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日常よく使われる英語表現を毎日紹介します。毎日日本時間の午前9時までに更新します。英文執筆・翻訳・構成・管理:上杉隼人

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毎日更新! GetUpEnglish Updates Every Day! Since April 1, 2006 (c) 2006-2024 Uesugi Hayato(上杉隼人)

『桐生タイムス』連載「永遠の英語学習者の仕事録」【42】(2024/9/28)

2024-09-29 13:19:14 | 桐生タイムス
DeepMindの共同創業者、現Microsoft AIのCEOの全人類に対する警告書

 今日のAI(人工知能)システムの進化はめざましい。物体も人間の顔もほぼ完璧に認識し、音声からテキストへの変換も、瞬時の言語間の翻訳も問題なくこなす。AIナビで自動運転も可能だ。いくつか簡単なプロンプトを与えれば、新世代の斬新な画像を生成し、情報量の多い論理的な文書も書き上げる。驚くほどリアルな合成音声も生成可能だし、美しい音楽も作曲する。長期的な計画も立ててくれるし、想像力が求められる複雑なアイデアをシミュレーションするなど、かつては人間にしかできないと思われていたことも軽々とこなしてしまう。
数年後には人間と同じレベルでさまざまなタスクを処理できると思われるし、すでに実現しているのかもしれない。
 だが、このAIがロボット工学、合成生物学、量子コンピュータといった同じく急激な進化を遂げている新世代テクノロジーと組み合わさることで、開発者すら想定していない未曾有の大混乱と大惨事がもたらされる可能性がある。
 可能性は低いかもしれないが、一度起こってしまえば甚大な影響がもたらされる。たとえわずかな可能性であっても、緊急に対応しなければならない。だが、まだ何も準備ができていない。このまま強力なテクノロジーの「封じ込め」(英語のcontainmentで、管理し、制限し、止めること)に失敗すれば、現在の国家は崩壊し、世界秩序は大混乱に陥る……。
 本書は、AlphaGoを開発したDeepMindの共同創業者で、現在はMicrosoft AIのCEOを務めるムスタファ・スレイマン(Mustafa Suleyman, 1984- )の全人類に対する警告書だ。1年前の2023年9月に原書が刊行されて以来、世界中で大変な話題を集めている。
 この注目の1冊がついに日本に上陸、昨日9月26日に発売された。

★    ★    ★
 
 ムスタファ・スレイマンの主張は常に一貫している。
 人類は未曾有の力を備えた「来たるべき波」(The Coming Wave)を迎えつつある。来たるべき波はかつてない規模の富と利益を生み出すAIを有するが、これが合成生物学などのほかの新テクノロジーとあわさりつつ急速に拡散すれば、さまざまな形で悪用される可能性もある。それによって想像もできない大規模な混乱が生じ、社会は不安に陥り、大惨事が引き起こされるかもしれない。われわれはAIと新テクノロジーがもたらす恩恵を享受しつつも、その「封じ込め」を試みることが必要だ。それができなければ、人類は悲惨な状況に置かれる可能性がある。

The coming wave of technologies threatens to fail faster and on a wider scale than anything witnessed before. This situation needs worldwide, popular attention. It needs answers, answers that no one yet has.
Containment is not, on the face of it, possible. And yet for all our sakes, containment must be possible.  
 来たるべき波は、史上最速かつ最大規模の失敗をもたらす可能性がある。全世界の注視が必要だ。どうすればよいか? 答えはまだ誰も出していない。
 一見、封じ込めは不可能に思える。だが、全人類のために、封じ込めは可能にせねばならない。

★    ★    ★
 
 ビル・ゲイツ(マイクロソフト共同創業者)、ダニエル・カーネマン(ノーベル経済学賞受賞、『ファスト&スロー』)、アル・ゴア(元アメリカ副大統領)、エリック・シュミット(元グーグルCEO)、グレアム・アリソン(ハーバード大学ケネディスクール初代院長、『米中戦争前夜』)、エリック・ブリニョルフソン(スタンフォード大学教授、人工知能学者)ほか、実に30人以上もの著名人が本書に推薦文を寄せている。
 そのうちのひとりユヴァル・ノア・ハラリ(歴史学者、『サピエンス全史』)は、本書について次のように述べている。

"The Coming Wave is a fascinating, well-written, and important book. It explores the existential dangers that AI and biotechnology pose to humankind, and offers practical solutions for how we can contain the threat. The coming technological wave promises to provide humanity with godlike powers of creation, but if we fail to manage it wisely, it may destroy us."― Yuval Noah Harari
興味深く重要な本。AIとバイオテクノロジーが突きつける人類存亡の危機を探究し、その脅威を封じ込めるための現実的な解決策を提示している。来たるべきテクノロジーの波は人類に神のような創造力を与えることを約束しているが、賢く管理できなければ人類を滅ぼすかもしれない」――ユヴァル・ノア・ハラリ

 大変光栄なことに、わたしは全世界が注目する本書の日本語翻訳を担当させていただいた。この大作を数か月で訳すのは大変な作業であったが、多くの人たちの支援を得てどうにかやり遂げることができた。
 来月の本欄で、『THE COMING WAVE AIを封じ込めよ DeepMind創業者の警告』についてさらにくわしく論じてみたい。

 ムスタファ・スレイマン、マイケル・バスカー『THE COMING WAVE AIを封じ込めよ DeepMind創業者の警告』(上杉隼人訳、日経BP/日本経済新聞出版)

上杉隼人(うえすぎはやと)
編集者、翻訳者(英日、日英)、英文ライター・インタビュアー、英語・翻訳講師。桐生高校卒業、早稲田大学教育学部英語英文学科卒業、同専攻科(現在の大学院の前身)修了。訳書にマーク・トウェーン『ハックルベリー・フィンの冒険』(上・下、講談社)、ジョリー・フレミング『「普通」ってなんなのかな 自閉症の僕が案内するこの世界の歩き方』、ジョー・ノーマン『英国エリート名門校が教える最高の教養』(ともに文芸春秋)など多数(日英翻訳をあわせて90冊以上)。
 12月には『ディズニーランド・パーク ポップアップ・パークツアー』(河出書房新社)、来年3月には『Marvel Anatomy 超人ヒーロー解体図鑑』(KADOKAWA)の刊行が決まっている。


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VIABLE

2024-09-29 00:02:58 | V
 viableは「 (計画などが)実行[実現]可能な, 成功の見込みがある」(コンパスローズ)。 
今日のGetUpEnglishはこの語を学習する。

○Practical Example
"The team came up with several viable solutions to the problem."
「チームはいくつかの実行可能な解決策を考え出した」

"Starting a business in this area might not be viable due to high rent costs."
「このあたりは賃料が高いから 商売を始めるのは現実的でないかもしれない」

●Extra Point
 もう2例。

◎Extra Example
"We need to find a viable alternative before the deadline."
「締め切り前に実行可能な代案を見つけなければならない」

"The project was canceled because it was not financially viable."
「プロジェクトは財政的に現実がむずかしく、中止された」
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