功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

『フル・ブラッド』

2014-08-30 23:07:17 | カンフー映画:佳作
「フル・ブラッド」
原題:花旗少林/英雄會少林
英題:Treasure Hunt
製作:1994年

▼ご無沙汰していました、龍争こ門です。先月の中ごろにプライベートで重大な出来事があり、しばらくブログの更新が手に付かない日々が続いてました。最近になってようやく落ち着いてきたので、今回から「功夫電影専科」を再始動したいと思います。
さて、前回周潤發(チョウ・ユンファ)の出演作だったので、今回も彼の作品からチョイスしてみました。とはいえ、あまり香港ノワールに親しみがない当方にとって、連続で周潤發作品を紹介するのはこれが最初で最後かも…(苦笑

■アメリカ在住の周潤發は政府の秘密工作員。上司から「中国の国宝を奪取せよ」との指令を受け、協力者である泰漢(チン・ハン)に連れられて少林寺へと向かった。しばらく寺に潜伏することとなった周潤發だが、そこで超能力者の女性・呉倩蓮(ン・シンリン)と運命的な出会いを果たす。
彼は次第に呉倩蓮と親交を深め、旧態依然とした少林寺の姿勢に異を唱えるなど、周囲に変化をもたらしていく。…だが、とうとう周潤發が寺を去る日がやって来た。後ろ髪を引かれる思いで彼は寺を後にするが、帰りの道中で恐るべき陰謀を知ってしまう。
 実は国宝とは呉倩蓮のことで、今回の一件はある種の人身売買だったのだ。泰漢は公安局の高官(泰漢の一人二役)に化け、アメリカに彼女を引き渡そうと画策。真相を知った周潤發は凶弾を受け、事件に少林寺の住職・劉家輝(リュー・チャーフィ)も関与していたことが発覚する。
その後、超能力によって周潤發の怪我は完治したが、呉倩蓮は彼をかばって泰漢のもとに投降していった。全ての事情を知った周潤發は、愛する彼女を救うために命がけの戦いに挑むが…!?

▲本作はジャケットだけを見ると香港ノワールっぽく見えますが、実際はコメディあり・ファンタジーあり・ラブストーリーあり・功夫アクションありという、香港映画らしい超ごった煮ムービーとなっていました(爆
ストーリーの方も怪しい部分が多く、国宝の奪取という当初の目的を早い段階で見失うなど、色んなところで穴が見られます。しかし、ギャグからシリアスまでこなす周潤發の柔軟な演技力、印象的なカットの数々によって良質な作品に仕上がっているのです。
 特にラストで超能力という奇抜な要素を上手く生かし、感動の別れを演出するくだりは流石の一言。『西遊記リローデッド』は個人的にハズレでしたが、今回は劉鎮偉(ジェフ・ラウ)監督の手腕に唸らされました。
ところでアクションについてですが、舞台が少林寺なので周潤發による殺陣もボチボチあります。が、それよりも功夫ファン必見の見せ場は劉家輝VS郭振鋒(フィリップ・コク…本作の動作設計も兼任)の一戦でしょう。
 劉家班と五毒のエースというこの顔合わせは、ショウ・ブラザーズ時代にも実現しなかった珠玉のカードです。大怪我を負ったまま放置される周潤發には気の毒ですが(笑)、このバトルだけでも見る価値はあると言えますね(もちろんラストで周潤發も暴れるのでご心配なく!)。
全体を通して見るとまとまりに欠けるものの、質に関しては同じ闇鍋映画の『ポストマン・ファイツ・バック』を凌駕する本作。ちなみに劉家輝と郭振鋒、ちびっ子坊主の蔡宇は『少林活寶貝』という動作片に似た役柄で出ているのですが、いつかこっちも見てみたいなぁ…。