功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

【春のBOLO-YEUNG祭り(終)】『未来警察TC2000』

2013-04-28 21:13:31 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「未来警察TC2000」
原題:TC 2000
製作:1993年

●環境汚染によって荒廃し、多くの人々が地下都市に移住した近未来の地球。パトロール部隊に属するビリー・ブランクスとボビー・フィリップスは、地上の荒んだ世界からやってくる犯罪者と日夜戦っていた。
ある時、ジャラル・メーリ率いる一団が何者かの手引きによって都市内に侵入。その際にボビーが殉職し、相棒を失ったビリーは除隊を決意する。だが、これら一連の事件を仕組んだのはパトロール部隊の司令官であった。
 司令官はある野望の為にボビーをアンドロイドとして蘇生させ、真実に近付いたビリーを排除せんと企む。果たして彼の目的とは…?一方、地上世界に脱出したビリーは、そこで戦いに明け暮れる楊斯(ボロ・ヤン)と運命的な出会いを果たす。
彼に救われたビリーはジャラルを倒そうとするが、そこには司令官の命令で徒党を組みに来ていたボビーの姿があった。一時撤退したビリーは、敵の狙いが地上世界の全住人抹殺だと知り、楊斯や勇敢な者たちとともに毒ガス散布装置のある施設へ乗り込んだ。
果たして、彼はボビーを取り戻して邪悪な野望を粉砕することができるのだろうか!?

 格闘映画で活躍を続けていた楊斯は、徐々に演じる役柄の幅を拡げていきました。香港映画の頃と大きく違うのは、主演やそれに近い位置で善役を演じる機会が多くなったことです。『シュート・ファイター/暗黒ドラゴン伝説』では心優しき空手家に扮し、続編の『Shootfighter 2』でも熱演。そして本作では拳法の師匠を演じています。
作品自体は少ないロケ地・野暮ったい物語・ショボいSFXの三拍子が揃っており、とても褒められた出来ではありません。最後は毒ガス装置を元の大気浄化装置に戻し、地上世界が救われる…のかと思ったら、装置を止めて終りという芸の無いオチで脱力してしまいました(苦笑

 格闘シーンにも甘い部分があり、アクションを多く見せようとして逆に冗長さを誘発しています。ラストでビリーと戦う相手がジャラルや司令官ではなく、単なる名無しの戦闘員というのも×。なんとなくスピード感も足りない(演者の動きが若干遅い)気がしました。
ただし、殺陣そのものはキックに偏重しないオールラウンドな動作であり、ザコとの戦闘も相手の特色を分けることによって印象の重複を避けています。物越しに相手を吹き飛ばす浸透勁という技を、解りやすく表現している点も実に興味深いです。
そしてビリーVSマシアス・ヒューズの新旧シーゾナル悪役対決を筆頭に、ビリーVS楊斯・楊斯VSマシアスというドリームマッチが実現しているのもポイント。残念ながらジャラルだけはあまり絡んできませんが、アクション描写は総合的に考えると上々の出来だったと思います。

 激動の90年代を過ごした楊斯ですが、加齢などの理由により00年代以降は映画界から遠ざかっていきます。しかし、2人の息子が自分と同じボディビルダーとなり、香港でボディビル協会やジム運営の要職に就くなど、プライベートでの躍進は続きました。
露出こそ減ったものの、現在も彼は俳優活動を継続中です。2007年の『Blizhniy Boy: The Ultimate Fighter』では総合格闘家のカン・リーと共演。そして今年公開の『The Whole World at Our Feet』で、再びスクリーンに返り咲いています。
 御年66歳…かつて大部屋俳優の1人だった男は、今や世界中で愛されるカンフー映画の象徴的存在になりました。今回は現在にいたるまでの来歴を駆け足気味に辿ってみましたが、彼は今なお戦い続けています。その姿はとても気高く、尊敬の念を禁じ得ません。
赤い虎、香港カラテの殺し屋、チョン・リー、そしてボロ…。幾多の勇名を馳せた重鎮にささやかなエールを贈りつつ、このたびの特集を終えたいと思います。(特集、完)

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
はじめまして (じーめん)
2013-05-01 17:10:35
こんにちは。パソコン初心者なのでこの素晴らしいブログ今知りました。読んでたらタイガークローやキングオブドラゴンも久しぶりに見たくなりました!バックナンバーもこれからじっくり読もうと思います。これからも期待しています。
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返信。 (龍争こ門)
2013-05-02 00:11:43
 じーめんさんこんばんは、そして初めまして。
このたびはコメントをどうもありがとうございます。今後も珍品から傑作まで、様々な格闘映画を紹介していく予定です。
実を言うと、過去の記事(07~09年ごろ)は思い込みや主観で書いているものが多いので、話半分で読むのをオススメします(爆
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緊急時でも白ソックスは忘れずに! (白扇仔)
2013-05-23 22:45:56
こ門様こんばんは
ボロやん特集と銘打つのであれば、善玉キャラとしては最もイイ役の『シュートファイター』、女装が衝撃だった『炎のマーシャルアーツ』は取り上げるべきだったと思います。次回ボロやん特集をする事があれば是非取り上げていただきたいです。出来れば未公開の「シュートファイター2」も。

で、今回の「TC-2000」ですが、格闘シーンも取り立ててイイところは無かったんで、「浸透勁」を描いてなければ駄作と掃いて捨てていたところです。ただ描いただけでなく、この独特な概念をあのオブジェで分かり易く描いた所は拍手モノでした。
浸透勁を使ってのとどめの技の描き方とシチュエーションも良かったし、ヒューさんの演技(リアクション)も最高でした!
fakeさんも「浸透勁」を描いた武打片は見た事無いようでしたし、MA映画でこれをやるなんてエライ! と自分は絶賛してます。これでストーリー、格闘シーンが良ければ万々歳だったのですが・・・

>ビリーVS楊斯・楊斯VSマシアスというドリームマッチが実現しているのもポイント

本作登場俳優の他の組み合わせの対決は「タイガークロー」や「キング・オブ・ドラゴン」で見られますから、上記の2つの対戦を実現させてくれただけでOKって思ってます。
あ、ジャラルVSヒューさんは自信無いや(「キング・オブ・ドラゴン」にちょっとあったような・・・)

肝心のボロやんについては、長身のヒューさんの顔面を狙ったような打点の高いハイキックを見せる(けどカット割ってる)とこに、ちょっと「おっ!」ってなりました。

ついでに他の作品にも一言。
「ブラック・ダイヤモンド」やっとレビューしましたね。あちこちで“チャカチャカ編集”についての怒りの感想を読んだんで、どんなもんかと見てみると、3つの闘いが同時進行してんだから、こんな編集は当然ちゃう? って思い、ほとんど気になりませんでした。
「ロミオ・マスト・ダイ」は、CGとワイヤーの使い方がひどかったっす。あまりにも重力を無視した動き(民初動作片あたりまでなら、ファンタジーとしてどうにか許せるけど現代劇では許せない)とかがあったりして、超人どうしの闘いじゃないんだから! 怒ってしまいました。
でも前者は去年、後者はリリース当時に見たっきりなんで再見したいっすね。そういえば「ミッション・マスト・ダイ」のレビューはいつですか? これ再見のために買おうかどうか迷ってます。
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返信。 (龍争こ門)
2013-05-30 01:07:21
白扇仔さんこんばんは、メールの返信は後日行います。

>『シュートファイター』
>『炎のマーシャルアーツ』
 どちらも特集までには入手できなかったため、やむなく紹介を見送りました。『炎の~』の方は今なら何とかなりそうですが、『シュートファイター』は現物を見たことすらありません(涙

>MA映画でこれをやるなんてエライ! と自分は絶賛してます。これでストーリー、格闘シーンが良ければ万々歳だったのですが・・・
 本当に素材選びだけは良かったんですけどねぇ…。結局、ビリーが最後まで習ったはずの浸透勁を使わずじまいだったというのもマイナスポイントでした。

>3つの闘いが同時進行してんだから、こんな編集は当然ちゃう? って思い、ほとんど気になりませんでした。
 私が『ブラック~』を初めて見たのは、ちょうど『破壊王』でダカスコスの凄さを知った頃でした。そのため李連杰との絡みに過度な期待をしてしまい、激しく落胆してしまったのです。
『ロミオ~』を見たのはその後で、VSダカスコスよりもじっくりとバトルを描いていたため、相対的に評価が上がりました。まあ確かにあのワイヤーは私もやりすぎとは思いましたが(笑

>「ミッション・マスト・ダイ」
 こちらも未だに現物を見たことがありません。ゲイリー・ダニエルズのアクションはなかなか良い感じっぽいので、いつかは入手したいと思っています。
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