「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

言葉に囚われずに 本音を汲む (1)

2010年01月25日 20時24分51秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
 境界性パーソナリティ障害を よい方向に変化させる 最大のものは、

 気持ちを汲むということです。

 どんな頑なに 凝り固まった心も、 傷つき過敏になった心も、

 気持ちを汲まれると その殻をやわらげます。

 境界性パーソナリティ障害の親子関係では、

 しばしば 気持ちを汲むのが とても不器用です。

 気持ちを汲むのが 苦手な人は、

 言葉を額面通りにしか 受け取らない傾向があります。

 境界性パーソナリティ障害の人の 親に共通して見られやすいのは、

 自分の気持ちのほうに 視線が向いていることです。

 親を苦しめるわが子に、 落胆と批判の 気持ちを抱き、 困り者扱いしています。

 子供は、 本心では親を求めていて、 認めてもらいたいと願っています。

 親も本当は、 子供の助けになりたい、

 わが子に幸せになってほしいと 思っているのです。

 でも 親自身余裕がなく、 素直に子供に向き合えません。

 子供のほうも、 どうせ 親に分かってもらえないと諦め、

 これ以上 傷つけられることを避けています。

 こうした関係を よい方向へ変える妙薬が、 気持ちを汲む ということなのです。

 本人が口で どういう言葉を言おうと、 その奥底にある気持ちに 目を向けるのです。

 第三者が接する場合も、 本人の気持ちに 身を置いて、

 「傾聴」 することが基本です。

 すぐに 分かったような気にならず、 一度に全て 分かろうと焦らず、

 相手の気持ちを 丁寧になぞっていきます。

 実は本人にも 何が起きているのか、 分かっていないのです。

 溢れ出るものを 冷静に受け止め、

 思いをひとつひとつ 言葉にしていく作業を 繰り返すなかで、

 自分の気持ちが自覚され、 コントロールされやすくなるのです。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕

(次の記事に続く)
 
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