(大正生まれの父と、昭和初期に生まれた叔父に聞いた、二人が子供の頃のお話です。)
ある日のこと、「学校から帰ってきたら栗拾いに行くから急いで帰って来いよ」と兄が言う。
おやつもない時代の事、たくさん拾って栗飯や茹で栗でみんなを喜ばせようと思うとワクワクした。
学校から急いで帰り、魚籠を背負い、小魚籠を腰に縛り付けて、二人で山の奥に出かけた。
氏神様のある高鳥谷山を通り越して、ずんずん山の奥まで上って行った。
面白いほど栗がある。
夢中で拾って、二、三升は拾っただろうかー
魚籠にいっぱいになった栗を得意げに見ながらふと我に返ると、
辺りは薄暗くなり始めていた。
秋の夕暮れは早い、「もう帰らにゃあ暗くなるぞ!」
兄は山の事はよく分かっていた・・・はずだった。
弟は4つ違いの兄の言う事を信じて従うよりほかなかった。
しかし、
たちまち足元は真っ暗になり、山で育った兄も既に方向を失っていた。
二人は真っ暗な山の中をさまよう事になる。
(つづく)