「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

満期出所  直後に再犯 -- 明日の課題 (3)

2011年01月14日 21時08分44秒 | 罪,裁き,償い
 
 軽度の知的障害がある受刑者 (79) は、

 放火や放火未遂で 10回服役し、 刑務所暮らしは40年を超えています。

 前回の出所時にも、  「行く所がないから すぐ戻ってくるよ」 と言っていました。

 路上生活を始めた受刑者は、 生活保護の窓口を訪れましたが 交通費を渡されただけ。

 その日の深夜、 駅構内で 警察官から退去を求められ、

 数時間後、 駅に火を放ちます。

 再び刑務所に戻るため 火をつけたとされました。

 ホームレス支援機構の奥田さん (47) は、

 この受刑者を救えなかったことに 自責の念に駆られました。

 「放火は罪として 裁かれるのは当然。

 でもこの人は 何度も刑務所から 社会に投げ渡され、

 どの公的機関も 手を差し伸べなかった」

 満期出所者のうち、 引き受け先がないまま 出所した人は、 09年は約6700人。

 00年より倍増し、 満期出所者の半数近くです。

 受刑者の高齢化や 不況が背景にあります。

 65才以上の満期出所者の約7割が、 5年以内に再び 刑務所に入るなど、

 特に高齢者と知的障害者が 出所後に困窮し、 再犯に至る現状があります。

 それを受け、  「地域生活定着支援センター」 の 設置が始まりました。

 引き受け先がない 高齢者や障害者に対し、

 服役中から センターの職員が面会し、 生活保護や住居斡旋に 繋げる仕組みです。

 先の受刑者の裁判では、

 「出所後、 格別の支援も受けず 社会に適応できなかったのは 酌むべき事情」

 とされ、 求刑の懲役18年に対して 10年が言い渡されました。

 奥田さんは 拘置施設で受刑者に面会します。

 「絶対に 生きて出ないといかん。

 刑務所以外にも 行き場があることを、 最後に皆に示すんだ。

 必ず 迎えに行くから」

 受刑者は 声を上げて泣きました。

〔 読売新聞より 〕
 

進む 「終身刑化」 -- 明日の課題 (2)

2011年01月13日 21時00分05秒 | 罪,裁き,償い
 
 金銭目的で女性を殺害した 無期懲役の男 (50) は、

 一日だけでもいいから 外に出て、 ご遺族に謝りたいと言いました。

 刑務所に来た当初、 刑務官から

 「十数年での仮釈放を目指して 頑張れ」 と 励まされました。

 被害者女性の遺族に 謝罪の気持ちを伝え続け、

 5年経った頃、 手紙を受け取ってもいいという 意向が伝えられました。

 ところが、 目標にしていた年数になった 2000年頃から、

 無期囚の仮釈放が 急に難しくなっていきました。

 仮釈放を懸念する 被害者遺族の感情が、 重視されるようになったためです。

 長期服役しても 心から反省できない 加害者がいることも事実で、

 遺族は 新たな犯行を恐れます。

 けれども この男の場合、 遺族の処罰感情も 多少和らぎ、

 所内での規則違反もありません。

 それでも 仮釈放は認められていません。

 05~09年、 刑務所で死亡した 無期囚は61人で、 仮釈放者の2倍半。

 無期囚の 「終身刑化」 が進んでいます。

 以前は、 更生に励めば 早く出られるという 期待がありました。

 しかし 最近入所する無期囚は、 「真面目に過ごしても無駄だ」 と 言い、

 平気で反則をするといいます。

 無期囚の服役の長期化は、 仮釈放者の高齢化ももたらしています。

 40年余り服役した 元無期囚は、

 70才目前で出所しましたが、 仕事は見つからず、

 逮捕前は50円だったラーメンが 今は10倍もすることに 苛立ちを見せました。

 このままでは、 40年間の刑務作業で稼いだ 百数十万円を食いつぶすだけだと、

 不安を隠せません。

 今後は 孤独に生きるしかないといいます。

 生き直す契機としての 刑罰の意味が、 見えにくくなっています。

〔 読売新聞より 〕
 

増える無期囚  どう処遇 -- 明日の課題 (1)

2011年01月12日 21時47分04秒 | 罪,裁き,償い
 
 昨年11月の読売新聞  「罪と罰」 第4部に、

 犯罪者の処遇関する記事が 連載されていました。

 犯罪者を更生させるための制度が、 随所で機能不全を起こしているということです。

 記事の引用・ 要約を 書かせていただきます。

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 全国の刑務所で 無期囚が急増しています。

 91年には870人でしたが、 09年末には 倍の1772人に達しました。

 被害者感情を重視する 世論の影響で、 90年代後半から量刑が重くなり、

 仮釈放も認められにくくなりました。

 06年には136人の無期囚が 新たに加わりましたが、 仮釈放は3人だけでした。

 以前は、 服役して10数年で仮釈放される 無期囚が少なくありませんでしたが、

 この数年は 出所できた少数の者でさえ、 平均刑期は30年前後です。

 閉鎖空間に長くいることで、 幻覚などの 「拘禁反応」 を発症したり、

 高齢で 身体の疾患にかかるケースも 多くあります。

 一般の刑務所で 治療が難しくなると、 全国4ヶ所の 医療刑務所に移されます。

 しかし隔離された環境では 治療に限界があり、

 症状が改善されなければ 一般刑務所に戻れず、 仮釈放の可能性も低いままです。
 

 用もないのに 呼び出し用のランプを 一日中点滅させる受刑者。

 「死ねという声が聞こえる」 と言う受刑者。

 トラブルが絶えない独房を、 刑務官は一人で 巡回しなければなりません。

 けれども 職員の数が足りず、

 受刑者一人一人に 時間をかけて 改善させることができないのが現状です。

〔 読売新聞より 〕
 

スカイツリー 展望フォト (3)

2011年01月10日 22時02分50秒 | Weblog
 
(前の記事からの続き)

 スカイツリーの前を通り過ぎ、

 東の十間橋 (じゅっけんばし) まで行く ルートを歩きました。

 

(クリックしてください)

 ツリーと同じ敷地内にある ビル (商業施設) と共に。

(この敷地全体は、 「東京スカイツリータウン」 と命名されました。)

 
 

(クリック)

 路地裏から見る スカイツリー。

 浅草寺界隈は にぎやかな観光地ですが、

 スカイツリー近辺は あばら家もある、 こんなひなびた たたずまいです。

 急発展のスポットと アンバランスな調和の風情ですね。

 ツリーが完成して 観光客が増えると、 どんどん開発されていくでしょうか。

 

 

(クリック)
 
 十間橋から見る、 北十間川に映った 「逆さスカイツリー」。

 このポイントで 逆さツリーが見えるのは、

 方角がいいだけでなく、 川幅が狭くて 川面に波が少ないためです。

 

 ところで、 現在スカイツリー最寄り駅の

 東部伊勢崎線 「業平橋 (なりひらばし)」 は、

 ツリー開業後  「とうきょうスカイツリー」 と 改名されるそうです。

 藤原業平にちなんで 1931年から続いてきた 駅名が消えることになります。

 スカイツリーの開業は 2012年春の予定。

 東京の新たな観光スポットの 誕生に向け、

 情報館 「東京スカイツリーインフォプラザ」 も 開設されているようです。

http://www.tokyo-skytree.jp/about/plaza.html
 

スカイツリー 展望フォト (2)

2011年01月09日 19時41分24秒 | Weblog
 
(前の記事からの続き)

 隅田川を渡ったら 北へ進み、 墨田公園の手前で 東に曲がって、

 東部伊勢崎線沿いに スカイツリーの方へ向かっていきます。


(写真をクリックすると拡大されます。) 

 北十間川 (きたじゅっけんがわ) 沿いに 歩いていくと、

 次第に ツリーが大きくなってきます。

 撮影ポイントには 人だまりができています。


 


(写真をクリックしてください。)
 
 東部伊勢崎線の高架橋と、 ビルの合間に覗く スカイツリー。

 浅草寺から離れると、 人通りも少ない こんな路地になります。


 


(クリック)
 
 北十間川沿いのスカイツリー、 全貌が見えてきました。

 だんだん大きくなります。


 


(クリック)
 
 スカイツリーの真下から。

 514メートルは 写真に入りきりません。

 首が痛い。
 
(次の記事に続く)
 

スカイツリー 展望フォト (1)

2011年01月08日 22時20分36秒 | Weblog
 
 昨年の暮れ、 建設中の東京スカイツリーを 友だちと見てきました。  (^^)

 その時514メートルで、 あとはアンテナ部分が 伸びていくだけです。

 スカイツリーは 浅草・ 浅草寺 (せんそうじ) の東、

 隅田川を挟んで 約1.5㎞の所にあります。

(地図参照)
〈出典: http://plaza.rakuten.co.jp/musicbookfood/diary/200912050000/〉


 
 
 
 予め スカイツリーがよく見える所を 調べて行きました。

 それぞれのスポットで 写真を撮ってきたので、

 3回に分けて 掲載したいと思います。
 
 当日は 銀座線・ 浅草駅で降り、 雷門で友だちと待ち合わせ。

 まず、 仲見世通りを通って 浅草寺ヘ行き、

 五重の塔と スカイツリーを撮影しました。

(浅草寺では 羽子板市もやってました。)
 
 
(クリックすると拡大されます。)
 
 浅草寺・ 五重の塔を前景に、 スカイツリーを遠方に臨みます。

 歴史的な塔と、 超近代的な塔との融合です。
 
 
 
 それから 雷門に戻り、 隅田川を渡ります。

 吾妻橋からは、 アサヒビール, 墨田区役所リバーサイドホールと並んで、

 スカイツリーを見ることができます。

 
(クリックすると拡大されます。)
 
 吾妻橋から。

 アサヒビールと リバーサイドホールの向こうに、 スカイツリー。

 隅田川には 屋形船も走っています。

 
(次の記事に続く)
 

エピローグ …… 「生死命の処方箋」 (69)

2011年01月05日 21時21分00秒 | 「生死命(いのち)の処方箋」
 
(前の記事からの続き)
 
○ 東央大病院・ 外景
 

○ 同・ 受付

  中年の夫婦が来ている。

  受付係が内線電話をかける。

受付係 「緒方先生ですか?  高野さんという

 ご夫婦が 面会にいらっしゃっていますが」
 

○ 同・ 緒方の研究室

  電話で話している緒方。

緒方 「ああ、 あの、 木村さんから腎臓を受け

 た ……。  そう、 お元気で。  うん、 ぜひお通

 ししてください」

   ×  ×  ×  ×  ×

  緒方と美和子が 高野夫妻に応対している。

高野 「腎臓いただいてから 2週間して、 ついに

 オシッコが出たんです。  15年ぶりでした 

 …… もうシャーって、 ほとばしり出て ……

 私は これ (妻を指して) と抱き合って

 泣きました」

美和子 「そうですか …… 」

妻 「ごはんをね、 本当においしそうに 食べて

 くれるんです。  透析してた時は、 ずっと

 口の中に アンモニアの臭いがしてたもんで。

 『ああ、 15年前は こんな味だったんだ』

 って」

高野 「頭痛や体のかゆみも さっぱりなくなって。

 もう この爽快感っていったら、 言葉では

 とても ……。  これで寿命が延びたとか

 っていう 喜びじゃないんです。  毎日生きてる

 ことが 本当にありがたいんです。  それにホレ、 

 インポのほうも治りまして (笑)」

  妻も笑って 高野を叩く。

美和子 「(微笑む) …… 」

高野 「薬の副作用で 白内障が進んでますけど、 

 それも 透析生活に比べれば ……。  もし

 腎臓くださった方を 教えていただけるんだった

 ら、 一生その人には 足を向けて寝られませ

 ん」

  嬉しそうに聞いている 美和子と緒方。

妻 「この人と話したんです。  私たちが死ぬ時

 には、 使える臓器は是非 どなたかのお役に

 たててほしいって …… 」

美和子 「 ……… (感慨深い)」

 

○ 同・ 正面玄関

  高野夫妻、 何度も何度も 頭を下げながら、 

  病院を去っていく。

  見送る美和子と緒方。

美和子 「これで、 木村さんも喜んでくれるで

 しょうね …… 」

  緒方の目に 涙が光っている。

美和子 「緒方先生 …… ?」

緒方 「 …… あの、 笑顔が見たかったんだ

 ……」

美和子 「 …… 」

緒方 「あの笑顔の前には、 どれだけ多くの涙が

 流されたか …… そして、 これからもまた

 幾度も涙に濡れるだろう ……。  でも、 あの

 笑顔を忘れたくない …… 」

美和子 「 ……… (目が潤む)」

緒方 「佐伯くん、 淳一くんと多佳子ちゃんにも、

 あの笑顔を …… 」

美和子 「 ……… 」

  美和子に、 笑顔が戻っている ……。

 
         (完)
 

希望 …… 「生死命の処方箋」 (68)

2011年01月04日 21時07分09秒 | 「生死命(いのち)の処方箋」
 
(前の記事からの続き)
 
○ 六義園

  美和子と世良が歩いている。

美和子 「 …… 安達さん、 結局 助からなかった

 …… 」

世良 「あの状態では、 やはり無理だったん

 だ」

美和子 「やっと 死ぬことができた …… それで

 ほっとしたっていう気持ちが、 どこかに

 正直ある。  これって 一体何だろう ?」

世良 「それも 本当の美和子の心だろう。  でも

 オペのとき  『やめてください』 と叫んだの

 も、 本当の美和子だよ」

美和子 「 ……… 」

  二人、 池を見ながら佇む。

世良 「 …… 会社、 やめることにしたよ …… 

 少し時間がほしい」

美和子 「いつまで …… ?」

世良 「分からない ……。  でも、 この取材は

 一人で続けていく」

美和子 「連絡、 ちょうだい …… 落ち着いた

 ら」

世良 「ああ …… 」

美和子 「あたしたち、 “もう元には戻らな

 い” …… ?」

世良 「 …… 」

美和子 「まだ、 死んでないよね …… ?」

世良 「 …… 人間だからな …… 」

美和子 「待ってる …… 」

世良 「 …… 美和子 …… 」

美和子 「うん ?」

世良 「君には、 持ってほしい …… 」

美和子 「何を ?」

世良 「(美和子の肩に手を置く) …… 力と、 

 心と …… 」

美和子 「 …… (見つめる)」

  世良、 ゆっくり踵を返し、 離れていく。

美和子 「 …… (見送る)」

  世良、 立ち止まり、 振り返る。

世良 「 …… 俺、 真剣に考えてみるよ …… 今の

 日本で できるかどうか分からないけど…

 …」

美和子 「何 …… ?」

世良 「 …… 生体肝移植 …… 」

美和子 「 ……… (声にならない)」

  涙があふれてくる美和子。

(次の記事に続く)
 

許された死 …… 「生死命の処方箋」 (67)

2011年01月03日 19時33分58秒 | 「生死命(いのち)の処方箋」

(前の記事からの続き)
 
○ 東央大病院・ 淳一の光線治療の部屋

  光の中。

  美和子と トランクス姿の淳一が、 サング

  ラスをかけて居る。

淳一 「 …… そう …… そういうことだったのか

  …… 機械が故障しただなんて言って …… 」

美和子 「許して …… また、 嘘ついた …… 」

淳一 「何だい、 しおらしくなっちゃって」

美和子 「(微苦笑) 形無しね …… 」

淳一 「でもまあ、 お互い一人じゃなけりゃ、 

 何とかやってけるよな」

  淳一、 美和子の肩に手を回す。

淳一 「心を支えることなんて できないけど、 

 肩を支えることなら できるから」

美和子 「医者が 患者に慰められちゃった…

 …」

淳一 「オレのほうがベテランだよ、 しんどい

 ことにかけちゃ」

美和子 「 …… この部屋、 すごく落ち着く …… 

 ジュンはずっと この中で過ごしてきたんだ

 ね …… 光の中で ……。  何だか、 時間が止ま

 ったみたい …… 」

淳一 「 ……… 」

美和子 「 …… ねえ、 あたしも 裸になってい

 い ?」

淳一 「あ ?」

美和子 「光、 浴びたいの、 全身で」

淳一 「女医のポルノ、 売れるかもね」

  美和子、 下着姿になる。

  二人、 並んで横になる。

美和子 「 …… いい気持ち …… 」

淳一 「 …… 人間だから、 うまくいく時もある

 し、 そうでない日もあるよ。  いいことも悪

 いことも、 一緒にあってこそ 素敵なんだ …

 … 喜びも悲しみも、 生も死も、 みんなまと

 めて抱きしめたい …… なんて」

美和子 「 ………… ピンポーン …… 」
 

○ 同・ ICU

  平坦な脳波計。

  止まった人工呼吸器。

  横たわっている安達。

  モニターのスイッチが 切られていく。

  静かに座っている杏子。

(次の記事に続く)
 

翻弄された生命 …… 「生死命の処方箋」 (66)

2011年01月02日 20時47分23秒 | 「生死命(いのち)の処方箋」
 
(前の記事からの続き)
 
○ 街景
  

○ 東央大病院・ 外景(夜)

  

○ 同・ 淳一の病室

  ベッドに座り込んでいる淳一。

  多佳子、 淳一に抱きついて 泣いている。

  美和子、 がっくりとして立っている。

多佳子 「(涙) …… 手術が中止なんて …… !

 ジュンくんが、 やっとここまで決心したの

 に …… !」

美和子 「 …… ごめんなさい …… 」

多佳子 「先生って、 人の心 もてあそぶみたい

 なことばっかり …… ジュンくん、 かわいそ

 う …… 」

  ベッドの中で淳一、 体を震わせている。

  泣き声とも笑い声とも聞こえる 声を立て

  ている。

美和子 「ジュン …… !! (涙)」

  淳一を抱こうとする美和子。

多佳子 「さわらないで …… !!  先生なんか

 ジュンくんに …… ! (美和子の手を払いのけ

 る)」

美和子 「 !! …… 」

  淳一を抱いて 泣く多佳子。

  美和子、 なすすべもなく立ち尽くす。

  

○ 同・ ICU

  人工呼吸器に繋がれた安達。

  杏子が寄り添っている。

  安らかな寝顔の安達。

杏子 「 ……… 」

  

○ 同・ カンファレンスルーム

  美和子、 緒方、 川添。

美和子 「(落胆して) …… これで、 よかった

 んでしょうか …… ?  安達さんを助けるこ

 とができて …… 」

川添 「僕は、 安達さんを 何とか助けようと思

 って、  様々な治療をしてきました …… 」

緒方 「うん …… 」

川添 「でも …… 体中に チューブを差された

 スパゲティ状態で、 機械に繋がれた 安達さん

 を見ていて、 僕は不思議な疑問に かられて

 きた …… 」

美和子 「? …… 」

川添 「この人は、 一体いつ、 “死ぬことを許

 されるのだろうか ?” って …… 」

美和子 「!? …… 」

川添 「移植という プロジェクトに組み込まれ

 て、 あっちへやられたり、 こっちへやられ

 たり …… 安達さんはまるで、 臓器を取られ

 て死ぬために、 この病院へ来たみたいだっ

 た ……。  僕が安達さんにしたことって、 

 一体何でしょう?  もし僕が、 あの人に蘇生

 術を ほどこさなかったら、 いや、 もしこの

 世に 蘇生術なんてものがなかったら …… 

 安達さんはもっと安らかに、 天に召された

 かもしれないのに ……。  医学は、 何のために

 ここまで発達してきたんでしょう …… ?

 (一粒の涙が落ちる)」

美和子 「川添先生 …… 」

緒方 「医学の歴史は、 人体実験の歴史だ。

 それが人々を 幸福にしていく。  我々は危険思想

 ぎりぎりのところで 生きているんだ …

 …」

美和子 「 ……… 」

(次の記事に続く)