タイトルは刺激的ですが、けっこうまともな本でした。
ニュースサイトの編集者やコンサルタントをやっていて、荒らしや企業の無理解に直面してきた著者の経験をもとにタイトルにもあるような歯に衣きせずにネットを取り巻く現状を切っています。
インターネットが低額で使い放題になった現在、掲示板などに書き込みをする人々は圧倒的に暇つぶしが多く、しかもそのネタ元は同じく(NHKの受信料以外は)無料で視聴できるテレビの影響力が圧倒的に大きい。
ネットから独自の大ヒット商品が生まれることはなく、またネットで行われている発言の大多数は日常の垂れ流しであり「Web2.0」で言われたような「能動的な表現者たちによるクリエイティブなコミュニケーション」が活発になされているわけではない、というのが本書の主張です。
・・・企業はどのようにしてネットを活用すればいいのだろうか? 答えはあまりにもシンプルすぎるが、Web2.0だのバイラルだのと言わずに、ただ良い商品を作り、面白いイベントを企画し、ステキな広告・広報活動をすることなのである。
ネットだからといって特別視するのではなく、ふだんの企業活動をキチンとやり、「あ、これはネットに向いているから、ネットでやってみるか」とそのつど判断するだけでいいのだ。「マスに出すだけのカネはないからネットで何かやろう」「とにかくネットでなにかをやりたい」と考えるのではなく、「これはネットに向いているから、ネットで何かをやりたい」と考えるべきなのである。
そしてネットに対する正しい理解を持ち、「ユーザーはみんな善人で、企業のことをホメてくれ、販促の後押しをしてくれる」という性善説に立った考えを捨てることだ。
そして、ネットユーザーも返す刀で切って捨てています。
ネットがない時代にもともと優秀だった人は、今でもリアルとネットの世界に浮遊する多種多様な情報をうまく編集し、生活をより便利にしている。ネットがない時代に暇で立ち読みやテレビゲームばかりやっていた人は、ネットというあらたな、そして最強の暇つぶしツールを手に入れただけである。
本当に能力や根性がある人間は、インターネットがなくても必ず評価をされるし、「機会がないから私はこれまでダアメだったんだ」「夢さえあればいつかは叶うはず」などと言わない。そんなことを言う人には、インターネットは何ももたらさない。
タイトルは刺激的で、本文もかなり乱暴な表現や脱線気味のところもあるのですが、出典や根拠は明記してあり、決して無責任な内容の本ではありません。
こういう本書のスタイルも「荒らし」や「祭り」を楽しむようなテレビとネットで暇つぶしをしている連中は金を出してわざわざ本など買って読まないだろう、また、素人の文章の寄せ集めではきちんとしたコンテンツはできない、と主張する編集者でもある筆者の矜持(意地?)の表れと読めなくもありません。
インターネット業界に縁のない僕にとっては、いろんな意味で楽しめるし考えさせられる本でした。