神州小劍侠
英題:Young swordsmen in china
製作:1989年
▼1986年、香港で映像機器の会社を興していたひとりの日本人が、日中合作による功夫片の製作へと着手しました。
中国からは武術家の王群や『武林志』の李俊峰が出演し、日本からはベテランの村川透が監督に着任。3D映画として製作されたその作品は、『侠女十三妹/カンフー艶舞』のタイトルで日本上陸を果たします。
この作品を製作したのは日本人の辻真佐男氏で、彼は『侠女十三妹』に続いて日中合作映画第2弾を企画し、再び日本と中国から精鋭たちを呼び集めました。
そうして製作されたのが本作『神州小劍侠』なんですが、これが様々な意味で異色の作品となっているのです(詳しくは後述)。
■(字幕ナシで観賞したのでストーリーは多少推測が入ってます)
物語は静かに暮らす少数民族(苗族?)の集落に、突如として政府の一軍が襲いくる場面から始まる。彼らを先導したのは、同じ一族でありながら裏切った王春元と杜偉和の兄弟だった。
一族の長は、生まれて間もない我が子に一族再興の願いを託し、長の証である金杯を持たせて密かに逃がした。かくして長とその近親者たちは殺され、遺児は王德明(中国武術七段の拳法家)とともに日本へ落ち延びた。
それから10年後…忍者の頭領である鹿村泰祥(!)の庇護の元、残された遺児は少年忍者・鞏利峰へと成長。友達の高偉・宮炳華らと共に、厳しい修行の日々を送っていた。
そんな中、仙草探しのため中国へ渡る事になった鞏利峰は、城下町(ロケ地は恐らく東映太秦映画村)へと向かい、豪商・入江正徳の仲介で大陸へと出立する。
のちに追ってきた高偉と宮炳華も加わるが、とある誘拐事件に遭遇したことで張子紅・張悦の姉弟と知り合う。彼らは仙草の自生地を知っており、道案内を買って出てくれた。
だが、実は目的地には件の滅ぼされた一族の集落があり、実権を握った王春元と杜偉和は金杯を持つ遺児を血眼で探していた(誘拐事件はその一環)。
やがて砦に到着した鞏利峰たちであったが、敵に襲われたところを王德明に助けられ、すべての秘密を聞かされる事となる。
今回の旅路は一族再興の一環であり、鞏利峰の両親は王春元と社佛和に殺され、張子紅・張悦こそが王德明の実子なのだ…と。だが、張悦は年端もいかぬ弟が犠牲になっていた事を知らされたため、王德明に激しく反発する。
やがて政府軍の将を討ち、各地に落ち延びた一族の残党を結集させた王德明は、一斉蜂起の機を窺っていた。しかし張悦が先走って捕えられ、助けに来た鞏利峰や王德明たちも捕まってしまう。
刻々と残党による蜂起が迫る中、果たして鞏利峰たちは窮地を切り抜けられるのだろうか…!?
▲ご覧のとおり、本作は香港映画で活躍した鹿村泰祥が出演しており、彼は武術指導と監督(中国側の羅[シ兪]中、日本側の高瀬昌弘と共同)、そして脚本も担当しています。
本作の鹿村さんは師匠ポジションながら王德明と戦い、ラストバトルでは美味しい活躍を見せたりと各所で活躍。彼の指導したアクションシーンも実に流麗で、主演の子役たちもアクロバティックな動きで応えています。
アクションもさることながら、ストーリーも子供向けアドベンチャーとしてそつなく纏まっており、仇討ちというテーマを扱いつつも血生臭さや陰惨さを全く感じさせません。
仲間の1人とヒロインのロマンスが後半で忘れ去られていたりしますが、最後まで丁寧に作られているため、そこまで気に掛かるような事もありませんでした。
しかし本作を異色作と呼ぶ要因は他にもあります。先述したように、劇中では東映太秦映画村でロケが行われており、鹿村さん以外にも日本人キャストが多数参加。驚いた事に、その中には深沢政雄氏の姿があったのです。
深沢氏は昭和ゴジラシリーズでミニラを演じ、“小人のマーチャン”の芸名でも知られています。本作では中国ロケ部分に少しだけ出演し、ノッポの相方と一緒にコソ泥の詐欺師に扮していますが、どんな経緯で氏は本作に関わったのでしょうか?
そしてもう1つ、かつて『侠女十三妹』では3D方式が採用されていましたが、本作では一部のシーンをアニメーションで描くという実験的な描写が試みられています。
劇中では中国への航海と最終決戦でこの手法が使われていますが、その演出やタッチは明らかに日本製。残念ながらクレジットにアニメ制作会社の表記は無く、一体どこのプロダクションが作ったのか非常に気になります。
広大な中国山地のロケに加え、日本ロケに意外なキャストにアニメーション、そして鹿村さんのサプライズ出演に驚かされる逸品。単独の作品としても簡潔に仕上がっているので、決して見て損は無いでしょう。
さて、そんなこんなで今月は日本未公開の中国産功夫片を追ってみましたが、そのバリエーションの豊かさには圧倒されてしまいました。
どの作品にも多彩なバックグラウンドがあり、きら星のような武術家たちの活躍があり、そして奥深い歴史が存在します。
その広大さは香港映画にも引けを取っておらず、こうした切磋琢磨の連続が中国映画を世界でもトップクラスの市場に押し上げたのだと思うと、なんとも感慨深く思えてなりません。
とはいえ、私の中国映画への探求は始まったばかり。今回の特集はこれで終了となりますが、また機会があれば未開拓の中国映画に迫ってみたいと考えています。という訳で皆さん、本日はこれにて……(特集、終わり)
英題:Young swordsmen in china
製作:1989年
▼1986年、香港で映像機器の会社を興していたひとりの日本人が、日中合作による功夫片の製作へと着手しました。
中国からは武術家の王群や『武林志』の李俊峰が出演し、日本からはベテランの村川透が監督に着任。3D映画として製作されたその作品は、『侠女十三妹/カンフー艶舞』のタイトルで日本上陸を果たします。
この作品を製作したのは日本人の辻真佐男氏で、彼は『侠女十三妹』に続いて日中合作映画第2弾を企画し、再び日本と中国から精鋭たちを呼び集めました。
そうして製作されたのが本作『神州小劍侠』なんですが、これが様々な意味で異色の作品となっているのです(詳しくは後述)。
■(字幕ナシで観賞したのでストーリーは多少推測が入ってます)
物語は静かに暮らす少数民族(苗族?)の集落に、突如として政府の一軍が襲いくる場面から始まる。彼らを先導したのは、同じ一族でありながら裏切った王春元と杜偉和の兄弟だった。
一族の長は、生まれて間もない我が子に一族再興の願いを託し、長の証である金杯を持たせて密かに逃がした。かくして長とその近親者たちは殺され、遺児は王德明(中国武術七段の拳法家)とともに日本へ落ち延びた。
それから10年後…忍者の頭領である鹿村泰祥(!)の庇護の元、残された遺児は少年忍者・鞏利峰へと成長。友達の高偉・宮炳華らと共に、厳しい修行の日々を送っていた。
そんな中、仙草探しのため中国へ渡る事になった鞏利峰は、城下町(ロケ地は恐らく東映太秦映画村)へと向かい、豪商・入江正徳の仲介で大陸へと出立する。
のちに追ってきた高偉と宮炳華も加わるが、とある誘拐事件に遭遇したことで張子紅・張悦の姉弟と知り合う。彼らは仙草の自生地を知っており、道案内を買って出てくれた。
だが、実は目的地には件の滅ぼされた一族の集落があり、実権を握った王春元と杜偉和は金杯を持つ遺児を血眼で探していた(誘拐事件はその一環)。
やがて砦に到着した鞏利峰たちであったが、敵に襲われたところを王德明に助けられ、すべての秘密を聞かされる事となる。
今回の旅路は一族再興の一環であり、鞏利峰の両親は王春元と社佛和に殺され、張子紅・張悦こそが王德明の実子なのだ…と。だが、張悦は年端もいかぬ弟が犠牲になっていた事を知らされたため、王德明に激しく反発する。
やがて政府軍の将を討ち、各地に落ち延びた一族の残党を結集させた王德明は、一斉蜂起の機を窺っていた。しかし張悦が先走って捕えられ、助けに来た鞏利峰や王德明たちも捕まってしまう。
刻々と残党による蜂起が迫る中、果たして鞏利峰たちは窮地を切り抜けられるのだろうか…!?
▲ご覧のとおり、本作は香港映画で活躍した鹿村泰祥が出演しており、彼は武術指導と監督(中国側の羅[シ兪]中、日本側の高瀬昌弘と共同)、そして脚本も担当しています。
本作の鹿村さんは師匠ポジションながら王德明と戦い、ラストバトルでは美味しい活躍を見せたりと各所で活躍。彼の指導したアクションシーンも実に流麗で、主演の子役たちもアクロバティックな動きで応えています。
アクションもさることながら、ストーリーも子供向けアドベンチャーとしてそつなく纏まっており、仇討ちというテーマを扱いつつも血生臭さや陰惨さを全く感じさせません。
仲間の1人とヒロインのロマンスが後半で忘れ去られていたりしますが、最後まで丁寧に作られているため、そこまで気に掛かるような事もありませんでした。
しかし本作を異色作と呼ぶ要因は他にもあります。先述したように、劇中では東映太秦映画村でロケが行われており、鹿村さん以外にも日本人キャストが多数参加。驚いた事に、その中には深沢政雄氏の姿があったのです。
深沢氏は昭和ゴジラシリーズでミニラを演じ、“小人のマーチャン”の芸名でも知られています。本作では中国ロケ部分に少しだけ出演し、ノッポの相方と一緒にコソ泥の詐欺師に扮していますが、どんな経緯で氏は本作に関わったのでしょうか?
そしてもう1つ、かつて『侠女十三妹』では3D方式が採用されていましたが、本作では一部のシーンをアニメーションで描くという実験的な描写が試みられています。
劇中では中国への航海と最終決戦でこの手法が使われていますが、その演出やタッチは明らかに日本製。残念ながらクレジットにアニメ制作会社の表記は無く、一体どこのプロダクションが作ったのか非常に気になります。
広大な中国山地のロケに加え、日本ロケに意外なキャストにアニメーション、そして鹿村さんのサプライズ出演に驚かされる逸品。単独の作品としても簡潔に仕上がっているので、決して見て損は無いでしょう。
さて、そんなこんなで今月は日本未公開の中国産功夫片を追ってみましたが、そのバリエーションの豊かさには圧倒されてしまいました。
どの作品にも多彩なバックグラウンドがあり、きら星のような武術家たちの活躍があり、そして奥深い歴史が存在します。
その広大さは香港映画にも引けを取っておらず、こうした切磋琢磨の連続が中国映画を世界でもトップクラスの市場に押し上げたのだと思うと、なんとも感慨深く思えてなりません。
とはいえ、私の中国映画への探求は始まったばかり。今回の特集はこれで終了となりますが、また機会があれば未開拓の中国映画に迫ってみたいと考えています。という訳で皆さん、本日はこれにて……(特集、終わり)