一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

グルーポン利用の心得

2011-01-30 | よしなしごと

グルーポンのおせち問題を契機に景品表示法をおさらいしてみる
のつづき。

グルーポンのサイトにこんな掲示がありました。
バードカフェ(横浜)「謹製おせち」に関するご報告 (2011年1月29日)

1. 表示と異なる食材が使用されていたことについて
(中略)
弊社では、外食文化研究所から書面をもって本件商品にかかる表示の正確性について確約をとっておりましたが、表示の内容と異なる食材が使用される結果となってしまいました。弊社が、本件商品の製造者ではないこともあり、弊社にて使用食材の仕入れ状況等を詳細に把握できず、事実確認に時間を要しました点、何卒ご理解いただければ幸いです。

2. 通常価格の表示が不適切であったことについて 弊社では、外食文化研究所から、通常価格が記載された申込画像の送付を受け、バードカフェ店頭において、常連客に同内容での本件商品の案内を行っている旨の回答を受けたこと等より、弊社サイトへの掲載時点では、本件商品がバードカフェ店頭において、販売実績があると判断しておりました。
しかしながら、「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方」(平成12年 6月30日公正取引委員会、その後の改定も含みます)によると、通常価格として表示するためには、「最近相当期間にわたって」の販売実績が必要であるにもかかわらず、本件商品に通常価格として表示された価格での販売実績があるとは認められないおそれがあることが判明いたしました。

3. 今後の対策について 弊社は、本件商品の製造・販売者ではございませんが、本件商品の販売に関与した者としての社会的、道義的責任を重く受けとめております。

まあ、新しいビジネスなので、景品表示法は知りませんでした、加盟店の実情は知りませんでした、というのもご愛嬌としても、太字の「グルーポンは販売者でないから法的責任がない」といわんばかりなところがひっかかりました。(法的責任はないと匂わせてはいますが断言していないのが巧妙です)

そこで利用規約を見ると

第2条(サービスについて)
1.本サービスは、当社が、会員に対し、本サービスの参加加盟店が提供する商品・サービス(以下「加盟店サービス」といいます)の提供を受けることができるクーポンの販売を行うものです
2.会員は、本サービスを通じて購入したクーポンを本規約に従って参加加盟店に提示することにより、参加加盟店から加盟店サービスの提供を受けることができます
3.本サービスは、当社がクーポンを購入した会員に対して加盟店サービスを提供するものではありません。したがって、当社は、クーポンを購入した会員に対して、加盟店サービスを提供する義務を負いません

これを見ると、クーポンの購入者は金を払ったからといって商品を引き渡せとかサービスを提供しろとグルーポンに対して言う権利はないことになります。
では加盟店舗クーポン購入者に対して商品・サービスの提供義務を負うのはなぜかというと、加盟店はグルーポンに対し「購入者に商品・サービスを提供する」という契約上の義務を負っているのだと思います。
なので、購入者は誰に対しても権利を主張できないことになります。

ぐるナビなどのお店の割引クーポンと違って、グルーポンは購入者が実際に代金を払うのですから、これがビジネスとして成り立つためには、購入者がグルーポンを信用に足ると判断している(または、購入者が自分の権利について誤認している)ことが必要になります。

さらに規約を見ると、いろんな免責事項が書いてあります。

第14条(責任の限定)
1.(省略)
2.当社は、本サービスで会員が購入したクーポンについて、そのクーポンを使用できる参加加盟店がクーポンの有効期間中経営を継続していること、クーポンの有効期間中加盟店サービスを受けられること、加盟店サービスが会員の希望を満たすこと、有用であること等その他一切を保証しません。但し、有効期限が満了していないクーポンが参加加盟店の責に帰すべき事由により利用できなくなったと当社が判断した場合、当社は、会員に対しクーポン購入代金を返金することがあります。この場合、返金方法は当社指定の方法によるものとします。

ただし、これについてはよくある質問

Q.購入したクーポンのショップが閉店してしまった場合は?
A.ショップの閉店の場合は全額返金させていただきますのでご安心ください。

とあります。どっちが優先するのでしょうか?
多分グルーポンはいざとなったら規約が優先と主張するのでしょうから要注意ですね(購入者からはFAQも規約の一部を構成するという主張は成り立つでしょうけど面倒です)。

4.当社は、加盟店サービスの内容、その他クーポンに関する情報、取引状況、販売期間、価格、参加加盟店に関する情報その他の情報について、その正確性、精緻性、有用性、特定目的への適合性その他一切の事項について保証するものではありません。
(中略)
11.当社の会員に対する責任は、いかなる場合でも、当社が会員から現に受領したクーポンの販売代金を上限とし、また、当社は、会員の逸失利益、間接損害、特別損害又は弁護士費用に係る損害を賠償しないものとします。但し、本項は、当社に故意又は重大な過失がある場合には適用されないものとします。
12.本条は、会員に対する当社の本サービスに起因又は関連する責任の全てを規定したものであり、当社は、本条に規定されるもののほか、請求原因の如何を問わず賠償責任その他何らの責任も負いません。

まあ、このへんは争えば消費者契約法上は、無効とされそうな感じもしますが、規約として書くのはこの会社に限らずしばしば見られます。


前のエントリでは、景品表示法上の「販売者」にあたるんじゃないかと書きましたが、上の「ご報告」ではグルーポン自体は商品・サービスの提供義務を負わないので適用外だ、と主張しているのだと思います。

ただ、クーポン自体の「優良誤認表示」だ、という指摘は十分ありうると思いますし、あまりそこのところを争うと、法改正でクーポンの販売者にいろんな義務を負わされることになって、かえってやぶへびになる可能性が高くなると思います。

そう考えると、上の「ご報告」はちょっとディフェンシブ過ぎるような感じがします。

今後は、弊社サイトにおける表示をより正確かつ適切なものとするため、クーポンに関する商品及びサービスの提供会社に対して、当該商品及びサービスに関する情報の客観的な根拠の説明及び提出を求めることに努めるとともに、より一層の業務管理体制の強化を図ってまいります。

最後のこの文章も、グルーポン自体のチェック・審査体制については具体的に言及しておらず、あいかわらず「加盟店にちゃんとさせる」というスタンスが見受けられます。
新しい業態なので試行錯誤はあるわけで、非は非として認めたうえでビジネスの仕組みを洗練させていくほうが大事だと思うのですが、具体的な責任や義務を負わないようにという書き手(法務スタッフとか弁護士が書いたのかもしれませんね)の気持ちの方が伝わってくるのが残念です。



そんなわけで、グルーポンを使うとしても、新年を寿ぐとか勝負デートなどの大事なイベントには使わないほうが賢明だと思います。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする