( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/57575265.html からの続き)
クリストフは限りない 挫折と絶望の中で、 神と邂逅します。
以下は クリストフと神との会話です。
( 最初の 「汝(なんじ)」 は神、
「われ」 はクリストフ、 「予」 は神です。 )
「 『 汝はもどってきた。
わが失っていた汝 …… なにゆえに汝は われを見捨てたのか。 』
『 汝が捨てた 予の仕事を やり遂げんがためにだ。 』
『 なんの仕事か。 』
『 戦うことだ。 』
『 なんで 戦う必要があるのか。
汝は 存在するすべてではないか。 』
『 予は 存在するすべてではない。
予は虚無と戦う 生である。 』
『 われは打ち負かされている、 われはもはや なんの役にも立たない。 』
『 汝は 打ち負かされたというか。
汝自身のことを考えずに、 汝の軍隊のことを 考えてみよ。 』
『 われは一人きりである。
われに軍隊はない。 』
『 汝は一人きりではない。
そして汝は 汝自身のものでもない。
汝は よし打ち負けるとも、
けっして負けることのない 軍隊に属しているのだ。
それを覚えておくがよい。
さすれば 汝は死んでも なお打ち勝つであろう。 』
『 主よ、 われはこんなに 苦しんでいる! 』
『 予もまた苦しんでいると 汝は思わないか。
幾世紀となく、 死は予を追跡し、 虚無は予をねらっている。
予はただ勝利によって 己が道を開いているのだ。 』
『 戦うのか、 常に戦うのか。 』
『 常に戦わなければならないのだ。
神といえども戦っている。 』
(中略)
『 われを見捨てた汝、 汝はまた われを見捨てんとするのか? 』
『 予は汝をまた 見捨てるであろう。
それを ゆめ疑ってはいけない。
ただ汝こそ もはや予を 見捨ててはならないのだ。 』
(中略)
クリストフはまた 崇高な戦いのうちに加わった……。
彼自身の戦いのごときは、 人間同士の戦いのごときは、
この巨大な 白熱戦の中に 消え失せてしまった。
彼の闘争は 世界の大戦闘の 一部をなしていた。
彼の敗北は些事であって、 すぐに回復されるものだった。
彼は万人のために 戦っていたし 、万人も彼のために 戦っていた。
万人が彼の苦難に 与かっていたし、 彼も万人の光栄に 与かっていた。 」
〔 「ジャン=クリストフ」 ロマン=ロラン (岩波文庫) 豊島与志雄 訳 〕
(次の記事に続く)