(前の記事からの続き)
○東央大病院・ 医師控室
美和子、 世良、 若林。
若林 「(淳一のカルテを見ながら) いよいよ
“その時" が 来たかもしれない」
美和子 「私はいつでも 心の準備はできていま
す」
若林 「交換輸血を繰り返えさないうちに 早く
やったほうがいい」
美和子 「はい」
世良 「と言うと? (メモを取りながら)」
美和子 「輸血によって 他人の血液に対して
できた ジュンの抗体が、 万一 あたしのリンパ
球と一致すると、 移植ができなくなってし
まうの」
世良 「抗体によって 拒絶反応が起きてしまう
ということ?」
美和子 「そう、 これは超急性の拒絶反応でね、
移植してから一日で 臓器をだめにしてしま
うくらい 激しいものなの」
世良 「交換輸血の回数が増えれば 抗体ができ
てしまうかもしれないわけか」
若林 「まあ 確率は低いですがね、 早く手術す
るに越したことはない」
美和子 「若林先生、 二外 (にげ) 〔*〕 の緒方
助教授に 依頼してみてください」
〔*二外 …… 第二外科〕
若林 「(頷く) 緒方先生のチームは、 肝移植
最先端のピッツバーグ大学で 全員が研修を
積んで、 体制は万全のはずだ」
(次の記事に続く)