GetUpEnglish

日常よく使われる英語表現を毎日紹介します。毎日日本時間の午前9時までに更新します。英文執筆・翻訳・構成・管理:上杉隼人

ALL THE LITTLE BIRD-HEARTS

2024-04-02 08:05:16 | All the Little Bird-Hearts
 本日4月2日は国連が定めた「世界自閉症啓発デー」。
 日本各地でも啓発イベントが行われます。詳しくは公式サイトへ
世界自閉症啓発デー 日本実行委員会公式サイト

 そして本日のGetUpEnglishは、今年度ブッカー賞のロングリストにノミネートされたこの作品を紹介したい。

ALL THE LITTLE BIRD-HEARTS
by Viktoria Lloyd-Barlow

Sunday Forrester lives with her sixteen-year-old daughter, Dolly, in the house she grew up in. She does things more carefully than most people. On quiet days, she must eat only white foods. Her etiquette handbook guides her through confusing social situations, and to escape, she turns to her treasury of Sicilian folklore. The one thing very much out of her control is Dolly – her clever, headstrong daughter, now on the cusp of leaving home.
 サンディ・フォレスターは自分の育った家で16歳の娘ドリーと暮らしている。サンディは何をするにもほかの多くの人たちより注意している。穏やかな日は白い食べ物だけ食べる。そんなふうに自分のノートには社会で混乱してしまうようなことがあったらどうすればいいか記されていて、もし逃げ出したくなるようなことがあればシチリアの民話の世界に入り込んでしまうこと。そんなサンディがコントロールできないのは、娘のドリーだけ。あの娘は頭がよくて頑固で、家を出で行こうとしている。

 そんなサンディの家の隣にビタとロロというカップルが引っ越しきて、サンディのきっちり整えられた世界に入り込んでくる。ふたりはサンディを〝武装解除〟して、サンディのノートに書かれたルールを次々に破り捨てていく。ビタとロロのふたりはサンディの家をよく訪れるようになり、ふたりもサンディを家に迎え入れる。サンディはこれまでにないほど人に愛されて、受け入れられたように感じる。でも、ビタとロロの上品な装いの下には、何か別の暗いものがある……。なぜならサンディは、ビタがずっと欲しかったものを、つまり娘を持っているからだ。

 「なぜならサンディは、ビタがずっと欲しかったものを、つまり娘を持っているからだ」の英語はFor beneath Vita’s charm lies a desperation and a certain entitled ambition – to have a daughter just like Dolly, all to herself.であるが、注意しないといけない。このforは接続詞で、「というわけは[その理由は]…だから」。
 普通は既述の事柄の理由を示す説明文を導く等位接続詞で、文頭には置かず、次のように使われる。
 It will rain, for the barometer is falling.(雨が降るだろう, 晴雨計が下がっているから。『コンパスローズ英和辞典』)
 この場合は、前の文にほぼつながる形で文頭に置かれている。

 このすばらしい小説を今楽しく読んで、著者の朗読で聞いている。自閉症の人の世界を描いた小説は少なくないが、「自閉症の人の視点」で書かれた小説はほとんどない。

 「自閉スペクトラム症の母親の視点から書かれた本書は著者の詩的なデビュー作で、家族愛、友情、階級、偏見、トラウマといったテーマを巧みに結びつけ、的確な心理描写とウィットを用いて語ってみせる」(ブッカー賞選考委員寸評)

とあるとおり、大変読み応えのある小説だ。
 著者Viktoria Lloyd-Barlowはケント大でクリエイティブライティングの博士号を取得。サンディと同じように自閉スペクトラム症の当事者で、こうしたテーマにつきハーバード大で講演を行なうなど、積極的に活動している。
 このすばらしい小説をまたGetUpEnglishで紹介したい。

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