「パーソナリティ障害」 福島章 (日本評論社) という本から、
「 弁証法的行動療法 (DBT) 」 について記します。
弁証法的行動療法は 認知行動療法の一種で、
1987年に 米国の行動心理学者 マーシャ・リネハンによって 開発されました。
自殺行動や リストカット,ODなどの 自傷行為に対して、
多くの有効性が 実証されています。
抑鬱,不安、解離などにも 治療効果が大きく、
対人関係の改善などが 長期的に維持されるといいます。
BPDだけでなく、摂食障害やPTSDなどにも 適用が広げられています。
DBTは 弁証法が基本原理になっています。
弁証法とは哲学用語で、
ひとつの命題 (テーゼ) には 必ずそれに反する命題 (アンチテーゼ) があり、
その矛盾を解決するためには、
両者をひとつ上の次元で 統合 (止揚/アウフヘーベ ン) するという考え方です。
「正」 → 「反」 → 「合」 で表されます。
そうして新たにできた 上の次元の命題には、また再び その反対の命題が存在し、
さらにそれらを 高い次元で統合していきます。
それを繰り返して、認識は変化し 進んでいくというものです。
このように弁証法は、
現実を 「相互関係」 「統合」 「変化」 の 3つの軸で説明しますが、
これは BPDを理解する 手がかりになります。
例えば BPD患者は、自分のアイデンティティに 混乱と不安定性を抱えており、
これは 人との 「相互関係」 を 実感できていないことによります。
弁証法の最初の段階の 失敗と言えるでしょう。
また、極端な二分思考を持っていて、現実の複雑さや矛盾を 理解することが困難です。
BPD患者は、テーゼまたはアンチテーゼの どちらかに捕らわれ、
統合ができないと考えられます。
一方、弁証法は 治療にも組み込まれています。
治療者は、患者の 「変化」 を促しながら、同時に、
そのときの ありのままの自分を 「受容」 することを 患者に求めます。
実際には、治療者は患者に対して、不適切な言動の 原因を説明し、
そういう行動を取ってしまうのは 致し方ないことだと是認します。
そうすることによって、患者の現状を 「受容」 し、
その上で 問題行動の解決策を話し合い、「変化」 させていくことを支援するのです。
(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/55160230.html
〔 「パーソナリティ障害」 福島章 (日本評論社) より 〕