「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ外伝/アイアンモンキー」
原題:少年黄飛鴻之鐵馬[馬留]
英題:Iron Monkey/Iron Monkey: Young Wong Fei Hung
製作:1993年
▼アイドル主演の動作片や古装片の登場によって、にわかに活気付き始めた日本の香港映画マーケット。それに伴って無数の香港映画レーベルが作られ、様々な作品があちこちでリリースされました。
ポニー・キャニオンからは「格闘ハリケーンシリーズ」(『大地無限』『プロジェクトS』等)が、アミューズからは「香港英雄列伝」(『ドラゴン・イン』『スウォーズマン/女神伝説の章』等)が発表されています。
この他にも、『復讐・血の掟』『霊幻勇士』を発売した「香港ハリウッドシリーズ」などが存在し、多くの作品が世に送り出されました。今回紹介する「香港ビクトリアシリーズ」も、いくつかの秀作を擁したレーベルです。
「香港ビクトリアシリーズ」はエムズピクチャーズによって発表され、金城武の主演作などをパッケージ化しました。既存作品の再販も行っており、李小龍(ブルース・リー)作品や『大地無限2』、そして本作が売り出されています。
■清朝末期の浙江省では役人の腐敗が蔓延し、人々は貧困にあえいでいた。そこで民衆を救うために立ち上がったのが、鉄猿と呼ばれる義賊であった。その正体は、町で診療所を開いている医師・干光榮(ユー・ロングァン)だったりするのだが…。
そんな中、政府直属の特使が査察に来ることを知った総督は、鉄猿を捕まえようと大雑把な検挙を断行。それに巻き込まれたのが、たまたま佛山から来ていた黄麒英と黄飛鴻――甄子丹(ドニー・イェン)と曾思敏の親子だった。
この騒動は鉄猿の介入によって解決するも、甄子丹の実力を知った総督は曾思敏を人質に「ヤツを捕まえて来い!」と命じる。彼は鉄猿に味方する民衆から爪弾きにされたが、干光榮と王静瑩の厚意に助けられ、僅かな間に固い友情を育んだ。
甄子丹の事情を知った干光榮たちは、牢屋で体調を崩していた曾思敏を保護し、手厚く看護を行った。そして特使に化けて総督の財産を巻き上げ、甄子丹親子を再会させるに至ったが、一方で本物の特使・任世官(ニン・シークァン)が町に現れていた。
任世官は恐るべき拳法の使い手で、少林寺を裏切って政府に付いた卑劣漢でもあった。彼は甄子丹・干光榮と交戦し、金剛手という秘術で2人を圧倒。この一件で甄子丹は鉄猿の正体を知り、ともに巨悪へ立ち向かうことを決意する。
その後、とりあえず2人は身を隠すのだが、任世官の刺客によって曾思敏が捕まってしまう。甄子丹と干光榮は敢然と敵陣に乗り込み、最後の戦いに挑む!
▲本作は大ヒットを記録した『ワンチャイ』シリーズの番外編で、シリーズの生みの親である徐克(ツイ・ハーク)が製作を、袁和平(ユエン・ウーピン)が武術指導と監督を担当。凡百の亜流作品を超えたハイレベルな作品に仕上がっています。
主人公が腐敗した政府と戦う!という図式は、本家と大体同じです。本作はそこに強い絆で結ばれた黄麒英親子や、義賊として生きる男女の関係を絡め、ダイナミックなアクションで一気に物語を引っ張っていました。
登場人物も魅力的ですが(役人だけど情に厚い袁信義のキャラがナイス)、やはり目を惹かれるのはアクションシーンの数々でしょう。本家シリーズを彷彿とさせる鐵傘功あり、甄子丹のマッハカンフーありと、こちらも盛りだくさんの内容です。
終盤の梅花椿バトル(杭の上で戦うアレ)も壮絶で、化け物じみた強さを誇る任世官が強烈すぎます(笑)。梅花椿は不安定な場所ゆえに撮影が難しく、演者が及び腰になる事も少なくありません。しかし本作では巧みなワイヤーワークの援護を受け、見事なアクションを構築していました。
…と、ご覧のように90年代は香港映画レーベルにとって、百花繚乱・群雄割拠の時代だったといっても過言ではありません。
しかし00年代以降、日本における香港映画市場の勢いは落ち込んでしまいます。『少林サッカー』『英雄 HERO』などのヒット作には恵まれたものの、昔のように便乗作をバンバン公開するような活力が失せてしまったのです。
アジア圏の映画産業は韓流作品が追い上げを見せ、ますます香港映画の旗色は悪くなっていきます。しかし香港映画レーベルは、過去を振り返ることで辛うじて存続しました。次回、レーベルの探求は00年代に突入します!
原題:少年黄飛鴻之鐵馬[馬留]
英題:Iron Monkey/Iron Monkey: Young Wong Fei Hung
製作:1993年
▼アイドル主演の動作片や古装片の登場によって、にわかに活気付き始めた日本の香港映画マーケット。それに伴って無数の香港映画レーベルが作られ、様々な作品があちこちでリリースされました。
ポニー・キャニオンからは「格闘ハリケーンシリーズ」(『大地無限』『プロジェクトS』等)が、アミューズからは「香港英雄列伝」(『ドラゴン・イン』『スウォーズマン/女神伝説の章』等)が発表されています。
この他にも、『復讐・血の掟』『霊幻勇士』を発売した「香港ハリウッドシリーズ」などが存在し、多くの作品が世に送り出されました。今回紹介する「香港ビクトリアシリーズ」も、いくつかの秀作を擁したレーベルです。
「香港ビクトリアシリーズ」はエムズピクチャーズによって発表され、金城武の主演作などをパッケージ化しました。既存作品の再販も行っており、李小龍(ブルース・リー)作品や『大地無限2』、そして本作が売り出されています。
■清朝末期の浙江省では役人の腐敗が蔓延し、人々は貧困にあえいでいた。そこで民衆を救うために立ち上がったのが、鉄猿と呼ばれる義賊であった。その正体は、町で診療所を開いている医師・干光榮(ユー・ロングァン)だったりするのだが…。
そんな中、政府直属の特使が査察に来ることを知った総督は、鉄猿を捕まえようと大雑把な検挙を断行。それに巻き込まれたのが、たまたま佛山から来ていた黄麒英と黄飛鴻――甄子丹(ドニー・イェン)と曾思敏の親子だった。
この騒動は鉄猿の介入によって解決するも、甄子丹の実力を知った総督は曾思敏を人質に「ヤツを捕まえて来い!」と命じる。彼は鉄猿に味方する民衆から爪弾きにされたが、干光榮と王静瑩の厚意に助けられ、僅かな間に固い友情を育んだ。
甄子丹の事情を知った干光榮たちは、牢屋で体調を崩していた曾思敏を保護し、手厚く看護を行った。そして特使に化けて総督の財産を巻き上げ、甄子丹親子を再会させるに至ったが、一方で本物の特使・任世官(ニン・シークァン)が町に現れていた。
任世官は恐るべき拳法の使い手で、少林寺を裏切って政府に付いた卑劣漢でもあった。彼は甄子丹・干光榮と交戦し、金剛手という秘術で2人を圧倒。この一件で甄子丹は鉄猿の正体を知り、ともに巨悪へ立ち向かうことを決意する。
その後、とりあえず2人は身を隠すのだが、任世官の刺客によって曾思敏が捕まってしまう。甄子丹と干光榮は敢然と敵陣に乗り込み、最後の戦いに挑む!
▲本作は大ヒットを記録した『ワンチャイ』シリーズの番外編で、シリーズの生みの親である徐克(ツイ・ハーク)が製作を、袁和平(ユエン・ウーピン)が武術指導と監督を担当。凡百の亜流作品を超えたハイレベルな作品に仕上がっています。
主人公が腐敗した政府と戦う!という図式は、本家と大体同じです。本作はそこに強い絆で結ばれた黄麒英親子や、義賊として生きる男女の関係を絡め、ダイナミックなアクションで一気に物語を引っ張っていました。
登場人物も魅力的ですが(役人だけど情に厚い袁信義のキャラがナイス)、やはり目を惹かれるのはアクションシーンの数々でしょう。本家シリーズを彷彿とさせる鐵傘功あり、甄子丹のマッハカンフーありと、こちらも盛りだくさんの内容です。
終盤の梅花椿バトル(杭の上で戦うアレ)も壮絶で、化け物じみた強さを誇る任世官が強烈すぎます(笑)。梅花椿は不安定な場所ゆえに撮影が難しく、演者が及び腰になる事も少なくありません。しかし本作では巧みなワイヤーワークの援護を受け、見事なアクションを構築していました。
…と、ご覧のように90年代は香港映画レーベルにとって、百花繚乱・群雄割拠の時代だったといっても過言ではありません。
しかし00年代以降、日本における香港映画市場の勢いは落ち込んでしまいます。『少林サッカー』『英雄 HERO』などのヒット作には恵まれたものの、昔のように便乗作をバンバン公開するような活力が失せてしまったのです。
アジア圏の映画産業は韓流作品が追い上げを見せ、ますます香港映画の旗色は悪くなっていきます。しかし香港映画レーベルは、過去を振り返ることで辛うじて存続しました。次回、レーベルの探求は00年代に突入します!
「~アイアンモンキー」は、劇場公開時、映画館で観ました。「ワン・チャイ」系の作品の中では一番好きな作品です。古装片は、堅苦しいイメージがあるので、あまり得意ではないのですが、「~アイアンモンキー」は、勧善懲悪のシンプルで分かり易いストーリーで、尚且つ、随所に笑いも、散りばめられていたので、観易かったですね。
それと、何と言っても、ユエン・ウーピンの監督作品なので、クンフーアクションが芸術的で、素晴らしかったですね~。「ワン・チャイ」系の作品の中では、アクロバット色が強くて、殺陣が一番リズミカルな気がしました。
ユエン・ウーピン構築した袁家班の「型」の美しさにこだわった舞踏のようなリズミカルな殺陣と重力を無視した華麗なワイヤークンフーアクションの殺陣との融合、それに、ドニー・イェンの多彩な足技(超高速の無影脚、連続の中段蹴り、かつてのカサノバ・ウォンを彷彿とさせるような空中開脚蹴りなど。)をプラスした振り付けが実にカッコ良くて、最高だと思いました。
ジェット・リーが主演した「~天地大乱」と共に、90年代ワイヤークンフー映画の名作ですよね。
それでは、失礼致します。
>「~アイアンモンキー」は、劇場公開時、映画館で観ました。
それは貴重な体験をしましたね。ちなみに私は、生まれて一度も劇場で香港映画を見たことがありません(汗
仰るように、本作は基本的にシリアスな雰囲気を保っている一方で、箸休めになるようなシーンも忘れていない点に好感が持てます。
父と子・男と女という2組の関係も上手く描けていたと思います。
>ユエン・ウーピンの監督作品なので、クンフーアクションが芸術的で、素晴らしかったですね~。
この手のワイヤー功夫片は、下手をするとアクションが軽く見えてしまう危険性があるのですが、本作は良い感じにまとまっていましたね。
甄子丹の動きも安定感があり、早回しを多用しがちな他の主演作よりも一挙一動がしっかりとしていました。
大量に作られた『ワンチャイ』の亜流作品ですが、間違いなく本作はワイヤー古装片を代表する作品だと思います。