(前の記事からの続き)
DSM-Ⅳでは、 BPDの人の75%が 虐待を受けていると言います。
実際、 非常に多くのBPDの人が 虐待の犠牲者です。
しかし、 BPDの25%の人は
虐待を受けていないのに 発症しています。
そして、 虐待された 全体の人たちのうち、
BPDの人は ごくわずかな一部でしかありません。
75%という数字は、 BPDの人の 自己報告に依存しています。
BPDの人の 偏った知覚や 論理的推論によるとすれば、
根拠が薄い数字です。
一方、 他の多くの環境因子が、
生物学的要因と重なって、 BPDを発症させる 状況を生み出します。
BPDの要因を 強化するものとして、 次のようなものがあります。
・親の非効果的な育て方
・親と子供の相性
・BPDの人のネガティブな知覚を 強化する家庭環境
・突然の喪失や 見捨てられ体験
・頻繁な引っ越しによる核家族化
・その共同体の 文化的,宗教的慣習 (性的偏見,人種差別など)
上記の幾つかが組み合わさって BPDに繋がります。
例えば、 虐待を受けただけで BPDになるとは限らないのです。
何かひとつの原因が BPDを引き起こすのではありません。
「原因」 ではなく、
「リスク因子」 という 考え方をしたほうが正確です。
例えば 心臓病なら、 遺伝, 食生活, 急激な運動など、
色々な リスク因子があります。
どれもが “原因” となり得ますが、 どれがひとつの原因とは 言えません。
〔「BPDのABC」 ランディ・クリーガー, E・ガン (星和書店)より〕