまの背面蹴り、『酔拳』と同じカメラワークで見せる三段蹴りなど、今回も黄正利は見事な足技で味方を追い詰めています。が、おかげで最終対決は郭武星にわざと負けているようにしか見えず、そのへんは実に残念でした(郭武星も頑張っているのですが・汗)。
やはり黄正利ほどの実力者ともなると、生半可な相手では絵にならない…ということなのでしょうか。最初に感じた不安が的中してしまいましたが、黄正利の蹴りは相変わらず華麗なので、そこだけでも元は取れる作品かと思います。

『戰龍/搏撃英雄』

2011-06-11 23:31:43 | カンフー映画:佳作
戰龍/搏撃英雄
英題:Death Cage
製作:1988年(1991年説有り)

●タイで行われる格闘マッチに参戦していた仇雲波(ロビン・ショウ)は、海外ジムの金相旭(『紅い愛の伝説』の敵幹部)と接戦を繰り広げていた。しかし凶器攻撃によって彼とトレーナーだった父が負傷し、敗北の末に道場を乗っ取られてしまう。
そんな彼らの元に、父の戦友である龍冠武(ジャック・ロン)が娘を伴って来訪した。思い出を語りあう父と龍冠武…だったが、その背後で海外ジムによる嫌がらせが始まっていた。どうも連中は完全に相手を潰さないと気が済まないようで、仇雲波の妹を誘惑するなどして妨害を続けていく。そこで仇雲波は再戦に向けて特訓を始め、海外ジムもこれを受けて立った。
 案の定、敵は試合前に一服盛るという汚い手を使ってきたが、2度も負けるような仇雲波ではない。金相旭を倒し、妹をたぶらかしたスティーブ・タータリア(『ワンチャイ/天地黎明』で元彪と闘った白人)も一蹴!見事に前回の雪辱を晴らして、奪われたジムを取り戻してみせたのだった。
だが、この結果に激怒した海外ジムは刺客を差し向けて仇雲波を襲撃し、龍冠武が殺されてしまう。そして連中は図々しくも、竹組みドームでのデスマッチを挑んできた。仇雲波たちは正々堂々と試合に臨むが、海外ジムは仇雲波の父を誘拐するという強攻策を実行。最終的に父親は人質にされる事なく帰されたが(じゃあなんで誘拐したんだよ!)、果たしてこの死闘を制するのは誰なのか!?

 ニンジャ映画とマッハ功夫で知られる戴徹(ロバート・タイ)が、世界的な功夫映画ファンのトビー・ラッセルと組んで製作したキックボクサー?映画です。作品の雰囲気はヴァンダムの『キックボクサー』に似ていますが、あちらが製作されたのは1989年。ラストの竹組みドームは『キング・オブ・キックボクサー』に酷似した物が出ていますが、実は本作の方が早かったりします。
ことストーリーに関してはシンプルで、戴徹らしいツッコミどころ満載の楽しい作品に仕上がっていました。作品のテイストは羅鋭(アレクサンダー・ルー)のニンジャ映画とほぼ同じですが、過剰なお色気シーンや早回しアクションは省かれ、スッキリとした内容になってます。かつての濃すぎるニンジャ映画が苦手な方でも、これなら安心して視聴できるはずです。まぁ、相変わらず血はドバドバ出るんですが(笑
 さて、戴徹といえばニンジャ映画などで見られる現実離れしたアクションが持ち味ですが、本作ではノーマルな格闘戦に徹しています(武術指導は羅鋭と戴徹)。それでいて殺陣のテンポは安定していて、地に足を着けたファイトが見られます。敵の海外ジムには金相旭&スティーブを筆頭に、トビー・ラッセルやジョン・ラダルスキーなどが参加。トビーの意外な動きの良さに驚きましたが、彼とジョンは仇雲波と闘わなかったので、そのへんはちょっと残念でした。
しかし本作での最も特筆すべき点は、ラスボスが『ジャガーNo.1』のジョー・ルイスだという事です。ルイスが格闘シーンを見せるのは最後だけですが、バトルでは年の割りにバリバリ動いて健在ぶりをアピール!ここだけでも格闘映画ファンは必見といえます。ところでHKMDBによると、本作のプロデューサーは羅維(ロー・ウェイ)なのだそうですが…本当かなぁ?

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ外伝/アイアン・モンキーグレート』

2011-06-08 22:47:21 | 甄子丹(ドニー・イェン)
「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ外伝/アイアン・モンキーグレート」
原題:鐡猴子2 街頭殺手/街頭殺手/鐵血壯士
英題:Iron Monkey 2
製作:1996年

●時は動乱渦巻く清朝末期の中国。黒社会の顔役・張健利(羅鋭の後期作品に出演)は、諸外国と手を組んで武器の密売を行っていた。これを阻止すべく、鐵猿こと甄子丹(ドニー・イェン)は仲間と共に京劇一座に化け、張健利の暗殺へと動いた。しかし暗殺は失敗に終り、仲間の1人である午馬(ウー・マ)が失明してしまう。
同じ頃、一攫千金を夢見る劉耕宏ら貧乏カップルは、張健利を殺すための暗殺者募集に参加していた。もちろん暗殺を請け負うつもりは無く、報奨金をせしめてトンズラしようと企むが失敗。そこで2人は、田舎から来た功夫青年・原文慶を口八丁で言いくるめ、彼を偽の鐵猿に仕立て上げた。原文慶は父親の午馬を探したかったが、張健利一味の武器強奪を手伝わされ、本物の鐵猿と闘うはめになってしまう。
 劉耕宏たちに騙されていたと知った原文慶は落胆するが、襲撃を受けたことで張健利へ怒りを燃やしていく。一方、奪った武器を手土産に張健利へ取り入った貧乏カップルは、念願のクラブ支配人と花形歌手になるものの、その待遇は散々だった。最終的に劉耕宏とその彼女は喧嘩別れになるのだが…。
そのころドニーは、自分を逃がすために捕まった午馬を助けようと敵陣に潜り込むも、午馬は射殺されてしまった。復讐に立ち上がる原文慶だが、今度は協力してくれた劉耕宏の彼女が撃たれて死亡…ドニーは原文慶と劉耕宏に逃げろと言うが、このまま引き下がるわけには行かない。3人の男たちは、極悪非道の張健利(+兄弟分の周比利)に鉄拳を振り上げる!

 『葉門』2部作の劇場公開・『孫文の義士団』の全国上映・『導火線』の日本版ソフト化決定・『精武風雲・陳真』の日本上陸など、日本では最近になって一気にドニーの露出が増えていますが、私もこのドニー・フィーバーには嬉しい悲鳴を上げっぱなしです(笑
そんなドニーですが、ひと昔前まではB級映画ばかりに出演していたため、抜群の格闘センスとは裏腹に評価は得られていませんでした。本作はそのB級映画の中でも粗悪なもので、ワイヤーと早回しでアクションシーンが崩壊している困った作品です。
 この当時、いくつか古装片に出演していたドニーですが、彼の演じるアクションは決まって早回しが使われていました。大体は迫力のある映像になっていますが、ゴチャゴチャして意味不明になる場合も少なくありません。そのドニー式早回しアクションに、本作では羅鋭(アレクサンダー・ルー)作品から李海興が武術指導として加入したことで、早回しに荒唐無稽さがプラスされるという異常事態に発展しているのです(爆
ラストバトルはその兆候が顕著で、闘うたびに室内のありとあらゆる物体が簡単に壊れていく様は、早回しと相まって異様な光景となっていました。殺陣自体は悪くないけど、ここまで動きが早いと功夫映画というよりもコメディに見えてしまいます。個人的には「本当に武術指導を袁和平が担当したの?」という疑問さえ沸きました。
殺し屋を募集したレディが何者だったのか最後まで不明だったり、主役が誰なのか解らない物語など、色んな意味でハチャメチャな本作。もし『ワンチャイ』系列を制覇するのなら、とりあえず本作は無視しちゃってもいいと思います(苦笑

『サイバー・コマンドー』

2011-06-04 22:54:28 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「サイバー・コマンドー」
原題:VIRTUAL COMBAT/GRID RUNNERS
製作:1996年

▼先月は格闘映画ばかりだったので、これからは功夫映画を中心に!と決意していた矢先ですが、今月最初の更新はまたもやドン・“ザ・ドラゴン”・ウィルソン主演作です(汗)。本当は多くの日本公開作が控えている甄子丹(ドニー・イェン)の珍品を紹介するつもりでしたが、こちらは次回お送りいたします。
本作はドンが近未来SFアクションに挑戦した作品で、毎回恒例のもっさりした作風で製作された1本です。劇中、セットや特殊効果がショボく見えたり、どう見ても舞台が近未来ではないように感じる事がありますが、そこは『DRAGON BATTLE EVOLUTION』の悲劇を思い出しながら耐え凌ぐことをオススメします(爆

■近未来のラスベガスでは、セックスから格闘技まで様々な体験ができるバーチャルリアリティが流行していた。
そんなある日、クローン技術を応用して仮想空間のプログラムを人間にできる発明が作られ、バーチャル産業の元締めである社長は「仮想現実の女を生み出して大儲けや!」と奮起。すぐに2人の女性を複製してロスに向かったのだが、ひょんな事から格闘技養成プログラムの最強戦士が実体化してしまい、「仲間を複製して世界征服や!」と暴走を始めていく。
ラスベガスの警察官であったドンは、この最強戦士によって同僚が殺されたことで捜査を開始し、背後にバーチャル産業が絡む陰謀の存在に気付いた。かくして、彼は最強戦士とバーチャル産業の大物を相手に、たった1人の孤独な戦いへと身を投じていくのだが…?

▲『デモリションマン』と『トータル・リコール』をミキサーで混ぜて作られたような作品ですが、ストーリーはそれほど冗長ということもないし、思ったより悪くない感じにまとまっています。先述のとおり予算のなさが目に付くものの、『キング・オブ・キックボクサー3』のように極端に詰まらない事もなく、ドン作品としては平均的な出来といえるでしょう。
格闘アクションは実にベターで、ラストバトルも尺が長いだけで精彩を欠いていたと言わざるを得ません。ただし、本作ではヒロインにアクションをさせたり、ドンにヌンチャクやステップをやらせて李小龍っぽくさせたり、主なキャストを何々チャンピオンから格闘俳優に変更するなど、それなりに工夫した形跡はありました(ファイト・コーディネーターはおなじみアート・カマチョ)。
 その格闘俳優たちとドンの絡みは実に貴重で、夢の共演が敬遠されがちな格闘映画において快挙といえる出会いがいくつか実現しています。ドンの同僚を演じた『ショウダウン』のケン・マクラウド、ラスボスの最強戦士を演じた『シュートファイター』のマイケル・ベルナルド(K-1選手とは別人のプロ空手家)など、出来はともかく顔合わせだけでも本作は大きな収穫があったと言えます。
その中でも白眉なのが、社長の側近を演じていたローレン・アヴェドンの存在です。彼は香港系の格闘映画で実力を発揮した人物で、代表作の『キング・オブ・キックボクサー』は傑作中の傑作でした。
本作ではそんな元祖『キング・オブ・キックボクサー』のローレンと、便乗作『キング・オブ・キックボクサー2』のドンによる、新旧キックボクサー同士のバトルを見ることが出来るのです。香港仕込みの蹴り技で迫るローレンに対し、いつものスタイルで挑むドン!ここだけでも本作は見る価値があるといっても過言ではありません!…でも、これでもうちょっと格闘アクションが凄かったらなぁ(涙