「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

進む 「終身刑化」 -- 明日の課題 (2)

2011年01月13日 21時00分05秒 | 罪,裁き,償い
 
 金銭目的で女性を殺害した 無期懲役の男 (50) は、

 一日だけでもいいから 外に出て、 ご遺族に謝りたいと言いました。

 刑務所に来た当初、 刑務官から

 「十数年での仮釈放を目指して 頑張れ」 と 励まされました。

 被害者女性の遺族に 謝罪の気持ちを伝え続け、

 5年経った頃、 手紙を受け取ってもいいという 意向が伝えられました。

 ところが、 目標にしていた年数になった 2000年頃から、

 無期囚の仮釈放が 急に難しくなっていきました。

 仮釈放を懸念する 被害者遺族の感情が、 重視されるようになったためです。

 長期服役しても 心から反省できない 加害者がいることも事実で、

 遺族は 新たな犯行を恐れます。

 けれども この男の場合、 遺族の処罰感情も 多少和らぎ、

 所内での規則違反もありません。

 それでも 仮釈放は認められていません。

 05~09年、 刑務所で死亡した 無期囚は61人で、 仮釈放者の2倍半。

 無期囚の 「終身刑化」 が進んでいます。

 以前は、 更生に励めば 早く出られるという 期待がありました。

 しかし 最近入所する無期囚は、 「真面目に過ごしても無駄だ」 と 言い、

 平気で反則をするといいます。

 無期囚の服役の長期化は、 仮釈放者の高齢化ももたらしています。

 40年余り服役した 元無期囚は、

 70才目前で出所しましたが、 仕事は見つからず、

 逮捕前は50円だったラーメンが 今は10倍もすることに 苛立ちを見せました。

 このままでは、 40年間の刑務作業で稼いだ 百数十万円を食いつぶすだけだと、

 不安を隠せません。

 今後は 孤独に生きるしかないといいます。

 生き直す契機としての 刑罰の意味が、 見えにくくなっています。

〔 読売新聞より 〕