「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

おいしいのに 何故食べなかったのか? (追悼記事)

2010年11月06日 20時33分53秒 | 介護帳
 
(前の記事からの続き)

 最近、 食が進まないことがある 利用者のCさん (認知症がある)。

 それに、 箸で取った食べ物を 一度 左手の平に乗せてから、

 口に運ぶことがあり、 何故なのだろうと思っていました。

 先日も 煮込みうどんを左手に乗せ、

 「おいしい」 と言いながらも、 すぐに箸を置いてしまいます。

 「おいしいの 沢山食べてください」 と 箸を持つよう促すと、

 一口は食べるのですが、 すぐ止まってしまいます。

 「お腹一杯」 と言ったり、 スタッフに食べるように勧めたり、

 そんなことを繰り返していました。

 Cさんの 椅子の座り方が浅く、 腰が 前の方にずれていたので、

 別のスタッフが 深く座り直させてくれました。

 すると、 何とその途端に、 Cさんは急に モリモリと食べ始めたのです。

 果たして、 座り直したことと 関係してるのかと考えると、

 浅く座っていたときは、 上体が椅子の背に もたれかかっていたため、

 顔とテーブルの距離、 つまり 口と食器の距離が 遠かったのです。

 それが座り直して、 上体が真っ直ぐになったことによって、

 口が食器の近くになり、 食べやすくなったのでしょう。

 Cさんは 食欲旺盛に食べ続けています。

 これには ちょっと驚きました。

 ただ姿勢を直したけで、 こんなにも 見違えるように変わるなんて。

 結局Cさんは お腹一杯になるまで平らげました。

 口と食器が 離れていたときは、

 箸で取っても 落としそうになるということを 無意識に感じて、

 左手に乗せて食べたり、 それ以上 箸が進まなかったりしたのですね。

 でもCさんは それが何故なのかを自覚できないし、 言葉にすることもできません。

 食べられない訳を、 お腹一杯だと言ったり、 人に勧めたりして 取り繕うのですね。

 その理由を見つけるのが 介護職の役割ですが、

 今回はとても びっくりした発見でした。
 

 …… ところが、 その次の時は、

 姿勢をしっかり良くしたのに、 また箸が進みませんでした。

 介護とは 一筋縄ではいかない、 難しいものなのですね。
 


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