功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

『逆襲!!少林寺必殺拳』

2007-09-30 22:38:35 | カンフー映画:珍作
「逆襲!!少林寺必殺拳」
河南嵩山少林寺/河南嵩扎少林寺/少林金剛経
Shaolin Kung Fu/Shaolin Temple Strikes Back
Strikes Back Shaolin Temple/Shaolin Temple 4
1983

●本作は李連杰の『少林寺』大ヒットに便乗して製作された少林寺映画である。
この手の少林寺フォロワー作品はいくつか種類があり、まず1つは李連杰のように大陸にゴロゴロいる武術チャンプを引っ張り出して製作したもの(『八百羅漢』『南拳王』などがこちら)。もう1つはそれっぽくあつらえただけで本物の武術家は出ていない便乗作品だ。
本作はどちらかというと後者の作品で、主演は同じ『少林寺』フォロワー作品である『少林寺十三棍僧』などに出演している陳建昌。物語は明王朝の姫を清の追っ手から守るために少林寺へ入門した陳建昌が、仲間たちと共に邪悪な兄弟(リーダー格が台湾功夫映画おなじみの悪役俳優・常山)と対決していくという話である。
だが、それぞれの場面がちぐはぐで統一性に欠けているのが欠点だ。キャラクターは魅力的(既婚者の少林僧、四人の弟が悪の道に走ってしまった師範の龍冠武(マーク・ロン)など個性的)だったが、それらが今一歩生かしきれていないのだ。それに唐突に陳建昌がスポーツ刈り(少林僧になったはずなのに微妙に頭髪が生えている)になっている場面があったりと、なにやらきな臭い匂いがプンプンするのだが…。
それもそのはず、実は本作の監督は郭南宏(ジョセフ・クオ)である。彼は自分の作品をよく再編集する事があり、あの『少林寺への道』もかなりツギハギしまくって製作したといわれている。この映画は日本でもタイトル化されており、私が見たのはこのバージョンだ。スポーツ刈りの陳建昌のシーンが示すように、国内版は再編集作品の可能性が高いと想われる。
アクションのほうは徐忠信が武術指導に加わっているのでそれなりに見られるが、完成度という点では少し満足できない面がある。それと、この作品には一応徐忠信や、陳木川やあの張堅庭(アルフレッド・チェン)が出演している…らしい。まだ私が彼らの顔を詳しく知らないのもあるが、本作では登場人物のほぼ80%が少林僧なので、オール坊主頭の中からそれらの面々を見分けるのが困難なのだ(爆
まだまだ私も勉強不足みたいです。

『新精武門』

2007-09-29 20:26:50 | バッタもん李小龍
新精武門
Return of Fist of Fury
19??(1978以降?)

●(※…上記画像は本作を収録したDVDパックです)
このまえ私は『Fists Of Fury Legacy Pack』というDVDを購入した。このDVDにはバッタもん李小龍作品が4つも収められており、内容は以前レビューした呂小龍の『達魔鐵指功』と『火燒少林門』、何宗道の『截拳鷹爪功』ともう一本という、かなりクラクラするラインナップだ(爆
で、問題なのが最後に収録されている『Return of Fist of Fury』という作品だ。実は『Return of Fist of Fury』というタイトルは『達魔鐵指功』の英題でもあり、蓋を開けてみるまでダブリ収録しているのかと思っていた。だが、実際に見てみるとこの作品はまったく正体不明の映画であることが解った。
というのも、ネットでどんなに検索しようが主演:ブルース・パクと監督:ジョセフ・ヴァルサコということ以外は全然引っ掛からず、出てくるのは『達魔鐵指功』の事ばかり。内容からして韓国映画のようだが、これまた知っている顔はほとんどいないという有様だ。こうなってくるともうお手上げ状態であるが、とにかく解らないなりに話を追ってみることにした。
寒そうな韓国の山奥(『地獄十二関門』のオープニングに出てくるあの岩場)から物語が始まる。岩をも一撃で砕く拳法の達人であるパクさんは、いきなり「ブラザー!」と叫ぶ。チラチラと回想シーンが挿入されているが、ここで写っている滝の前で演舞をしてるのがブラザーか?…ってこのブラザー、良く見たら呂小龍じゃないか!?
話を追っていくうちに、どうやらこの映画は先に紹介した『達魔鐵指功』『火燒少林門』の続編(!)だという事が解った。龍八さんの情報によると、本作の主演は白虎という人で、作品自体もれっきとした韓国映画だという。しかし李小龍作品で勝手に作った続編とかならよくあるが、よりによって呂小龍作品の続編を作るなんて何を考えているんだ!しかもご丁寧に李康助まで出てるし!
特に理由は不明だが、本作はブラザーの呂小龍を殺されたパクさんと日本軍&日本人武術家(服装はおもいっきり韓国系だが、下着はふんどし…ただし普通のふんどしではなく、相撲取りがしているようなふんどし)との戦いを主軸として進んでいく。
解らない事だらけの本作で唯一救いがあったとすれば、それは劇中のアクションが意外に悪くなかった事だろう。韓国作品なのでテコンドーアクション一辺倒かと思いきや、香港映画系に近い立ち回りでなかなか見せてくれる。繋ぎのアクションの弱さが目に付くが、この手の作品でここまでできていれば十分だろう。
さて、こうして幕を閉じた呂小龍の精武門物語だが、李小龍はどれぐらい兄弟がいたのだろうか?『截拳鷹爪功』では何宗道と韓國材、このシリーズでは呂小龍と白虎が李小龍の弟という設定だった。同門の兄弟弟子ならいざしらず、陳真の家系はいったいどうなっているんだと言いたくなるような兄弟ばかりだ。巨龍も『最後の精武門』なんて作品を制作していることだし、これからもまた李小龍の弟たちと出会っていくことになるかと思われます(爆

『火燒少林門』

2007-09-28 23:21:13 | バッタもん李小龍
火燒少林門
Bruce And Shaolin Kung Fu 2/Bruce And The Shaolin Fist
Ching Wu and Shaolin Kung Fu 2/The School of the Jung-mu Fighting Technique
Return of Red Tiger
1978(1980?)

●前回言及したとおり、本作は『達魔鐵指功』の続編である。バッタもん作品の続編が作られるというあたり、呂小龍のバイタリティーが感じられて興味深い…訳が無いのだが(爆
ところで海外データベースを覗いてみると、驚いたことに本作の監督は前作にも登場した南宮勳(ナン・ゴンクン)とのこと。キャストは前作に引き続いて日本軍の将軍に裴壽千、刺客にまたもや江島、その他韓国勢も奮闘している。
前作でハチの巣にされて完全に死んだと思われた呂小龍だが、しつこくも呂小龍は生きていた。一方で裴壽千は仕留めそこなった呂小龍を倒すべく、怒りの炎を燃やしていた。なんだかこれだと『ドラゴン怒りの鉄拳』じゃなくて『裴壽千・怒りの鉄拳』というタイトルのほうがいいんじゃ…(笑
呂小龍が匿われていたのは韓鷹(イーグル・ハン…『少林酔八拳』で劉家輝と闘った人)のところだった。裴壽千は江島(前作とは別の役)らに呂小龍の始末を申し付ける。ここからはほとんど前作と同じ流れで、呂小龍は脱出するが韓鷹は殺され、江島と因縁のある別の師匠(李康助)に匿われて修行するところまで同じだ。違うのはきちっと呂小龍が裴壽千と決着を付ける事であるが、結果は相打ちに終わっていた。さすがにあれで生きていたら呂小龍はしつこすぎると製作側も判断したものと思われる(苦笑
しかし、作中呂小龍を庇うのは前作も含めると相当数に上る。陳星・南宮勳とその娘の金正蘭・韓鷹とその娘・李康助とその仲間たちと、少なくとも6人以上が協力しているが、そもそも何故にここまで命をかけて呂小龍なんかを守ろうとするのかが甚だ疑問だ。呂小龍は李小龍の弟役のようだが、李小龍がそれほど人望の厚い人物だったということなのだろうか。つくづく李小龍様々といった感じの呂小龍である。
アクションのほうはまあまあで、今回はテコンドー系の人材も増えたということで足技の多い殺陣になっている。個人的に気になったのは韓鷹で、前半のみの登場だがその足技はインパクト十分のもの。黄正利みたいなテコンダーが韓国には大勢いるということが垣間見えるワンシーンである。まあそれ以外はバッタもん作品としてはいつもの如く、呂小龍のアクションには特に見るべきポイントもありませんでしたが…(前作で会得しているはずの鐵指功を使わなかったのは何故?)。
しかし、江島はこれでバッタもん李小龍の御三家とは全員闘ったということになりますね。『風拳鬼手への道』では何宗道と、『一拳一笑』では巨龍と、そして本作で呂小龍と…もとは『少林五祖』などに出演していたショウブラスターだったんですが、後年はこういったアンダーワールドな仕事が増えていったようでいかんともしがたいところです。バッタもん作品での江島を語るなら『クローン人間ブルース・リー/怒りのスリードラゴン』も無視できないですが、こちらは国内版が未だに見つからないので視聴に至ってはいません(涙
ところで本作でついにその息の根が止まった呂小龍ですが、これにてシリーズも終幕です。いやぁ長かったなぁ…と、思いきや?!

『達魔鐵指功』

2007-09-27 22:47:08 | バッタもん李小龍
達魔鐵指功
Bruce and Shaolin Kung Fu/Bruce Vs. Black Dragon/Ching Wu and Shaolin Kung Fu
1978

●呂小龍(ブルース・リ)主演の、例によってとんでもない作品だ(爆
本作は『ドラゴン怒りの鉄拳』の後日談的作品で、これまでにも同系列の作品は何宗道の『截拳鷹爪功』などを紹介している。作品自体のハチャメチャ具合は『截拳鷹爪功』とあまり変わりの無い本作であるが、決定的に違うのは本作が韓国映画ということである。
それを裏付ける証拠は、作中の舞台が全編に渡って韓国ロケであることが示している。もし単に韓国ロケをした香港映画であるのなら、冒頭の上海でのシーンをわざわざ韓国で取る必要性が無く(どう見てもあの場面は韓国)、出演者も陳星(チェン・シン)・江島・楊斯(ヤン・スェ)・張力と香港勢が大挙して登場しているが、その他に韓国系のスターである金正蘭(クム・チンラン)と南宮勳(ナン・ゴンクン)の参加が確認できる。
内容は兄である李小龍が死に、呂小龍が仇討ち(橋本力の上司か?)をするところから始まる。激闘の末に日本軍のお偉いさんを倒した呂小龍だが、そのお偉いさんは盟友である日本軍将校・裴壽千のもとで切腹して果ててしまう。怒りに震える裴壽千はただちに呂小龍の捜索を開始。呂小龍の師匠で鐵指功の名人である陳星は呂小龍をなぜか韓国に脱出させるが、そこへやって来た日本軍の江島と楊斯のジェットストリームアタック(笑)に破れてしまう。
韓国へ来た呂小龍は陳星と同じ鐵指功の名手である南宮勳のもとに身を寄せた。その娘の金正蘭となんとなくいい感じになっているのは流石だが、裴壽千が放った江島たち刺客が「呂小龍を引き渡せ!」と南宮勳の元へ襲撃に現れた。
南宮勳は一命を取り留めるものの、呂小龍と金正蘭は復讐のために楊斯を襲った。飛び道具を使いまくる極悪ファイトで楊斯を仕留めた(爆)呂小龍たちは、続いて韓国入りした裴壽千のもとに潜入。変装して潜り込んでいた金正蘭の正体がバレてピンチに陥るも、呂小龍が救援に現れる。次に張力も到着するが、ものの5秒もしないうちに江島に刺されて死んでしまった(爆笑
負傷した金正蘭をほったらかして江島を追う呂小龍。中途半端なマラソンバトルを呂小龍が制するが、そこに大勢の兵士を引き連れて裴壽千がやって来た。裴壽千は新たに白髪のジジイ2人を用心棒として連れてきたが、これも呂小龍に撃破される。
「俺達は東亜病夫じゃない!」とかなんとかもっともらしい事を言い残して去っていく呂小龍…だが、仲間の未練が断ち切れなかった裴壽千が一斉射撃!ハチの巣にされる呂小龍を映して本作は幕を閉じる。
物語のヒドさは『截拳鷹爪功』とタメを張るが、いまいちアクションにはキレが無く、せっかくの陳星などの人員も宝の持ち腐れ状態と化している。巨龍(ドラゴン・リー)作品のようにテコンドー系のアクションではなく、香港映画の縮小コピーといった感じの殺陣で派手さは微塵も無い。ハッキリ言ってかなりの駄作なのだが、驚くべき事に本作には続編が存在している…っていうか、あのラストで生きてるのかよ!と言いたくもなるが、その作品は『火燒少林門』!こちらも追ってレビューを予定してます。

『リング・オブ・ファイア/炎の鉄拳』

2007-09-25 23:05:43 | マーシャルアーツ映画:下
「リング・オブ・ファイア/炎の鉄拳」
Ring of Fire 2 Blood and Steel
1992

●B級マーシャルアーツ映画お馴染みの顔、ドン・"ザ・ドラゴン"・ウィルソンの主演作である。レンタルビデオ店でB級アクション映画を探していると、イヤでも覚えてしまうようなクセのある名前が特徴だ(笑)。実際にもマーシャルアーツのチャンピオンで、少し昔の格闘技雑誌などに名前を見つけることができる。
絵に描いたようなベタベタで結婚を控えていたドンとヒロインが宝石強盗に遭遇する場面から物語は始まる。現場に居合わせたドンは強盗の一人を得意の格闘技で取り押さえるが、その混乱の巻きぞえでヒロインが負傷する。
強盗たちは病院に収容された仲間を奪還しようとするが、同じ病院にヒロインを入院させていたドンと鉢合わせ、今度は強盗のリーダーが逮捕される。だがその後リーダーは脱走し、ヒロインは誘拐されてしまった。ドンはヒロインを救うべく、敵が潜む地下へ仲間と共に突入したが…。
なんとなく派手なカースタント、安上がりな舞台や衣装、貧相な設定…まさにB級アクションの王道をつっ走る本作だが、もっと問題な事があった…肝心のドンがアクションでぜんぜん動けていないのだ!一挙一動がいちいち動作を止めているので非常に遅く見え、むしろ敵のザコの方がいい動きをしていたたので、いつドンが負けるのかと別の意味でハラハラした(苦笑
ドンの仲間たちもそれぞれその筋の格闘技チャンピオンらしいが、誰一人してドンと同レベルで(エリック・リーの三節根捌きはボチボチか)、もしかしたら殺陣師が悪かったという考えもありうるので、一概にドンをドン臭いと断定するわけにはいかないけど…。
ストーリーはこの後たいした起伏も無いまま、地下でドンが次から次へと(自分より動きがいい)敵を倒していくだけの寂しいシーンが淡々と続いていくもので、睡魔が襲いくること必至。これじゃあ『キング・オブ・キックボクサー2~4』も期待できなさそう…。

『レイジング・サンダー』

2007-09-24 22:33:37 | マーシャルアーツ映画:上
「レイジング・サンダー」
中文題:綻親阡/紅克星
英題:Raging Thunder/No Retreat, No Surrender 2/Karate Tiger 2
製作:1988年

▼(※…中文題の"阡"はこざとへんに朱という文字でしたが、変換できないので別字にしてあります)
今作の製作はシーゾナルという事で、呉思遠が製作総指揮、主演は以前にも紹介した『キング・オブ・キックボクサー』で呉思遠と組んだローレン・アヴェドン、そして白人レディ・カンフースターの代表格であるシンシア・ラスロックが出演しいる。
シンシアはその昔、同じく呉思遠の手による白人マーシャルアーツ映画『シンデレラ・ボーイ』のオーディションに現れ、その技量で呉思遠を感嘆させたという逸話をどこかで聞いた。この事がのちに彼女を『レディハード/香港大捜査線』で香港映画にデビューさせるきっかけとなったらしいが、ジャッキーや袁和平を一流に育て上げた名匠・呉思遠がこの逸材を放っておく筈がない。今回彼女がこの作品に出演したのはその縁故だったようだ。
一方、敵サイドには『南拳北腿』以来のシーゾナル常連・黄正利(ウォン・チェン・リー)が出演。そのスケールと迫力、加えて見事な功夫アクションから、私としてはシーゾナルの白人クンフー映画では一番の傑作と思っています。

■主人公のローレンはベトナムの億万長者の娘であるヒロインを訪ねてベトナムの地を踏んでいた。ローレンがここに来た目的は、他にもベトナム戦争帰りの兵士だった友人にも会う予定があった。
友人を訪ねて道場でシンシアと対決したりしながら、ようやくヒロインと会えたローレンは、お互いの将来を誓い合い幸せの絶頂だった。しかし、二人の幸せは突如彼女を誘拐した謎の一団によって打ち砕かれることとなる。
その裏にはソビエト政府が企む国家的陰謀が隠されており、誘拐されたヒロインを救うべく、ローレンはベトナム帰りの友人とシンシアを仲間に加え、巨躯の将軍マシアス・ヒューズとそれに従う黄正利が待つ密林へと向かうのだが…?

▲ストーリーは当時『ランボー』で流行った"ベトナム帰還兵もの"の流れを組む内容であるが、爆破シーンやスタントのレベル、そしてアクションシーンにおいての監督・元奎(ユン・ケイ)の技量は賞賛されるべき出来上がりで、ラストのローレンVsマシアス・ヒューズの対決は、個人的にはローレンのベストバウトだと思っている。私としてもこういった白人マーシャルアーツ作品にありがちな"トロい"アクションが少ないのでスッキリ見ることができて満足。不満があるとすれば黄正利の扱いが気になりもしたが、なかなかの秀作でした。
気になったこととしては、製作や脚本に『蛇拳』『死亡の塔』で呉思遠作品に縁のある白人カンフースターのロイ・ホラン(彼は本作中にもチョイ役出演)が一枚噛んでいる事だ。作中彼の意見がどの程度作品に反映されたのだろうか?

『廣東十虎與後五虎』

2007-09-23 23:38:10 | ショウ・ブラザーズ
廣東十虎與後五虎/廣東十虎與役五需/廣東十虎
Ten Tigers Of Kwang Tung/Ten Tigers From Kwangtung
1980

▼広東十虎…それは黄麒英、鐵橋三、蘇乞兒、譚敏、鐵指陣、蘇黒虎、黄澄可、王隠林、黎仁超、鄒宇昇らの事だ。それぞれが類稀なる拳法の使い手であり、様々な形で功夫映画に軌跡を残している。
有名どころを挙げれば、黄麒英は黄飛鴻の父。蘇乞兒といえば『酔拳』の袁小田おじいちゃんで名を知られている。本作はその広東十虎の物語で、狄龍(ティ・ロン)に傅聲(フー・シェン)を筆頭に"五毒"の全メンバー、韋白(ウェイ・パイ)や銭小豪(チン・シュウホウ)、さらに後期張徹作品の常連である王力と龍天翔らを加えて、オールスター作品ともいえる陣容となっているのだ(それにしてはスケールが乏しいけど)。

■賭場にやって来た王力は、どうやら陳樹基演じる梁小虎と共によからぬ企みを考えている様子だ。その側でバカ騒ぎをやらかしていたのが龍天翔・銭小豪・蕭玉・陳漢光・林志泰で、彼らがタイトルの"後五虎"、広東十虎の弟子たちだ。早速その場で林志泰が殺られ、その横には血文字で「梁恩貴の息子、梁小虎が父に変わって仇討ちを」…というメッセージが?
…物語は数年前にさかのぼる。反朝を志す革命家・谷峰(クー・ファン)は作戦に失敗して逃走中の身。名前を変えるなどして逃げていたが、清朝の将軍・梁恩貴こと王龍威(ワン・ロンウェイ)に追われていた。そんな彼を助けたのは狄龍演じる黎仁超。反清の志である谷峰を国外へと脱出させるため、狄龍は谷峰の逃亡を手助けする。傅聲演じる譚敏や、韋白演じる黄麒英と狄威(ディック・ウェイ)演じる黄澄可も合流した。
さらに孫建(スン・チェン)演じる王隠林や鹿峯(ルー・フェン)演じる蘇黒虎を仲間に引き入れるために傅聲が彼らと闘うのだった。それにしてもこの傅聲Vs五毒…今まであったようで無かった対戦だ。傅聲が張徹映画で共演するにしても郭振鋒(フィリップ・コク)ぐらいが打倒で、しかも毎回仲間同士なので対戦もそんなに無い。そこに今回の五毒との対決は中々嬉しい巡りあわせだ。
このあと江生(チャン・ジェン)とも対決する傅聲だが、残念ながら1人だけ…羅奔(ロー・マン)とだけは本作中で手合わせが実現していない。こちらは傅聲Vs五毒の本格的邂逅となる『唐人街小子』まで持ち越しとなるが、それはまた別の話…。
ここに谷峰脱出のために広東十虎のうち6人までが集結。だが、対する王龍威側も決して手を拱いているわけではなかった。不自然な広東十虎の集まりように何かを感じ取った王龍威は、彼らに残りの広東十虎をぶつけることを考えつく。郭振鋒演じる蘇乞兒と楊熊演じる鐵橋三、江生演じる鄒宇昇、羅奔演じる鐵指陣らを騙し、同士討ちを仕組んだのだ。しかし『酔拳』いらい蘇乞兒は大酒飲みってデフォルトなのだろうか?本作でも郭振鋒はガブガブ飲みまくってます。
その後どうにか谷峰の仲裁で誤解は解け、10人は王龍威を倒すために一致団結。待ち構えていた敵勢と入り乱れての闘いは大混戦の様相を見せたが、最後は狄龍が王龍威の頭を砕いて倒したのだった。
…話は戻って、王龍威の仇をとるために行動を進める王力と陳樹基。蕭玉は王力のチエの輪と隠し武器に、陳漢光は陳樹基のだまし討ちに命を散らしてしまう。残る龍天翔と銭小豪、近づく陳樹基を敵と悟っておちょくりまくり、功夫鍛錬と称してボコボコにした挙句にブチ殺すのだった(どっちが悪党なんだか…)。
残った2人は師匠の郭振鋒と鹿峯の指示で動いていたが、王力の仲間の関鋒も姿を現して激闘が開始される。さらに師匠2人も加勢し、死闘の幕が上がった!

▲張徹がやりたかったことはなんとなく解る。『少林虎鶴拳』で劉家良は親子2代にわたる復讐劇を描いたが、本作では師と弟子の2代にわたる因縁の決着を描いたものなのだ。しかし張徹がよく使うフラッシュバック形式にしたのが不味かった。これでは完全に独立した形の物語が平行して進んでいるかのようではないか!まるでフィルマーク…とまでは言い過ぎだが、ニコイチ映画のようにも見て取れる。
狄龍が出てくる過去の雰囲気は『少林寺列伝』に近く、本作のほとんどを占めている事で印象深いものになっている。銭小豪らが出てくる現在は次々に仲間が殺され、残酷なシーンもあったりして、まるで五毒作品のような雰囲気を感じさせる。はっきり言ってこの二つの部分は、ほとんどテイストが違うといってもいいのだ。
これがちゃんと時系列になっていて、ストーリーも都合のつくものだったらかなり面白くなったのではないだろうか?功夫アクションに限っては、どちらのパートも満足できるものだったのだが…。

『花嫁はギャングスター』

2007-09-22 22:36:19 | 女ドラゴン映画
「花嫁はギャングスター」
我老婆係大[イ老]
My Wife is a Gangster
2001

●最初から最後までどこを楽しめばよかったのか理解に苦しむ作品だった。
いきなり結論から言ったが、本作の問題は主人公の性格設定にあったと思われる。
ストーリーは韓国ヤクザの女ボスである申恩慶(シン・ウンギョン)がガンに侵された姉から「死ぬ前に貴女の花嫁衣裳が見たい」という言葉を受け、結婚を決意する。しかし生まれながらに血で血を洗う任侠の世界に生きていた申恩慶には女らしさの欠片も無く、オマケに敵対組織も動いてくるわと、果たして一体どうなるか…というもの。
話だけを聞けば恋を知らない姉御が右往左往するコメディと思うかもしれないが、やたらアクションシーンが血生臭くて凄惨だわ(武術指導は『無問題2』でユンピョウと闘った大韓ファイター・元振(ウォン・ジン))、肝心の恋愛過程も申恩慶のキャラが冷徹すぎてちっとも感情移入できない始末だ。
申恩慶はその後中年オヤジの朴相勉(パク・サンミョン)と結婚する。朴相勉は相手が怖い女組長とは知らないで結婚させられたので、以降かなりヒドい扱いを受ける事になる。一応表面上はコメディのような筋立てで話は運ぶものの、新婚初夜を拒否されたかと思うと今度は無理矢理組み敷かれたり(姉が今度は「貴女の子供を見たい」と言ったため)、全然笑えない。
この他にも先述の過程でエロい(悪く言えば下品な)描写もあったりと、ドン退きする要素満載だ。
できるならもう少し申恩慶のキャラクターを砕けたものにして、戸惑ったり困ったりといった人間的な表情を見せる場面ぐらいあったなら感情移入できただろう。あるいは冷酷だった申恩慶が結婚を機に人の情に触れ、次第に感情に変化が…という話もありえたと思う。でも、それでは組長という設定に説得力が…う~ん。
私が主人公の設定がダメだと思ったのはそういう原因がある。同じような原因で損をしている作品には『ワンチャイ天地雷鳴』『ドラゴン電光石火98』『新・少林寺三十六房』などがあるが…なぜかドニーの作品が多いな。
演出次第でもうちょっとどうにかなったかと思う作品。続編も作られたが、果たしてこちらは…?

『通天老虎』

2007-09-21 22:13:10 | カンフー映画:傑作
通天老虎
The Master Strikes
1979

▼程小東(チン・シウトン)…個人的に、私はこの人のアクションはあまり好きじゃありません。
確かに『ドラゴン・イン』『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』等で見せたワイヤーアクションの数々は幻想的で素晴らしいものだと思っています。しかしあまりにもピョンピョンと空を舞うせいで、そのアクションに「重さ」が感じられないのです。功夫アクションには流れるような素早さも大事ですが、それ以前に力強さを見せられる「重さ」が無いことには、アクションがどうしても軽く見えてしまうのです。
はっきり言うと「ワイヤー多用し過ぎ」ということなんですが、今回紹介するこの作品は程小東が功夫スターとして主演したもので、つまりは彼のワイヤーを多用しない頃のアクションが拝めるとあって、その存在を知った頃から気になっていた作品のうちのひとつでした。
監督及び製作はあのジミー先生の傑作『戦国水滸伝/嵐を呼ぶ必殺剣』を生み出した高寶樹(カオ・パオシュ)というお方。共演には凄腕テコンドーマスターの[上下]薩伐(カサノバ・ウォン)、『龍虎門』の孟元文が控え、傑作功夫映画として評価が高いとの事ですが…??

■ある屋敷に拳法家の[上下]薩伐が呼び出されてきた。そこの旦那様である任世官(ジェン・シークン)は大事なヒスイの像を警護してほしいと依頼するが、実は[上下]薩伐は極度の心配性男だった。寝ても覚めてもヒスイの像が入った箱を手放さなかった[上下]薩伐だが、数日後に任世官へ箱を返してみると、なんと中のヒスイの像が消えている!?
途方に暮れる[上下]薩伐は飲み屋で酒をあおっていたが、そこで孟元文と程小東(若い!)に出会った。孟元文と程小東は博打大好きなボンクラコンビで、武術の腕はそこそこあるらしい。
ところが、唐突に始まった乱闘のさ中に孟元文がなぜか大回転!それを凝視した[上下]薩伐は何とパーになってしまった!話を聞いた孟元文は「任世官がイカサマ使ってすりかえたんだよ!」と看破するが、あまりの心労から[上下]薩伐は完全にパーになってしまう。
ボンクラ2人は[上下]薩伐をほっといて(笑)金になりそうなヒスイの像の話に飛びついた。まず2人が向かった先は任世官の屋敷だが、そこには高雄(エディ・コー)の一団がいた。高雄らもまたヒスイの像を狙っており、次から次へと骨肉の裏切りバトルが展開される。孟元文と程小東は任世官の執事だったオヤジからヒスイの像のありかを聞き出そうとするが、そのオヤジも任世官の仲間に殺され、その仲間も同じように口封じで殺されてしまった。
アテもなく道中をさすらう2人は、腹が減ったので道端にいた酔っ払いジジイから酒を奪おうとしたが、コメディ功夫片だと酔っ払いジジイ=超強いというのは世の常で、逆に2人はボコボコにされてしまう。
無計画なボンクラ2人は、なぜかこのジジイに弟子入り志願をする。1回のレッスンにつき酒1タルの授業料を要求され、せっせと酒屋から酒を盗み出していく(笑)。結局、ボンクラ2人は修行が終わる前に出て行ってしまい、今度は路上でインチキ賭博で儲けようとした。
次に2人は[上下]薩伐から情報を聞き出そうとしたが、相変わらずパーなので話が進まない。話が進まないのをいいことに娼館でのぞきを繰り返すボンクラ2人…ていうか、頼むから話を進めてくれ!
そんな2人をよそに、任世官は[上下]薩伐の暗殺を企んで3人の刺客を送りこんだ。なんとか返り討ちにした2人は任世官の企みを知る一方で、高雄は任世官&裏切った相棒の女と闘っていた。任世官はヒスイの像を独り占めするべく、高雄と女を殺す。
そして遂に(?)対決の時!孟元文と程小東Vs部下を引き連れた任世官との熾烈なバトルが繰り広げられる!パーな[上下]薩伐は相手の区別なく襲ってくるのでほとんど三つ巴状態だ(笑)。このトンチキなバトルを制し、最後に得をするのは誰だ!?

▲まず本作には大きな欠点が2つあった。具体的に任世官が何を狙っているのかがよく分からなかった事と、主役である孟元文と程小東の行動があまりにもバラバラだった事だ。
前者は字幕無しのVCDだったのでよく掴めなかったが、問題は後者。この直前に主人公が2人という同じシチュエーションの傑作・『識英雄重英雄』を見ていたせいか、目的が不明瞭でやりたいほうだいやっているこの2人のせいで物語が進まないように見えた。『識英雄重英雄』の梁家仁&高飛コンビも多少の寄り道はしていたが、こちらの孟元文&程小東コンビは寄り道しすぎで全体の統一性に欠けてしまっているのだ。
『識英雄重英雄』とはストーリーの構成で一歩先んじられたような本作だが、ではダメなのかと言うとそうでもなく、功夫アクションはこちらが一枚上手といった感じだ。特に暴走機関車状態で電光石火の蹴りを放つ[上下]薩伐が凄く、主役の2人も見事な立ち回りを見せている。ラストなんかもうムチャクチャで、パーの[上下]薩伐は誰彼構わず蹴りまくるわ相変わらず任世官は強いわと大乱闘!
特に理由も無く繰り広げられるその他の功夫場面も素晴らしいし、本作はこの激しいアクションによって救われた感がある。こりゃあすごいぞ程小東!なのにどうしてワイヤーの方へ行ってしまったのだろうか…?もっとこちらの肉弾戦を膨らませていれば、これはこれで良質のスタイルが確立できたと思うのだが。

『少林寺武者房』

2007-09-20 21:05:46 | カンフー映画:佳作
「少林寺武者房」
原題:少林與武當
英題:Shaolin and Wu Tang/Shaolin VS Wu Tang
製作:1984年

●劉家輝(リュウ・チャーフィー)がショウブラではない外部のプロダクションで製作した初監督作品である。とはいえ、共演者は王龍威や鄭少秋(アダム・チェン)に李海生などのショウブラ系列のスタッフでまとめられている。印象としては、ミニマムなショウブラ作品といった趣きだ。
 少林派(日本版では金剛派)の劉家輝と武當派の鄭少秋は、互いの親が流派違いで対立してばかりだが大の親友だった。しかし少林派と武當派の武術を研究していた清朝の王龍威は技を盗もうと画策。鄭少秋の父を茶会に招待したと見せかけて毒を盛り、鄭少秋の父は自ら鄭少秋の剣に貫かれて死んでしまう。
鄭少秋も投獄されるが、危機を救うべく劉家輝が潜入。彼と同室だった行きずりの女に鄭少秋を治療させて、見事脱出に成功した。劉家輝とその妹、鄭少秋と行きずりの女は逃走を続けるが、劉家輝の妹の勘違い気味の報告によって劉家輝と鄭少秋の間に亀裂が生じ始める。
 だが、王龍威軍団の襲撃によって劉家輝の妹が命を落としてしまう。そこに武當派が現れて父を殺した鄭少秋を連れて行くのだが、そこだけ見た劉家輝は武當派が自分の妹を殺したと勘違い。一路復讐のために少林寺へ行き、修行を重ねる。一方、武當派で尋問を受けた鄭少秋も更なる技に磨きをかける。
時は流れ、一流の武術家になった劉家輝は王龍威の親善試合へ出場すべく、李海生と戦いこれを打倒する。そして少林派と武當派それぞれの代表が相対するのだが、武當派の代表は鄭少秋だった…。
 正統派の功夫片を次々と打ち出した劉家良、変則的な作品で新たな香港映画を形作った劉家榮ら兄とは違い、この劉家輝の作品作りは至って平凡だ。ラストは駄々っ子の王龍威(笑)を説き伏せ、少林派と武當派が和解するというオチで終わるのだが、王龍威が生きたままだと死んでいった劉家輝の妹と鄭少秋の父が全然浮かばれない気がする。個人的には鄭少秋の話に聞く耳を持たない武當派もヤな感じだったし(理念は解るが、これだと利用されっぱなしで後味が悪い)、だいぶアラも目立った。
修行シーンは『少林寺三十六房』などの焼き増しで、中にはオリジナルそのまんまな修行も登場する。アクションは劉氏兄弟が担当したので文句なしだが、あまり劉家輝監督作としての特色が見い出せず、兄たちの作品へ「右へ倣え」としたようで印象は薄い。
ちなみに冒頭の劇中登場しない謎の男たちによる演舞は、"少林派から独立した武當派の成り立ち"を説明したもの。ここらへんもちょっと劉家良チックな演出でしたね。