合気道ひとりごと

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60≫ 四方投げ

2008-03-30 19:03:49 | インポート

 一教とくれば次は四方投げですね。これはバックナンバー⑧、⑯その他で既に触れていますが、そこで書ききれなかったことを述べてみようと思います。

 四方投げがヨコの崩しの代表的な技であることは前に言った通りですが、ヨコと言っても微妙なサジ加減が必要です。そこのところを少し詳しく説明します。

 まず、わたしは両腕を振りかぶり切り下げる、刀の素振りのような四方投げをお勧めしません。刀の操法でいうと、感覚としては横払いの抜き打ちです。手が受けの頭より高いところにいってはいけないのです。また、肘を伸ばしすぎるのもいけません。刀法だってそうなのですが、体術においてはなおさら肘を目いっぱい伸ばすようなことはしません。肘の逆を簡単にとられるということもありますが、それ以上に、腕を通じて有効に力の出る範囲を越えてしまうからです。有効な力を出せる範囲というのは、両腕で体の前面に作った輪の内側です。この輪が適宜つぶれたり折れ曲がったりしながら、かつ、手は中心からあまりはずれないところを上下するのです。肘を伸ばして二等辺三角形のようになった手からは十分な力は出ません。

 四方投げは、時代や人によってもっとも変化の大きい、個性の表れる技ではないかと思います。比較的古い時期には、受けの掴んできた手首の逆をとって肘を伸ばし、さらに肩を突き上げてやり、さっとくぐる方法をとっていたこともあるようです。くぐり終えてからも、前に踏み出して相手を後方に倒す方法、肘を捻るようにして飛び受け身をとらせる方法などいろいろです。

 いずれも間違いではありませんが、そのうちわたしが現在もっとも合理的と思う方法を記しておきます。

 逆半身片手取り四方投げの表技で説明します。己の右手を受けが左手で掴んでいる場合、まずヨコの崩しをかけますが、どの方向のヨコなのかを言っておかねばなりません。受けが左半身の構えとして、崩れる方向は受けから見て左足の内側斜め前30度くらいです(三角定規の狭いほうの角度を思い出してください)。

 このとき、自分の左足は受けから見て左回りに浅いUの字を描くように運び、つま先は崩しの方向を向くようにします。結果、ソの字(裏三角)立ちのようになります。

 これが45度くらいになると、実質的に受けの両足を結んだ線の直角に近い方向に力を加えることになり、よくありません。一般的には、開いた両足の直角方向に押したり引いたりされると弱いと言われますが、人間は木偶の坊ではないので、倒れそうになったら瞬時に足を踏み出して体勢を整えます。ちょっと考えれば、あるいは試してみればわかります。それでは崩しをかけたことになりません。

 ここでさらに、単に斜め前ではなく若干下方に向けることによって、受けの前側の足に受け自身の体重が載ってきます。受けは崩しに対応しようと支え足を出したくなりますが、後ろの足は遠すぎるし、前の足には体重が載っているので、どちらも運びにくくなるのです。これこそが、あえて30度、かつ下方と限定した崩しの効果です。

 ここでの崩しがどれほど重要かは、受けが腕に力をこめて肘をあげられないように突っ張ってもらうとよくわかります。崩しをかけないままそうされるとほぼ四方投げはできません。でもきちんと崩しをかけていれば、教科書通りの四方投げのかたちにはならなくとも、腰をおとし腕の下をくぐって倒すことができます。

 このように、ちゃんとヨコの崩しができていると、くぐり終えた時点で受けは半ば倒れ掛かっていますから、あえて前に踏み出さずとも、むしろ足を引きつけて、ほぼその場に落とすことができます。

 裏については、同じ名前がついているとは思えないほど趣が違います。崩す方向は外側斜め前です。そこからはあまりヨコを意識しないで、転換しながら、両腕の輪がむしろタテぎみにウェーブするように動きます。また、上体をかがめると受けの肩や肘に無理がかかります。そのため取りは十分腰を落とさないといけません。背面で受に触れ、引き倒されないようにバランスを取りながら低い位置で回る。これは基本の技といいながら、実は大変むずかしい技です。

 なんの技でもそうですが、きちんと身に付けるためには、ある時期、精密機械のように、細かいところまで神経を行き届かせた稽古をすることが必要です。自由自在というものは、たくさんの制約の中にこそあります。


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