合気道ひとりごと

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211≫ 技法考察② 横面打ち

2013-07-10 14:47:20 | インポート

 本シリーズ2回目は横面打ちについて考えてみます。

 数ある掛かり(受けの攻撃)の中で、これが最も考察を要する技法ではないかとわたしは思っています。その理由は、これが『合気道の理合は剣の理合に通ずる』といわれていることを良く表す動きである一方で、いかにして現代に求められる格闘法に適応し得るかという部分で工夫の余地というか工夫の楽しみがあるからです。

 つまり、不易と流行です。伝統と現代性と言ってもいいかもしれません。わたしがとりわけ横面打ちに興味をひかれるのは、伝統の面でも現代性の面でも、いわゆる実戦における中軸の技法であると考えるからです。

  わたしは、剣術は合気道の稽古の一環としてたしなむ外はまったくの素人ですから断定的なことは言えませんが、対手にとって袈裟斬りほど厄介なものはないのではないでしょうか。試しに木刀などで打ちかかってもらえば、真っ向斬りや突きなどに比べてその対処の難しさはすぐにわかると思います。さらに、第一撃を避けることができてもすぐに逆袈裟が襲ってきます。いわゆる燕返しです。

 もちろんこれらには剣術ならではの応じ方があるでしょうから、合気道家風情が悩むことではないかもしれません。ここではそれが厄介だということを述べるに留めておきます。

 そのような刀法をもとにしたのが横面打ちです。大先生が正面打ちについて、『いまどきそんなふうに打ちかかってくるやつはいない』とおっしゃったのと同じで、やはり横面打ちも、いまどきそんな攻め方をする人は稀でしょう。しかし現実に危難に遭遇することを想定すると、少し変形した横面打ちが最も可能性が高いように思われます。もったいをつけずに言うと、ナイフによる斬りつけまたは単純な殴りかかりです。

 このような状況に応ずるときに有効なのが横面打ちに対する捌きでしょう。これについて、わたしは最近対処法を変えました。見た目はマイナーチェンジですが、実は相当大きな変更です。

 これまでは、受けが横面打ちで攻めてくるのに合わせて、こちらは一教運動のような動きで受けのふところに入っていくようにしていました。そのようにすると相手が打ってくるのと同じ側の腕でガードをしつつ手は顔面をとらえることが可能で、さらに続けて反対側の手で首筋を打つことができます。

 しかしそのやり方の欠点は、受けが理想的な打ち込みをしてくれないとガードも顔面攻撃も中途半端なものになることです。稽古ならそれでもよいのですが、実戦ではそんな注文を聞いてくれる人はいません。そこで、ガードと攻撃を別々の手で行なうという、すごく当たりまえの方法に変えたのです。

 それなら、ほとんど多くの人がやっていることと同じじゃないか、と思われるかもしれません。文章で表せばたしかにその通りです。実際はいくつかの点でそれとは異なるのですが、ひとつだけ明らかにしておきますと、通常の横面打ちのような大きな振りかぶり動作がありません。実戦を想定するとそれが現実的です。双方がそういう条件で動きを作り上げることがこの稽古の中心になってきます。それに応じて細かな体遣いにも種々の変更が生じます。たとえば打つ手は手刀ではなく拳や掌底になりますし、狙い所も首筋やこめかみではなく顎になったりします。また、相半身にするか逆半身にするかということも考慮の対象になります。

 わたしが考えた方法はまだ未熟で、自身をもってお伝えするレベルではありませんので詳しく言うのは遠慮しますが、ちょっと動きを変えるだけでも様々な考えを誘引するだけの材料が横面打ちにはあることがわかります。教本にあるような基本に忠実な動きを大切にしながら、並行していろいろな工夫を加えることも場合によっては必要ではないかという、ひとつの例証です。ある程度人前に出せるくらいにまで精度が上がったら講習会の具にでもしてみようかと思います。

 健全な稽古を目指しておられる方々には不必要な技法ですが、ただこのような工夫をしていると合気道技法の奥の深さがわかってくるというオマケがついてきます。