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一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

勘違いのコスト

2011-10-12 | よしなしごと

ヒ素紛失と勘違い?九大准教授、飛び降り自殺か

研究者の評価が純粋に研究成果だけで判断されるわけではないのは日本に限ったことではないのかもしれないでしょうが、一度マイナス評価がつくと挽回が難しいという日本の現実を反映しているようで気分が滅入るニュース。

九大ヒ素紛失は勘違い? 保管庫内で瓶発見(2011年10月8日 読売新聞)
によると、  

九大は6日、約100人分の致死量にあたる15・06グラムのヒ素が入った瓶を紛失したと発表した。しかし、福岡県職員が7日夕に調査に入ったところ、ヒ素であることを示す表記がある瓶を発見。(中略)  

准教授は4日、生物環境利用推進センターの実験室にある保管庫を開けた際、あると思っていた茶色のふたの瓶1個がなかったため、紛失したと思い込んだという。実際には瓶のふたの色は白だった。  

自分が盗んで外部の犯行にしようというにしてはお粗末なので、おそらくは毒物だけに大事をとって公表したら勘違いだったのだと思います。 
確かに格好よくはないですし、劇物・毒物の在庫管理のあり方を見直す必要はあるでしょうが「無くなってなくてよかった」という話だと思います。  

また、紛失したと思った直後に安全サイドの選択をして報告するというのは悪いことではないし、報告を受けた大学当局も改めて探してみればよかっただけの話です。  

これが自殺まで至ったということは、この「勘違い」が大学内部で激しい非難を浴びたり、今後のキャリアに大きな影響を及ぼす現実があるということでしょう。 
理科系のポストは少ないので競争が激しく研究以外の部分でもミスが許されないとか、他の大学に転じるとしても「系列」や「師弟」関係があるので難しいというような事情があったのでしょうか。  

その後続報もなく、一過性のニュースとして扱われただけというのも、物悲しい感じがします。

これが次に紛失が起きたときの報告の遅れや隠蔽につながらなければいいのですが。

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小走り

2011-10-05 | よしなしごと

今朝の日経のスポーツ面の「フットボールの熱源」というコラムは「小走りする必要はない」。

陸上競技のコーチが本田圭祐を「ふつう小走りするような場面で歩いている。そこが素晴らしいんです」と評している。
その理由は、小走りをすると消耗しやすいふくらはぎに負担がかかるが、背筋を伸ばして骨盤から始動して歩くと効率的に体を運ぶことができ、無駄な消耗を防げるからだという。

しかし、日本のサッカー界では、歩いているとさぼっていると思われがちだ。サッカー選手なら、ベンチから「こら、歩いているんじゃない」としかられた経験があるのではないだろうか。歩く姿をさらすと印象が悪くなる。

だから走る必要がない場面でも「私はさぼっていません」と示すために、無意識のうちに小走りをしているような気がする。

これはサラリーマンについてもあてはまる。

暇そうにしている社内ではとサボっているように見られたり、下手をすると余剰人員扱いされる、また社外の人には「暇だ」というと閑職におかれていると見られかねない、というような意識もあって「忙しくなければいけない」という意識があるような気がする。

営業上羽振りのいいふりをするのが必要なときはあるが、身内に対して忙しいふりをするのは何の生産性もない。
しかも、自分だけでなく他の人間も消耗させたりして、挙句の果てにいざというときに余力がなくなってしまう。

サッカーならピッチの外から俯瞰すれば全体の動きや空いているスペースはわかるが、商売だとそうはいかないところにも原因があるのかもしれない。

これは、組織の目標設定と個別の役割分担・課題設定、さらには人事評価が難しいということにもつながるし、ピッチ(市場)の中に立ちながらなお俯瞰する能力を求められるのが監督(経営者)の役割ということになるのだろう。

 

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軽自動車

2011-09-21 | よしなしごと
超低燃費の軽、「ダイハツ・ミラ イース」発売

最近レンタカーで軽自動車に乗るたびに、よくできていることに感心します。

加速も必要十分だし、スピードを出しても安定して、ブレーキもしっかり効く。
高速だって軽自動車の法定速度でなく全体の流れに乗って走ることも十分可能。

それに室内は十分広い。
その分荷室は最小限だけど、4人乗って荷物をたくさん載せる状況って日常では殆どないし、2人+大荷物であれば、後席を倒せば十分。

燃費もレンタカーで借りたムーヴやタントの実績だと、空いている一般道だと18km/リッター、高速を飛ばすと逆に燃費が悪くなるのですが、雨の日に背の高いタントで目いっぱい飛ばしても(どれくらいかは内緒)12km/リッターは行きます。

軽自動車という制限された規格の中でデザインと技術をつきつめるというのは日本らしさがでていますね。
今回もハイブリッドなどの「飛び道具」に頼らずに30.0km/リッターを達成したのは見事だと思います。


車は長く乗るのが一番のエコだと決め込んでいるのですが、実際週末しか乗らないと自動車のランニングコストに占める燃費の割合って実は大したことはないので、つぎに買うなら維持費も安い軽自動車もありかな、と半ば本気で思ってます。
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しばし出かけます。

2011-07-27 | よしなしごと
なので、来週まで更新はお休みです。

Twitterでは「~なう」とか言ってるかもしれません。
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「舶来」は健在?

2011-07-26 | よしなしごと
改めて言われてみると結構な差です。
日本でのドイツ車・米国車の価格は米国の2倍

この表は1ドル79円の計算ですが、1ドル100円だとしても1.7倍くらい。
日本車にしても、1ドル100円換算でも日本のほうが1割高(レクサスは15%高)というのはちょっと納得いかないですね。
さらに消費税や取得税などを勘案すると、ますます割高な感じがします。

輸入車が高いのは、右ハンドルや車検制度・排ガス規制への適合、輸送費用の問題なのか、「プレミアム感」を演出する販売経費が大きいのかもしれませんが、実際「高くても売れる」というマーケットが一番大きな理由だと思います。

ベンツのSクラスのように高いほど喜んで買う人がいそうな高級車はさておき、VWのティグアンだとRAV4やスバルのフォレスターと同じカテゴリでもこの値段で売れるということは舶来神話未だ健在ということでしょうか。

それとも今お金に余裕のある団塊世代にとっては、1ドル200円台の時には高嶺の花だった輸入車がお手ごろ価格で買えるという感覚がこの値付けの背景にあるのでしょうか。

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中国の高速鉄道事故

2011-07-25 | よしなしごと


<8/25追記あり>
<8/26再度追記>

最近では特許問題もあり「ほらみたことか」風な取り上げられ方をしています。

たとえば安全面に不安、輸出に影響か…中国高速鉄道事故(読売新聞)とか。

でも、新幹線の運行制御技術は日本は最先端かも知れませんが、日本でも福知山線の脱線事故があったことを忘れてはいけないと思います。
路線拡張と早期開業のために安全性を犠牲にしたという指摘がありますが、組織的なプレッシャーが現場にひずみを起こしたという点では同じ。
「同じ事故は日本では起こりえない」などと解説者は言うが、まったく同じ事故は起きないとしても「過重な目標を現場に課した結果の事故」が起きないと言いきれるのだろうか。

高速鉄道の輸出にしても、中国以外にも競争相手はいるし、今回の事故で日本が有利になったとは必ずしも言えないように思います。

特許問題で言えば、一般論で言えば(中国以外の国における問題であれば)ごく狭い範囲で特許をとっても競争上は影響は少ないし、逆に広い請求項であれば異議は言えるはずで、本当に日本に技術力があるのであればあわてることはないはず。
逆に「特許出願」というPR攻勢にあわてることの方が相手のペースに乗ることになるのではないでしょうか。

敵の攻勢にあたふたし、敵失に沸く、というスタンス自体が負け犬根性を助長してしまっているようでとても気になります。


どこかで読んだのですが、日本の新幹線は専用軌道で精巧な制御なので車体自体は非常に軽量に作られているが、米国では専用軌道はコスト的には現実的でないので逆に万が一のときの衝突安全性もポイントになるとか。
その意味では、満員の電車が高架線から落ちても40人くらいの死者(現時点ですが)で済んだということから学ぶべきところはないのでしょうか。
または、今回の事故の原因究明と再発防止に協力を申し出て、同時にノウハウを吸収する原発事故におけるフランスのような貪欲さを持つべきではないかと思います(まあ、申し出には応じないでしょうが)。


<追記>
それにしても、現場で穴を掘って埋めるとは想像もつきませんでした...

<追記その2>
阪神大震災の直後に三宮で横倒しになって通りをふさいでいたビルがテレビに映されていたのですが、施工した某スーパーゼネコン(竹Φだったと思う)が総出で一夜で解体撤去してしまったのを思い出しました。
中国人に特殊な発想、ということではないのかもしれません。

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エコの道は遠し

2011-06-09 | よしなしごと
勤務先でもご他聞にもれず紙コップに変えてマイカップを使っている。

ただ、退勤時にマイカップを洗う列ができたり、皆が水を流すのも無駄な感じがする。(それにろくに洗わない不衛生な輩もいる)

そこで、食器洗い器を導入して全員の分をまとめて洗ったほうが環境負荷が少ないのではと提案した。


ところが、これに対して若手女性社員から反対の声が。

曰く、自分の食器をオジサン連中の食器と一緒に洗うのは嫌だ。

子供の頃から洗濯物を父親のパンツと一緒に洗うのは嫌だと言って育った世代に違いない。


節電やエコと言っても「豊かな生活」で作られた習慣や価値観を変えるのは難しい。


一方で、ブームになれば、建物の築年数や予定居住期間に関係なく10年もの寿命のLED電球を買ってしまうのだから面白いけど。

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犯罪における所有と経営の分離

2011-06-07 | よしなしごと

6億円強奪事件の展開を見ると、実行犯と絵図を描いた奴が違うという構造、実行犯レベルで刑事訴追の遮断ができている、とか、現場で手を汚さない連中が優先配当を受けるという意味では、ストラクチャード・ファイナンスに似ているかもしれない(現場の最劣後の部分の取り分が少なすぎるという意味でもw)

6億円強奪:植木容疑者「金奪った」 関与認める供述  

渡辺容疑者が現金の運搬役だったとみられるが、2人は事件直前まで面識がなかったとみられ、暴力団関係者を含むグループが引き合わせた可能性が高い。  

浮かび上がってくるのが

  • 暴力団関係者(仮にXとする)が警備会社の手薄な状況を知って計画をたてる
  • 実行犯としてお互いに面識のない2人(AとB)をスカウト
  • Xは計画をAとBに伝授するとともに前金と必要な機材(偽のナンバープレート、連絡用の携帯電話等)を提供。
  • ABが犯行を実行。
  • ABは強奪した現金をXに渡し、報酬を足のつかない現金で受け取る(またはしばらくした後に残金を払う約束)

というような構図。
さらに

  • XがABに「もしつかまっても俺のことをバラしたら、刑務所内や出所後にひどい目に遭わせるぞ」というような脅しをする
  • 「出所後に残りの報酬に金利をつけて渡してやる」

などと約束しているという可能性も高い 。

そうすると、ABとしてもXについて証言すれば(本人や家族の)身に危険が及ぶ可能性があるので、ここは刑に服して(空手形になるかもしれないが)出所後の見返りを期待するインセンティブが生じる。 
その結果、Xはあまりリスクを負わずに強奪資金を他に入れることが出来る。

暴力団関係者への締め付けが強くなっている中で、今後この手の犯罪は増えるように思える。

これらに対抗するには、ABにXとのつながりを証言するインセンティブを与えるような仕組みを考える必要があるのではないか。  
具体的には、黒幕Xの情報を提供することで実行犯ABの罪を軽減できるような司法取引と、ABがXからの仕返しを避けて安全に過ごせるような証人保護プログラムが有効だと思う。  

もっとも私はこれらについて映画や小説の中でしか知らないので、たとえば司法取引については検察による有罪証言への誘導や偽証のリスクなどのデメリットもありそうだし、日本のような狭い国の中で証人保護プログラムが有効か、という問題もあるだろう。  

ただ、高度化する犯罪者の手口に対抗するなんらかの道具立ては検討する必要があるように思う。


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「一定の目処」戦略

2011-06-03 | よしなしごと

今日はゴルフ。
4ヶ月ぶりだったので先週末練習に行ったら案の定ボロボロで先が思いやられたのだが、昨日ずっとニュースで「一定の目処」が繰り返されるのを聞いて、ふと思った。

そもそも下手な上に久しぶりなんだから、「ナイスショット」を目指すのでなく、「一定の目処が立つ程度」を目標にしたほうが大怪我しないんじゃないか

実際この言葉、使ってみるとなかなか秀逸で、「力まない」「欲を出さない」「挽回しようと無理しない」というあたりを一言で表わすことができる。
ネタにしながら念仏のように唱えていると、淡々とスコアがまとまる。

これが職責からのプレッシャーをいなしながら地位を維持するノウハウなのか、などと妙に関心。


ただ、1m未満のパットを3つもはずすなど、詰めの甘いところも伝染してしまったようなのが残念。

コメント (2)
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高橋源一郎vs糸井重里の対談「「さよなら」するものしないもの-ニッポンの30年とこれから」

2011-05-24 | よしなしごと

文学界、もとい「文學界」4月号のつづき。

80年代から活躍してきた二人がこの30年を振り返ると共にこれからを語ってます。
二人とも還暦を過ぎて、歳を取て見えてきたことについての話なども味わい深いです。

まずは昭和の総括

高橋 昭和の最後は昭和64年=平成元年、つまり昭和天皇が亡くなった年なんだけど、その年には手塚治虫と美空ひばりも亡くなっている。つまり、同じ時期に天皇が三人死んだ。昭和を代表する各ジャンルの天皇が--そもそも昭和は各ジャンルに天皇をもつ天皇制だったこと自体が驚きなんだけれど--同時にいなくなったんですよ。しかもそれが経済の動きと連動していて、天皇が亡くなった翌年に株価も頭打ちになって、バブルがはじけた。その後は20年間ずっと下がりっぱなしなんだよね。

ほんと、平成は下がり局面なのが普通になってきてて、そのへんが団塊ジュニアや就職氷河期世代のマインド形成にも影響していますよね。
そもそも「平成」:Flat=現状維持という目標設定がよくなかったのかもしれない。
もしドラッガーが年号を考えたら・・・?


歳を取ってわかること。

高橋 そもそも「わかる」ということには、「言っていることがわかる」の他に、「フィジカルにわかる」ということがあると思うんですね。鶴見(俊輔)さんの本がなぜ面白いのかというと、一言で言えば「経験」があるからなんです。つまり、その人のフィルターを通して語られる。フィルターを通して出てくる言葉というのは、そうでない言葉と比べて、全然重みが違う。言ってみれば、経験は神様みたいなもので、たとえ言っていることが無茶苦茶だとしてもなぜ説得力があるのかというと、「自分の人生」という戦場の中でコントロールができているからです。

糸井 「頭でわかる」と「身体でわかる」は別のことですよね。・・・実は今日、ぼくが「ほぼ日」に書いたのが、人が死んだときには生き残った人の方が寂しいと言うけれど、実は「死んだ人の方が寂しいんだよ」っていうことなんです。それは10年前にはわからなかったことなんだけど、でも今なら「死んだ人の方が寂しい」とわかる。死んだ人の気持ちをくみつつお墓参りをするっていうのは、だから本当にすごいことなんだなと思うんですよね。

高橋 ・・・今までの小説はほとんどが青春文学だからです。青春文学はほとんど死を考えない。あったとしても自殺で、死は突然、なんですね。明治以来、森鴎外も夏目漱石もみんな早くに死んでしまった。だから小島(信夫)さんも古井(由吉)さんも、谷川俊太郎さんにもそんなところがあるけれど、「自分の死」がテーマになるというのは最近の話なんですね。死は突然くるものではなくて、徐々にボケてきて、身体も動かなくなってきて、言っていることも意味不明になってくる、そういう途中経過をたどるものなんだということが、ようやくわかってきた。
・・・ちょうど若い頃に経済がマックスの昭和を生き、緩やかに衰えていけるというのは恵まれていると思いますね。

糸井 ・・・ぼくは・・・年をとるにつれて・・・「見つける目」を見つけてしまったから、若いときより面白いものがいっぱい見つかるわけ。昔ならこれでおしまい、って言えたのに、その遊び場が好きになってきて、「さよなら」したくなくなるんですよ。

高橋 ・・・今は、みんなそういう「遊び場」を見つけているんじゃないかな。

糸井 日本には定年っていう便利なものがあって、定年と退職を重ねていけるでしょう。人生のおしまい感を味わえるような目盛りを差し出されると、一度考えざるをえなくなりますね。

前半部分はさておき、後半部分については世代間で異論があるところだと思うし、だから団塊の世代はいいんだよなぁ、とか、もっと若い世代からは僕のような「昭和のサラリーマン」は気楽だったよなぁ言われそうな気がします。
しかも、団塊の世代サラリーマンの中で「遊び場」を見つけて定年をポジティブに捕らえている人ってそれほど多くないように思います。
まだまだ右肩上がりの昭和を引きずっていて「忙しい」ことに価値を見出しながら、老後をどうやって忙しくしようかと考えているように思います。


「右肩下がり」について

糸井 景気が悪くなっても生き延びる方法はいくらでもあるんだけど、つまらなくなるのと景気が悪くなるのは、間違いなく関係してきますね。「良薬は口に苦し」、ではないけれど、みんな、つまらないことのほうがもうかる、苦しいことの方がお金になると考える。「面白いことやっていて儲かるわけがないじゃない」、その幻想たるやすごいんじゃないですか。

実は景気がいいときは、地味でつまらないことの方が簡単で需給関係もよく競合もしないので儲かったりするんですよね。
景気が悪くなると、すぐ「リストラ」「経費節減」「選択と集中」とか「コンプライアンス過剰」になる。東日本大震災でサプライ・チェーンにも冗長性が必要だということが明らかになったにもかかわらず、業績は気にしなければならないので、なかなかつらいところです。(東電の賠償問題でよく言われる「徹底したリストラ」と安全性の確保のトレードオフの関係はどう考えてるんだろう。)
業績の四半期毎の開示をやめたら、かなりの節電対策になるんじゃないでしょうか。


糸井重里がコピーライターから「ほぼ日」に転じて

糸井 ・・・早い遅いじゃないんですね。そこしか場所がなかった。思いついたアイディアを友達に話すと面白いといってくれるんだけど、たとえば、面白い企画があります、って言って文學界編集部に電話をかけても載せてくれないでしょう。世の中はそうはできていない(笑)・・・だから、ぼくは海の中に住み続けられなくて上陸せざるを得なかった両生類みたいなものですよ(笑)。希望に満ちて進化した生物なんていないんですから。ただちょっとずるいのは、まだコピーライターをやっていて、そこでした仕事をこちらに向ければいいなと加減ができたことですね。要するに肺呼吸とエラ呼吸が両方できた。

高橋 ・・・ぼくがそれ(インターネットに進んだこと)よりも面白いと思うのは、糸井さんが会社を作ったことなんですね。会社を作るというのはたくさんの社員、つまり子どもを抱えるわけだから面倒でしょう。それまでのコピーライターという仕事は基本的には一人なわけで、誰の面倒を見なくてもいいし、誰からも面倒を見られなくてよかった。それが人を集めて自分でみんなの責任もとるという共同作業に移行していった。そのことが面白かったんです。

糸井 それは、すごく段階を踏んでいると思いますよ。・・・たとえば15人で会議をするとしたら14人のチーム対ぼく一人なわけで、相手14人よりもぼく一人のほうが力があると思っていいかな、と。それが僕の飯のタネだったんです。ところが徐々に、14人のチームも14人がそれぞれに機能しているんだということがわかってくるようになった。チームとしての仕事がとてもよくなってきて、ぼくがチームリーダーでもないのに、この人たちがいてよかった、皆ありがとうね、という気持ちになることが多くなっていったんです。

糸井 ・・・でも会社をやっていると、アイディアを生む前提として「知識の量」というものがそもそも必要なのかどうかあやしくなってくる。それぞれの分量が少なくても良い仕組みがあれば、すごい力が出るんですよ。

ここはサラリーマンにも参考になる。
大企業のサラリーマンが起業や転職をしても上手くいかないと言われるが、ビジネスが上手くいくにはオペレーション・組織作りも大事で、そこについては今まで大きな組織に乗っかっていただけなので、実はノウハウがなかったりする。なので他人の力を合わせて集団で力を発揮するのでなく個人でどうにかしようと「他人には任せられない」モードになってしまったり、(もっとひどいと)「乗っかり型管理職」になってしまうのだろう。
必要に応じて徐々に大きくしていったので組織というものを考えることができたのかもしれない。


そして小説はどこに行くか

高橋 ・・・今までの小説の多くは青春小説で個人主義、つまり中心にあったのが「自分」だったんですね。「ルック・アット・ミー」が基本で、若くして失敗したら死ぬ、という枠内で終わっている。では長生きしたらどうするか?漱石はちょっと書きかけたんだけど、結婚して二人でなんとかやっていく、という方向で落ち着いてしまったから、その先の共同体のあり方については書いていないんです。
 では今まで、なぜ個人だけで小説が成り立っていたかというと、「家」とか「社会」がかっちりしていたからです。否定できない共同体があるから、個人が成り立つ。
・・・昔は「一人」を威張れたけれど、今は「一人」すら、あやしい。世界とか家がぼんやりしているから、そこから出ることにはもはや意味がなくて、個人にスポットを当てると、はっきりしない小説になる。・・・この百年間「家」が壊れ、ルールが壊れ、国家が壊れた。・・・そして今、一人では生きていけないという単純な事実が残った。

糸井 ・・・今までの「家族」とは違っていいんだけど、それにかわる新しい「ホーム」がないとダメなんだと思う。・・・独身の独り者にだって、ホームはあるんですよ。大きくなりすぎると邪魔になるけれど、育てるもの。だから「ホーム」っていうのは重要な概念だと思うんだけど、その中に含まれているの大切なものは、「ストーリー」ですよね。

高橋 それはつまりエピソードのある世界、ですよね。・・・全てに日付も場所もある、エピソードを提供できることはものすごく強いですよね。
・・・小説が何を作っているかというと、そのいちばん大きなものは、エピソードだと思うんですよ。小説の中にあるエピソードがさながら自分のもののように感じられる。あの日、自分も同じものを見た、というような同時代の感覚をもたせる。それは小説の大きな仕事のうちの一つですよね。・・・「出版社が厳しい」「小説が厳しい」というのは一面ではまったくその通りだと思う反面、ぼくは全然絶望もしていない。だって、人は共同体もエピソードも絶対必要としている。今はそういう意味で、みんな「家」をなくしたホームレス状態だけど、小説というのは--政治も、宗教もそうかもしれないけど--もういちど「家」を作り出すことができるはずで、では誰がどんな形で新しい共同体の形を作るのか、というのが競争といえば競争だし、仕事といえば仕事ですよね。

政治・宗教でも「家」や「共同体」の「復権」「復活」というのはキーワードになりそうですが、こちらはそういう行動の美名に惑わされず、出来上がりが何を目指しているかをよく注目しないといけないですね。

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年金

2011-05-18 | よしなしごと

震災関連の間に年金問題が出てきているのは、財政問題・増税路線と関係しているのだろうか、とか思いながら記事を見てもいまひとつよくわからない。

最低保障年金「年収600万円超は支給なし」で最終調整
(2011年5月15日 asahi.com)

現行の基礎年金(満額月6万6千円)は加入者だけが対象で、財源は税と保険料で折半する仕組み。一方、最低保障年金はすべて税金を財源とし、ほとんど収入がなかった人も含む低所得者に支給するため、年収300万円超の所得層の多くは年金支給額が減る見通し。財源は、基礎年金より5兆円程度増えそうだ。

でも、記事の図を見ると、最低保証年金は600万で打ち切りだけど、従来の基礎年金との合計額は増えるように見える。 

 

40年で新年金制度に移行=改革原案を提示-民主調査会
(2011年5月17日 時事通信)
によると(太字筆者)

民主党の「社会保障と税の抜本改革調査会」(仙谷由人会長)は17日、総会を開き、同党の年金改革原案を出席者らに提示した。同党の2009年衆院選マニフェストに沿って、すべての公的年金制度を一元化し、40年かけて(1)消費税を財源とする満額で月7万円の最低保障年金(2)現役時代の収入に応じた所得比例年金-で構成する新制度に移行させると明記したが、どの程度の負担で老後にどれぐらいの年金を受け取れるのかなどの詳細は示さなかった。
 新年金制度では、最低保障年金と所得比例年金の合計で、すべての人が40年加入で少なくとも月7万円の年金を受け取れるようにする。ただ、最低保障年金で満額7万円を受け取れるのは現役時代の収入が少ない世帯に限定。一定の収入以上は支給額を減らし、所得比例年金の割合を高くする。

ちなみに現行の年金制度はこういう仕組み(社会保険庁「年金制度の仕組み」から)


この、現行の基礎年金+厚生年金・共済年金の上積み部分を全部所得比例年金に一体化し(=上の三角の部分)、年収600万以下の人は最低保証年金を支給し、7万円は受け取れるようにしよう、ということらしい。(それ以外は「公的年金」でない私的年金なので存続?)

要するに、今のままだと基礎年金は支払い減資が足りなくなるので上積み部分から補填しようということなのだろうか。
結局上積み部分のところを払っていた人が割りを食う感じ。

ちなみに、現在の制度が破綻しない前提だと、年収600万円のサラリーマンは国民年金と厚生年金でいくらくらい受給できるのだろうか。
年収300万~600万の層は厚生年金を支払うインセンティブがなくなってしまうのではないか。


この議論は、年金制度の積み立て不足(制度の破綻)と社会保障(生活保護)の問題を一緒にして論点を曖昧にしているような感じがする。

朝日新聞によると

 新年金制度は、2015年度の移行開始を目指す。当面は現行制度の見直しから手をつけ、徐々に移行させていくため、新制度が完成して月額7万円の最低保障年金が支給されるのは開始から40年後になる。

 そのため、民主党の調査会は議論を封印し、制度設計の先送りも検討。だが、年金の具体案を示さないと与野党協議の実現がさらに難しくなるため、近く具体案をまとめることとした。

要するに「腰だめ」なんですな。
なんか、年金制度はババ抜きのババみたいに「話題に触れたもの負け」という扱いのようで、問題点を先送りにしながらなし崩しにしていこうという雰囲気がありありなのが不愉快。


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エイプリルフール

2011-04-01 | よしなしごと

だということを、エントリをupするときにはころりと忘れていて、出遅れてしまい、気の利いたものも思いつかなかったので、そのかわり画面を節電モードにしてみました。

それから、右上に肉球のブログパーツを貼り付けたので、クリックして遊んでやってください。

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受験競争の正体(『デフレの正体』応用編)

2011-03-10 | よしなしごと

朝日新聞の夕刊のトップ記事
志願者1位、明治譲らず

早稲田(一般入試の募集人員5630人)の志願者が11万3653人で確定した後、明治(同4582人)は8日に11万3864人になった。

最近は大学受験者数が60万人を切っているので(参照)、一人で複数学部を受験する人を考えても受験生10~20人に一人は早稲田や明治を受けているということになりますね。

あと募集人員の多さも印象的で、辞退者を考えなければ大学受験生の1%は早稲田に入学することになりそうです。
(5600人も学生がいると、確かに早稲田を出たからといって全員が内定をもらえるとは限らないということも実感します)


『デフレの正体』流にこうやって絶対数を見ると、実は京大や早稲田、同志社などの名門大学も大学相互の比較はともかく受験者数が減って定員が代わらない以上合格者の絶対的なレベルは下がってきていて実は入りやすくなってきているのではないかということがわかります。

カンニング問題で「受験制度の根幹を揺るがす」と大学当局者が言っていたのは、それをバラしてしまったからなのでしょうか。
「Yahoo知恵袋」ですぐ正答が寄せられたということは、問題のレベルが下がった、またはきちんと勉強していれば比較的容易に解けるような(難問奇問でない)良問を出すということなのかもしれません。

そして結構合格へのハードルが低いということが知れてしまうと、京大としては就職などでの学歴の威光が効かなくなるでしょうし、私立大学においては大学受験を回避するために附属小・中学校の人気が高まり、それらを増設することで収益増を図るというビジネスモデルが揺らぐことになるのかも知れませんね。

そうだとすると、大学関係者がいきりたつのも(その当否はさておき)わかるような気もします。

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昨日の補足

2011-03-04 | よしなしごと

不動産仲介業者が売主・買主双方から手数料を収受していることが利益相反になるのではないか、という問題提起について、参考までにアメリカの事情をご紹介。

ユーザーとしての実体験からのまとめとして参考になるのが
アメリカの不動産エージェント
アメリカ不動産購入記(エージェント選び)

仕組みとしては、売主・買主それぞれに"seller's agent"と"buyer's agent"がつくのですが、手数料は売主が支払うものを分け合うので、構造的には"buyer's agent"が買い手の利益のために働くのは契約上の義務ということになる。
したがって、結局利益相反・双方代理的なものを排除するのはどのような行為規範をどこまで法律等で強制するかの問題になります。

「売主が手数料を払う」というのは一つのアイデアとしては参考になる部分はあるとは思いますが、双方代理・利益相反の弊害の解消は結局行為規範の問題になるように思います。そのなかで仲介手数料の自由化というのは、ちょっと筋が違うと思います。
中小の不動産業者の反対を沈静化するための取引材料として導入するのは却って妙な結果になってしまいそうな感じです。

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Tweetの補足

2011-03-03 | よしなしごと

民主党中村てつじ参議院議員の不動産仲介手数料の規制緩和と「両手取引」の原則禁止でとりあげられている民主党の成長戦略PTへの提案書の趣旨がわかりにくい件。Twitterで言いっぱなし

わかりにくい。政策議論ってこんなレベルなのかな。引用元のの方が格段に問題意識が明確 RT @: 不動産仲介手数料の規制緩和と「両手取引」の原則禁止

だったので補足。

前提として、住宅市場は新築中心から中古物件の流通に移っていく、一方で流通形態の複雑化から現状の宅建業法の仲介報酬の規制が合わなくなってきていることにふれています。
そして

また流通形態としてはリフォームと売買を組み合わせるようなケースも出てきており、別途コンサルタント手数料を加算する必要が出てくる等、単純な仲介手数料の上限規制が以上のような変化に対応できなくなってきている。

ここがそもそもわからない。
中古物件を業者がリフォームして売主として売る(物件取得とリフォームの内容がセット)のなら仲介の世界ではないです。
一方で中古物件を買ってリフォームを請け負うなら仲介(宅建業)+請負(建設業)に整理できます。「この物件を仲介してやるから俺にリフォームを任せろ」という仕事を認めるのでは諸費者保護にはならないと思います。
また、請負でなく中古物件を買う人にリフォームのアドバイスをする場合も、アドバイスの報酬と仲介は別のものです。
また、リフォーム業者を紹介して業者からキックバックを受け取るとすると、仲介と一体取引としてしまった場合にはかえって利益相反の問題が出てしまいます。

なので、仲介報酬の上限が時代に合わない、という例としては適切ではないように思います。

それに続いて

一方で、流通形態は現実に複雑化してきているので、建前は「仲介」の形態であっても実質的には代理・代行の性質を帯びてきており、単純な現状での引き渡しを前提とする仲介とは異なり、一つの業者が売り手と買い手を取り持つ形態では双方代理のような弊害が生まれている。

上の設例が理解できないので、この段落もわかりません。
「建前は「仲介」の形態であっても実質的には代理・代行の性質を帯びてきており」というのが具体的にどういうことを言うのでしょうか。そもそも宅建業者は取引態様の明示を義務付けられているので「媒介(=仲介)」か「代理」かは明示義務があります。その区分自体を改めるべきという主張でしょうか。
あと「代行」というのが具体的にどのような法律行為を意味するのかもわかりません。
また「一つの業者が売り手と買い手を取り持つ形態では双方代理のような弊害」は「単純な現状での引き渡しを前提とする仲介」であったとしても生じうるし、複雑な形態であれば双方代理のリスクが増加するとすれば、それはリフォーム工事など仲介とは違う部分の問題ではないでしょうか。
そもそも売買当事者双方から手数料をもらう「仲介」という形態がおかしい、とストレートにいえないのは、後ろにある「地方の業者からの反発」への政治的配慮なのでしょうか。

また、大手仲介業者による物件の囲い込みも行われていると指摘されている。

これについては、末尾にも紹介されている不動産業界にもあった“八百長問題”がわかりやすいです。
これ自体は問題だと思うのですが、物件の囲い込みを厳密に禁止して、買い手側の仲介業者は宅建業者のデータベースにアクセスして情報を得るとなると、業者は価格交渉力・物件調査力・契約から引渡しまでを円滑に行なう実務能力で差別化を図ることになりますが、これは一般消費者にアピールするのは難しく、また消費者も不動産取引など一生に何回もするわけではないので業者の選択に悩む結果、結局大手の寡占が進んだりディスカウント業者が増えたりしてしまうおそれもあるのではないかと思います。

提案書に戻ります。

両手取引について「原則」禁止と断っているのは、双方代理的弊害や囲い込みなどの問題が起こらない場合があり得るため。例えば、工務店が不動産業を兼ねているようなケース。品質を担保する供給業者が売主に代わって販売をすることで、品質を保証して売却することができる。

このケースはどのような取引を意図しているのかがよくわかりません。
「工務店が不動産業を兼ねている」会社=「供給業者」と読むのでしょうが、とすると

売主(A)-販売代理+品質保証業者(B)-買主(C)

という取引で
・Aは売主としてCとの契約上の瑕疵担保責任を負う
・BはAの瑕疵担保責任をAに代わって負う/または瑕疵担保責任とは別にCに対し物件の性能保証をする
・BはAからは販売代理を受託する
ということなのでしょうか。
販売代理だとすれば現行でもBから6%とればいいので、別に双方代理の問題はありません。
また「品質保証サービス」は保険や保証業のようなもので、仲介(代理)報酬とは別の契約にすれば現状でも宅建業法には抵触しないように思います。


残念ながらこの提案が成長戦略につながるとは理解できませんでした。

コメント
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