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一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

『ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪』

2013-02-11 | 乱読日記
本書は「ブラック企業」が極端な例で入社してしまったのが運が悪かった、というのではなく、今や経営戦略として一部の企業に定着しつつある社会的問題であると指摘するとともにそれへの対処法も語っています。


いわゆるブラック企業は、日本企業の「メンバーシップ制」という雇用形態--雇用契約が職務の限定のない企業のメンバーになるための契約であり、メンバーには長期雇用、年功賃金という恩恵を与える--(『日本の雇用と労働法』参照)への期待を逆手に取り、新卒を大量採用して極限まで使い尽くして辞めさせることで利益追求を戦略的に行っている、といいます。
特に、日本の労働法制では正社員を大量に解雇することはできないので、解雇せずに「自己都合退職」という形で辞めさせる技術を極端なまでに組織化していることが特徴とされます。

これらの企業は、健康を害した若者を社会に放り出すことで、社会保障だけでなく企業への若者の信頼を失わせるという面で社会全体に大きな損害を与えている、と説きます。

一方で、対処法も述べられていますが、それらの人的資源は限定的であり(本書で言及されているほど個人加盟のユニオンは常に労働者の利益を第一に考えているわけではないような事例もあるようですが、頼る人がそれだけ少ないというのは問題)、ブラック企業に働き、そこでの流儀にはまってしまっている人には難易度が高いように思います。

結局、就職=就社という考えを変える、というのが一番の方法とも思われますが、そうやって若者の側が企業を冷静な目で見るようになることが、正社員の過剰な優遇を改め、雇用の流動化につながることになるのかもしれません。


これから就職活動をしようという大学生には就職・就活を考えるいい機会になる本だと思います。

また、企業のオジサン管理職にとっては本書を批判的に見るだけではなく、知らず知らずのうちに「ブラック側」に落ちないようにという意味でも読んでおく価値はあると思います。






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