こちらも一種の「兄弟ゲンカ」で、しかも同じく二転三転してます。
VWがポルシェ買収提案=グループ内で主導権狙う-独誌
(2009年6月28日(日)00:03 時事通信)
独誌シュピーゲルは27日、欧州自動車最大手の独フォルクスワーゲン(VW)が、同社に約51%出資する独高級スポーツ車メーカーのポルシェに対し、買収提案を行ったと報じた。ポルシェは現在、巨額債務を抱え資金繰り難に陥っており、中東のカタールからの出資受け入れ交渉を進めている。
同誌によると、VWは同社に20%出資する独ニーダーザクセン州とともに、ポルシェ株式の49%を30億~40億ユーロ(4000億~5300億円)で買収することを提案。次の段階として、ポルシェが保有するVW株式の購入権を中東のカタールが取得し、最終的にはVWとポルシェが合併する計画という。
最終的な仕上がりとしてはカタールのお金はVWに入れて独ニーダーザクセン州とVWがポルシェを吸収する形にしたいということのようですが、現在ポルシェはVWの株式の51%を持っているので、子会社が親会社をどうやって買収するんだろう(そもそもドイツの法律だと子会社は親会社の株式を買えるのか?)などドイツの法律を全然知らないので、どういう順番でやれば上手くできるのかさっぱりわからなかったところ、もっとわかりやすい記事がありました(途中まで書いちゃって悔しいので残しておきます)。
独ポルシェと独VW、合併に向け協議することで合意
(2009年 05月 7日 10:35 JST ロイター)
独高級車メーカーのポルシェと独自動車大手フォルクスワーゲン(VW)(VOWG.DE: 株価, 企業情報, レポート)は6日、合併に向け協議することで合意したと発表した。 合併の協議に詳しい関係筋によると、ポルシェの既存株主は、設立される新会社への最大50億ユーロ(67億ドル)の増資を負担する。増資は2009年中または2010年に実施される見通し。増資を目的とした既存株主以外への株式売り出しは、現在検討されていないとしている。
ポルシェ・オートモビル・ホールディングを率いるポルシェ一族と、VWの大株主であるピエヒ一族は、オーストリアのザルツブルグに集まり、ポルシェが抱える総額90億ユーロの負債とVWの株式取得の原資獲得について、1日かけて話し合った。その結果、合併に向け協議することで合意したという。
最後の部分の原資にカタールの資金が関係してくるとすれば、時事通信の元ネタのシュピーゲル誌の記事とも整合性がつきそうです。
でもこれだけでは「兄弟ゲンカ」ならぬ「親子ゲンカ」なのですが、もともとこの2社は親子会社だったのではないのですが、資本関係以外でもさまざまなつながりがあります。
もともとVWとポルシェの関係は、遡れば「ビートル」をフェルディナンド・ポルシェ博士が設計したところから始まります。
その後ポルシェ氏はスポーツカーメーカーを創業します。 ポルシェ博士の没後、同属の争いを避けるためポルシェ家の一族はポルシェ社の経営陣にはならないというルールができ、それに従ってポルシェ博士の孫にあたるフェるディナンド・ピエヒ氏がポルシェ社からアウディに転職し、アウディの社長、そしてアウディの親会社であるVWの社長、2002年には会長に就任します。
一方VWは戦後しばらくは国営企業のままでいましたが、1960年に民営化する際に、筆頭株主のニーダーザクセン州以外の株主の議決権を20%に制限する法律が定められ、EU加盟によりその法律が改正されたものの依然としてニーダーザクセン州は拒否権を持つという今でも特殊な会社です。
(このへんの詳細は07年の記事ですがWebCGポルシェとフォルクスワーゲン、経営統合でこれからどうなる!?を参照)
ところで業績好調だったポルシェは、07年以降VW社の株を買い進め、今年の年初に50%超を取得します。
ポルシェがフォルクスワーゲンを子会社化
(2009年1月6日21時33分 朝日新聞)
ドイツの高級スポーツ車メーカー、ポルシェは5日、同社が取得した自動車大手フォルクスワーゲン(VW)の株式が50%を超え、子会社化したと発表した。
DPA通信などによると、ポルシェのVW持ち株比率は42・6%から50・76%に引き上げられた。昨年10月末にポルシェがVW株を08年中に50%超、09年に75%超の取得を目指すと発表した後、VW株が急騰。ポルシェは08年中の過半数取得を見送っていた。
ただ、ポルシェがVWを完全支配下に置くには課題もある。持ち株比率にかかわらず議決権を最大20%に制限する法律が改正されたものの、代わりに株式の約2割を持つニーダーザクセン州に拒否権が残されたためだ。欧州委員会やポルシェ側は引き続き、独政府に法改正を求めている。
しかし、金融危機の影響でポルシェ社の業績は急速に悪化し、自らの資本増強が必要になってきてしまいました。
(投資銀行の従業員とか金融資産を持っている人が主要な顧客だったんでしょう。)
そして二週間前にはこんな記事まで出ていました。
ポルシェのオーナー一族、カタールによる出資を支持=独誌
(2009年6月15日(月)15:55 ロイター)
VWとしては、このチャンスに親子関係を脱却し対等・または自分が主導権を握りたい、というところでしょうし、フェルディナンド・ピエヒ氏にとっては新会社にすることでポルシェ社の「同属禁止」ルールを超えて晴れて頂点に立つことができるということを意味するのかもしれません。
M&Aもヨーロッパだと特別法に基づく拒否権とかが残っていたり、「一族」や「個人筆頭株主」という人々の発言権が大きかったりと、また米国流と違った趣がありますね。
日本の会社法・M&Aの議論もアメリカ以外にも参考になりそうなものはいろいろあるのかもしれません。
(日本のワインも、デラウエア種ばかりでなく在来種の甲州を使ったりメルローなどを丹念に育てて美味しいワインを造る蔵が増えてきていますしね。)