狐火に導かれてか・・
二丁の川を渡り、林道を歩き、隧道を越えると、家のある菖蒲ヶ沢のに入った。
山に木霊して父達が山に向かって叫んでいる声が聞こえてきた。
山の上の小さな家は大騒ぎになっていた。
父も、母も、妹たちも、みんな山の方を向いて大きな声で自分らの名前を呼んでいる。
汗をかき、最後の力を振り絞って家に着いた頃には、もう栗の事なんか忘れていた。
父に
「馬鹿じゃねえか、日の暮れるのも分からんか!みんな、心配するじゃぁねえか!!!」
と、こっぴどく怒られた。
母は安心したのか、ようやく夕飯の支度にとりかかり、
家族が遅い遅い夕飯にありついた時、ほっと胸をなでおろした。
冷たい布団の中に入っても、まだゆらゆらと真っ暗な林道でたき火をしている人が見えていた。
あれは狐火だったんだ!
80年経った今でも、二人は口を揃えて言う。