功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

※…近況報告

2008-04-26 22:14:46 | Weblog
現在、私事で身辺が色々とゴタついていまして、ここのところ更新ができていない状態が続いています。
5月には再び通常通りの更新ができるように頑張っていきたいので、ご容赦の程をよろしくお願いします。

管理人:龍争こ門

『少林寺列伝(少林寺)』

2008-04-22 22:56:03 | ショウ・ブラザーズ
「少林寺列伝」
原題:少林寺
英題:Shaolin Temple
製作:1976年

▼本作は張徹(チャン・チェ)作品の中でも傑作と呼ぶに相応しい一大スペクタクル大作だ。
出てくる人も張徹やショウブラ作品に限らず知っている顔ばかりで、本作はおおまかな粗筋としては中国の名だたる英雄たちが少林寺へ会し、清朝と戦うシンプルなものだが、これが本当に凄い!
私としてはこの作品を見たことが本格的にショウブラにハマるキッカケともなりましたので、この作品にも結構思い入れがあったりします。

■少林寺の偉い坊さんの山茅(サン・マオ)らは悩んでいた。というのも、少林寺に入門しようと門前で座り込みをしている部外者3名の事についてだ。この3人が傅聲、威冠軍、韋弘という顔ぶれで、それぞれ役柄は方世玉、胡惠乾、洪熙官という中華英雄たちだ。少林寺は当初部外者の入門に難色を示していたが、どうにか入門の許しを得ることができた。
同じ頃、台湾から落ち延びて少林寺にたどり着いた姜大衛、狄龍、劉永、岳華、王鐘、そして王龍威たち"少林五祖"の姿があった。彼らは施思(シー・ズー)の案内によって、少林寺の門をくぐった。
この他に、傅聲らの入門を受けて一般からも入門者が続出した。だが、そう簡単に少林寺の門は開かない。結局、最後に残っていたのは李藝民、唐炎燦、郭振鋒ら3人だけであった。
こうして集まった6・3・3で12人の天使のしっぽな英雄たち(爆
傅聲は生来の奔放さで修行に遅刻するなど、同期で真面目に十形拳を習っている威冠軍とはえらい違いだ。李藝民は厨房で鍋かき、唐炎燦は経典の虫干し、郭振鋒は足に重しをつけてひたすらジャンプと、それぞれ修行の毎日を送った。

ところがある日、傅聲は姜大衛らの特訓風景を見ていて王龍威を笑ったことから喧嘩に発展。負けた悔しさから傅聲は王龍威を越えるべく、真面目に特訓を開始する。
一方、実は少林寺には清朝からの密偵が潜んでいた。何を隠そう、密偵とは山茅の事だった。
山茅は王清、鹿峰ら朝廷の者へ少林寺の情報を流していたが、寺に帰ったところを姜大衛と狄龍に見つかる。追いかけようとする二人を諭したのは、五枚という尼さんだった。彼女は、姜大衛に三節鞭、狄龍に詠春拳を指導した。
しばらくして、傅聲は修業の末に王龍威へのリベンジを果たしていた。ところがそこに山茅が登場。自分と同じ悪役俳優の王龍威に悪の囁きをかけるが…。
そのころ、傅聲と威冠軍は少林寺から下山する策を講じていた。というのも、この2人の入門の目的は「仇討ち」。2人は木人巷に挑戦するが、それを阻まんと山茅が現れる。
山茅は、この機に乗じて2人を消してしまおうとも企んでいたが、それでもどうにか二人は下山に成功し、止められなかった(というか脱出を手助けした)姜大衛らは、しばらく懲罰房送りになる。
しかし、山茅たちはこの間にも少林寺焼き討ちを画策しており、すぐそこにまで大軍勢を率いて迫っていた。仇討ち済んだ帰り道、それを知った傅聲らはさっそく少林寺にこれを伝えるが、脱走者という身分の手前、なかなか信じてもらえない。
そうこうしている内に山茅の手引きで清の軍団が突入!兵力も武器もまったく不利のこの状況で、少林英雄たちは生き残れるのか!?

▲本作はここから始まる張徹サーガの序章(製作年度は前後するが)ともなる内容で、それぞれの英雄たちは少林英雄傳系列へと繋がっていくが、それはまた別の話…。
それぞれの修行シーンも趣向を凝らし、用いる拳や武器も様々で、ラストバトルに至って、それが各々のラストバトルでアクセントを利かせている。バラエティ溢れる敵や対戦条件も含めて素晴らしくも壮絶であり、散っていく戦士たちもまた悲壮感漂うものになっていた。
ストーリー的には王龍威とは傅聲が、山茅とは狄龍や姜大衛らが闘ってほしかったが、それでも凄いと言わずにはいられない熱き名勝負が次から次へと繰り出されていく。
手技のみで見せる狄龍VS王龍威、ザコ相手にひけをとらない姜大衛の三節鞭、血みどろの李藝民VS山茅、唐炎燦VS王清のバランスバトル、李藝民&傅聲VS山茅、五毒同士の郭振鋒VS鹿峰、そして葵弘らVS傅聲&威冠軍タッグの対決!
こんな高濃度のバトルが次から次へと行われるのだ、功夫映画ファンでこれを見て燃えない人はいないはずである(断言)!
ちなみに私が見たのは天映娯樂版のDVDなのだが、特典として李鼎家(リー・ガーデン)や汪禹(ワン・ユー)によるインタビューと、この作品についての考察などがあるのだが…二人ともホント年食っちゃって(以下略

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ/天地撃攘』

2008-04-19 21:52:47 | カンフー映画:佳作
「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ/天地撃攘」
原題:黄飛鴻之五龍城殲覇
英題:Once Upon a Time in China V
製作:1994年

●趙文卓(チウ・マンチェク)という男をご存じだろうか。徐克(ツイ・ハーク)の黄飛鴻シリーズを李連杰(リー・リンチェイ)から引き継ぎ、その後は電視劇版に至るまで同シリーズを盛り立てた武星だ。
肉体的なポテンシャルやマスクは同時期に活躍した李連杰や甄子丹にも劣ってはいない趙文卓だが、日本では彼の目だった活躍は90年代の武侠片ブーム以降ほとんど音沙汰が無い。実際は近年でも日本と合作した『国姓爺合戦』など彼の出演作は一応日本でも見ることができるものの、李連杰や甄子丹と比較すると少し知名度は落ちており、趙文卓自身も出演作は先の2人より少ないのだ(電視劇での活動も挟んだ上での話だが)。
思うに、趙文卓が大々的なブレイクを果たせなかったのは、彼なりのスタイルが確立できないままズルズルと引きずってしまっている事が原因ではないだろうか。李連杰は文字通りの"一騎当千"なスタイルを、甄子丹は過剰ともいえる早回しアクションを自分のスタイルとしている。趙文卓はアクションセンスも悪くはないが、あの2人に太刀打ちできそうなポイントが見当たらないのである。

この李連杰・甄子丹・趙文卓と似た構図がアメリカでも存在している。かつて数々のアクション映画を世に送り出した「マーシャルアーツ三羽烏」がそれだ。
何者をも寄せ付けないスティーブン・セガール、股割りと回し蹴りで市場を席巻したジャン・クロード=ヴァン・ダム、そしてそれら2人と比較すると迫力負けしてしまっているドルフ・ラングレン…彼らが「マーシャルアーツ三羽烏」だ。これをそれぞれに当てはめると、李連杰がセガール、甄子丹がヴァンダム、そして趙文卓がラングレンに相当する。
この趙文卓とラングレンは、共に大物スターの対戦相手としてスクリーンデビューを果たしたという共通点があった(趙文卓は李連杰の『方世玉』で、ラングレンはスタローンの『ロッキー4』)。だが、私自身まだ彼らの主演作には見ていない作品が多くあるため、趙文卓とラングレンについてはこれからも期待したいところ。
趙文卓の主演作で気になるのは、代表作と呼ばれる『刀/ブレード』、彼の作品では傑作とされる『生死拳速』、盧惠光との蹴撃戦が要注目の『麻雀飛龍』だが、とりあえず今回は日本で見られる作品の中から本作の紹介です。

本作はスーパー獅子舞大戦と周比利(ビリー・チョウ)でハチャメチャだった前作『天地覇王』から直結した物語で、今度の敵は実在した大海賊・張保仔だ。この張保仔を演じるのは武術指導家の易天雄(『無問題2』にも参加)、そしてラスボスが張保仔の息子役で出演している董[王韋](トン・ワイ)と、2人の武術指導家が相手となる。これに五大弟子を引き連れた趙文卓が挑む物語だ。
作品としては前作以前よりも規模が縮小され、単なる海賊退治の物語でしかなくなっている。第一作のようにメッセージ性が強いというわけでも、第四作のようにハジケまくった作品でもないため、どこかもどかしさを感じる作りとなっているのが惜しい。アクションはそれなりに良いぶん、そこのところは残念である。
ところで前から気になっていた事だが、前作の『天地覇王』はまだいいとして、本作のタイトルである『天地撃攘』って…何?(爆

『レッド・リベンジ/復讐の罠』

2008-04-17 22:41:19 | 元彪(ユン・ピョウ)
「レッド・リベンジ/復讐の罠」
原題:龍鳳賊捉賊
英題:License to Steal/Dragon Versus Phoenix/Thief Versus Thief
製作:1990年

●かつて師匠の劉洵のもと、高麗虹(ジョイス・コウ)、江欣燕、そしてアグネス・アウレリオの3人は、キャッツアイのように怪盗として暗躍していた。しかし、思想の違いから高麗虹らを疎んじていたアグネスが仕事中に裏切り、高麗虹は逮捕されて劉洵は脚をへし折られてしまった。
それから数年後、アグネスは周比利(ビリー・チョウ)や崔正一らを従えた強盗団を仕切るまでに勢力を拡大。その後、高麗虹が出所した事を知ったアグネスは、彼女を再び陥れようと企む。そこにアグネスを追う刑事の呉耀漢(リチャード・ウン)と新米警官の倪星(コリン・チョウ)、そして呉耀漢の甥で頭がプッツンしているユンピョウも巻き込まれ…。

 ユンピョウのカテゴリに入れていますが、本作は高麗虹(ジョイス・コウ)主演のレディースアクションであり、時期的にも倪星が日本で初お披露目されたと思われる作品です。
上記のあらすじを見ても解るように、ストーリーはかなりオーソドックスな内容で、これといって意外性の無いシリアスなアクション映画に仕上がっています。主演の高麗虹はサモハン直伝のアクションで大健闘し、本作でもアグネスやユンピョウを相手取ってバトルを繰り広げています。最後のVSアグネス戦でも、激しい殺陣をテンポ良く演じていました。
武術指導は李撃柱という人が担当しており、サモハンはアクションに一切タッチしていないようです(こっそりカメオ出演はしてます)。しかしアクションシーンのノリはサモハン映画そのもので、立ち回りの雰囲気が若干違って見えるかもしれませんが、拳と拳がぶつかり合う壮絶な功夫ファイトが構築されています。
 ちなみに李撃柱は京柱という別の芸名があり、昔は主にショウ・ブラザーズという大手プロで活躍していました。彼は役者としての顔も持ち、劉家輝(リュウ・チャーフィ)主演作『続・少林虎鶴拳』では主人公の相棒を演じています。その作品で劉家輝の妻を女性武術指導家の楊青青が演じていますが、彼女は本作でもワンシーンだけ出演し、ユンピョウとサイフの取り合いを展開していました。
そのユンピョウもまた、本作では無理やり挟み込んだようなゲスト出演ではありましたが、功夫アクションを大熱演!倪星も少ない見せ場で頑張っていて、本作ではラスト手前の乱戦で見せるVS崔正一(レディアクションものに何本か出演)で俊敏なファイトを見せています(今となっては貴重なユンピョウVS倪星の一幕も見逃せないかも?)。
そんなわけで、功夫アクションに関してはなかなか悪くない作品でしたが、いまいちストーリーの弾けっぷりが足りなかった気がします。もし本作がサモハン監督作だったら弾けまくっていたと思いますが…それだと確実にセクハラ描写満載のおバカ映画になっただろうなぁ(爆

『カンフー・ボーイ/最後の騎士』

2008-04-15 21:11:45 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「カンフー・ボーイ/最後の騎士」
原題:Sidekicks/Last Electric Knight
製作:1986年

●『ラッシュ・アワー2』の中盤で、ジャッキーとクリス・タッカーに窓口で話しかけらるや否や、章子怡(チャン・ツィイー)のところまで走っていったナイナイの岡村に似た男を覚えているだろうか。
実は彼はアーニー・レイズJrという人で、いくつかアクション映画に出演しているスター。『ミュータント・ニンジャ・タートルズ2』『ランダウン』など、日本でも彼の出演作を見ることができる。また、子役時代の姿をタイマック主演のブラックスムービー『ラスト・ドラゴン』でも見られるのだが、本作は彼がその『ラスト・ドラゴン』と同時期に主演した作品である。
製作はディズニーで、アメリカではTVドラマとして作られたらしい(詳しくは不明)。物語はアメリカを舞台に異邦人のカンフー少年・アーニー君が、死期が近いと悟った祖父の予見に従い、中年刑事に親となってもらおうとする…という、ちょっぴり切実な話。ここに親権問題や麻薬組織との対決、そして祖父とアーニー君の別れなどが挟まれる。ディズニーらしくまったりとした作品だが、たぶんこれがドラマでは第1話ぐらいのものだと思われる。
さて肝心のアクションだが、子供向け作品のせいか劇中ではたった2回しかアーニー君の見せ場は無い(作品自体も50分弱と短め)。だが、その僅かなシーンで見せる棒術アクションやアクロバティックなファイトは、以前紹介した『クロオビ・キッズ』も霞んでしまうほどの見事なものだ。好小子特集の際に語ることはできなかったが、アメリカ系の好小子としてはまず『クロオビ・キッズ』の面々よりもアーニー君が先んじていたことが解る。
個人的にはドラマとして放送されたバージョンも気になるが、その後のアーニー君は成長するにしたがって様々なアクション映画に出演していく。日本では『マッハ!』の公開に便乗されてリリースされた『ガチンコ!』なる作品があり、彼の日本リリースされた出演作の中では数少ない主演作だ。現在も活躍中のアーニー君だが、その他の日本未公開の出演作もいつかは見てみたいものである。
なお、いくつかのサイトでは本作のタイトルを『カンフー・ボーイ/最後の旗士』としているが、正しくは上記の通りです。

『ビバリーヒルズ・ニンジャ』

2008-04-12 23:28:34 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「ビバリーヒルズ・ニンジャ」
原題:Beverly Hills Ninja
中文題:比佛利武士/笑林忍者
製作:1997年

●主人公のクリス・ファーレイは一人前のニンジャになることを夢見るおデブ君。しかしドジばかりで素質はゼロに等しく、ニンジャ学校の試験にも落ちてしまう。そんな時、彼のもとに謎の美女ニコレット・シェリダンが尋ねてきて、彼氏について調べてほしいと頼まれた。クリスはニンジャでもないのにはりきって任務を引き受けるが、偽札をめぐるヤクザの事件に巻き込まれてしまう。
どうしてもニコレットの事を信じたいクリスは、師匠に懇願してニコレットがいるはずのビバリーヒルズへと向かう。師匠はこっそりクリスの兄弟子をバックアップに同行させるが、果たしてクリスは一人前のニンジャになることができるのであろうか?
主演のクリス・ファーレィは『コーンヘッズ』や『トミーボーイ』などでおなじみのコメディ俳優だが、この同年にコカイン中毒で帰らぬ人となってしまっている。コメディとしてはヌルい本作だが、この作品を取り上げたのには理由がある。というのも、本作にはクリスの兄弟子役で仇雲波(ロビン・ショウ…別名は「威龍」)が出演しているのだ。
仇雲波はいずれこのカテゴリでも紹介するであろう『モータル・コンバット』での出演が有名だが、香港映画では『タイガー・コネクション』におけるドニーとの死闘、戴徹(ロバート・タイ)と組んだ『戰龍』、皇家師姐シリーズに噛みついた『地下兵工廠』などで印象深い活躍を残している。本作でもクリスのアシストとして貧乏クジを引く事も数多ではあるが(苦笑)、クリスとの友情などの見せ場もあって見逃せない。
アクションに関して言うと、本作はコメディであるため格闘シーンが沢山あるという訳ではなく、ボリューム不足の感は否めない。だが終盤のバトルでは仇雲波もバリバリ動いており、クリスもピンチに陥った仇雲波を助ける場面で、比較的ノンスタントのアクションで頑張っている。
なお、他にも敵役で『チャイナ・オブライエン』のキース・クックも登場している。こちらも仇雲波と同様に活躍を予感させるが、すぐに倒されてしまうので期待はずれもいいとこ。また、劇中に見られる間違った日本像はご愛敬だが、クリスが日本で育ったのに英語が話せたり車が運転できたりするなど、不自然でツメの甘い箇所が散見される。もう少ししっかりした作りならもっと面白くなったと思うのだが…。

『銀蕭月剣翠玉獅』

2008-04-11 20:38:00 | 女ドラゴン映画
銀蕭月剣翠玉獅
英題:Moonlight Sword & Jade Lion
製作:1977年(1981年?)

●ゴールデン・ハーベスト(以下GH)の黎明期を支えた功夫レディ、茅瑛(アンジェラ・マオ)。そしてGHにてデビューを果たした正統派功夫スター、王道(ワン・タオ)。この2人はGHを去ると台湾へと活躍の場を移し、それぞれ活動を続けた。しかし、同じGHから羽ばたいた者同士ではあったものの、王道はすぐに台湾へ行ってしまったため、GH内で2人が共演を果たす事は無かったのである。
2人が共演を果たせたのは1977年に製作された本作と『三千大洋』で、それ以外には後年の『怒馬飛砂』でしかこの顔合わせは実現していない。そういう意味では貴重な作品といえるし、茅瑛と王道による同郷同士のバトルもしっかり見ることができる。だが、本作はまったりとした感じのシリアス武侠片(なんじゃそりゃ)で、台詞主体で織り成される物語が非常に解りづらいのが難点だ。
とりあえず「茅瑛が王道と悪を討つまで」という筋立てである事までは解るのだが、物語のテンポは至極まったりと進む(悪く言えば遅い)ため、シリアスな話ではあっても緊張感はあまり感じられない。功夫アクションにしてもそんなに多い訳ではなく、どちらかといえばドラマ重視となっているので、あまり派手さも感じる事はできなかった(まぁ、ドラマ自体もそれほど面白くはなかったのだが…)。
悪い作品ではないが面白い作品とも言いきれないイマイチな出来の本作だが、実は上記の茅瑛VS王道と並んでもうひとつ見どころが存在する。
この作品にはラスボスの愛人(?)役で台湾功夫片の常連である龍君兒(ドリス・ロン)が出演しており、幾度か茅瑛VS龍君兒という夢の対決が行われるのである(2人はこれ以後も譚道良の『決闘太陽塔』で共演することとなる)。茅瑛は映画人生の晩年期に楊惠珊(エルザ・ヤン)など様々なレディドラゴンと共演していく事となるのだが、本作こそがその先駆けであったと考えると、感慨深いものを感じられる。
ちなみに監督の廖江霖(カール・リャオ)は、荊國忠の主演作『夢拳蘭花手』の監督だ。パッとしない感じの作風が引っ掛かっていたが、あの作品の監督ならなるほど納得。アクションやキャストはそこそこ良いだけに、この出来に甘んじてしまったのはちょびっと残念です。

『一代天嬌/萬世天嬌』

2008-04-08 23:12:45 | 女ドラゴン映画
一代天嬌/萬世天嬌
英題:Revengeful Swordswoman
製作:1979年

●嘉凌(ジュディ・リー)主演の本作は、『太極八蚊』『黒名單』と同様の「辻斬りの旅」的な作品だ。
嘉凌は王侠に超スパルタな修行を受けていた。この王侠は嘉凌の両親を殺した仇敵であり、剣士の聞江龍と知り合った嘉凌は一矢報いようと動いた。しかし嘉凌と王侠の決闘のさなか、毒蛇に襲われそうだった嘉凌を王侠がかばった。嘉凌の復讐を手助けしようとした聞江龍によって王侠は死すが、今わの際に王侠は意外な告白をする。
実は、嘉凌の両親は王侠ではなく別の悪党によって殺されたというのだ。嘉凌の両親の使用人だった(?)王侠は、是が非でも嘉凌が復讐を遂げられるような腕前になるようにと、敢えてああいう指導をしていたという。王侠を弔い、聞江龍から謝罪の便を受け取ると、嘉凌は仇討ちの旅に出発した。
道中、おっちょこちょいな投石男と出会った嘉凌は彼を同行させるが、仇討ち相手を探ろうとする彼女の前には次々と敵が現れる。心配した聞江龍が影ながら彼女をエスコートしているが、彼とは別にたびたび嘉凌を助ける謎の覆面男がいる。果たして覆面男の正体は?そして、嘉凌の仇討ちは成就するのか?といった感じで物語は展開されてく。
本作は特に凄いスターが出ているわけではないが、他の「辻斬りの旅」系作品と違い、立ちはだかる敵の数が多いのが特徴だ。黒幕も含めると総勢10人以上もの敵が嘉凌と闘い、有名どころでは董力(トン・リー)、高飛(コー・フェイ)、嘉凱、王折生などが次々と登場する。
武術指導はテロップが無かったため不明だが、アクションに関してはなかなか面白く、武侠片なのに武打アクションがわりと多め。個人的に1番の収穫は嘉凌で、本作の彼女はちょっと『新桃太郎』を髣髴とさせるボーイッシュな姿で登場し、アクションでは高い蹴りを放ったりして見応えのあるバトルを繰り広げている。これまであまり彼女のアクションで「これは!」と思ったものに巡りあう事が出来なかっただけに、嬉しい驚きを感じることができた。
また、「辻斬りの旅」系作品は性質上ストーリーが薄くなりがちだが、この作品ではそういった事態になっていない点は評価できる。ストーリーは後半から種明かしになるにつれて解りにくい展開が続き、オチもそんなにビックリするようなものではなく、盛り上がりには欠けているものの、嘉凌のアクションが心行くまで堪能できる一本。
「辻斬りの旅」系作品の探求は、まだまだ続きそうです。

『怪客』

2008-04-05 20:47:39 | カンフー映画:傑作
怪客
英題:The Karate Killers/Stranger from Canton/Stone Cold Wu Tang
製作:1973年

▼B級功夫スター、白彪(バイ・ピョウ)の主演作である。白彪はいろんなところに顔を出している人で、日本でも『Gメン75』の香港ロケに楊斯と共に参加したり、主演作の『アムステルダム・コネクション』がリリースされている。
そんな彼の初期の主演作がこの作品で、当時大ヒットを記録していた『ドラゴン怒りの鉄拳』の影響を受けた作りになっている。だが、脚本を倪匡(イ・クオン)が担当しただけあって、それなりにオリジナリティのある作品に仕上がっているところは評価できる。

■本作は抗日作品ではなく、『ワンチャイ/天地大乱』みたいに清朝が敵として登場する。革命派を一網打尽にしようと、清朝はしつこくメンバーを追っていた。アメリカ帰りの風来坊・白彪は、功夫道場を隠れ蓑にしている革命派の魯俊谷たちと出会うが、次々と革命派のアジトを襲撃され、メンバーはほとんど全滅してしまう。残された白彪と魯俊谷は誤解からぶつかり合うが、のちに協力して高岡たちと闘っていく事となった。
その後、白彪&魯俊谷は高岡との激しい戦いの末に満身創痍となり、いったんは引き分けで終わる。ところが高岡は用心棒として新たに馮毅(フォン・イー…思いっきり『怒りの鉄拳』な格好で登場)を呼び寄せ、まだ傷の癒えていない魯俊谷を倒してしまった。
高岡は殺害した魯俊谷の遺体を白彪に送りつけ、ヒロインを人質に取って挑発。怒りに燃える白彪はこの圧倒的に不利な条件の下、最後の闘いのに望むのだった…。

▲物語は革命派と清朝との戦いという一点に集中しており、緊迫感溢れる攻防戦が繰り広げられている。ほとんどノンスター作品であり、主演から敵役から脇役に至るまで派手なキャストではないものの、全体的に演出もアクションもすこぶる頑張っていて、無名の作品にしてはなかなか面白い。特に功夫アクションについては迫力満点であり、どちらかというと呉思遠作品っぽい肉弾戦に終始しているのがポイントだ(武術指導は陳少鵬)。
また、本作は『巡捕房』『龍虎門』などの監督である魯俊谷が重要な登場人物として活躍している。彼自身も役者としての出演作は多いのだが、羅維(ロー・ウェイ)や黄楓(ファン・フェン)などの役者としても活動している監督とは違い、きっちりとアクションもこなしている。彼は時に武術指導も担当する事があるらしく、そういう点ではジャッキーやサモハンの大先輩と言えなくもない。
単なる『怒りの鉄拳』フォロワーではない渋めの作品。こうなると同キャスト・スタッフで製作された姉妹作の『戦北國』も気になるところだが…?

『飛鶴』

2008-04-04 22:33:12 | カンフー映画:珍作
飛鶴
英題:The Crane/Rivals of the Dragon
製作:1980年

●本作はモノホンの武術家、陳克夫(英名はジェフェリー・チャン)が出演している事でも知られている作品である。
陳克夫その人については詳しいサイトを見ていただくとして、陳克夫と共に主演としてクレジットされているのは、七小福の元(ユエン・タク)だ。七小福からショウブラに渡った元は、武侠片などに出演する傍ら、武術指導として大量の作品に関わった。武星としては『暗黒街/若き英雄伝説』で金城武やユンピョウと、『神話』でジャッキーと闘っている。そんな彼が本作の主演を任されたのは、やはり当時のジャッキー人気にあやかっての事だろう。
この作品、香港映画には珍しく全編に渡ってアメリカロケが行われている。アメリカロケ&ジャッキー関連のキャストといえば、ジャッキーの師・于占元が主演した『師父出馬』を連想してしまいがちだが、当方はまだ『師父出馬』を見ていないので何ともいえないところ。ストーリーはアメリカ在住の武術家・陳克夫が、押しかけ弟子の元らと共に黒社会の陰謀に巻き込まれ、悪の組織と闘っていくというものだ。
はっきり言って物語は特に面白いものでもないし、キャストも陳克夫と元以外は知らない俳優ばかり。全体的なアクションの出来ももっさりとしていて、やや迫力に欠けている。だが、見た目は普通のおじさんなのに結構動ける陳克夫や、七小福仕込みの身の軽さを見せる元のアクションは一見の価値アリで、ラストバトルでは陳克夫が貫禄のある立ち回りを見せていた。
まぁ、それ以外はさして語るべき箇所は無いのだが…。