功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

『ICHIGEKI 一撃』

2013-02-01 22:51:47 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「ICHIGEKI 一撃」
原題:OUT OF REACH
製作:2004年

●『DENGEKI 電撃』に引き続き、これまたスティーブン・セガールが香港系のスタッフと組んで製作した作品です。2000年代前半のセガールは香港を意識していたのか、香港にゆかりのある作品に多く関わっていました。
『奪還 DAKKAN アルカトラズ』では武術指導に熊欣欣(チョン・シンシン)を招き、『沈黙の標的』では功夫使いと対決。『沈黙の聖戦』では程小東(チン・シウトン)の指導を受け、『イントゥ・ザ・サン』では成家班のエースである慮恵光(ロー・ワイコン)と戦い、ついには香港で『ドラゴン・スクワッド』の製作に乗り出します。
 そんな中で本作は、1979年に香港で年間配収3位を記録した『ザ・ポップマン』を手掛け、周潤發(チョウ・ユンファ)主演で『風の輝く朝に』を生み出した名匠・梁普智(レオン・ポーチ)を監督に招いています。武術指導には七小福の元(ユエン・タク)が就き、とても香港映画に近い布陣で製作されているのです。
おかげで本作は従来のセガール作品とは違った(なおかつ『電撃』とは違う方向性の)雰囲気で満ちています。ストーリーは、カナダで隠遁生活を送る元特殊工作員のセガールが、文通相手であるワルシャワ在住のアイダ・ノヴァクスカを救うため、国際的な人身売買組織と戦うというものです。

 まず、セガールの行動動機が家族の仇や己の正義感ではなく、「1人の少女を助けようとするため」というひたむきさが泣かせます。孤児院の少年との交流など、ここまで子供と親密になるセガールはなかなか見られません。
異国情緒あふれるワルシャワの地、そして最終決戦の舞台となる真っ白な城など、派手すぎない色調でまとめられた情景もイイ感じでした。
ただ、こういった落ち着いた雰囲気はセガールに似つかわしくない…というのもまた事実。非常に攻撃的なイメージを持つ彼と本作では、あまりにも毛色が違いすぎます。本作でセガールは滅多にアクションを見せず、カーチェイスすら行いません。爆破シーンも無く、これでは彼を主役にした意味が無いといっても過言ではないでしょう。

 ストーリー部分にも穴が多く、最終的に組織を壊滅させたのはいいんですが、バックにいた連中や黒人の刺客を送り込んだ偉そうなジジイを放置したまま終わっています。アイダ以外の子供たちがどうなったかも描かれず、身内の描写だけで話が完結してしまうのには思わずツッコミを入れてしまいました(爆
アクション描写についても派手さを抑えた描写が裏目に出ています。個々の動作は地味で、いったいどこを元が指導したのかすら解らない始末。ラストは組織のボスであるマット・シュルツとのソードバトルですが、こっちもすぐに決着がつくので迫力不足でした。
もう少し演出にメリハリを持たせて、主演がセガールではなく落ち着いた雰囲気の俳優であったなら、現状よりも化けた可能性がある本作。いっそのこと思い切って周潤發にやらせていたら面白かったかもしれないですね(笑

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