熨斗(のし)

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昔の話ー狐火(最終回)

2016-08-21 08:04:09 | スケッチ

狐火に導かれてか・・

二丁の川を渡り、林道を歩き、隧道を越えると、家のある菖蒲ヶ沢のに入った。

山に木霊して父達が山に向かって叫んでいる声が聞こえてきた。

山の上の小さな家は大騒ぎになっていた。

父も、母も、妹たちも、みんな山の方を向いて大きな声で自分らの名前を呼んでいる。

汗をかき、最後の力を振り絞って家に着いた頃には、もう栗の事なんか忘れていた。

父に

「馬鹿じゃねえか、日の暮れるのも分からんか!みんな、心配するじゃぁねえか!!!」

と、こっぴどく怒られた。

母は安心したのか、ようやく夕飯の支度にとりかかり、

家族が遅い遅い夕飯にありついた時、ほっと胸をなでおろした。

 

冷たい布団の中に入っても、まだゆらゆらと真っ暗な林道でたき火をしている人が見えていた。

 

あれは狐火だったんだ!

80年経った今でも、二人は口を揃えて言う。