<7月17日追記あり>
新聞記事を読んでふと疑問に思ったこと。
不正合格の教員採用取り消し、不合格者救済も…大分県教委
(2008年7月16日(水)14:00 読売新聞)
大分県の教員採用試験を巡る汚職事件を受け、県教育委員会は16日、臨時会を開き、成績改ざんによって合格した教員の採用を取り消す一方、合格圏内にありながら不合格とされた人については、希望があれば採用することを決めた。
受験生本人が不正の依頼をせずに親などが勝手にした場合や、不正の依頼はしなかったものの口利きの事実を認識していた場合はどうなのでしょう。
これらの場合、実力はあるとも言えるし、「セーフティネット」があるので受験生も緊張せずに本来以上の実力を発揮できたとも言えます。
つまり処分対象者には、実際に改ざんがあった中で「不正の依頼をした」「不正の依頼の事実は知っていた」「何も知らなかった」かける「実際の試験成績が合格水準」「実際の試験成績が合格未満」の3×2の6通りのパターンがあるわけです。
しかし、この件は商品やサービスの品質の信頼の根幹にかかわるという意味で、耐震偽装やウナギの産地偽装と性格が似ているため、信頼回復のためにもきっちりと「縁を切る」必要があるので対応としては「一律取り消し」というのもやむを得ないかなと思います(因果な親を持ったとあきらめてもらうということですね。)。
もっとも受験生自身は改ざんを依頼しなかった場合、採用取り消しの根拠である改ざんは採用側の事情なので、一度結んだ教員との雇用契約を採用側の事情で終了させることができるか、という論点は残るように思います(これは採用面接に受かったけど、こっちの勘違いだったと言われて正式採用の後いきなりクビになるようなものです)。
少なくとも何らかの補償は必要ではないでしょうか。
そのへんどうなんだろうと他社の記事を見ると
教員採用汚職:不正合格は解雇、本来合格を救済へ 大分
(2008年7月16日 11時26分 毎日新聞)
あれあれ、もっとひどいや。「解雇」じゃないだろう、と思うのですが・・・
少なくとも本人が依頼したのでない限り解雇事由には当たらないですよね。
でも
不正採用取り消し、不合格者を救済へ 大分県教委
(2008年7月16日12時27分 朝日新聞)でも
県教委は、得点水増しなどによる不正な合格者の採用を取り消して事実上解雇する一方・・・
人権派のはずの朝日新聞でもこうです。
これで、採用取り消しされた人が辞職を拒んで地位確認訴訟や国家賠償請求訴訟でも起こすと、むちゃくちゃバッシングされそうですね・・・
<7月17日追記>
やはりいきなり「解雇」というのは難しいのではという議論はあるようです。
「解雇」根拠は何? 大分・不正採用教員
(2008年7月17日 読売新聞)
公立校の教職員を含む地方公務員はいったん採用されれば、地方公務員法によって身分が保障され、解雇するには〈1〉綱紀違反や違法行為に対する懲戒免職〈2〉公務員としての適格性などを欠く場合の分限免職――の手続きを踏む必要がある。
しかし今回の事件では、教員採用試験に合格した受験者本人の「不正の認識」が現時点でははっきりしないため、免職の手続きを取ることは困難。大分県教委は、採用試験の成績がそもそも基準に達していなかったとして、給与の返還は求めないものの、採用前にさかのぼって一律に合格を取り消すことにした。
同県教委が根拠としているのが、地公法15条の「職員の任用は受験成績や能力に基づいて行う」との規定。地公法を所管する総務省も「受験成績の改ざんによる採用は、能力に基づいていないので違法な採用」との見解を示している。
ただ、法曹界の中には、この判断を疑問視する声もある。
(以下略)
上でも言ったように、受験生自らが不正を働きかけていなければ「違法な採用」の違法性の原因は採用した県側にあるわけなので、それを原因に採用を取り消すことができるとしても、取り消された側は正当な補償を受ける権利があるはずです。
大分県の教育委員会としては、ここまできたら、一度筋を曲げてしまうと筋を通したまま元に戻すのが如何に難しいかということを反面教師として全国に示すくらいの覚悟で臨んで欲しいものです。