功夫電影専科

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『虎拳鐵掌』

2018-02-25 14:52:10 | カンフー映画:珍作
虎拳鐵掌
英題:On the Black Street/Eagle Claws Champion
製作:1974年

●(※画像は本作を収録したDVDセットの物です)
 まったくもって無名の功夫片であり、キャストもスタッフも日本では馴染みのない顔だらけですが、ある一点で歴史に残ることになった作品です。
ストーリーは実にシンプルで、功夫の達人である主人公(後述)が武術大会で優勝するところからスタート。もともと素行の悪かった彼は、ケンカで人を死なせてしまったことで収監され、その間に父親が死んでしまいます。
 悔い改めた彼は更生を誓いますが、因縁のあるヤクザ者たちが嫌がらせを開始し…。と、ここまで来れば明々白々ですが、本作は『ドラゴン危機一発』と同じ“不戦の誓いを立てた主人公”を描いたもので、ここから敵の兆発がひたすら続くのです。
時には仲間が庇ってくれるものの、戦いを避けたい主人公は苦悩するばかり。家計のために主人公の妹が楼閣で働いていたり、それが敵にバレて嫌がらせの材料にされたりと、じつに湿っぽい展開が続きます。
ラストは再び武術大会が開催され、ようやく主人公が怒りの鉄拳を振るいますが、その過程も実にアッサリしているのでカタルシスが得られません。最初から最後に至るまで、実に味付けの薄い作品と言えるでしょう。

 ただ、アクションシーンは李小龍(ブルース・リー)の模倣ではなく、勢い重視でバチバチと殴りあうスタイルを選んでおり、平均以上の質は保たれています。
また、仲間の1人を若き日の蘇真平(スー・ツェンピン)が演じていて、戦えない主人公に代わって俊敏な立ち回りを披露! もう1人の仲間(演者不明)も伸びやかな足技を見せ、間延びしがちな主役不在の状況を乗り切っていました。
 とはいえ、ラスボスとして登場する鐵掌の使い手・蔡弘があまり強そうに見えない(序盤と中盤で思いっきり主人公に負けてる)など、アクションの端々に演出の甘さが感じられます。
肝心の主人公についても、派手な拳法や必殺技を使わないので印象が薄く、せっかくのシャープな動きが生かせていません。タイトルに虎拳と付いているんだし、ビシッと主人公にやらせれば良かったのになぁ…。

 さて、ここまでさんざん引っ張ってきましたが、悩める主人公を演じたのはコナン・ハンという人物です。あまり知らない方だったので調べたところ、中文名は向華勝ということが解りました。……ん? この名前、どこかで見たような……?
そう、向華勝とは永盛電影公司(現在の中國星)を率いた向華強(チャールズ・ヒョン)の弟! 兄と共に多くの映画を製作し、さらには黒い方面の重要人物としても知られています(汗
 向華強が俳優としても活躍していた事は知っていましたが、まさか弟の向華勝も功夫片に出ていたとは驚きです。どうやら本作が唯一の主演作らしく、以後はプロデューサーへと転身。1978年には兄が主演した『梁山怪招』という作品を製作しています。
そういえば、監督の巫敏雄・共演の蔡弘という顔ぶれも、向華強の『子連れドラゴン女人拳』と共通しています。本作に兄の名前はありませんが、ひょっとしたら製作の背景に向華強の関与(意味深)があったのかもしれませんね。

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