一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

こども園

2011-01-24 | よしなしごと

こども園移行後も、幼稚園・0~2歳保育所併存
(2011年1月24日 読売新聞)  

幼稚園と保育所を統合する幼保一体化を目指す政府は、2013年度から幼児教育と保育、子育て支援事業の三つを提供する施設として「こども園」を導入し、現行の大多数の保育所、幼稚園を10年ほどで「こども園」へ移行するよう誘導していく方針をまとめた。 
一方で、幼児教育だけを提供する幼稚園と、主に0~2歳児向け保育を行う保育所も併存させる。

個人的にはには切実な問題ではないのであまり関心がなかったのですが、「幼保一元化」がなぜ進まないのかというと、幼稚園と保育園の所管官庁が違う、というところに根源があるようです。 
幼稚園の所管は文部科学省で、根拠法令は学校教育法になります。
同法に 

第二十二条  幼稚園は、義務教育及びその後の教育の基礎を培うものとして、幼児を保育し、幼児の健やかな成長のために適当な環境を与えて、その心身の発達を助長することを目的とする。  

とあります。
一方、保育園の所管は厚生労働省で根拠法令は児童福祉法になります。

第一条  すべて国民は、児童が心身ともに健やかに生まれ、且つ、育成されるよう努めなければならない。
2  すべて児童は、ひとしくその生活を保障され、愛護されなければならない。

第二条  国及び地方公共団体は、児童の保護者とともに、児童を心身ともに健やかに育成する責任を負う。

第二十四条  市町村は、保護者の労働又は疾病その他の政令で定める基準に従い条例で定める事由により、その監護すべき乳児、幼児又は第三十九条第二項に規定する児童の保育に欠けるところがある場合において、保護者から申込みがあつたときは、それらの児童を保育所において保育しなければならない。ただし、保育に対する需要の増大、児童の数の減少等やむを得ない事由があるときは、家庭的保育事業による保育を行うことその他の適切な保護をしなければならない。

つまり幼稚園は教育を行う場、保育所は保護者に代わって乳児又は幼児を保育する場、という位置づけになっています。
既に政府は認定こども園という制度を創設していますた。
こんな概念図


しかしこれがうまく利用されていないようです。

こども園創設へ 長浜市「幼稚園+保育園」先取り
(2011年1月24日 京都新聞)によると

認定こども園では、管轄が幼稚園の文部科学省と保育園の厚生労働省に分かれて事務が煩雑なうえ、職員資格も二つあることなどが課題とされる。

つまり上の図の「機能を付加」が結局「手続きと必要資格も付加」してしまっているようです。  
一方で  

市内で、保育園と長時部の待機児童は計78人(昨年10月現在)と多い。逆に、短時部と幼稚園の利用者は2008年度の1457人から本年度に1312人となるなど定員に満たず、減少が著しい。  

と、保育園は足りずに幼稚園は余っているという現状があるようです。 
認定こども園は、0~2歳児の「保育」は保育士しかできないとしても、保育所の3~5歳の担当を幼稚園教諭で代替できれば要員的に余裕が出ることになるという効果があるかと思いきや、上記認定こども園のサイトによると

3~5歳児については、幼稚園教諭免許と保育士資格の併有が望ましいが、学級担任には幼稚園教諭免許の保有者、長時間利用児への対応については保育士資格の保有者を原則としつつ、片方の資格しか有しない者を排除しないよう配慮  

と、結局要員はダブルキャストを求めるようで、結局保育士不足対策としての効果は限定的になりそうです。

しかも、京都新聞によると  

このため、国は新たな「こども園」創設に伴い両省の担当部署を一元化した子ども家庭省(仮称)を新設し、幼稚園教育要領と保育園保育指針の統合や資格の共通化などを検討している。  

結局統合のためには新しい省を作ることを考えているようです。
そのための冒頭の時間稼ぎというわけなのでしょう。 

しかし、この対応策は「省庁間を横断する業務は現状の省庁間の協力・調整では解決できない」ということを認めているわけで、「脱官僚」を標榜する民主党としては、あまりに知恵がないやりかただと思います(権益拡大を目論む官僚の作文に乗ったとしたらもっと間抜けですが)。  
さらに  

政府案ではさらに、2013年度以降はこうした幼稚園や保育所も含めたすべての就学前児童施設を新たに「こども施設」として指定。現在の幼稚園向け私学助成や保育所向け保育所運営費などの公的補助を一本化した「幼保一体給付」(仮称)から運営費の補助を行う方針だ。「こども園」への財政支援を上積みすることで、移行を促す。  

余っている幼稚園の公的補助を減らすくらいのインセンティブがないとダメだと思うんですが、幼稚園って何か政治力とかあるのでしょうか?   

こういうところをビシッとやれば(子供手当ての見直しも含めて)、消費税増税とかも支持を受けると思うんだけどなぁ・・・




余談ですが、学校教育法ではご丁寧にも幼稚園での教育内容を以下のように定めています。

第二十三条  幼稚園における教育は、前条に規定する目的を実現するため、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。
一  健康、安全で幸福な生活のために必要な基本的な習慣を養い、身体諸機能の調和的発達を図ること。
二  集団生活を通じて、喜んでこれに参加する態度を養うとともに家族や身近な人への信頼感を深め、自主、自律及び協同の精神並びに規範意識の芽生えを養うこと。
三  身近な社会生活、生命及び自然に対する興味を養い、それらに対する正しい理解と態度及び思考力の芽生えを養うこと。
四  日常の会話や、絵本、童話等に親しむことを通じて、言葉の使い方を正しく導くとともに、相手の話を理解しようとする態度を養うこと。
五  音楽、身体による表現、造形等に親しむことを通じて、豊かな感性と表現力の芽生えを養うこと。  

就学児童だけでなく自分を含めた大人もこれらの能力が涵養されているかというと甚だ疑問なような・・・

コメント
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