一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

『リガの犬たち』

2013-08-19 | 乱読日記

刑事ヴァランダーシリーズの2作目。 1992年の作品。

「リガ」はラトビアの首都のリガを指す。
ラトビアはバルト3国のひとつ(Wikipedia参照)。

舞台は、ベルリンの壁が崩壊し、ソ連邦も崩壊の瀬戸際に立つ1991年。 ラトビアでも独立の機運が高まるが、ソ連の介入に悩まされているという時期。

スウェーデンの海岸に死体の乗った救命ボートが打ち上げられる。被害者はラトビアと関係があるようだ、というところから本作は始まる。
そして、成り行きからヴァランダーはラトビアに渡り、捜査に携わることになる。

地図を見ると、ラトビアはバルト海を挟んでスウェーデンの対岸にある。

ただ、ヴァランダーも含めスウェーデン人にとっても、ラトビアは近くて遠い国として描かれている。

そして本作は捜査そのもの以上に、ヴァランダーの目を通して描かれるソ連邦崩壊直前のラトビアの様子が読み応えがある。  

「あなたはいま、非常に貧しい国にいるのだということを理解してもらわなければならない。周囲の東ヨーロッパ諸国もみな同じです。長い間、われわれは檻の中にいるような生活をしてきた。世界の豊かさを遠くから見ているだけだった。だが突然いま、すべてが手に入れられるものになった。ただし、それには条件がある。それは金を持っていることだ。西側が壁を壊して、それまで檻の中で生活をしていたわれわれとの境目をなくす手伝いをしてくれたわけだが、そのとき同時に開けた水門が渇望の激波をもたらした。いままでは離れたところから見るだけだったもの、触ることを禁じられ、手に入れることができなかったものに対する渇望だ。われわれはいまこの国がどうなるのか、まったくわからない状態にいる」

バルト海をめぐる密貿易や麻薬の密輸、私財の拡大という共通項で結びついた犯罪組織と権力の癒着など、制度が限界に達した国の様相が描かれる。


海を挟んで向かい側の国の体制が混乱をきたしたらどうなるのか、ということに我が国は備えているのだろうか、とも考えさせられる。



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