一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

『東京都北区赤羽』

2011-01-11 | 乱読日記
験が悪いというのか、どうもお店が長続きしない場所というものがあるようで、地元でも2,3年毎に店が入れ替わるところがあります。
そんな一つで以前の店を昨年秋に居抜きで引き継いだ焼鳥屋があります。

この店は赤羽からの移転だそうですが、なんでわざわざ赤羽からここに?とご主人に聞いたのですが、特に今の場所を選んだ動機がはっきりせず、またそれほど真剣なマーケティングをしたわけでもないようで
 「引っ越してきたらこの通りだけで3軒も焼き鳥屋があるんだよね」
などと呑気なことを言っています。
特に自宅は赤羽のままで都内を半周してまで通ってくるので、ここでなければいけない理由もなさそうなところが不思議。

それに、店構えが従来のちょっとしゃれた焼鳥屋を居抜きで使っているのが敷居を高くして損しているんじゃないかと思ううえに、値段が破格に安い。
焼鳥自身は高級店(「バードランド」とかその系列店風の)には及ばないものの、大衆店よりは格段においしい(それに鳥を使った一品料理もけっこう凝ってる)割りに値段は大衆店並という商売っ気のなさ。

この店は(今のところは)いつ行っても空いているので(苦笑)、ご主人と赤羽(友人がいたのでよく行っていた)や僕の出身の大塚その他城北地区の話で盛り上がってます。


その店に(なぜか洗面所の脇の棚に)置いてあったのがこの本。




売れない漫画家である作者が、赤羽の街をうろついて見つけたり絡まれたりした妙な人々を描いたものです。
確かに大塚に住んでいる頃は、何で商売が成り立っているのかよくわからないような店とかどうやって生活しているかわからない人ってけっこういました。
また、行動の意味不明な「いかれた」人もいたのですが、街の人もけっこう寛容だったように思います。

それは俗に言われる「下町の人情」というのともちょっと違って、お互いに緊密に助け合うのでなく、「人生いろいろだよね」という「ユルさ」なんじゃないかと思います。

赤羽には今もそういうユルさが残っているようで、しかもその手の怪しげな人に絡まれやすい性格の作者との掛け合いが、笑っちゃいけないんだろうけど思わず笑ってしまうというマンガです。

焼鳥屋でぱらぱらめくってツボにはまったので既刊の5巻をまとめ買い。

実はこの本、昨年けっこう話題になっていたようです。

検索すると『東京都北区赤羽』の作者と行く赤羽ディープスポットめぐり(前編)という特集などもあり、また赤羽の書店では店頭で『1Q84』より大きく扱われていたようです。




ただ、正直5巻のうち最初の2巻までは圧倒的に面白かったのですが、携帯マンガサイトの連載になったせいか、だんだんと一話一話きれいにまとめようという感じが出てきたり、作者自身がネタ探しに行動が積極的になってきて「期せずして面倒な人に絡まれる」という面白さがちょっと薄れてきたのは残念です。


でもまあ、こういうユルい街があるのってとても大事で、「格差社会」議論がほとんど収入格差に収斂しているように、ものさしが一つだとなんか人生挽回不能な感じになるけど、このマンガにはそういう行き止まり感を打ち破ってくれるような人々がたくさん出てきます。
(逆に悲観的な話をすれば、ここに出てくる多くは年配の人は、若い頃は高度成長期だったので職にはありつけたということがあるのではないかと思いますが)


冒頭の焼鳥屋のご主人、この本の準主役ともいえる居酒屋「ちから」のマスターとも面識ありだとか、ひょっとしたら赤羽のユルさを都内に伝播させるプロジェクトが進行中なのかもしれません。
コメント
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