先日、ラジオの番組で
「おめでたい赤白の熨斗は見た事がありますが、黒白の熨斗っていうのはありませんからね。」
と言っている放送を聞きました。
実は黒白の熨斗もあるのです。
「熨斗の話ー1」で「のし」の起源はアワビであると書きましたが、
この黒白の「のし」の真ん中にある黒い部分(アワビの部分)は昆布が起源です。
「ものと人間の文化史62」 矢野憲一著「鮑」という本の中に、
「熨斗はアワビばかりではない、サザエ熨斗とか昆布熨斗、海たけ熨斗というのもある。アワビが第一だがその代用に用いたもので、
僧家では昆布を精進熨斗として使ったという」という一文があります。
そして、柳田國男集第14巻「のしの起源」の中には、
「~略~ 例えば昆布は遠い昔から取れたものである故に、するめや熨斗鮑と同列のものと考えられていたらしく、~略~すべて自由な又精進の拘束を解除する力を持つ食物だった」
と記されています。
お祝いやおめでたい日には酒と肴が振る舞われるのが当然で、今でも必ず刺身は出てきます。
そして、精進料理やお葬式などの料理には、肉や刺身が使われていない様に、
昔から不幸のあった時には、一切の「ナマグサ」を食べない風習があったのです。
このように、
吉事には「ナマグサ」が付き物で、不吉の時には「ナマグサ」は食べないという事で吉凶をはっきり区別していたのです。
古来から高級贈答品であり、貴重品として尊ばれていたアワビが「ナマグサ」の代表であり、
この「ナマグサ」を使えない時、アワビと同等に尊ばれてきた昆布が代用品に使われたのです。
その為
吉事に使われる贈答品にはアワビを起源に持つ熨斗、(紅白など)
仏事に使われる贈答品には昆布を起源に持つ熨斗(黒白・オリブ)が用いられています。
資料
≪「ものと人間の文化史62」 矢野憲一著「鮑」≫
≪柳田國男集第14巻「のしの起源」≫