「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

薬物法廷  処罰より治療 -- 明日の課題 (8)

2011年01月27日 21時36分19秒 | 罪,裁き,償い
 
 1980年代、 レーガン政権は 薬物犯罪に厳罰で臨みました。

 薬物依存者を大量に 刑務所へ送りましたが、

 出所後 すぐ再犯に走る者が 後を絶ちませんでした。

 そこで89年に、  「ドラッグ・コート (薬物法廷)」 が設立されました。

 比較的軽い薬物犯罪が対象で、 治療プログラムを受けることを 選択できるものです。

 ただしプログラムは 1年以上かかるため、

 迅速な裁判を受ける権利を 放棄する書面にサインが必要です。

 ドラッグ・コートを担当する判事が、 プログラム参加者に治療経過を確認します。

 刑事事件では対立する 検事や弁護士が、 ここでは全員協力し、

 薬物中毒を乗り越える 方法を探すのです。

 プログラム参加者は 週6回カウンセリングを受けます。

 抜き打ちの尿検査もあり、 とても厳しい プログラムだと言われます。

 しかし ある参加者は、 明るい表情で話します。

 「刑務所は 慣れてしまえば楽だが、 ここでは自分自身の 努力が必要。

 だからこそ変われる」

 「判事は 俺たちの成功を願ってくれる。

 自分が 役立たずじゃないことが分かった」

 プログラム終了者の再犯率は 約30%。

 参加しなかった場合は 60~80%です。

 日本でも、 被害者のいない薬物犯罪は 刑罰の対象からはずし、

 治療に委ねるべきという 議論があります。

 一方、 刑罰も維持しないと 抑止力が薄れるという人もいます。

 薬物依存者の 刑期終盤の一定期間、 刑の執行を猶予し、

 治療プログラムを義務づける 制度が検討されています。

 日本独自の  “薬物法廷” が期待されます。