「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

更生願い、 加害者と対話 -- 明日の課題 (10)

2011年01月29日 19時52分37秒 | 罪,裁き,償い
 
 少年院を出た少年 (19才) は、 まじめに働くからと 新聞配達を始めましたが、

 遊び仲間だった少年4人から 暴行を受け、 死亡してしまいます。

 少年の父親は、 加害者をこの手で 殺してやると思いました。

 加害者の審判を 担当した判事は、

 「反省の言葉を聞きたい」 という 遺族の希望を聞き、

 加害者と対面させる 異例の試みに踏み切ります。

 被害者の父親は、 加害者の姿に 息子が重なりました。

 「この子だって、 少年院に行けば 変われるのではないか……」

 「心から反省ができたら、 線香を上げに来てほしい」

 「申し訳ありませんでした」

 涙声が聞こえ、 父親は苦しみが 少し和らいだ気がしました。

 しかし 願いは裏切られます。

 少年院を出た後、 その男は 強盗致傷・ 恐喝事件を 3件起こしました。

 それを知った父親の 苦悩は深まります。

 この男の弁護士は、

 「遺族への対面を 続ける努力が必要だった」 と 悔やみました。

 事件の当事者同士の対面により、

 加害者の更生と、 被害者の精神的な回復を 目指すこの手法は、

 「修復的司法」 と呼ばれ、 北欧などで制度化されています。

 日本では、 千葉県で 少年事件を対象にした 取り組みがあります。

 関係修復は 地域の安全にも繋がり、 対面した場合の 満足度は高いのですが、

 普及はしていません。

 神戸連続児童殺傷事件でも、 裁判官は 修復的司法に期待をかけました。

 「(加害者の)元少年と 遺族がいつか対面し、

 一緒に社会貢献活動や 被害者をしのぶ 活動ができないか」

 しかし 遺族の中からは 反発も出ました。

 「会えば 嫌なことを思い出す。

 彼は一生 罪を背負い続けるべきで、

 被害者の許しを目的にするのは、 加害者の立場に立つものだ」

 「むしろ 被害者感情を理解する教育を 必修にするべきだ」