「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

淳一の背中 …… 「生死命(いのち)の処方箋」 (14)

2010年08月15日 20時44分36秒 | 「生死命(いのち)の処方箋」
 
(前の記事からの続き)

○佐伯宅・ 風呂場

  淳一がぼんやりと 湯船に浸かっている。

自分の腹部を ゆっくりとさすってみる。

淳一 「………」
 

○同・ 脱衣場

  美和子、 そっと中を窺う。

美和子 「…… ジュン …… 背中、 流そうか、

 久しぶりに ………」
 

○同・ 風呂場の中

淳一 「………」

   ×  ×  ×  ×  ×

  美和子が 淳一の背中を流している。

美和子 「ジュン、 落胆しないでね …… きっと

 希望はあるから」

淳一 「オレより 姉キのほうが 気落ちしてんじ

 ゃないかって 心配してたよ …… (しんみり

 として揶揄)」

美和子 「あたしが ジュンを助けるんだって、

 ずっと 思いつづけてきたんだもんね ………」

淳一 「姉キの体、 傷モンにならなくて よかっ

 たな」

美和子 「でも、 もう後ろは見ないことにする

 …… 今は 肝臓提供してくれる人が 現れるのを

 待つだけ ……」

淳一 「………」

美和子 「(淳一の背中を流しながら) 何年振

 りだろうね、 こんなことするの …… ジュン

 の背中も 広くなった ……」

淳一 「…… オレ …… 長い間、 何か背中に

 負ってたような気がする ……… それが何だか

 なくなったような ………」

美和子 「…… ? ……」

(次の記事に続く)