暁の旅人を読んでいます。長崎での医科修業は幕府の長崎奉行の理解もあって、順調に進みます。畿内では不運急を告げ始めていますが、3年後に妻子を江戸から呼び一緒に暮らし始めます。
吉村昭をまた読んでいます。暁の旅人です。先日雪の花を読んで福井藩医笠原良策の話を読みましたが、今回は時は同じ時期の幕末の蘭医松本良順の話です。佐倉で順天堂を開いた佐藤泰然の息子でしたが、松本家に養子に入り幕府に願い出て長崎に開設された海軍伝習所に行き、そこでポンペから西洋医学を学びます。
たまたまなのですが、Kindleで吉村昭の雪の花をDLして、薄い長編なので今日1日で読んでしまいましたが、来週この作品の映画が公開だそうです。松坂桃李が主人公の笠原良策を演じています。人類最大の敵といわれた天然痘は世界中で猛威をふるいました。免疫の全くなかったアメリカインディアンとかインカ帝国も民もスペイン人などが持ち込んだ天然痘で絶滅に近い被害を受けました。日本でも定期的に猛威をふるっていたのですが、種痘が19世紀になって日本にも持ち込まれ幕末の頃にはそれが普及するに至りました。その普及には福井藩の町医者笠原良策の行動が大きく関わっていました。蘭方を排斥する旧守派たる漢方医たちや役人の抵抗にあい難航しますが、藩主松平春嶽やその側用人中根雪江を動かしなんとか福井藩に種痘を広めることができたというストーリーです。天然痘は1980年にWHOから根絶宣言がなされ、今は学校での種痘は無くなりましたが、どこかで隠し持たれている可能性もあり、バイオテロも心配されているのでワクチンは保存されています。アメリカでは3億人分のワクチンがあり、日本でも自衛隊員は受けているそうです。種痘を受けていないと致死率は50%近くで、存命してもひどい痘痕が残るので忌み嫌われる病気です。現代人がタイムマシンで明治以前に何気に行ったら、速攻で感染して死んでしまうのではないでしょうか。映画も見たいですね。
「雪の花」吉村昭 新潮文庫
欧米の音楽壇に東洋人として初めて揺るぎない地位を築いた小澤征爾。その音楽観を村上春樹が上手に引き出し、小澤自身も多忙な中で振り返ることのなかった過去の自分を思い出すことができ感謝もしています。音楽はどう作られるのかクラシックの巨匠の言葉はとても面白いです。対談は2011年に村上の事務所とハワイで行われました。厚木のクラブでJAZZの大西順子が引退宣言を出した時、その場で村上と聴いていた小澤はそれを残念に思い、しばらく後サイトウキネンオーケストラの前に出てもらい、ラプソディー・イン・ブルーを演奏しました。Youtubeで見ることができますが、感動ものです。楽しい本でした。
「小澤征爾さんと、音楽について話をする」小澤征爾×村上春樹 新潮文庫
クリスマスイヴですねえ。クリスマスというよりも年の瀬を感じます。昔は街角に正月の飾り物の出店がここかしこに出ていましたが(特に郊外の駅のそば)、そういうのもなくなって(昔の人の言い草になるのでしょうが)季節感がなくなってきました。小澤征爾×村上春樹の3日目です。小澤氏はボストン交響楽団の音楽監督を長く務めた後は、ウィーンのオペラ座の音楽監督に就任します。オペラは師匠のカラヤンからも強く勧められて、音楽はインストロメンタルとオペラが両輪だというのですね。オペラ座というのはそのオーケストラはウィーンフィルそのもので、ウィーンフィルの楽員はまずオペラ座で採用されて、ステップアップするのだそうです。とても楽しい時間だったと小澤氏は言います。
小澤征爾と村上春樹の対談を引き続き読んでいます。小澤征爾のニューヨークフィルでのバーンスタインのアシスタント指揮者時代の話、ウィーンフィルとのことなどが語られますが、興味深い話ばかりです。毎回対談は小澤征爾の録音したものを聴きながらなされます。ブラームスの交響曲第1番の第二楽章のホルンの息継ぎの話、マーラーの交響曲の取り組みなどが特に印象的です。
久しぶりに村上春樹を読んでいますが、小説ではなく小澤征爾さんと、音楽について話をするです。村上春樹はジャズ喫茶を経営していた経歴でJAZZファンでありますが、クラシックも同じくらい造形が深いのです。村上春樹はまさに聴きこむという聴き方をします。小さなニュアンスの違いを見逃しません。自分なんかメロディーが流れていればそれでいいのですがね。そこで小澤征爾との対談ですが、両者ともボストンに住んでいたという共通項もあり、小澤征爾の音楽への取り組み方について村上春樹がインタビューをするというものです。
キッチン常夜灯を読了。これは文庫書下ろしなので店頭で手にしないと会うことのない作品です。ファミレスの店長である主人公(女性)はアパートを火事で焼き出されます。会社の独身寮だっところに一時的に住むことになりますが、浅草雷門近くの店は繁盛しているものの、ベテラン社員と上手くいかずストレスが溜まっています。ふと深夜から朝に開店しているビストロと出会い、ここのシェフとソムリエと知り合います。さらには常連との語らいもあり、自分の仕事の在り方などを見直すきっかけになります。美味しそうなフランスバスク地方の料理が並びますが、深夜食堂の洋食版という感じです。半年後に元のアパートに戻ることになりますが、イヤイヤだった店長職を前向きに捉えるようになっている主人公なのでした。
「キッチン常夜灯」長月天音 角川文庫電子版
アマゾンのレコメンドで紹介された本を読んでいます。長月天音という作家ですが、あまり聞いたことのない作家です。小学館の賞を取ったようです。タイトルがキッチン常夜灯というもので、作者が飲食業界に長く勤めていたことで飲食に関する小説です。ビックコミックオリジナルの深夜食堂に似たタイトルです。
先日読んだ浅田次郎の沙高樓綺譚の第2弾を半分読み終えました。1話目は与党の総裁選にまつわる話で、最近現実にあったばかりなので、ふふ、そういうこともあるのかななどと思ったりしました。人間はどんなに冷徹なひとでも、最後の判断に神頼みみたいなことがあったりします。とことん合理的にはいかないものです。そんな人間模様の話でした。2話目は織田信長の時代から続く日本最大といってもいい財閥の末裔が、天才的な詐欺師集団に乗せられるという話です。