「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

面会・ 手紙 支える家族 -- 矯正の現場 (13)

2012年01月14日 22時14分14秒 | 罪,裁き,償い
 
 70才代の女性の息子は、 強盗殺人罪で無期懲役となり、 10年が過ぎました。

 女性は毎月、 新幹線で5時間かけて上京し、 息子に面会を続けています。

 息子は 日々の刑務作業の話などをしますが、

 事件や被害者遺族の話は ほとんど出ません。

 毎年 被害者の命日に、 女性は 遠方の遺族宅を訪ね、

 その時の様子を 息子に手紙で知らせています。
 

 強盗傷害で懲役10年の刑に 服した男性は、

 数ヶ月に一度の 母親の手紙を励みにしていました。

 老いた母は、東北地方で畑を営み、面会には来られません。

 〈家に必ず帰ってきてください。 待っています。〉

 刑務所の規則で、 読み終えた手紙は 刑務所に預けなければならなかったため、

 手紙の文章を一字一字、 ノートに書き写しました。

 辛いときは ノートを手に取り、

 「ここで踏ん張らなければいけない」  という気持ちになるといいます。

 母親はその後、 胃がんで亡くなりました。

 「それまでは、 ただ早く出たいと 思うだけでした。

 お袋を失ってからは、 真人間になって 社会復帰し、 墓に参ろうと誓いました」

 男性は 母親が送ってくれたお金で、 電気技術の本を買って勉強し、

 仮釈放後、 電気工の仕事に就きました。
 

 親族らとの 面会や手紙のやり取りは、 06年から 従来の2倍の

 「月2回の面会、 月4通の手紙の発信」 が 保障されました。

 矯正に支障がないと認められれば、 友人や恋人との 面会も許され、

 受け取った手紙も一定量まで 手許に保管できるようになりました。

 家族らの支えを より強くして、 社会復帰への環境を整え、

 更生の意欲を高める 目的だといいます。

 冒頭の無期懲役囚の母親は、

 息子から初めて  「遺族に お詫びの手紙を書きたい」 と 言われました。

 遺族は  「お母さんに免じて 受け取りましょう」 と伝え、

 息子はすぐ 封書を送りました。

 女性は、  「自分が息子を支えるのは、 遺族にとっては許しがたいのではないか」

 と 後ろめたさを感じています。

 一方で こうも考えます。

 「せめて 私が面会に行けるうちは、

 息子に 償いの気持ちと 出所への希望を 失わせないようにしたい」

〔 読売新聞より 〕
 


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